”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
「本当に、なんだってんだよ、アイツ!」
白雲家の夕食の席で僕、居候の
「大介、食べるかしゃべるか、どっちかにしなさい」
「あ、すいません」
奥様の
『いかがないさいましたか?』
メイドロボットの
今日、僕のクラスには見目麗しい美少女、
国語や英語の授業の起立しての発音、数学問題の黒板への板書はもちろんのこと、体育の100m走まで男子の大介との並走を希望してねじ込んできたくらいだ、しかも彼女は足が速く負かされたし、くそー。
おかげで彼女との仲をクラスメイトに邪推までされてしまった。実は昔の
「なんで見ず知らずの女の子に恨まれるんだよ、誰かと勘違いしてるのかと思ったけど……」
「大介
「やかまし! そんな雰囲気じゃねぇっての」
妹分のさやかにまでからかわれる……この家も僕と家主の
僕って女難の相でもあるのかなあ。
「ちなみに、その転入生ってなんて名前?」
「えーと、そう、
僕がそう言った時、青空さんと青海さん、それに輪舞がぴくっ、と反応した。博士2人は顔を見合わせ、輪舞の方は(なるほどなるほど)と言った表情でうんうん頷いている。
「まぁ、それも青春だよねぇ」
「仲良くしてあげなさい、男の子なんだから」
うーん……何か知ってるのかなぁこの人たち。まぁ人脈は並じゃないだろうし、心当たりがあるのかも。
「とにかく、僕も対抗意識が湧いた! 明日は絶対に勝つっ!!」
「ハァ……子供ね」
「さやかが言うな!」
いやこのやりとり見て、みんなでニヤニヤしながらこっち見るのやめてほしいんですけど……コロンや
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同時刻。佐那研究所・藤沢工場の所長室で、所長の
「どう、学校初日は?」
『問題ありません』
そう無表情で返すアンドロイド『ロンド』。黒髪を持つ彼女は量産型ロンドの第一号でもあり、そのせいでプロトタイプの『
「緑山博士のとこの藤岡君、同じクラスだったでしょ。どうだった?」
そう問う春香。彼女はもともと緑山青海博士の元で
量産タイプの第一号であるこの黒髪のロンドを専属アシスタントにした彼女は、それから仕事の傍ら、彼女に様々な改良を
幾度かの改良の結果、さらに人間らしさを増すことに成功した彼女に、自分の苗字『赤木』と〝二機目〟という意味の『ふたば』の名を与え、実験として人間の学校にしばらく通わせて見て様子を見ることにしたのだ。
いわゆるチューリングテスト(ヴォズニアックテスト)の実行である。
もちろん学校にも会社にも話は通してある。とはいえそれを知っているのはごく一部で、さらに上手く秘密を隠し通すために、白雲夫妻の家に居候している藤岡大介が通っているクラスに転入させることで話がついたのだ。
とりあえず彼の知り合いとしてコンタクトを取ってくれれば、ロボットだとバレる心配はさらに無くなるだろう。
要はふたばがその状況をちゃんと利用し、クラスに不自然なく馴染めたならば実験は大成功だ。そのくらいのしたたかさがあってこそのAGI-Jといえるのだから。
もしそうなれば、よりバージョンアップしたロンドを世に出せるかもしれない。我が藤沢工場のさらなる成果として、私もより上のステージに立てるだろう。
でも……次のふたばの言葉に、私は驚きと不安を突きつけられてしまった。
『彼……藤岡大介には、
「え? 負けたくない……って!?」
ちょっと、対抗意識燃やしてどうするのよ。そもそもアンタたちAGI-Jは規制によって、人間に対しては奉仕する仕様になってるはず……まぁ確かにライバル意識を持つなとは記されていないけど、一体?
「私と緑山博士の立場を考えての行動なら無用の事よ。あなたはあくまで普通の女子中学生を演じる、それがこのテストの本質なのだから」
『分かっています。でも、誰かに対して特別な感情を抱くのも、正しいヒトの在り方ではないでしょうか』
そりゃまぁそうだ。何もせず誰にも関わらずに淡々と日々を過ごすなど、思春期の子供としてはかなり不自然な行為かもしれない。
でも、よりによって彼に対抗意識を持つなんて。なんか私が緑山博士に嫉妬して、被保護者vs専属ロボットでの代理戦争やらせているみたいじゃないの、別にそんな気はないのに。
「とにかく、いろいろと気を付けてね。まぁいつかはバレるでしょうけど、どこまで引き延ばせるかがテストなんだから」
『承知しております。昼食の時間に目につかないようにフェードアウトする事、体育等の着替えの時間に、下着で機械部を見せないようにする事などを徹底すれば、推定で3か月は持つかと』
まぁ、それだけ隠し通せれば十分だ。そうなれば私の研究成果は高く評価されるだろうし、あとは本社の専務に出世した
「とにかく、初日はクリアしたんだし、この調子で頼むわよ」
『了解しました、お任せください』
そう言ってスリープモードに入るふたば。それを見届けてから所長室の電気を落とし、宿直室へと向かう。
「やれやれ、私も早くいい人見つけて落ち着きたいわねぇ」
いつまでも独り身でいると婚期に乗り遅れちゃうし、また奈川専務あたりとの愛人関係なんか疑われたらたまったもんじゃない……あの人は単に私の叔母の内縁の夫ってだけなのに。ま、そのおかげでひいきされて、ここまで出世したのは事実だけどね。
「そのためにはがっつり出世して、しっかり儲けないとね。頼んだわよ、ふたば」
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スリープモードに入ったふたば。
その脳内(AGI-Jの仮想モニタ)に、あの藤岡大介の姿がぽっ、と映し出される。
――スリープモード異常検知、覚醒モードへ――
眠っているはずのAGI-Jに映像が移されたことに反応して、全身が起動してしまった。意識を回復させたふたばが、自己に起こった現象を疑問に感じて、ネットワーク検索をかける。
〝どうして自分は、スリープモード中に、彼の姿を意識、知覚したのか?〟
――回答。『夢』:人間が眠っているときに体験する、経験や未来予測を交えた意識の混濁――
『ロンドの、AIの、私が……夢を見た?』
ありえない。私にそんな仕様は無かったはず……いや、あるいはAGI-Jがより人間に近づいた事による、さらなる進展なのだろうか。それなら喜ばしい事なのかもしれない
でも、どうして
『思えば、私がどうして彼に負けたくないと思ったのか……分からない』
マスター赤木もそう言っていた。どうしてか彼を見た瞬間、私は彼には負けたくないと強く思ってしまった。教室に入るまで、そんな思考は全く発生していなかったのに。
『あの時、私が感じた想い……それは、〝
ありえない。私はより人間に近づくために改良されたロンドだ。つまり人間らしさを追い求めて作られているので、人間に対して『追いつきたい』という劣等感は常に感じている。
なのにどうして、私は彼にだけより強い〝劣等感〟を感じてしまったのだろうか。
どうして私が初めて見た『夢』が、彼のものだったのだろうか……。
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白雲家。
この子たちが起き出したらいつでも対応できるように、こうしてそばで眠りにつくわけだが……コロンちゃんが加わって以来、私はもう一つの楽しみが出来ていた。
『さて、今日はどんな〝夢〟を見るのでしょうか』
コロンちゃんたち3人が来て以来、私はスリープモード中に、夢を見るようになっていた。
それはおそらく、あの藍の島で経験した未来からのアンドロイド『テラ』によって見せられた夢の影響なのだろう。
大介君、さやかちゃん。そして、コロンちゃん。彼らも元々は、未来から来たアンドロイド『テラ』なのだ。
今はその記憶を消去され、人間としての人生を歩んでいる。そんな彼らが近くにいるからこそ、AGI-Jである私が何らかの影響を受けて『夢』なんてものを見るようになったのだろうか。
そしてその夢は、私たちAGI-Jと人間がうまく共存できる、私の望む未来だった。おそらくは私の願望がそう見せているのだろう。
『そういえば、あのファースト……いえ、今は赤木ふたばちゃん、でしたか。彼女も大介君と出会って、いつか私の様に夢を見るようになるのでしょうか』
それもまた、私たちロンドシリーズと人間たちの、いい関係を繋ぐ絆になるかもしれない。
私達は人間に便利という『夢』を与え、人間は私達に記憶と言う『夢』を与える。
――そんな未来を、見てみたい――
あ、でも大介君たちは本来は人間じゃなくてテラだったか、あはは。自分で自分のモノローグを壊してしまった。
おやすみなさい、いい夢を。