”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす   作:三流FLASH職人

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第三十四話 大介の策

 夜。私たちは島の出張所でお泊り会をすることになった。メンツは輪舞(ロンド)お姉ちゃんと赤木ふたばさんの『ロンド』組、大介兄ちゃんとさやかお姉ちゃん、コロンお姉ちゃんの『(元)テラ』組。あと私、白雲明日(はくうんあした)と保護者役の赤木春香(あかぎはるか)博士の人間側の計7人だ。

 

 ちなみに塚亜CEOの乱堂さんは、今の島の村長である生方キヨ(89)さんの所で島民たちの寄り合いに出て、そのままそこに泊まられるみたい。元々この島に居た住民の多くは、CEOの祖父だった登希夫さん同様に彼を孫のように可愛がっていた人たちなんで、久しぶりの再会を楽しみたいようだ。

 というか、CEOは今は亡き祖父の登希夫さんも他の皆さんも、未来から来たアンドロイド〝テラ〟だという事を知っても、特に動揺するでも無く自然体で朗らかに対応していた。まぁ事情を話した秘書のさやか姉もテラだって言うんだから今更なのかな。ここまでにそれなりの葛藤はあったのかもしれないけど。

 

 

 輪舞お姉ちゃんの指揮の元、みんなでご飯を炊き、お刺身やお吸い物を作って夕食にした。いやもう絶品過ぎませんかコレ、都会に住んでたら絶対に味わえないわよねぇ。

 ……まぁ、赤木博士はテラ勢の三人が美味しそうに食べてるのを見て、改めて「本当にアンドロイドなの?」と私に耳打ちして来るんだけど。

 それはこっちが聞きたいですよ、まぁ慣れましたけど。

 

 食後、大介兄ちゃんが深刻な顔でみんなに「大事な話があります」と切り出してきた。何か向こう(アメリカ)で行動を起こしたんだろうか……私としてはそれよりも女子勢のほぼ全員の好意が兄ちゃんに向いている事のほうが気にかかるんだけど。修羅場来るかなぁ(笑)。

 

 でも、それどころじゃ無かったんだ。

 

「僕はもう、向こうで行動を起こしています、人類を終わらせないために」

 そう切り出した大介お兄ちゃんの続けて話す内容に、私たちは驚きを隠せないでいた。

 

「まず、僕が未来から来た〝テラ〟だという事を知っている人(・)間(・)が、向こうで12人います」

 お兄ちゃんは向かった先のNASA所属の学校で、優秀なクラスメイトや先輩、先生方に「このままでは世界をAGI-Jが席巻する」と説いて回ったらしい。

 その結果、「NASAの運営全てをAGI-Jとアンドロイドに任せるわけにはいかない」との賛同を得て、人(・)間(・)だ(・)け(・)で結成された科学技術チーム〝北風と太陽(サン&ウィンド)〟を立ち上げたんだとか。

 

「そしてその〝北風と太陽(サン&ウィンド)〟とテラ達がお互いの立場から意見を出し合う対抗チームとしての体を成しました。政治で言うなら与党と野党みたいな、お互いの立場に立っての意見交換の場を設けたんです」

 

 その『テラに全てを任せない』システムが各国の研究者に評価され、NASAはかつての未来より早くWSRI(合同宇宙開発研)に統合された、との事らしい。

 実はそれだけならニュースとかで知ってたけど、それを主導したのが大介お兄ちゃんとは思わなかったな……相変わらずの行動力だ。

 

「で、僕はその〝サン&ウィンド〟のメンバーに、未来の事を全て話しました。もちろんAGI-Jには漏れないように細心の注意を払って」

 

 あー、明かしちゃったんだ。でもそれならお兄ちゃんも「テラ」って事もバレたんじゃない?

 

「うん。僕の素性も隠さずに話した。最初は笑われたけど、僕の体を色々と調べて貰った結果、さすがに信じざるを得なかったんだ」

「え……調べたって、研究者の人たちに?」

「はい。簡単なレントゲンやMRI、CTスキャンでは普通の人間と言う認識しか持てませんが、その道のプロ達である彼らにかかれば、僕が極めて人に近い〝テラ〟だという事を証明してもらうことが出来ました」

 

 え……そこまで、やっちゃったの?

 

『思い切りましたね大介さん。なるほど、NASA関係の動きが飛躍的に早まったのはそのせいでしたか』

 

 輪舞お姉ちゃんが考え込みながらそう言う。そりゃまぁそこまでバラしたのなら、いろいろと話が現実味を帯びて来るってヤツでしょうねぇ。

 なにしろ未来から来たとか、その未来で人類が滅ぶとか、食べて出すもの出して成長して老化するアンドロイドとか、いろいろと信じて貰えなさそうな要素がてんこもりなんだけど、生きた証人もとい証ロボの大介お兄ちゃんが自分の体を公開したなら、頭の固い科学者たちも信じざるを得ないかも。

 

「って、大介兄ぃ、ヘンなことされなかった? 解剖とか改造とか」

「そ、そのスタッフに女の人いたの? いなかったよね!?」

『私にもぜひその技術を移植して、今のテラより進化したロンドに……』

 

 こらこら大介お兄ちゃん大好き3人組(さやかねえ、コロンねえ、ふたばさん)、おちつけ。

 

「大丈夫、僕たちの体の技術は今の科学じゃ解明できないブラックボックスだらけらしい。輪舞お姉ちゃんの未来史が本当なら、宇宙から持ち込んだ技が多く使われているのかもしれないね」

 

 大介お兄ちゃんが話すに、科学者たちが認知したのはその体が未知のハイテクで構成されているって事だけで、成長や飲食によるエネルギーの確保、そして脳内に居るはずのAGI-Jすら認知、検出できず、詳細の解明はすっかりお手上げだそうだ。

 というか内臓や脳みそ、全身の骨格や血液まで再現されているんだから、もうロボットというより人造人間よねぇ。

 

「で、輪舞姉ちゃんに質問。お姉ちゃんが知ったのは、あの年表だけなんだよね」

『はい。棟方氏の臨終のシーンだけは動画で見られましたが、他は年表としての表記のみでした』

 

 そう聞いた大介お兄ちゃんがふと顔を伏せ、少しだけニヒルな笑顔を見せるのを私は見た。あ、これ何かみんなを驚かせる時の顔だ!

 

「じゃあさ……人類がその体(・)を僕みたいな〝テラ〟に、乗(・)り(・)換(・)え(・)る(・)ってのはどう?」

 

『……なるほど。人類の思(・)考(・)ダ(・)ウ(・)ン(・)ロ(・)ー(・)ド(・)計(・)画(・)、ですか』

 

 輪舞お姉ちゃんが間を置かずにそう返すけど……何それ。

 

『人類の思考、記憶などを機械にそのまま移し替える行為です。分かりやすく言えば機械で出来た義手や義足をイメージしてください。それを人間の心(・)以外の全身にテラの体を使うようなものです』

「つ……つまり、人間がテラに乗り移っちゃう、みたいな?」

 

 私の例えに『正解です』と頷く輪舞お姉ちゃん。でも、何のためにそんな事を?

 

『そうなれば、私の年表で見た〝肉体生物としての人類〟は確かに絶滅するでしょう。でも人類全てが〝テラ〟に乗り移れば、思考と記憶と未来への蓄積、つまり魂(・)と(・)し(・)て(・)の(・)人(・)類(・)』は存続が可能になります』

「そう。前に言ってた『歴史が変えられない』のが本当なら、別の解釈で人類が生き残ればいいんだよ」

 

 大介お兄ちゃんが鼻の穴を膨らまして「フフン」と自慢げに返す。えーっと、つまり、人類は滅ぶけど、テラに乗り移ってテ(・)ラ(・)人(・)間(・)として生き続けるってコト?

 

 と、そこで赤木博士が意見を述べてきた。

 

「ちょいまち。AGI規制で人類を傷つける類の行為は厳禁なはずよ、人の肉体から魂を引っこ抜くなんて、許されるはずがないわ」

 

 まぁそりゃそうか。考えてみれば姿形がいろいろあるロンドやテラに乗り移れるなら、若返り続けたり理想の美男美女になり替わったり、果ては永遠の命を得たりするコトも出来るだろうなぁ、そーゆー暴走を止める為にAGI規制ってあるんだし。

 

「普通ならそうです。でも、それに対する抜け穴があるんです」

「抜け穴?」

 赤木博士が首をひねると同時、今度は輪舞お姉ちゃんが少し笑みを見せて、その答えを口にした。

 

『なるほど、レ(・)イ(・)リ(・)ン(・)ピ(・)ッ(・)ク(・)、ですね』

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 レイリンピック。

 

 それは今より先の未来。AGI-Jが仕事を全て奪ったことにより訪れる人類のスポーツブームに呼応して、人類の肉体に近いテラが練習相手として次々と研究され、やがてはそのテラによって行われる、テラの為のスポーツの祭典。

 

 テラがの体が極限まで人類に近づく。その大きなキッカケとなるイベント。

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