ルーデウス視点─────
今日から俺のための授業が始まる。
午前はロキシーに手とり足とり魔術を教えてもらい、午後はオルステッド─もといオルフェウスとパウロによる剣術訓練だ。そしてその後にオルフェウスの技術講義と言う名の座学が待っている。
ロキシーに教えてもらうことはほぼ復習だし、今の時点でパウロとやるのは基礎体力訓練なのだが、オルフェウスの技術講義はかなり興味がある。
前回での俺の知識は相当なものだったが、龍神ともなれば持ち得る知識は俺の比ではないだろう。
剣の打ち合い…というパウロが一方的にボコボコにされている様子を尻目に、俺は自分に科された基礎体力訓練を行う。前にやっていたものとそう変わりは無いので、訓練をしながら魔力制御を並行して行っている。剣士と相対することが割と多かったのもあり、動きながらの魔力制御には慣れておかないといけない。
それにしても…オルステッドは容赦が無いな。感覚派のパウロのために直接打ち合って覚えてもらうということらしいが、パウロは打ち返すことすらできていない。オルステッド本人曰く、かなり力を抜いているらしいが、それでもパウロの顔が腫れ上がるくらいにボコボコにしている。俺とよく似たイケメンが台無しじゃないか…幸い、村の人は見に来てないのでパウロの尊厳は多少は守られただろうか?
午後の魔術授業にはオルステッドはあまり口を出さなかった、確か魔力をあまり使えないという話だし、仕方ないだろう。だが、ちょくちょく様子を見に来ては直ぐに離れるといった感じでなにか気にしているようではあった。なんだかロキシーを見ている気がする…まさかロリコンなんじゃないだろうな…ちょっと幻滅しちゃうぞ?
いや、確かロキシーと俺の子孫に救われたって話だし気にするのはそっちかもしれない。
そして夜、俺はオルステッドとの座学の時間まで、限界ギリギリまで魔力を消費する訓練をしていた。使う魔術は少し使うだけでも大量に魔力を消費する『重力魔術』と──『結界魔術』の応用で生み出した『
現時点では生成に苦戦しており、まだ上手く使えないのだが───
「…何をしている?」
「あ、オル──フェウスさん」
オルステッドが既に部屋に入っていた。全く…ノックくらいすれば良いのに…。俺がスケベなことをしていたらどうするんだ。
「ノックしても返事がなかったのでな、すまないが入らせてもらった…今の魔術はなんだ?」
あ、ノックはしてくれてたのか。これは失礼…ところでなんでそんなに怖い顔をしているんでしょうか、仮面越しでも凄い怖い顔してそうなのがわかるんですけど。
「ええっと、魔力を消費する訓練をしていたんですけど…何か問題でも…?」
「いや、見た事のない魔術を使っていると思ってな…俺の知るルーデウスも使っていない魔術だ、もっと見せてはくれないか?」
「え、ええ、良いですけど…」
どうやらオルステッドは『守護領域』という魔術に関しては似たようなものすら知らないらしい。実際、オルステッドには龍聖闘気なるものがあると聞くし、魔術師はあまり前線に出ないから使う機会は無いのだろう。
とはいえ、これはかなりの発見らしく、オルステッドが珍しく興味深そうに話を聞いていた。
理論としては『物理障壁』と『魔力障壁』を併用して限定的に発動しているようなものなのだが、このような高度な技術を魔法陣も無しに発動するのは空中に絵を書いているに等しいらしい。ここまで褒められると悪い気分はしないな。
結局、今回はオルステッドの話はほとんど聞くことはなく、『守護領域』の理論と発動の方法についての話になってしまった。だが、オルステッドのアドバイスを取り入れることで魔力の消費を軽減しつつ、発動範囲を身体の半分まで広げることができた。
これは結構な進歩だ。下手をすればあの転移事件の被害を抑えることだって…やってみる価値はあるかもしれない。いや、やろう。世話になった人、シルフィの両親やボレアス家の人達を救うチャンスかもしれないんだ。
「オルフェウスさん…いや、オルステッドさん。俺はこの『守護領域』と結界魔術で転移事件の被害を抑えようと思うのですが…」
「そうか、あれを抑えるか…わかった、やってみろ。何かやるべきことがあるなら俺も手伝おう」
「ありがとうございます。できれば、人の住む地域の近辺に改良した結界魔術の魔法陣を設置してもらいたいのですが…」
「その程度であれば造作もない。結界魔術の改良も手を貸そう。お前にとって守りたい─救いたい人がいるのなら手を貸すのはやぶさかでは無い」
オルステッドは驚く程に協力的だな…一体オルステッドの知る俺は何をしたんだ?いや、話は聞いたがここまで信用されてるとは…これは俺も相応の礼をしなくちゃな。
オルステッド視点─────
今回のループにおけるルーデウスの技術には目を見張るものがある。高い重力魔術の精度に加え、新たなる魔術『
いくら神級を扱えるとはいえ、完成された『守護領域』を使われては俺でも苦戦は免れないだろう。さらに、今のルーデウスは重力魔術を俺以上に上手く使える。やろうと思えば俺すら殺せてしまうだろう…。
いかんな、頼もしい味方が増えて喜んでしまっている自分がいる。
まだこのルーデウスは俺の事を疑っているのだ。信用に足りうる行動をして、共に戦う道を進まなくてはな…。
手始めに、ルーデウスの『守護領域』の改良と魔法陣を書くとしよう。転移事件の被害を軽減し、ルーデウスの家族や関係者を守るという理由もあるが、俺としても失いたくない人材は多い。
そうだな…ペルギウス辺りにでも掛け合ってみるか。奴は俺に借りを作れるとなると、大抵の事は聞いてくれるからな。
「…そういえばルーデウス、聞きたいことがあるんだが」
「はい、なんでしょう?」
「魔術はどの程度使える?お前に教える分を考えておきたいのだが…」
「ええっと…ある方からはほぼ全て帝級以上に扱えていると言われました。ただ、神撃魔術とか治癒魔術とか解毒魔術みたいなミリス教の魔術の大半は中級か上級くらいまでですね…」
「そうか…もし必要なら王級の魔法陣スクロールを用意しておく。だがあまり大量には用意できんからな…そこだけは注意してくれ」
「分かりました…転移事件の頃には何枚か欲しいと考えているので、また時期が来れば頼みます」
「ああ、そのためにこれを渡しておこう」
俺はルーデウスに、俺を呼び出す合図ができる指輪と龍神謹製の腕輪を渡しておいた。これで転移事件の時にヒトガミの接触を避けられるだろうし、必要があれば俺を呼ぶこともできるだろう。
「あ、ありがとうございます…これは?」
「ああそうか、お前は知らないんだったな…」
ルーデウスに使用方法を伝え、普段はあまり外さないようにするよう伝えておいた。これで今のうちにヒトガミの使徒が襲ってきても、俺が対応することも可能だろう。
「こんなものがあったなんて…量産…できてたらみんなに渡してますよね…」
「ああ…」
結局指輪は数はあるが、どちらも量産こぎ着くことは出来なかった。こればかりは仕方ない事だな…。
「ではな、ルーデウス。また明日、今度は俺から教えよう」
「ええ、おやすみなさい、オルフェウスさん」
ルーデウスの部屋を後にする。その間、少し手元で『守護領域』の発動を試してみるものの、なかなか上手くは行かなかった。ルーデウスは凄まじいな…。
投稿が少し遅れました。
オリジナルの魔術をこれからも出していくと思いますので、ご了承ください。