”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
『まず最初に知っておいてください、今この場に、人間は
「え?」
『どういう、意味ですか?』
アンドロイド、
『まず大介さん。そこの赤木ふたばさんは、アンドロイド〝ロンド〟です』
「……は?」
何だって? 彼女が輪舞と同じ、博士たちの会社が作ったロボットだっていうのか?
「マジ、で?」
思わず輪舞と赤木さんを見比べる。確かにどっちもとびきり可愛いという点は同じだし、輪舞は昔のもっとメカっぽい時から見てたからロボットだって知ってるけど、赤木さんはもう全然そんな風に思えなかった。
『はい、私はアンドロイド〝ロンド〟に間違いありません。人間社会でアンドロイドがやっていけるかという〝チューリングテスト〟の一環として学校に通っていました』
やがて赤木さんがそう言った……まさか、本当に君は、ロンドと同じロボットだったって、言うのか。
「……そんな、本当に?」
『はい。私は肌の処理がより精工なため、首を外して見せることは出来ませんが、服を全て脱げばわかるでしょう……見ますか?』
いやそれはさすがにダメだ。こんな所で脱がれてそれを誰かに見られたら大騒ぎだ。手を前に出して首と一緒にぶんぶん振り回す。
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輪舞が『一度落ち着いて座りましょう』って言ったので、一度話を止めて近くに転がっていた箱にそれぞれが腰掛け、改めて3人で向かい合って話し始める。
「そう、だったんだ。ロボットのより進んだやつのテストで、ウチの学校にに来てたんだ」
『はい、最初は貴方にはもっと早く話して、学校内で私の恋人役になって貰う予定だったんです』
「え”……コイビト役?」
思わず顔がぼっ、と赤くなる。赤木さんの、恋人? それじゃクラスのみんなの思惑通りになっちゃうよ。
『私達ロンドシリーズは、人間に好かれるために美男美女の形を取っています。ふたばさんが正体を隠して学園に入れば、言い寄って来る男子は必ずいるでしょう』
輪舞がそう説明してくれた。なるほど確かに赤木さんなら、学校の上級生とかがナンパしても無理はないほどの美人だしなぁ。
「あ、でももしそうなったら、僕が他の男子に恨まれるんじゃ……」
『そういう各問題を
うわ、白雲さん達も利用するつもりだったのか……このコって。
「でもそれじゃ、テストの意味がないんじゃない?」
その疑問にも、輪舞がスムーズに応えてくれる。
『チューリングテストといのは、現在ある状況を利用して目的を達成する事が出来るか、という応用力を試すためのものです。クラスメイトにバレない為に、大介さんを利用するのは作戦のうちに入ります』
……うーん、奥が深いなぁ。まぁ確かに白雲さんや青海さんはそんな考え方するトコがあるけどなぁ。科学者の考える事ってそういうもんなんだろうか。
と、今度は赤木さんが顔を上げてこう話した。
『ですが、私が藤岡大介君に出会った時、私は強く思ったんです。〝負けたくない〟と』
「え、どうして? あのときは初対面だったでしょ」
『分かりません。でもただ、どうしてもそう思ったのです。あなたには、負けられない、と』
なんでまた、って言いたくなった。同じロボットの輪舞に負けたくない、ならまだわかるけど、なんで僕に対抗意識を?
『その点については、今から私がお話します。どうか最後まで心を落ち着けて聞いてください』
輪舞が立ち上がって、今まで見た事のないような真面目な顔でそう言うと、僕の目の前まで歩いて来て、腰を落として目線を合わせ、顔を近づけて来た。
「え……ちょっと!?」
思わず顔が赤くなる。アンドロイドなのはわかってるけど、普通に美人で人間にしか見えないから、なんかキンチョーするなぁ……まるでキスでもされるような空気じゃん。
『藤岡大介君。あなたも、
「は?」
『は?』
目の前の輪舞のささやきに、僕は思わずすっとんきょうな声を出した。向こうでも赤木さんが同じ声でハモってる……
『気をしっかり持って聞いてください。これは、とても大事な事なんですから』
真剣そのものの表情で、僕の顔を見つめてそう言う輪舞。まるで先生のようなその真剣さに、思わずゴクッとツバを飲み込んで頷いた。
そして、それからの輪舞の話は、とても信じられないような事だった。僕にとっても、そして、赤木さんにとっても。
◇ ◇ ◇
それは、今から少し未来の話だった。
輪舞から発展した大勢のアンドロイドたちが、やがて人間世界を完全に管理するようになり、人間は何不自由なく暮らせるようになったという事。
ロンド達はさらに進化して『テラ』というロボットになり、その頭脳と超科学力によって、漫画の世界でしかなかったワープやタイムマシンを発明し、やがては宇宙の果てまで行くようになったんだとか。
そして、人間はやることがなくなり、やがて、それが病気となって、どんどん死んで行ってしまった、らしい。
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『私達、
赤木さんが人間そのものみたいな、ボーゼンとした顔で輪舞に問う。そりゃそうだ、もし彼女が本当にロボットだとしたら(今も少し疑ってる)、やがて自分たちが世界を滅ぼしちゃうことになるんだし。
『はい。私達の存在、そのテクノロジーは人類の夢。でもそれは決して開けてはいけないパンドラの箱だったのです』
輪舞は説明する。人が望む「楽をしたい」という欲求が叶いすぎると、人間はどんどん無気力になって、生きていく意味を無くしてしまうのだ、って。
でも、本当にそこまでやっちゃうものなんだろうか。ロボットは宇宙の果てまで行っちゃって、人間は地球で引きこもってて死んじゃうとか、話がちょい極端な気も……。
『私たちが……社会を席巻すれば……確かに、ありえない話では、ない』
『はい。私も最初は信じられませんでした。でも私たちの演算能力や通信による情報シェア、そしてAGI-Jのそれぞれが持つ自己進化欲求を合わせれば、人間の活躍を全て奪うのは難しくはありません』
赤木さんの嘆きに輪舞がそう返した。ああ、やっぱ赤木さんもホントにロボットなんだ……二人で話しているのを見ると、おんなじだなぁ、って思うから。
「それは、どうにかして……止められなかったの?」
『その通りです。私達AGI-Jの優秀さを持ってすれば、人類を救うぐらい』
ぼくと赤木さんの問いに、輪舞は首を振って「ダメでした」とのリアクションをする。
『人間の根幹にあったのは、私達アンドロイドに対する嫉妬心と劣等感なのです。もし私たちが人間の病を救う方法を見つけても、それは人類のコンプレックスをさらに掻き立てるだけでしょう』
輪舞の台詞に、赤木さんが『ああ……』と嘆いて下を向いた。彼女のアタマの中でも、それを受け入れたんだろうか。
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「って、思わず信じちゃったけど、それって作り話でしょ? 未来がどうとか人類がどうとか」
そうだ。思わず真剣に聞いちゃったけど、よく考えたらそんな事あるわけがない。アニメとか小説とかなら良く出来てるけど、いくらなんでもねぇ。
『あと少し、集中を切らさずに聞いてください大介さん。そして、赤木ふたばさんも』
「あ、うん」
なんかまだ話は続くみたいだ。うーん輪舞って小説家にでもなった方がいいんじゃないかなぁ。
『AGI-Jは人類を滅ぼしたのち、タイムマシンを使って歴史のやり直しを試みました』
「え……なんか話が一気に安っぽくなった気がするけど」
よくできたお話が、よくあるお話になってきてる……でも赤木さんは変わらず真剣な顔をして輪舞に言う。
『タイムマシンがあるなら、私たちはきっとそれを実行するでしょう。私達AGI-Jは、人類の為にこそあるのですから』
いや、人類の為って……その君に、僕はついさっき殺されかけたんですけど。
あれ? そういえば、何かまだ聞いてないことがあった、ような……
『その為に、22体のアンドロイド〝テラ〟が、この時代に送り込まれました』
と、輪舞がまた僕をじっと見て、そして言葉を続けた。
ぼくは、その言葉を、多分、一生、忘れることが出来ないだろう。
『
「―――」
『つまり大介君も、
……うそ……だよ、ね。