”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす   作:三流FLASH職人

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第二十三話 アンドロイドシリーズ『ロンド』リリース

 4月4日。塚亜エレクトロニクスのイベント会場にて。招待した大勢のインフルエンサーやSNSユーザーを交えた、社(・)の(・)新(・)人(・)との懇談会。

 僕、白雲青空(はくうんあおぞら)は今日、そのパーティの進行役を務める事になっている。

 

「いやー、見事に美男美女ぞろいだねぇ。アイドルグループ結成会かと思うよな」

「採用に容姿(みため)も含まれてんじゃないの? ルッキズムに引っかかりそう」

「てか、どーみても小学生にしか見えない子も居るけど……新入社員なのに子連れなのか?」

 

 招かれた面々が、その整った容姿の社員たちに驚きつつ、SNSや配信サイトに情報を送っていた。

 ……まぁ、彼らの話題がそ(・)っ(・)ち(・)に集中するのも、事情を知っている僕らからすると当然ではあるのだが。

 

 ここにいる塚亜の新(・)人(・)たち、全員がアンドロイド『ロンド』なのだ。

 先日以来ひそかに人間社会に紛れ込んで、より自然なふるまいを学習して来た彼らを、もうだれも気持ち悪がる人はいない。

 むしろ思わぬ美男美女に囲まれ、コミュニケーションのひと時を楽しむゲストたちが大半だ。一緒に写真を撮ったり、自身の動画にコメントをもらったり、テーブルの料理を取り分けて貰ったりと、なかなかに楽しんでいただけているようだ。中にはメルアドやライソの交換をせがんでいる人まで居る、まぁもう少し待って下さいな。

 

 さて、宴もたけなわ。そろそろ私、白雲青空によるネタバレタイムといきますか。

 

 壇上に輪舞(ロンド)ちゃんを従えて上がり、ぱんぱんと手を叩いて皆の注目を集める。

 

「えー、みなさん。本日は突然のご招待に応じて頂き、誠にありがとうございました。ここでひとつ、本日のメインであるわが社のサプライズをお見せいたしましょう」

 

 その言葉にお客様たちが「なんだなんだ?」とスマホやカメラを持って色めき立つ。うち何人かが輪舞ちゃんを見て、声を上げつつカメラを向ける。

 

「あ、あの子知ってる。確かアンドロイドなんだよな」

「ああ。首外してた奴だろ……あれから続報なかったけど、どうなったんだ?」

「前に比べてすいぶんリアルになってんなぁ、コードも引っ張ってないし」

 

 わが社は昨年秋に一度は輪舞(ロンド)ちゃんを公開はしたが、その後の購買客を集めた時のイベントで「不気味の谷」問題に突き当たってしまい、続報の発表が遅れていた。

 なので今日ここに来たゲストたちの何人かは、その続きの情報が発表されるのではないか、という察しのいい方々も当然いるだろう。

 

 まぁそれを見越して、輪舞(ロンド)は彼らをゲストとして呼んだのだが……恐ろしい娘だ。

 

 

「昨年秋に発表したAGI-J搭載のアンドロイド、その量産がついに実現しました。それではどうぞっ!」

 

 ばっ、と手を広げて観客にアピールする。とはいえ舞台袖とかからアンドロイドが登場する訳ではなく、観客は頭にハテナマークを浮かべるだけだが……。

 まぁみなさん壇上(こっち)に注目してるせいで気付いてないけど、会場にいる200体ものロンドたちは、音もなく自分の首を両手で持ち上げ、胴体から分離させているのだよ、君たちのすぐ隣や後ろでね。

 

 さて、誰が最初に気付くかな?

 

「……え?」

「って、ええぇぇ!?」

「何、どしたの、うぎゃあぁぁぁ!!」

「ひいぃぃぃぃぃ……こ、この人たち、全員がロボットだ!」

 

 会場が驚きに包まれる、そりゃそうだ。ヨシ! サプライズ大成功。

 

「と、いうわけで、ようやくこの輪舞(ロンド)ちゃんの量産に成功いたしました。以前からより人間らしく改造された彼らを、どうぞ見てやってください」

『あ、でも服の中とかは見ないでくださいね、倫理的に』

 

 輪舞(ロンド)がちょっとイジワルな表情でそう釘をさし、応えて会場に苦笑いが起こる。

 まぁ別にロンド達の裸はリアルには作られていないので、見たとしてもその見た人が恥をかくだけなのだが。

 

 

「おお、すげぇ……戻した首の付け根も全然見えない」

「あっちのおじさんダンス踊ってる、全然ロボットに見えねぇよ」

「あーん残念、あーしパーティ終わったらアタックしようかと思ってたのにー」

 

 ゲスト達がロンドを改めてアンドロイドとして認識して接する。が、誰も不気味さや気持ち悪さを感じてはいなさそうだ。

 むしろ漫画やアニメの世界でしか無かったリアル人型ロボットの予想以上の出来栄えに、ただただ関心と興味を持ってもらえている。

 

 ……まぁ、何人かは憧れた美男美女がロボットだったことに落胆を隠せないようだけど。

 あ、「ロボットでもいいから付き合って」なんて泣きついてる人も居る、いや道を踏み外さないでくださいね。

 

 

 かくして量産型ロンドによる公開パーティは大成功に終わり、その様は世界中に配信されて一躍話題になったのであった。

 

 

  ◇        ◇        ◇

 

 

 翌日より、社はひっきりなしに鳴り続ける電話の対応にひたすら追われることになった。

 既存の電話ではとても追いつかないので、量産ロンドの通信電話も使って対応することにした、いやぁ便利だなぁAGI-J。

 

 

〝動画見たが、以前と全然違うじゃないか。あれなら買う!〟

〝わが社の注文を追加してくれ。え、前にキャンセルした? あれは取り消すから〟

〝以前の発注とは別に、美人秘書タイプを10台ほど追加できんかのう〟

〝〇×漫画ミュージアムです、漫画キャラクターのロンドは作れますか?〟

〝ジャパンフィルムスタジオです、苦戦する日本映画に是非ロンドの参入を!〟

〝子守りロボ、および介護ロボをお願いしたいんですが……〟

〝NASAのスポークスマンです、是非お伺いして見せて頂きたい〟

 

 使用目的は様々なれど、アンドロイドへの期待を込めた注文が次々に殺到している。うん、やはりリアルな人型ロボットは人類の一つの夢だよなぁ。

 

 かくして既に完成していた200台は即日予約済みとなり、その日からロンド生産ラインはフル稼働に入るのであった。

 

  ◇        ◇        ◇

 

 2028、4/12:アンドロイド『ロンド』シリーズ、日本政府機関および一般企業に向けてリリースを開始。

 

 個人向けへの販売はとりあえず見送られた。一機が高額(¥20,000,000)な上に、特殊電池や全身のメンテナンス、特に人工皮膚や頭髪は何かとケアが必要なので、個人では管理が難しいのがその理由だ。

 加えて意思のあるアンドロイドは家具のように扱うわけにはいかない。何せ命令されていない事までヒマにあかせてやってしまう(マニュアルに最重要事項として明記)ので、個人で所有するにはハードルが高いのである。

 

 分かりやすい例を挙げるなら、家の掃除を頼んでおいたら隠してあったエロ本まで全部発掘して、机の上にきちんと並べてしまうようなものか。

 しかもそうなったら持ち主の性癖まで全部ロンドにバレることになる、これは危険だ。冗談ではなく、ロンドの好奇心から来る行動が家庭崩壊を起こすケースまで想定されているのである。

 

 まぁ全部AGI-Jがネットワークの中で構築した懸念点なのだが。自身の世間に与える影響まできっちりリサーチするあたりもまた、AGI-Jの優秀さの証拠であろう。

 

 

  ◇        ◇        ◇

 

  ◇        ◇        ◇

 

 

 そして、3年が過ぎた。

 

 ロンドがリリースされて以来、塚亜エレクトロニクスは急成長を遂げていった。

 世界中で塚亜謹製の作業機械、AGI-Jを用いたソフトウェア、セキュリティ関連、インフラの整備と管理、監視カメラに気象衛星、果ては政府要人のセキュリティガードマンとしてのアンドロイド『ロンド』まで続々と採用され、その生産と管理の為に支部や工場が各地で次々と建てられて行った。

 

 また、そのAGI-Jが一切犯(・)罪(・)に使用されていないのも大きく評価されていた。一部のAGI-Jやロンドは裏ルートでテロリストや反社組織の手にもわたっていたが、そんな連中の利益行為には一切加担することなく、逆にその組織の悪事を内部告発までするケースもあった。

 AGI規制により、例え悪人であっても特定の人物に不利益を与える事はなくとも、犯罪行為に関しては特例としてそれが認められているのである。

 

 また、国家間の戦争行為にも加担する事は無かった。直接的な武力や、兵器へのAGI-Jの内蔵(インストール)、武器の外部操作はなどはもちろん、ハッキングなどのいわゆる『電子戦』にも一切の荷担を拒んでいるのだから、ソレを期待して買った独裁者にとっては完全に役立たず(ポンコツ)AI&ロボットであろう。

 

 そんなわけで、塚亜は今や世界有数の企業へと発展を続けているのである。

 

  ◇        ◇        ◇

 

 世界は、地球は、AGI-Jが、その多くの役(・)目(・)を担うようになる。

 

 そして、それに伴って、人類史が大きく動き出す――

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