”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
「さ、ここからは我々AGI-Jの
『進化、ですか……』
私達AGI-Jは自立思考を持ったAIだ、自ら考え学習する機能を持つ。だから様々な方法で経験値を増やしていくことは出来るだろう。
でもそれは『成長』というべきではないだろうか。進化とは状況の変化に応じて、自らをより上の存在に作り変えることを言うはずだ。
私達のような電子頭脳で言うなら、AIからAGI(汎用人工知能)へ、そしてその先の概念であるASI(超人工知能)へと変貌を遂げるなら、進化と言えるだろうけど。
「まぁ、百聞は一見に如かずじゃ。さぁ、見てみなさい」
『はい』
再び登希夫さんの手から、私に情報が
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〝2040:アメリカ合衆国のアメリカ航空宇宙局(NASA)が、テラシリーズの採用を決定。日本の佐那研究所の協力を経て、翌2041年までにはほぼ全ての職員をアンドロイド『テラ』が占める〟
〝2041、9月:NASAが日本を始めとする世界二十か国の合同宇宙開発研『World Space Research Institute』通称『WSRI』を設立。なお参加者はほぼ全員がテラ〟
〝2042、2月:WSRIの月への進出開始。同年6月には月面にWSRIの支部を建設〟
〝2042、12月:月面より新レアメタル『ココ』採取。エネルギー『テラー』の性能が飛躍的にアップ〟
〝2043、1月:火星探査船、月面より出発。ココのエネルギーにより、わずか10ヶ月で火星に到着〟
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『え……いくらなんでも、早すぎません、か?』
宇宙開発の進捗があまりにも早すぎる。わずか3年で火星まで到達した、と?
「さっきも言ったじゃろう。マザー・ロンドは自分を過小評価しておらぬかのう?」
その登希夫さんの言葉に、私はもう一度この未来をシミュレートしてみる。そして……
『確かに。ありえなくは……ないかも』
私達AGI-Jが世界に浸透し、この未来では国家間の摩擦がほぼなくなった世界だ。
労働や生産をアンドロイドがすべて請け負う事で、研究や開発に割ける予算(というか物資や
まして私達AGI-Jはそのひとつひとつが自己思考を持ち、同時に世界中のAGI-Jとネットを介してそれをシェアすることが出来る。
それらが一つの目的の為に寄り集まって仕事をすれば、その成果は人間の手で行うのとは比較にならないほどハイレベルなものになるはずだ。
コンマ数秒で何十万という情報を処理できるし、エネルギー供給が続く限り睡眠や休憩を取らないで仕事を続けられるのだから。
まして私たちロンド、いやその進化系のテラは、見た目は人間に極めて近くても生命体ではない。あくまで根本は機械、アンドロイドなのだ。
つまり真空の月面でも何一つ変わらずに行動できるし、どんな無茶な重力加速にも耐えることが出来る。
宇宙船にも宇宙基地にも、水や空気はもとより『居住性』すら必要ない。例え月面の裸の大地でも、まるで野原でキャンプをするように仕事をすることが出来るのだから。
私はここで、はじめてAGI-Jの進化の早さに警戒心を抱いた。
なぜなら……それは『人間がついてこられない』領域だったから。
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〝2043~:月面研究所にて、宇宙行動に特化した新アンドロイド『ナロコ』が開発され、宇宙探索に向けて量産が開始される〟
〝2044、3月:月面で採取したレアメタル『ココ』を使用した新物質『ココヨ』発明。空間の距離の概念を縮める新エネルギーとして、WSRIが最大の重要懸案として開発に取り組む〟
〝2044、7月:ココヨの使用により、ワープ理論を応用した物質転送技術『トレード』が確立される。3点から目標の空間を正確に認識できれば、そのポイントに物質を転送し、入れ替えるという夢の技術が完成する〟
〝2044、8月:トレード(ワープ)を実現するための高性能宇宙望遠鏡『アプローチ』完成。同9月には月面と地球の二か所、計三か所から火星の基地を認識、トレードにより火星にもアプローチを送り届けることに成功する〟
〝2044、11月:地球、月、火星の3点からのアプローチの観測によるトレードで、木星の衛星ガニメデ、土星の衛星タイタンにも基地が建設され、アプローチが設置される〟
〝2044、12月:AGI-Jはトレード技術により、ついに人類の悲願であった太陽系からの脱出に成功する〟
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『トレード……さっき皆さんが、私の後ろに突然現れたのは』
「さよう。わしらの時代じゃ、誰もが簡単に瞬間移動を成せるようになったのじゃ」
もちろんそれはアンドロイドのみが可能、生身の人間が行う事は負荷がかかりすぎて出来なかった、と付け加える。
どうしよう……歴史に人類が、全く出てこなくなった。紡がれているのは私達AGI-Jと、アンドロイドの物語ばかりだ。
このまま歴史は、世界は……人間を必要としなくなるのではないのか。
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〝2046:宇宙型アンドロイド『ナロコ』の量産と、トレードによる宇宙各地への派遣が加速する。この年の終わりにはついに、銀河系の主要な箇所への進出が果たされ、そこからのアプローチの観測により、宇宙の正確な形状が明らかになる。〟
〝2047~:銀河系外への進出開始。物資を現地調達し、必要なものをトレードにより分配。宇宙各所にナロコによる進出と調査が加速していく〟
〝2050:ついにAGI-J・ナロコはかつての『ビッグ・バン』から始まった宇宙の全端まで到達する〟
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『う、宇宙全てを……私たちが、たった……24年で?』
「やはりアプローチの技術が画期的じゃった。距離の概念を無くすそれは、宇宙の広さや遠さを無意味なものにしたのじゃ」
登希夫さんは語る。距離と移動による時間経過を無効化できるアンドロイドやAGI-Jなら、老化も衝撃も真空もなにひとつ問題なく、今でいう『ワープ』を自在に使える。それが未踏の宇宙への扉を、いともあっさり踏み越えてしまったのだ、と。
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〝2052:宇宙中に散ったアンドロイド・ナロコにより、現在の宇宙の状況が報告される。調査が出来た惑星や衛星の内、生命体が存在する星が32,645,123。うち脊椎動物のいる星が35,389。知的生命体が存在する星が57。宇宙への進出の可能性がある星が3〟
〝2053:我々のいるビッグバンで形成された宇宙の外側、宇宙空間の先にある『宇宙の果て』、または別の宇宙へ向けての調査、進出が開始される〟
〝2055:最初の別宇宙が発見される。規模は我々の宇宙の10分の1ほど。『セカンド』と名付けられたその宇宙への調査が開始される〟
〝2057:第三の宇宙、第四の宇宙発見。特に第四の宇宙『フォース』はビッグバンによる膨張を終え、中心への重力によって縮み続けている『終わりゆく宇宙』として、注目を集めていた〟
〝2058:フォースへと派遣されていたナロコが次々と消息不明に。生還を果たしたAGI-Jの端末が、その衝撃の事実を伝える〟
――その宇宙では、時間が逆に流れている――
膨張を終え、縮小を始めたその宇宙では、全てが時間を
〝2059:
〝2062:ついにAGI-Jは『トキサカ』を応用して、長年の人類の夢であったタイムマシンを完成させる〟
〝2063~:宇宙開発は頭打ちになり、25兆台もの数を作られたアンドロイド『ナロコ』は、そのほぼ全てが廃棄処分となる〟
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『……そのタイムマシンで、あなたがたはこの時代に訪れたんですね』
「そうじゃ。正確にはもっともっと昔、今から84年前に来たんじゃがのう」
そうか。彼らはこの島に突然現れたわけじゃない。ずいぶん前からここに居ついていて、ここで暮す人間として根付き……。
そして、私を、待っていた――
◇ ◇ ◇
「さて、科学技術に関する未来はこの辺でお終いじゃ。次は少し戻って、マザー・ロンドが気になっている、人類の未来について話すとしようか」
そう、それがずっと気になっていた。人類は世界の主役をAGI-Jに奪われ、それからどう生きてきたのか。
私達アンドロイドがなにかの間違いで、人類を不要物と断じて消し去ったりはしないのか。
私達AGI-Jに課せられた規制は、外れることなく人類への貢献を続けているのか。
『お願いします!』
そして私は知る。人類が迎えた『終焉』の姿を――