カード出身の一般TS転生者 作:テトラひめな
世界最大のダンジョン、奈落。勿論、誰も踏み入れたことはない。
しかしてその最深部に存在するのは、圧倒的な武力。即ちライト率いる無限ガチャの軍である。
5年前、ライトが仲間に裏切られ、奈落の下層へと落とされ、一縷の望みをかけ自身の固有スキル”無限ガチャ”を引き、”探索者メイド”のメイを召喚した時からすべては始まった。
武力は全て、復讐の為。
最深部にある拠点の廊下を歩きながら、メイは不意にそれらの事を思い出した。
「すみません、ライト様は今どちらに?」
「あ、メイ様。ライト様ならカード保管庫にいらっしゃいますよ」
廊下を掃除していたメイドからの情報を元に、ライトの元へと歩く。
やがて到着したカード保管庫は相も変わらず恐ろしいほどのカードが図書館の本のごとく並べられ、一種の神々しさを発していた。
そしてその中央により一層、神々しさを生み出す主人の姿があった。
「ライト様。こちらにいらしたのですね」
「!メイ。丁度いいところに来てくれたね」
カードの守護人であるアネリアとアルスからメイへと振り向くライト。その表情はいつもと違い、一筋の嬉しさと、緊張感があった。
「他の三人も呼んできてくれないかな?」
「残りの
「いやいや、そういうわけじゃなくて……」
困った顔をするライトに、メイは言葉を間違えたかと思う。しかしライトはそのまま懐から一枚のカードを取り出した。
「出てしまったんだよ……二枚目の
「……!
驚くメイの前に差し出されたカード。
”
確かにそう書かれていた。
「ご主人様!何かすげぇレアなカードが出たって聞いたぞ!」
ライトとメイが移動した訓練場に明朗な声が響く。それと同時にやってきたのはメイ以外の
「まさか
「にゃー」
エリーが恍惚の表情を浮かべながら呟き、アオユキがいつも通りににゃーと鳴く。
全員がレベル9999。ライトと同じカンスト勢にして奈落の最強戦力である。
「あはは……
「前の
全員の脳裏に、一枚目の
そのために、今の
「大丈夫だ!何が来てもあたいらがいるからな!」
ナズナがにかりと笑う。
「そうですわよ。万が一の事も起こさせませんわ」
「メイド道に誓ってお守りいたします」
「にゃー」
「みんな……ありがとう。それじゃあ、いくよ」
ライトがカードと共に右腕を掲げる。
「
それと同時、カードが強く輝いた。
案外、死と言うのは身近なのかもしれない。
急に何哲学なこと言ってんだって?言わせろよ。こちとら死んだんだぞ。トラックにバーンでドーンでグシャ。
俺の人生そんな軽かったのか。いや流石にそうは思いたくない。確かに剣道一筋だったが、そのくせしてめっちゃ強かったわけでもなかったが、そこそこの成績も残してるんだぞ。
道路から伝わってくる無機質な冷たさと、自身から流れ出る血の熱さを感じながら、俺は死にたくないと願った。
死にたくない。こんな終わり方は嫌だ。
拒絶の意志とは反対に、俺の身体は頑なに動かない。そしてゆっくりと、意識は闇へと落ちた。
その時だった。
「―――――
急に脳に直接響くように、十代前半の少年の声が聞こえた。
次の瞬間、強烈な光に襲われたかと思うと、俺はいつの間にか、洞窟のような謎の広場に立っていた。
アレ……俺死んだよな?ここ天国?
「……ここは……」
ふと漏れた疑問の声に、妙な違和感が残る。普段の地声より妙に高いのだ。それこそ女のような。
「こんにちは?」
聞こえてきた声に振り返ると、そこには杖らしきものを持った少年と、その周りを囲むように四人の驚くべき髪色と服装をした美少女がいた。
何これ……マジでどこよここ。
「……すまないが、ここはどこだ?」
やっぱり違和感がある。声が可笑しい。明らか男の出せるような声ではない。
「ここは奈落の最深層だよ」
奈落?地獄ってことですか?最深層とか無間地獄確定やん。
「君が異世界の剣道家、ナギサで合っているかな?」
少年が何かを確かめるように聞いてくる。異世界の剣道家て何だその仰々しい名前。いや確かに下の名前は渚だけども。
「……ナギサで合っているが」
取り敢えず携帯を取り出そうと懐へ手を伸ばす。
だがポケットはなく、代わりに手に触れたのは着ていなかったはずの剣道着の袴。
そして俺の手はやけに白かった。元の剣道をした為によるゴツゴツとした手ではなく、絹のような細い手だ。
は?どうなってんだ?
戸惑っていると、少年の後ろに控えていた魔女っぽい姿をした黄色髪の美女が底冷えするような視線を向けてきた。
「貴女、ライト神様を差し置いて一人考え事をするなんて、失礼な女じゃありませんこと?」
「女?俺がか?」
「それ以外に、誰がいると?」
いや俺は男で―――――――――
視線を下ろした俺の視界に、僅かに膨らんだ胸が視界に入る。
……そういうことかよ?!
どういうことだよ?!