とある3期生のオルタナティブ~ウサギとエルフと騎士と船長~   作:ジョウジ

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第11話:絶望の降臨

「るしあ……!」

 

 マリンが喜びの声を上げ、ふらつく足でネクロマンサーの少女――潤羽るしあへと駆け寄ろうとした。しかし、次の瞬間。 るしあの足元から放射状に伸びた『青白い氷の亀裂』が、マリンのつま先ギリギリで鋭い氷柱となって突き出し、その前進を容赦なく拒絶した。

 

「ひっ……!?」

 

「……近寄らないで」

 

 氷点下の冷気が漂う中、るしあの口から紡がれたのは、耳を疑うほど冷たく、感情の抜け落ちた声だった。

 

「る、るしあちゃん……? 団長だよ? なんで氷なんか……」

 

 ノエルがメイスを下げ、すがるように尋ねる。 見覚えのある白髪の姿。だが、いつもなら「団長ぉ!」と抱きついてくるはずのその瞳は、まるで無機質なガラス玉のように四人を見下ろしていた。

 

「あなたたちは、ここで終わり。……ここから先へは、絶対に一歩も行かせない」

 

 るしあが静かに杖を掲げると、黒い森の地面がボコボコと波打ち始めた。 土を突き破り、無数の骸骨の騎士(スケルトン)や怨霊たちが這い出し、るしあを守るように立ち並ぶ。その数は数十、数百と際限なく増え続けていく。

 

「嘘でしょ……るしあも、あっち側ってことぺこか……!?」

 

 ぺこらが震える声で叫ぶ。 あやめ達の攻撃の違和感に気づき、真意を問い質そうとした矢先、一番会いたかったはずの同期までもが、その「絶望の壁」として立ち塞がったのだ。

 

「そんなの、納得できるわけないじゃんか……! 私たちは五人で!」

 

フレアが悲痛な叫びを上げ、弓を構え直そうとした。

 

――その時だった。

 

ゴゴゴゴゴォォォォォォ……ッ!!!

 

 黒い森の上空、見えない結界で覆われていたはずの空が、突如として赤黒く染まり、耳を劈くような轟音が鳴り響いた。

 

「な、何!? 今度は上!?」

 

 マリンが空を見上げる。

 

 分厚い雲海が、まるで巨大な刃で切り裂かれたように真っ二つに割れた。そして、割れた空の向こうから降臨したのは――圧倒的な質量と威容を誇る、巨大なオレンジ色の『ドラゴン』だった。

 

「グオォォォォォォォォッ!!」

 

ドラゴンが咆哮と共に森へと着地する。

 

ドスゥゥゥゥンッ!!

 

という凄まじい地鳴りが響き、強烈な突風が千本鳥居を吹き飛ばし、3期生の四人を容赦なく地面に叩きつけた。

 

「う、ぐぁっ……! なんだよ、あのデカさ……!」

 

 フレアが腕で顔を覆いながら顔を上げる。伝説のドラゴン。それは、ファンタジー世界における絶対的な「最強」の象徴だ。見上げるほどの巨躯、赤熱する鱗、そして口の端から漏れる高熱の息(ブレス)。だが、四人の目をさらに見開かせたのは、そのドラゴンの背に乗っていた一つの影だった。

 

「……ごめんね、みんな。でも、ここは通さない」

 

 ドラゴンの背からふわりと飛び降りたのは、頭に天使の輪を戴き、純白の翼を持った少女――天音かなただった。かなたの瞳にもまた、あやめたちと同じ、痛いほどの悲壮な決意が宿っている。

 

「かなたちゃん……!? それに、このドラゴンって……まさか、ココ会長!?」

 

 ノエルが絶望に染まった顔で呟いた。

 

 伝説のドラゴン(桐生ココ)と、天使(天音かなた)。ただでさえ手も足も出なかった和風組(フブキ・ミオ・あやめ)に加え、容赦ない死霊の軍勢を率いるるしあ。そして、上空と背後を完全に封鎖するように立ちはだかる、規格外の後輩コンビ。

 

 逃げ場のない黒い森の中で、3期生は完全に包囲されていた。誰一人として、本気で戦いなどしたくない相手。しかし、立ちはだかる彼女たちの瞳には、理由も語らぬまま3期生を本気で絶望させ、叩き潰そうとする、底知れぬ覚悟だけが宿っている。

 

「どうしろっていうのさ……こんなの」

 

フレアの震える手から、エルフの長弓が力なく滑り落ちた。ノエルのメイスも、ぺこらのTNTも、マリンの虚勢も、この圧倒的な戦力差と理不尽な状況の前では、何の意味も持たなかった。

 

 深い、深い絶望の静寂が、黒い森を包み込んでいた。

 

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