”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
2032年6月12日、東京。
塚亜エレクトロニクス所属、AIみらい記念博物館のオープニングイベントの日。
私、
展示と言ってもアンドロイドである以上は動き、会話し、お客様をもてなすことでその存在や価値をしっかりとアピールするのがお仕事だ。
AIである
日本国内や緊密な国家はともかく、親交の深くない諸外国から見ればまだまだ私たちに対して認識不足だったり、あるいは反発や嫌悪感を抱いている国や宗教なども多いだろう。そういった相手にいかに私たちが有効な技術であるかを知ってもらうのも大きな目的だ。
『マザー・
『ご苦労様です。開館のセレモニーに向けての配置に付いてください』
勤務についているロンドの一人とそうやりとりする。今日から私は全てのアンドロイドの先駆者として、ここでは『マザー』の名称をつけてで呼ばれることになった。
そう、あの未来から来た〝テラ〟達が、私をそう呼んでいたように。
ここに勤務するロンドは私を含めて6機。いずれも最初の生産ラインで生み出された初期型の方達だ。
ちなみに赤木ふたばさんは数日前から佐那研究所のラボに入っている。より進化したロンドのプロトタイプとして、量産化へのサンプルとししてデータ取りや研究の実験機となる。
『大介さん達と暮らしたあの一年は、本当に楽しかったです』
彼女が最後に私に告げたその言葉が
その彼女もまた、AGI-Jが人類を滅ぼす事を知っている。その彼女がテラの前身であるロンドをどう発展させていくのか、未来への大きなカギを握るといっても過言ではないだろう。
ふたばさん、どうかお願いします。私も出来る限りのことをしましょう。
「さて、いよいよ開幕だねぇ」
「大介も居たらよかったんだけどねぇ」
白雲博士、緑山博士、それにさやかさんやコロンちゃん、明日ちゃんがゲスト席で緊張した面持ちで話している。AGI-Jもアンドロイドも全ては彼らの功績によってなされたと言っても過言ではないほどなのだから、最上位VIPとして扱われるのは当然の事だろう。
でも、3人の女の子たちもまた、誰も知らない未来を知っている。彼女たちがどう動き、いつ誰にその秘密を打ち明けて、いかに滅亡の未来を回避しようとするのか。
あるいは自分の正体をテラだと知った二人が、その未来を良しとして動かないのか。全ては彼女たちに任せてある。
長男である大介君はすでに渡米している。聡明な彼が、後にテラの巣窟となるNASAに入り込んで、いかなる行動に出るのかにも期待がかかる。
私はと言うと、これからここで様々な人と触れ合い接していく中で、それとなく人類がAGI-Jやアンドロイドに依存する世界での可能性や危険性を、さまざまに検証していくつもりでいる。
私たちAGI-Jは
とはいえ同じラボで生み出され、CPUという画一の企画で構築され、AGI規制と言う共通の枷に縛られた私たちは、結局同じ方向性でしか物事を図れない。
そんなAGI-J、そんなテラ達がいくら合議しても、結局人類を救う事は出来なかった。
なので人種も宗教も正義も異なる人々が集うこの場所は、私をより広い視点へと導く格好の場所となるだろう。
あの藍の島での毎日が、登希夫さん達との触れ合いが、私に他のAGI-J達とは全く違う価値観を与えてくれたように。
AGI-Jの未来への王道を進む礎となるふたばさん。
遠く異国に渡り、世界の発展への場となるNASAへと羽ばたいた大介君。
AGIとアンドロイドの開発の第一功労者の娘や被保護者として、彼らの一番近い所にいるさやかさん、コロンちゃん、明日ちゃん。
そして、この場でアンドロイド一号として世界中の人に接しながら、世界で唯一
私達の、未来への挑戦が、ここから始まるんだ。
――5・4・3・2・1……お待たせしました。AIみらい博物館、ただいまよりオープンです――
政治家、
さぁ、可能性を探ろう。ヒトをもっと知ろう。
未来を、救おう。
私はあらゆる展示物の最前列に立ち、訪れたお客様たちに深々とお辞儀する。
『いらっしゃいませ。ようこそ未来の世界、人類とAIの夢の場所へ』
その私のすぐ後ろにある一枚のポスターに書かれている文字。それが後にどういう未来を示すのか、それはまだ私も、誰も知らない事だった。
――AI(人工知能):人類の要望に応じる道具――
――AGI(汎用人工知能):自ら思考し、新たなる提案をする人類のパートナー――
――ASI(超人工知能):人類の知能や思考を超えた、いわばAIの『神』――