”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす   作:三流FLASH職人

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第四話 藍の島

 翌朝。

 横浜を発った私、緑山青海《みどりやまあなみ》と白雲青空《はくうんあおぞら》は、なかば観光気分で四国へと渡り、目的地でもある徳島県南部の島、藍の島への渡船の船着き場までやって来た。

 

「いやー、やっぱ南国の空気は美味いねぇ」

「美少女アンドロイド連れて無きゃ、さわやかなセリフなんだけどねぇ」

 

 今朝までこの世の終わりみたいな顔をしていた白雲も、なんとか機嫌がよくなったみたいで、南の島への船出を待っている。

 ちょうどそれに合わせて私たちの郵送した荷物が到着したので、やって来た船に積み込んでから、私たちも客室に乗り込む。

 

 ちなみに船はちょっとした高級クルーザーみたいにお洒落な客船だ。藍の島への他に別の島への便もあり、そっちのほうが人口も交流も多いのでこっちは一日一便しか回して貰えないんだとか。どうりで僻地《へきち》への渡航なわりにに立派な船だと思った。

 

 で、30分ほど船に揺られて島の船着き場に到着……うっわ、マジでなーんもない島だここ。

 

 一応、船着き場にはバラック的な建物とコンクリ舗装された道路に堤防があるけど、他は自然の山と海の所々に古い民家がある程度だ。堤防に係留されている漁船もかなり古く、もう使っていないんじゃないかとすら思う。

 

「いやぁ、いいねぇここ。島の地下に秘密の基地とかありそうで」

「あるかいンなもん!」

 

 うーんこの男は……子供かい全く。まぁアンドロイド作ろうなんて言う発想があるんだから心は子供なんだろうけどねぇ。

 

 船員さんに手伝ってもらって荷物を下ろしてると、島の奥から軽トラックがやってきて荷物に横付けしてきた。

 中からひょいと顔を出したのは日によく焼けた小柄なお爺ちゃんだ。シワの多い顔をにこりと歪めて、私たちに声をかける。

 

「えーと、塚亜《つかあ》の会社から来たお方じゃねぇ、案内するけん荷物のっけない(なさい)」

「あ、はい。お世話になります」

 

 二人して頭を下げてから荷物を荷台に乗せていく。ちゃんと研究所から連絡が言っていたのか、手間をかけずに移動搬入が出来るのは有難いわねぇ。

 とりあえず荷物を全部乗せ、白雲には荷台に乗って貰って私が助手席に座ると、そのお爺ちゃんの運転で島の奥へと入っていく。

 ちなみにアスファルトは船着き場周辺だけにしかないので、未舗装の林道をガタゴトと登り進む事になる、こりゃ振動がキッツイわ。

 

「えっと、お爺さんが塚亜の乱堂CEOのお身内の方、なんでしょうか?」

「ほうじゃよー。ワシの孫がお世話になっとるねぇ」

 え、お孫、さん? CEOってもう50半ばのはずだし、このお爺さん何歳なのかな……。

 

 そうこうしている内に支部に到着した。船着き場の逆側、島の南に面した斜面にある鉄筋コンクリートの建物がそれだそうだ。

 

「「いらっしゃーいませー」」

 

 降りるや否や、玄関にいる大勢の人たちがそう声を合わせてくれた。見た目おじいちゃんやおばあちゃんが多いけど、中には5~60代に見える方もいるし、小さな子供もふたりいる。

 まぁ歓迎してくれるのは嬉しいけど、彼らの後ろに〝歓迎!白雲・緑山博(・)士(・)〟なんて横断幕を張ってるのはちょい恥ずかしいわね。私たちその科学者をクビになっちゃったんで、今は博士でも何でもないんですけど。

 

 愛想よく彼らと握手をして支部へと入る。外装は鉄筋コンクリートなのに中はフスマに畳の日本家屋様式だ。しかもだだっ広い宴会場みたいな部屋がほとんどを占めていて、部屋の隅っこにトイレと風呂へと続くドアがあるだけ……こりゃ本格的に左遷された感が強いなぁ。

 

「うわぁ、あ、あの、これって……」

 白雲が目をキラキラさせながら中央のテーブルに目を向ける。そこには大皿に盛られた色とりどりの刺身やコンロに置かれた土鍋。周囲にはジュースにビ-ルに日本酒の瓶がいくつも並べられていた。

 

「ほらもちろん、お二人の歓迎会じゃけん。今夜はいっぱい食べて飲んで、明日からたのむけんなぁ」

 私達をここまで送ってくれた、CEOの祖父である乱堂登紀夫《らんどうときお》さんがにこやかな笑顔でそう返してくれた。

 ううん、左遷って言うから最果ての刑務所か、掟に縛られた閉鎖的な村なんかを覚悟してたんだけど、すいぶん待遇のいい流刑地じゃないの。ま、毎日がこんななわけはないだろうけどね。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 結局その夜は島民全員を招いての宴会となった。住民は全員で22名、ほとんどが70歳超えのお爺さんお婆さんで、辛うじて60台の漁師さんが4人、5歳以下のお子さんが3人らしい。

 会食しながらここでの仕事を説明して貰った。まぁ案の定というか力仕事がメインで、草刈りや掃除、ゴミ集め&焼却(許可済みらしい)、車や自転車や漁船のちょっとした修理、週一ペースでの物資の買い出し、あとたまに訪れる釣り人の案内なんかがメインらしい。他にも子供たちの世話や各家庭での困りごとも引き受けて欲しいとの事。

 つまりまぁ完全に島民の為のボランティアが毎日のお仕事ってわけだ。

 

 まぁ期限までは給料も出るんだからやるしかない。一カ月の勤務を経て、それからどうするかはまたそん時に考えるとしましょうか。

 少なくともここじゃAIの研究なんかにはまず無縁でしょうしね。

 

 結局しこまた呑んじゃった私はそのままダウンして、布団を敷いてもらって寝かされたまでは記憶があった――

 

  ◇        ◇        ◇

 

 解散となった支部の玄関前。白雲青空はほてった顔を夜風で冷やしながら、ふぅと息を吐いて、深刻な表情で呟いた。

 

「この島……何か、何かお(・)か(・)し(・)い(・)」

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