”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
西暦2043年、5月。東京、国立競技場。
――さぁいよいよ始まりました。アンドロイド〝テラ〟によるスポーツの祭典、第一回世界レイリンピックの最終競技である『シノビ』――
――果たして栄光の金メダルを勝ち取るのは、どの国のテラとなるのか――
スタートのホイッスルと同時、世界各国で開発された全スポーツ競技対応型テラ達、合計127体が競技場外周から一斉に駆け出し、最初の障害であるフロート式平均台に飛び乗っていく。
バランスを取りながら平均台を渡り、斜めに設置された壁を左右にステップジャンプしてクリアし、
――第一障害制限50名クリア、パージされます――
アナウンスと共に最初の障害物の数々がまるで積み木のようにバラバラと崩れ落ちていき、その50名に残れなかったテラ達が一緒に下のプールまで落下していく。
――○○国テラ、第二障害で
先頭集団に居た一体のテラのゼッケン国旗がパッパッと赤く点滅し、そのテラがルートから降りて、がっかりした表情で敗者席へと向かう。その国のゲストや応援団たちがそれを見て残念がり、開発者たちが責任のなすりつけ合いを始めている。
第二、第三障害を先頭集団が次々とクリアしていき、その度に人数が絞られ後続が次々と脱落していく。その様に観客(人間)たちは歓声を上げ、ボルテージを高めていく。
そしてついに、最終競技である塔登りへと到着した二選手が、その登りロープに手をかける。
日本代表テラの『ヨガミキ』と、アメリカのテラ『スターライト』の二体による、最後の一騎打ちが、会場の興奮を最大限にまで引き上げていた――
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世界人類に〝テラ〟というパートナーが付き、人々を労働から解放するようになってほどなく、スポーツブームが世界中で爆発的に広まっていった。
そう、人間はやる事が無いと「何かをしよう」という意識が芽生えるものだ。労働をせずに済むようになった、言い方を変えれば労働を
そして、その練習相手として、また同等のデータ取りのサンプルとして、アンドロイド〝テラ〟も競技に応じた様々なバージョンが開発されることになる。
が、その頭脳は自我を持つAI〝
そんなテラ達の欲求を満たすべく、また人類からテラへのご褒美の意味も含めて、アンドロイドのスポーツの祭典『レイリンピック』が、ついに開催されるに至ったのである。
とはいえそれは人類用のオリンピックとはかなり毛色の違ったものとなっていた。まず、テラの運動神経や発生させる
つまり出場するテラはロボットでありながら、人間に極めて近しい動きや能力に制限されている、というわけだ。
出場選手にはそのスペックを調べるセンサーがいくつか取り付けられており、明らかに人類の限界を超える力やスタミナが検出された場合は即、失格となるのである。
また、競技自体も独特なものが多い。なにせAGIを頭脳に持つテラに頭脳がメインのスポーツ、つまりeスポーツや囲碁やチェス等はやらせてもシラけるだけだし、体操やフィギュアスケート等の美しさを競そう種目も、同じパターンをこなす事を得意とするテラなら、ミスなく見事にこなすだろう。
なのでこのレイリンピックには、世界中からテラ向きのスポーツとして様々なアイデアを持ち寄って種目が組められていた。例えば
そして現在のこの『シノビ』という競技、元々は日本のTVバラエティ番組で楽しまれていたもので、様々な障害物や肉体運動を経てゴールを目指すというものをテラ用に作り直されていた。
単に競技としての難しさのみならず、人間と同等のスタミナや膂力の限界を設定されているテラにとっても、決して楽な競技ではない。
そしてそれだけに、見るものを楽しませ熱狂させる魅力と、選手であるテラ達へのやり甲斐を掻き立てるものとなっていた。
そして今、その競技『シノビ』の、初代レイリンピック金メダリストが決まる。
――到達ーっ! アメリカ代表スターライト、見事ヨガミキを振り切って中央塔の頂点に今、立ちましたーっ!――
最初のロープワークではリードしていたヨガミキ。だがペース配分を上手く調整したスターライトは次の逆エスカレーター駆け上がりで見事逆転し、続くポルダリングでもリードを保ったまま最終の縄ハシゴに到着。追い上げるミキガヨを見事振り切って、ついに初代王者へと輝いた。
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そして世界を揺るがすその事件は、表彰式の後のインタビューで起こった。
「I am able to eat, drink, and use the toilet.(私は飲食やトイレが可能になっています)」
優勝したテラ『スターライト』のその言葉に、最初は誰もが単なるジョークだと思って笑っていた。人間も、そして多くのテラ達も。
「では、証拠をお見せしましょう」
そう言って現れたのはスターライトの支援スタッフの一人であるダイスケ・フジオカだ。彼は手にしたハンバーガーの包みを開けて手渡すと、なんとスターライトがそれをもぐもぐ咀嚼してごっくんと飲み込んで見せたのだ。
「え、えええええーっ!?」
「OH! クレイジー!」
「あ、あとでメンテ大変じゃない?」
大騒ぎする周囲をよそに、その後にスシやケバブまで手渡すスタッフと、それを美味しそうに平らげるスターライトを見て、観客たちもテラ達も、日本代表のヨガミキも驚きを隠せなかった。
そして、彼らがその直後に明かした新テラ、スターライトの秘密が、より世界を変えていくことになる。
◇ ◇ ◇
神奈川県、塚亜エレクトロニクス佐那研究所。その研究室で中継を見ていた赤木春香博士と、専属実験ロンドである赤木ふたばが思わず言葉を発する。
「ふぅん、あれが未来エネルギー〝ココ〟の実力ねぇ」
『さすがです大介さん、もうそこまで到達しましたか』
テラは、そしてAGI-Jは、いよいよ次のステージへ――