”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
「レイリンピックって……確か輪舞お姉ちゃんの年表にあった、テラのオリンピックだったよね。それがどう関係するの?」
私、白雲明日は頭にハテナマークを浮かび上がらせてそう問いを投げてみた。さっきの大介お兄ちゃんの〝人類がテラに乗り移る計画〟と、それにどういう関係が?
『テラが劇的に進化するキッカケだからです。〝人間に極めて近くなる〟事においての』
輪舞お姉ちゃんが、その言葉に続いて解説を入れてくれる。レイリンピックはもともと人間のスポーツブームを促進するために改造されたアンドロイド〝テラ〟が、その性能をいかんなく発揮したいという『欲求』から開催されたイベントらしい。
「ただ、単に性能比べだと確実に超人オリンピックになっちゃうからね。だから人間の能力を上限としての開発になっちゃったんじゃないかな、スポーツテラは」
大介お兄ちゃんがそう続く。まぁ確かにアンドロイドの高性能化競争になっちゃったら、鉄腕100万馬力やキーン地球割りなロボットの競技に……いやそこまでにはならないか。でも確かに制限を設けないとトンデモ大会にはなるだろうなぁ。
『人類のパートナーとして、そしてより人類の
ふたばさんも会話に入って来る。大会でテラが出す記録が人間のそれを大きく上回っちゃったら、まぁ確かにあんま面白くないだろう。特に実際にオリンピックとかに出る選手なら尚更ね。見た目が人間に似てるのが余計に嫉妬とか招いちゃうかも。
『でもそれが最後には〝毒〟となります。かの〝自滅病〟を招いたのは、ヒトに限りなく近いテラが、ギリギリで人間の能力を上回ってしまったが故なのですから』
「まぁ、人間は自分の能力を30%程度しか使えないって言うからね。いくら限界値が人間と同じでも、それを十全に使われたら人類に勝ち目は無いわねぇ」
輪舞お姉ちゃんの話に赤木博士が続く。うんうん分かる分かる、大介お兄ちゃんやさやか&コロンお姉ちゃんズの勤勉さのおかげで、妹分の私がどんだけしんどい思いをしてきたやら。
『そう、それです
「って、心読まないでよ輪舞お姉ちゃん!?」
たまーにこういう察しのいいことを言うんだよなぁ。まぁ長年の付き合いだから無理もないかも知れないけど。
「で……どゆこと?」
首を傾げる私に、大介お兄ちゃんが応えてくれた。
「人類と同性能のテラに勝てないコンプレックス、それを『テラに乗り移る』という方法で解決できるとしたら……あくまで遊具や乗り物、
「……あ、だったら、AGI規制に引っかからなくなる、のかな?」
首を傾げる私に、その場の全員がこくり、と頷く。うわぁ、AGI規制っていくつもの条件が複雑に絡み合ってるハズなのに、全員にノータイムで頷かれてしまった。
これだから人間がAGI-Jやテラに嫉妬するんだけどなぁ、たぶん。
『人類はAGI-Jとテラに〝
あー、なんとなくだけど分かった。全部をテラに任せっきりにするんじゃ無くて、テラを操って、というよりテラへと
思えばお兄ちゃんやお姉ちゃんズがご飯を食べてトイレに行って、勉強して出世して成長していくようになるのも、この「レイリンピック」がキッカケらしいんだよなぁ。
その流れを利用して、人間のボディをテラにそっくり入れ代わらせてしまおうって言うのか。確かにそこまで人間に似ていれば、人体改造的なタブーには引っかかりにくいだろう。
「でもさぁ、例えば私がコロン姉の体に入るとして、意識は私とコロン姉の二つが同居するの? あと私の本体は意識のないがらんどうになっちゃうわけ? 植物人間みたいに」
話がSFっぽくなって来たので、SF漫画やアニメでよく見るケースを聞いてみる。
『その辺りの問題は、これから計画が具体的になってから煮詰めるべきでしょう。さて……そろそろ明日ちゃんはお休みの時間ですよ』
「えー、ここで私がハブられちゃうわけ?」
『より専門的な、かつAGI規制を考慮した複雑な問題のお話になりますので、退屈するかと思われます。明日には島を出ますので、今日はもう睡眠をとった方が良いかと』
あー、確かに私にわかるように話しているのが会話のブレーキになっちゃってるかなぁ。仕方ない、確かにそろそろ眠いしね。
「分かった。じゃあ、おやすみー」
仕方ないので腰を上げ、隣の部屋へと向かう。フスマを空けて寝室にあてがわれている部屋に入り、そそくさとパジャマに着替えて布団に潜り込む。
まどろんでいく意識の中、私は近い将来、誰かの〝テラ〟の中に入っていく自分をイメージしてみる――
(面白い、かも、しれない)
もしこの計画が決まったら、まず私が誰かの体に入ることになるのかな。いちおー関係者だし。
それって結構、楽しみかも。
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『さて、明日さんもお休みになった所で、大介さんの案の最重要事項を検証したいと思います』
かしこまってそう言う輪舞。大介たちテラ勢は「え?」と頭をひねるが、赤木博士は察したようで、ふふと表情を緩める。
『ヒトがテラに乗り移り未来へと生きる以上、生殖、繁殖能力をどう取り扱うかは外せない議題です』
輪舞がそう言った途端、テラ勢の3人の表情がぼふっ! と赤くなった。
「え、そういう問題だから、明日を先に寝かせたんスか?」
「私と、大介兄の子供……」
「ちょっとコロン、先走らないの!」
『その機能、テラではなくロンドにも移植可能ですか?』
色めき立つAGI-Jたちを見て、赤木博士は改めて(ホント、可愛いAIたちよねぇ)と心で呟くのであった。