「刀の錆にしてやる!」と言うと、本当に眼の前の人・物を『刀の錆』に変換する魔法   作:水葉わいん

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第6話

 

 

 全身全霊でご奉仕……?

 一瞬、ティアが言っていることの意味がわからなかった。

 

 が――ティアの真っ赤な頬を見て、俺は理解した。

 

 ……そ、そういうことか!?

 

「い、いやいやいや! ご奉仕って……そういう為にティアにベッドを使わせてるわけじゃなくて……」

 

「ち、違うんですかっ!?」

 

「あったりまえだろ……! そんな事のために俺はティアを買ったわけじゃない」

 

「で、でしたら、何のために……?」

 

「それは……」

 

 ……あれ? 何のために買ったんだ?

 このままじゃあ、ティアが酷い目に遭うと聞いて、衝動的に……

 

「……もしかして、同情……とかですか?」

 

「……かもしれない」

 

 恐る恐る尋ねてきたティアに対して、俺は歯切れ悪く答えることしか出来なかった。

 

「……ご主人様が凄いお人好しということがわかりました」

 

「そ、そんなことないと思うけどなぁ……?」

 

「お人好しですよ……! 幾ら呪いを解けるからって、呪いにかかった少女を普通は目的無く買いませんよっ!」

 

「……言われてみればそうかも」

 

 日本に居た時の感覚がまだ抜けてないかもしれない。

 

 流石に迂闊だったな……。

 

 すると、ティアは顔を真っ赤に染めながら――

 

「あっ……でも、主人様が望むなら……わ、私、何でも御奉仕致しますからね?」

 

 俺の顔を覗き込みながら、言った。

 

「……へい」

 

 俺はティアに背を向けて、空返事する。

 

 ここで『奉仕しろ』なんて言える度胸は俺には到底なかった。

 

 

 ――◇――◇――◇――

 

 

「――服を買おうか」

 

「服……ですか?」

 

不思議そうにティアは首を傾げる。

 

「えっと……ご主人様の服ですねっ!」

 

「ち、違う違う! 俺じゃなくて、ティアの服だよ」

 

俺はじっと彼女の服を見つめる。

 

それは服というかボロ切れに近い何かだった。

 

至る所に小さな穴が空いており、胸周りなど見えちゃいけない場所まで見えてる。

 

「私の服ですか……? 別にまだ着れると思いますけど……」

 

「い、いいや!  新しいのを買う! これは決定事項だ」

 

「ご主人様がそこまで言うのでしたら……」

 

そうして――俺たちは朝ごはんを軽く済ませた後、街へと繰り出した。

 

 

 

 

――◇――◇――◇――

 

 

 

「ええっと……ここだな」

 

多くの人が行き交う大通りを歩くこと数十分……俺たちは服屋に到着した。

 

さっき宿屋の女将さんにティアが着れそうな服を売っている店がないか聞いてみたら……この服屋を紹介されたのだ。

 

「――いらっしゃいませ〜、何かお探しですか?」

 

 店に入ると、女性の店員さんが声をかけてきた。

 

「すみません、この子の服を何着か見繕ってもらえませんか?」

 

「はい、了解いたしました。ええっと……っ!?」

 

 店員さんはティアに視線を移すと……驚いたように目を見開き――

 

「――か、かかかか可愛いっ!」

 

 突然、興奮した様子で叫んだ。

 

「ふぇ……?」

 

「なんですか、この子……! て、天使ですか……!?」

 

「て、天使? 違いますよ……?」

 

ティアは困惑で、おどおどする。

 

「ああ失礼しました……。あまりにもこの子が可愛らしいので、取り乱してしまいました……っ!」

 

 店員さんは恥ずかしそうに、はにかむとコホンと咳払いする。

 

「任せてください! この子にとびっきり似合うものをお見繕いしますねっ!」

 

「えっと……よろしくお願いします」

 

そうして、ティアは店員さんに連れていかれていった。

 

途中、助けを求めるような目をティアがしていたが……気のせいだろう。

 

絶対に着せ替え人形にされるだろうけど、頑張ってくれ……。

 

そうして待つこと数十分。

 

流石に様子を見に行こうかな、と思った頃。

ようやく、店員さんから声をかけられた。

 

「――お待たせ致しました……! 今、ティアちゃんが試着しているんですが……見てみますか?」

 

「じゃあ…… お願いします! 」

 

さて……、どんな服を選んでくれたのかな。

 

店員さんに試着室へ案内される。

カーテンが開けられた試着室の中には……恥ずかしそうに身をよじらせるティアの姿があった。

 

それもそのはず――

 

「……なるほど」

 

ティアが着ていたのは――まさかのメイド服だったのだ。

 

「ご、ご主人様……どうですか? 似合ってますか……?」

 

頬を赤らめさせながら、上目遣いでティアは尋ねる。

 

俺は一瞬、答えに迷った。

 

可愛らしいフリフリのミニスカートは、子供っぽいティアに抜群に合っていた。

しかし……それをストレートに答えるのは何だか変態みたいで……。

 

「……だ、ダメでしたか?」

 

しかし、ティアが不安で子犬のようにシュンとした時、俺は堕ちた。

 

「ダメなんかじゃない……! 凄く凄く似合ってるよ」

 

「本当ですかっ!?」

 

喜びでパアッと顔を明るくするティア。

 

すると、店員さんがニコニコと笑みを浮かべながら、話しかけてきた。

 

「ふふっ、お気に召したようで良かったです。他にも何着か見繕いましたが――」

 

「――全部ください」

 

「はい! お買い上げありがとうございます!」

 

 この店員さんのセンスは抜群だ。

 

 メイド服を出されたのはあまりにも予想外だったが……この人のチョイスなら間違いないだろう。

 

 その後、俺が着る用の服も買い、服の買い物は無事に終わった。

 

 

 

「いやぁ、良い買い物をしたなぁ……」

 

「こんなに服を買ってもらっちゃって……良かったんですか?」

 

 ティアが申し訳なさそうに服が入った袋を持ち上げる。

 

「まあ……お金にはまだ余裕があるからね」

 

今回の買い物で合計、金貨を三枚も使った。

 

まだまだ金貨は残っているが……流石に稼がないと不味い。

 

「何か、稼ぐための仕事を探さなきゃな……」

 

「でしたら、冒険者とかどうでしょうか?」

 

「冒険者……」

 

そういえば、この世界には冒険者がいるんだっけ。

 

「勿論、戦うのは私ですよ? 剣一本でもあれば、町周辺のモンスターくらいは倒せますから!」

 

「頼もしいな。でも……俺だって戦えないわけじゃないぞ?」

 

対象を錆に変えるあのスキルがモンスターに使えれば……十分、俺でもモンスターと戦える。

 

「じゃあ、冒険者登録してみますか? 登録しておくに越したことはありませんし……」

 

「そうだな。じゃあ……次は冒険者ギルドに向かうか」

 

俺は地図を見ながら、最短距離でギルドへ向かう。

 

途中、路地裏に差し掛かった時――

 

「――おいおい、可愛い子連れてデートなんて随分と生意気なガキじゃねえか」

 

突然、背後から野太い男の声が聞こえてきた。

 

 

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