新エリー都でおにぎりを握る。   作:キノント

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休日 ビデオ

 

 お握り屋『握善<にぎりよし>』は、新エリー都の各地で販売を行っている、移動販売式の店舗の名称である。

 

 店主のワカは激怒した。

 必ず、この物価高騰の波を越えなければならぬと決意した。

 

 ワカには会計がわからぬ。

 おにぎり販売で得た利益を孤児院などへの個人的な寄付に使用していたところ、会計年度末後の納税で非常に苦労した。領収書や証明書などを取っていなかったためだ。

 

 ワカは、『おにぎり狂い』である。

 米を炊き、具材を包んで握ってきた。けれどもお金のアレコレに対しては、人一倍に鈍感であった。

 

 そんな彼だが、最近ようやくおにぎりだけではなく、他の事に関しても大きな成長を見せている。

 

 連絡アプリ『ノックノック』に登録した友人の数は二桁に至り、数種類の顔文字を使いこなせるようになった。なおスタンプに関しては、数十種類のおにぎりスタンプを使いこなしている。

 

 くたびれてきていた一張羅のスーツや革靴や眼鏡を新調し、見た目や清潔感をより大事にするようになった。なお友人達からは、『インテリヤクザ』感が増したとの感想を貰っている。

 

 自身の働き方を見直し、一月に一日程度だった休日について、三倍の三日に増やした。なおこれは彼の働き度合いを知った友人達が散々注意した結果であり、決め手となったのは『ワカさんの激務の様子を見た人達は、きっとおにぎり屋になろうとは思わなくなる』という指摘であった。

 

 未来のおにぎり屋達のために、彼は素直に受け入れた。

 

 

『分かりました。休日は基本的におにぎりも握らないことにします。ちゃんと休んでいる姿を見せなくてはいけませんからね。…………ところで、具材の研究は問題無いですよね?』

 

 『おにぎり狂い』は、休日程度で止まらない。

 

 

 そして今日が、その休日。

 

 そんな彼の本日のお出かけ先は、『Random Play』である。

 

 

 

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 ──私、映画館に行って思ったことがあるのですが……。

 

 ……アキラさん、どうして驚いた表情を? 私だって映画館くらいは行きますとも。

 ポップコーンにホットドッグ、ホットスナックにスイーツ……。新たなおにぎりのアイディアが生まれるかもしれないではないですか。

 

 ……随分とホッとしたような表情ですね。

 最近アキラさん以外からもよく感じるのですが、私は一体何だと思われているのでしょう? 

 

 ────それはもう『おにぎり』と思われているのなら、嬉しい限りですが! 

 

 

「新エリー都の何処を探しても、ワカさんほどおにぎりを愛している人は居ないんじゃないかな……。ところで、その時はどんな映画を?」

 

 

 いえ、映画は見ていませんね。

 研究のために食べ物を一通り購入して、そのまま家に帰って味を確かめました。

 その場で食べると他の方達の迷惑になってしまいますからね。配慮は大事です。

 

 

「映画館を食事をする場所として扱っている人を見たのは初めてだ……」

 

 

 それより『思ったこと』についてですが、何故映画館では『おにぎり』を販売しないのでしょう? 

 

 片手で食べられる手軽さ! 

 咀嚼で発生する音も最小限! 

 他のモノより香りも強くない! 

 

 むしろ映画館向きだと思いませんか? 

 おにぎり万能説が更に補強されますね。

 

 

 ん、何でしょうか? アキラさん。

 

 ……暗い場所だと米の食べこぼしが発生しやすい? 

 他の食品に比べると床に落とした時の掃除が大変? 

 長時間に渡る飲食物としては不向き? 

 友達と行った際にシェアが出来ない? 

 

 

 ……………………。

 

 

 ……いつか、いつか! 

 私がそれらをクリアしたおにぎりを作れば問題無しという訳ですね! 

 

 暗い場所という点については発光するおにぎりを作れば良いわけですし! 

 

 いや、発光してしまうと映画上映の邪魔でしょうが! 却下っ! 

 

 

「ええと、ワカさん? そもそも今日はビデオを借りに来てくれたんじゃないかな?」

 

 

 ────そうでした。

 すみません、危うく取り乱すところでした。

 

 今日はおにぎり屋も休みですからね。

 家でビデオを見るという目的を達成しなければ。

 

 ということで、おにぎりが主役のモノは何かありますでしょうか? 

 

 

「それは流石に……。でも料理関連なら、料理バトル番組の総集編がいくつかあったはずだ」

 

 

 とても良いですね! 

 おにぎりの新たなアイディアが生まれてくれそうです! 

 

 それを借りていきます! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰も、得意料理に『おにぎり』を挙げない……? 

 

 ……こんなことが許されていいのでしょうか。

 

 もっともっとおにぎりの知名度と美味しさを広めなければ……! 

 

 

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