コナタとカナタ   作:みく

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コナタとカナタ 05

■

 

 乗船から二日目の昼、甲板にて。

 

「コナタ、口についてるよ」

「んむ」

 

 この船に食堂はないものの、最低限の食糧、つまりパンとスープの支給はあった。

 お世辞にも質が良いとは言えないが、それでも船員たちの心意気は確かに感じられた。

 コナタは口元の食べかすを袖で拭うと、コップに注がれたスープへと口をつけた。

 

「おいしい?」

「うん。腐ってなくて、虫も入ってなくて、いい匂いがするから、おいしいよ」

「そっか。なら、よかった」

 

 甲板にはいくつかの長椅子が設置してあり、カナタとコナタはそこに座っていた。

 他の船員や乗客は見当たらない。というより、コナタは自分以外の乗客を見たことが無い。

 この船に乗るのは浮浪者やはぐれ者ばかりなので、あまり姿を見せないのだという。

 カナタからそう言われて、コナタはそういうものなのか、と納得した。

 

「この退屈な景色とも、明日でお別れだね」

 

 いつの間にかカナタはコナタから視線を外し、甲板から見える大海原を眺めていた。

 コナタもそれに釣られて、パンを頬張ったまま海の方へと目を向けた。

 何もない。水平線まで広がる海と、雲がいくつか空に浮かんでいるだけ。

 自由と言えばそうだし、窮屈と言えばそうにも見える。コナタはただそう思った。

 

「ふぁ……」

 

 コナタの口から欠伸が漏れると、カナタはこちらを見て小さく微笑んだ。

 

「眠いの?」

「うん……。船に乗ってる間、ずっと文字の勉強してたから……疲れちゃって」

 

 コナタには学がなかった。文字の読み書きはロクにできず、国によっては会話もままならない。

 だが、カナタと一緒に旅をする以上、大陸共通語を読めなければ困ることがある。

 だからコナタは、少し前に訪れた国で盗んだ本で、読み書きの勉強をしていた。

 

「偉いね、コナタ。なら、ちょっと休憩しよう」

 

 カナタは自身の膝をぽんぽんと叩いて、コナタに流すような視線を送る。

 コナタは黙ってうなずいたあと、カナタの膝へと頭を預けた。

 カナタの膝の柔らかな感触と、船体の揺れる感覚が次第にコナタを午睡へと誘っていく。

 

「アルマヴェラには住めるかな?」

「無理だよ」

 

 コナタの問いかけに、しかしカナタは即座にそう答えた。

 

「アルマヴェラには金持ちがたくさんいるから、そいつらから金を盗むために入国するの。確かにアルマヴェラは素敵なところだけど、住むのは違う。コナタにはもっと、いいところがある」

「……そうかな」

「うん。私とコナタが静かに暮らせるところは、もう少し遠くにある」

 

 曖昧な返答だった。しかし、コナタはカナタにそれ以上の追求をすることはなかった。

 だってカナタがそう言うのだから。それはきっと正しいのだろう。

 

「だからね、コナタ。私たちは旅を続けなくちゃいけないの」

 

 カナタは慈しむように囁きながら、コナタの髪を優しく梳いた。

 コナタは目を瞑り、心地よい指先の感触をもっと感じるために、身を預けるよう丸まった。

 

■

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