オルステッド視点───
パウロに頼み、俺はルーデウスと2人きりで部屋にいる。やはり積み重ねと信頼というのは大切だ、最初に話した時はエリス・グレイラットが勝手に着いてきていたからな…。
こうしてルーデウスと対面しているが、少しわかったことがある。ルーデウスは『記憶』がある。前の世界ではなく、前回の記憶…つまりこの世界での記憶を持ち越しているということだ。
俺への目線もそうだが、ルーデウス自身の身体に宿る魔力量が前回の大人だったルーデウスと変わりがない。このまま成長すればラプラスを越え、使い方次第では1人で神級魔術も使えてしまうかもしれない。
そしてもうひとつ、きっと今いるルーデウスは俺と共に戦ったルーデウスでは無いのだろう…それは俺に対して疑うような視線を向けていることから明らかだ。赤竜山脈で出会い、殺した後で一度も出会っていないと考えるとこうなるのも不思議では無い。
とはいえ、ルーデウスはヒトガミにとって最大の障壁であり、ヒトガミを倒すのに最も重要な仲間でもある。前回のループで奴の首に届いたのだ…今回こそ殺し切ってみせる。
その為にも、ルーデウスに信用されなければな…。その為にも聞くべきことを聞かなくては。
「ルーデウス、ヒトガミという名前に覚えはあるな?」
「…はい」
「やはりそうか…ならば、ヒトガミに恨みはあるか?」
「…はい」
ヒトガミに対して恨みがある。つまりは前にヒトガミによって家族を害されたことに間違いはないだろう。これならば…。
「次に質問だ、お前は過去に転移し、自分自身に警告をしたな?」
ルーデウスが目を見開く、驚きと戸惑いか…だがこれでわかった、このルーデウスは過去に転移した───
「いや、僕は…俺は過去転移なんかしていない」
「…何?」
「俺はきっと、あなたの知るルーデウス・グレイラットじゃない…教えてくれませんか?あなたの、オルステッドの知るルーデウス・グレイラットを」
ルーデウス視点───
オルステッドから、別の俺の事を聞いた。
赤竜山脈での戦い。ヒトガミの助言に騙されかけ、未来の俺に救われたということ。ヒトガミによって害される家族を守るためにオルステッドと命を賭けて戦ったこと。和解し、オルステッドと共に各地で工作をしていたこと。地竜の谷で七大列強と大立ち回りをして、勝利を収めたこと…。そして表舞台からあまり出なくなり、オルステッドの手伝いに尽力していたこと。そして俺の死後、オルステッドがヒトガミの封印に成功したこと。その関係者が俺の子孫であるということ。
途中までは俺と同じ道だったが、ある時を境に俺とは全く異なる道を歩んでいたことに驚きを隠せなかった。まさか俺の子孫がヒトガミを倒すなんて…クソッ、それなら俺ももっと…いや、過去のことを悔やんでも仕方ない。少なくともこの事を話して貰えたということは、オルステッドは『ルーデウス・グレイラット』に絶大な信頼を寄せている。
俺としては勝ち目のないオルステッドを相手に信頼を損ねるようなことはしたくないし、むしろ味方になってくれるなら好都合だ。聞かれたことは正直に答えよう…だが、前の俺の事は伏せていた方が良さそうだ。何がオルステッドにとって地雷になるか分からないしな…。それに俺個人としてはオルステッドにそこまで信頼を置けていない。殺されてから一度も会ってないのだから。
「…ひとつお願いしたいことがあります」
「なんだ?」
「俺は、オルステッドさんに殺されて以来会っていないんです。正直に言って、今全幅の信頼を置ける訳ではありません」
「…ああ」
「俺の事も…今すぐ話せるわけじゃありません。もう少し、オルステッドさんのことを知って、もし信頼できると思ったら、その時に話させて欲しいんです」
「…構わん、俺としてもお前をすぐに殺そうなどとは思わん。ヒトガミの使徒になると言うなら話は別だが…その顔を見るに、その心配は無さそうだしな」
おっといけない、顔に出ていたか…どうもヒトガミという名前を聞くと怒りで顔に出てしまうらしい。気をつけないとな…ポーカーフェイスというやつだ。
「それと一つ気になっていたんですけど…その仮面は?」
「ああ、これは呪いを抑制する仮面でな…クリフ・グリモルが作り、そこに俺の知るルーデウスやザノバ・シーロンが関わって完成した物だ。最後にできた完成品は耳につけるだけで良かったんだが…今の俺の技術ではこれが限界だった」
オルステッドは懐かしそうに言った。そう言えば前回のことも思い出話みたいに話していたな…オルステッドにとっては楽しい記憶だったのかもしれない。
俺の知るオルステッドは常に不機嫌そうだったからな、ちょっと信頼ポイントがアップしたかもしれない。
それにしてもクリフが…やっぱりアイツは天才だったんだな…。
「そうですか、クリフが…少なくとも俺も魔法大学に居たのでクリフとザノバの技術力はよく覚えてます。今回も、彼らと友になれるようにはしたいですね」
「ああ、よろしく頼む…だがまずは直近のことからだ。これからしばらく、俺はお前に俺の知る技術を教えていく。パウロにも剣を教えるが…お前も受けるか?」
「…俺は闘気を纏えないんですが、良いんですか?」
「剣術は覚えておいて損はない。流派毎の戦い方を覚えておけば役に立つ。それに、咄嗟の判断で使うこともあるやもしれんからな」
「分かりました、ならよろしくお願いします」
オルステッドは満足そうに頷き、部屋を後にしようとする。
「あと、皆の前では今はオルフェウスと呼んでくれ。オルステッドという名前では列強第2位として目立つのでな…」
「…もう充分目立ってませんか?」
仮面越しにオルステッドが凄まじく苦い顔をしたのがわかった。
どうやら想像以上に人間臭いらしい、また少し、俺の中で信頼ポイントが上がった。
感想、誤字報告ありがとうございます。
ルーデウスの過去に関しては、話として描く時があるのでそれまでお待ちいただければ幸いです。
皆様のお陰でモチベーションもありますし、最後まで描き切りたいですね。