コナタとカナタ 作:みく
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乗船から二日目の昼、甲板にて。
「コナタ、口についてるよ」
「んむ」
この船に食堂はないものの、最低限の食糧、つまりパンとスープの支給はあった。
お世辞にも質が良いとは言えないが、それでも船員たちの心意気は確かに感じられた。
コナタは口元の食べかすを袖で拭うと、コップに注がれたスープへと口をつけた。
「おいしい?」
「うん。腐ってなくて、虫も入ってなくて、いい匂いがするから、おいしいよ」
「そっか。なら、よかった」
甲板にはいくつかの長椅子が設置してあり、カナタとコナタはそこに座っていた。
他の船員や乗客は見当たらない。というより、コナタは自分以外の乗客を見たことが無い。
この船に乗るのは浮浪者やはぐれ者ばかりなので、あまり姿を見せないのだという。
カナタからそう言われて、コナタはそういうものなのか、と納得した。
「この退屈な景色とも、明日でお別れだね」
いつの間にかカナタはコナタから視線を外し、甲板から見える大海原を眺めていた。
コナタもそれに釣られて、パンを頬張ったまま海の方へと目を向けた。
何もない。水平線まで広がる海と、雲がいくつか空に浮かんでいるだけ。
自由と言えばそうだし、窮屈と言えばそうにも見える。コナタはただそう思った。
「ふぁ……」
コナタの口から欠伸が漏れると、カナタはこちらを見て小さく微笑んだ。
「眠いの?」
「うん……。船に乗ってる間、ずっと文字の勉強してたから……疲れちゃって」
コナタには学がなかった。文字の読み書きはロクにできず、国によっては会話もままならない。
だが、カナタと一緒に旅をする以上、大陸共通語を読めなければ困ることがある。
だからコナタは、少し前に訪れた国で盗んだ本で、読み書きの勉強をしていた。
「偉いね、コナタ。なら、ちょっと休憩しよう」
カナタは自身の膝をぽんぽんと叩いて、コナタに流すような視線を送る。
コナタは黙ってうなずいたあと、カナタの膝へと頭を預けた。
カナタの膝の柔らかな感触と、船体の揺れる感覚が次第にコナタを午睡へと誘っていく。
「アルマヴェラには住めるかな?」
「無理だよ」
コナタの問いかけに、しかしカナタは即座にそう答えた。
「アルマヴェラには金持ちがたくさんいるから、そいつらから金を盗むために入国するの。確かにアルマヴェラは素敵なところだけど、住むのは違う。コナタにはもっと、いいところがある」
「……そうかな」
「うん。私とコナタが静かに暮らせるところは、もう少し遠くにある」
曖昧な返答だった。しかし、コナタはカナタにそれ以上の追求をすることはなかった。
だってカナタがそう言うのだから。それはきっと正しいのだろう。
「だからね、コナタ。私たちは旅を続けなくちゃいけないの」
カナタは慈しむように囁きながら、コナタの髪を優しく梳いた。
コナタは目を瞑り、心地よい指先の感触をもっと感じるために、身を預けるよう丸まった。
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