参ったなぁ・・・
何度目だろう?パートナーの口から発するこの言葉を聞くのは。
まるで、ゲームを遊びつくして、飽きている子供のようだ。
昔なら、自分でも相手が出来た。
しかし、年齢を重ね、体力が落ちたこともあるが、基礎体力が別次元のこの人の相手は、無理である。
夫は甘いと言われるほど、他人に優しい、特に自分の身は案じてくれている。
昔も、どこの誰だか分からないが、父と襲われていた時も、この人は、空から降ってきて助けてくれた。
子供を連れ去られ、自分が襲われた時も、真剣に怒ってくれた。
そんな夫だから、私に合わせてくれるだろうが、それでは夫は満足しない。
そんな夫に聞いてみた。
「参ったって、何が参っただ?」
「いや、強くなったのはいいし、この前も、上には上がいるって事が分かった。だから参ったんだ」
・・・夫は、恐ろしく、説明が苦手である。
しかし、一緒にいる年月は少ないにせよ、この人の言いたいことが分かった気がする。
気がするだけかもしれないけれど。
自分の限界なんて考えていない、どこまでも、だれよりも強くありたい。それだけなのだ。
今までは。
「誰よりも強くなって、それを超えたら自分よりも強くなるのなら、おめえは、昔からやってるだ。純粋に強くなりたい、楽しみたいだけなんだ」。
「ああ、まあそうなんだけどよ・・・もちろん、今も強くなりてえ。でも、超えられない奴ってのはいるもんだと思ってよ。」
驚いた。夫の口から弱音を吐くなんて、数回しかなかったからだ。
「おめえにそこまで言わせる強い人がいるの?凄い人だな。だったら、たっぷり修行してコテンパンにしてやるだよ!おめえは、おらの自慢の旦那様だ!」
「そうなんだけどよ・・・死んでんだ、そいつ」
「へ?」・・・多分、その時の私の顔は、これ以上ないくらい、きょとんとしていたに違いない。
おらの夫、孫悟空は、捨て子である。後に、戦闘民族サイヤ人が地球人を絶滅するために送り込んだ宇宙人と分かるが、そういえば、木の股から生まれたわけじゃないし、両親がいるはずだ。悟空は、肉親のことを特に気にすることなかったが、どうやら、ベジータさんに「貴様も、貴様の親父も無茶ばかりしやがる」と言われことがあるそうだ。急に父に興味を持った悟空は、界王さまや、界王神さまに詳しい話を聞いたそうだ。
それによると、悟空の父はバーダッグと言い、サイヤ人の中でも、強かったそうだ。
しかし、サイヤ人をよく思わないフリーザが、星ごと滅ぼそうとしていることを知って、単身、フリーザに挑み、善戦するも、あっさりと散っていったらしい。
「でもよ、フリーザだったら、あの金髪の不良になれば簡単に倒せるんだべ?だったら、その、バーダックって人より、おめえが強いに決まってる」
「ああ、単に強いってなら、オラが勝つさ。でもな、この前のビルス様との戦いで思ったんだ。みんなの力を借りて、一人じゃ到達できない次元の強さを味わえた。あの時の状態は、正しい心を持つって、心の強さが問題だったんだ。でも、あんなに強い力になった。だから、もし、オラの父ちゃんが何を思ってフリーザに一人で立ち向かったか分かれば、オラ、更に強くなれると思ってよ。オラも父親になって、悟飯がオラを超えた時は嬉しかったからな。多分、父ちゃんも、嬉しがると思ってよ。」
ああ・・・悟空さ・・・一見やさしいが、おめえはやっぱり、強い奴と片っ端から喧嘩して、単に強くなりたいだけじゃないのか・・・。強くなることしか考えてねえだな。
まったく・・・悟空さはこの調子。悟天は遊びばっかり覚える。悟飯も普段はいい子だが酒を飲むとだらしない。
おれがもっと、しっかりせねばならないだな!
「悟空さ!そんな死んじまったやつのこと考えても仕方ねえべ!そんな暇があるなら、一銭でも金を稼いでくるだ。わかったな!」
あまりの剣幕に、悟空は「はい・・・」としか言えないのだった。
まったく・・・でっかい子供が、3人いるようだよ・・・
ドラゴンボールを題材にしますが、これから先、どうなっていくかは分かりません。後味悪くなるかもしれないし、幸せになるかもしれません。
ビルス様との喧嘩から数か月後という設定になります。