”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
「どうか、どうか過去の事は水に流して、研究所に復帰してはいただけませんでしょうかッ!!!」
副所長……いやぁまさか、開幕から土下座で来るとは思ってなかったなぁ(苦笑)。
その後CEOは祖父である
あとアンドロイドのロンドちゃんは隠して……というか隠れて貰っている。ちょっとまだ会社に知られたくない事情もあって、島のみんなにはCEOや所長にも秘密にするようお願いしておいたのだ。
で、残った二人。副所長の
「あのAIを制御してわが社を世界のトップに立てられるのは君しかおらんのだ、どうか。どうか伏してお願いするッ!」
いやまぁAGI-Jが画期的なものなのは理解してるし、それを社の利益につなげるのに私の力と言うか、AGIにかけられた制限を外せるのは確かに私だけなのも分かる。
でも私はなんか役立たずみたいに左遷された身の上なんで、彼らが来たら少し嫌味でも言ってゴネてやろうと思ってたけど、こりゃ完全に機先を制されたなぁ。
「まぁ、大方の事情は理解していますし、そこまで頼まれたら無下にも出来ませんよ」
やれやれと息を吐いてそう返す。まぁ私としてはまたAGIの開発に関われるのは嬉しいし、今やAGI-Jが大成功を収めるのは確実なんだから、断る理由はどこにもない。
「あはは、やっぱそうなった。さっすがー」
と、副所長の横で腰掛けている赤木さんがころころ笑い出した。別に彼女に敵意は無いけど、上司が土下座している横で平気な顔で笑うのはどうかと思うんですけど。
「実はこの土下座、本社の
「え……どゆこと?」
「緑山先輩にどーやったら快く復帰して貰えるかを、AGI-Jサマにいろいろご指導いただきましてねぇ。CEOや所長の誘導の仕方も提示してくれたんです。まさにドンピシャでしたねぇ」
……つまりアレだ。副所長は私に快く復帰を認めて貰って、なおかつ自分の威厳が欠如しないように3人だけになる方法まで、全部AGI-Jに教えてもらったってコトか。
制作者である私の心理まで全部読まれてるってワケね、我ながらとんでもないモノ作っちゃったなぁ。
――――――――――――――――――――――――――――――
で、CEOと所長が来る頃には副所長はエラそうな態度を復活させて「いやぁ私が一言いえば一発ですわ、これでAGI〝みらい〟がわが社に莫大な利益をもたらすのは確実です、わはははは」とか言って私の肩を組んで笑ってるんですけど……この変わり身の早さよ。
まぁ妻子持ちらしいし、中間管理職としては今の状況は大出世と閑職転落のはざまに立たされているんだからしょうがないかな、これは。
「では、また研究所に復帰してくれるんですね」
「それは良かった。わが社としてもこの〝みらい〟は必ずやビッグプロジェクトとなる。支援は惜しまないよ」
所長とCEOも快く私の復帰を受け入れてくれるみたい。ただ
さて、問題はここからだ。
「で、
そう言って白雲の方をくいっ、と指差す。
「あんな役立たずに用は無い、引き続きこの島で引きこもって貰おう!」
うん、まぁ副所長ならそう言うよねぇ。つかこっちに左遷させる時「新婚旅行のつもりで行ってきたまえ」つってたのをもう忘れてるのか。
「残れと言われれば残りますよ、こちらの生活もなかなかに楽しいですから」
白雲も好都合とばかりに了承する。ある意味このイヤミな副所長に付き合わなくていいのはちょっと羨ましいかも。
でも、本当は最初から白雲にはここに残って貰うつもりだった。
なにせ塚亜エレクトロニクスは今でもすでに大企業で、AGI-Jの開発成功が成れば世界有数の企業として急成長する事は疑いないだろう。
そういうビッグな相手に対して、私のような個人が何の警戒も無くだた従っていれば、いつかまた用無し扱いされたり手柄を横取りされたり、最悪AGI-Jが問題を起こしたりしたらスケープゴートにされる可能性もあるのだ。
なのでイザという時に切れるカードをこっちも持っておいて、ここぞの時に有効に使いたい。
彼が作り上げたアンドロイド〝
最悪、私が塚亜に切り捨てられたら、このロンドちゃんの技術を他会社に売り込みに行けば、一気に状況をひっくり返せるんだから。
で、このロンドちゃんを教育、そしてメンテするのに白雲の手腕は絶対に必用だ。なので彼には島に残って貰って、思う存分アンドロイドの研究を進めてもらいたい。
どうやら思惑通りにコトが運びそうだ、と思ったその時。
「あれ、でも緑山さんと白雲さん、付き合ってるんでしたよね?」
赤木さんの一言に、乱堂CEOが「そうなのか?」と目を丸くする。副所長は青い顔をして指を立てて「シーッ」のポーズとってるけど、完全に手遅れじゃない?
「なら君も研究所に戻り給え。何か適当なポストを用意するよ、緑山博士の力になってくれたまえよ」
あっちゃー、ここに来て予定外の展開が来ちゃったか。さて、どうするかな。
「戻して頂けるなら有難く。私のロボット部はもう閉鎖されてしまっているので、給料ドロボウになるかもですがね」
「ふむ……ロボット部というなら機械工学には覚えがあるのだろう。どうかね、AI〝みらい〟の企画アイデアを出す部署をやってみないかね」
まぁむげに断っても怪しまれるので、この白雲の対応は正解だろう。どうやら彼と一緒に復帰することになりそうだ。
そうなると……ロンドちゃんをどうするか、なんだけどなぁ。
◇ ◇ ◇
CEOご一行が帰った後、私と白雲、それに島のみんなで今後の事を話し合った。
「ロンドはしばらくこの島に預けておくことになるかな」
「おお、まかせとき。このお嬢ちゃんもよく働くけんなぁ」
「メンテとか故障修理とかはどうするの?」
「アンタらが帰るまでに、ワシらに教えてくれたらワシらでなんとかすらぁよ」
『よろしく、お願いします』
ロンドが島のみんなに頭を下げる、ちなみに手には1歳の赤ちゃんを抱いていて、両脇には二人の子供がくっついて懐いている。もしロンドを持ち帰るなんて言ったらギャン泣きされるだろうなぁ。
「じゃあ半月後の復帰までに、彼女がやって行けるようにいろいろ計画を立てようか」
「うん賛成。僕達の立場が良くなったら来てもらうから、それまでいい子にしてて」
『ハイ、白雲マスター』
まぁそんなわけで、私達二人の研究所への復帰が決まった。
「短かったけど、色んな事があったこの藍の島とも、またしばらくお別れね」
「あ、そう……だね」
私の言葉に白雲が無いか歯切れの悪そうな返事を返す。まぁ自信作であるロンドを置いて行くのは不安もあるだろうけど、島のみんなも協力してくれるって言ってるんだし、いいんじゃないかな。
でも、私は白雲の本当の所を、その時は知る由も無かった。
――やはり、何か。何かが、おかしい――