とある3期生のオルタナティブ~ウサギとエルフと騎士と船長~ 作:ジョウジ
「いくぺこぉぉぉ!!」
ぺこらの咆哮を合図に、黒い森のシリアスな空気は文字通り「爆散」した。 彼女が手当たり次第に投げつけたTNTブロックが、るしあの召喚した骸骨の軍勢をド派手なキノコ雲と共に次々と吹き飛ばしていく。
「ちょっとぺこら! 巻き込まれるでしょ!」
「るっせーぺこ! これがぺこらの本気ぺこよ!」
「なら、私も遠慮しない!」
フレアが長弓を引き絞り、空に向かって極大の炎を放った。
「燃やせ、燃やせーっ!!」
先ほどまでの絶望感はどこへやら、完全に「放火魔」のスイッチが入ったエルフが、黒い森を無差別に火の海に変えていく。
「ちょっ、フレア! 森が、森が燃えちゃう!」
フブキが慌てて狐火で炎を相殺しようとするが、フレアのテンションはもう止まらない。
「知るか! ファンタジーの森なんて丸焼けにしてやる!」
「うおおおおっ! 団長もいくよぉぉぉ!」
ノエルが、身の丈ほどある巨大なメイスをぶん回しながら、伝説のドラゴン(ココ)の足元へと突撃した。ココが放った高熱のブレスや、るしあが展開した絶対零度の氷壁。それらの厄介なギミックを、ノエルは一切の思考を放棄して、ただひたすらに「メイスで叩き割る」という力技で粉砕していく。
「……おいおい、魔法の氷を素の腕力でカチ割るってどういうことだ!? この脳筋ゴリラ!」
ココが呆れたようにツッコミを入れた。
「船長も負けてられないんだワ!」
戦場の中央で、マリンが両手を大きく広げた。
「いでよ、宝鐘海賊団の船!!」
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
空を覆っていた分厚い雲海が割れ、そこから物理法則を完全に無視した超巨大な『海賊船』が、ものすごい土煙を上げて黒い森のど真ん中に不時着(落下)した。
「どっひゃあ!? なんで空から船が落ちてくるのじゃ!?」
あやめが双剣を構えたまま目を丸くする。
「あはは! まだまだいくゾ! 船長、禁断のフォームチェンジ!」
マリンが両手をクロスさせ、自らの身体に強力な暗示をかけた。
バチバチッ!
激しいノイズが走り、マリンの姿が『腰の曲がったシワシワの老婆(78歳)』へと変貌する。
「あいたたたっ! 腰が! 腰が痛いんだワ!」
「マリンちゃん!? なんでこんな時にそんな特級呪物になるの!?」
ミオが悲鳴を上げる。
「これが船長の『本気の熱狂(エンタメ)』だゾ! 78歳のババアの動き、システムで処理してみやがれぇぇぇ!!」
腰を押さえながらも、なぜか超高速で戦場を這い回るババア(マリン)。その存在自体がこのファンタジー世界における「あり得ないバグ」であり、空間にピキピキとガラスが割れるような嫌な音が響き始めた。
――『WARNING : LOGIC OVERFLOW』
空の彼方で、ついにシステムが悲鳴を上げ、赤い警告文が浮かび上がる。 怒りや悲しみではない。「魂からの本気の悪ふざけ(エンタメ)」によって生み出された莫大なエネルギーが、次元の壁の処理能力を上回り始めたのだ。
「……あはっ、あははははっ!」
戦場を埋め尽くすカオスな光景を見て、るしあが腹を抱えて笑い出した。ガラス玉のように冷たかった瞳には、もうかつての温かい光が戻っている。
「もう、本当にしょうがないんだから……! 3期生は、いっつもそうやって台本をぶち壊すんだから!」
「るしあ先輩!」
かなたがドラゴンの背から叫ぶ。
「だったら、こっちも全力で乗っかるしかないですね!」
「ああ、その通りだ!」
フブキが白刃を抜き放ち、満面の笑みで叫んだ。
「お前ら、最高の後輩だよ! でも、簡単には壁は壊させないからね! かかっておいで!!」
「望むところぺこぉぉぉ!!」
悲劇のシナリオは、いつの間にか「最高に熱いプロレス(おふざけ)」へと姿を変えていた。飛び交うTNT、燃え盛る森、空から落ちてくる海賊船に、地を這う78歳の老婆。 それに全力で応戦する、双剣の鬼、狐火、タロット、ドラゴン、天使、そしてネクロマンサー。
誰も死なない。誰も泣かない。 ただ、互いの存在を全身でぶつけ合い、笑い合いながら、システムの壁をぶち破るためのエネルギーを無限に増幅させていく。
「あははははっ! もっと、もっと熱くするぺこよー!!」
黒い森を震わせる大乱闘は、次元の壁に無数の亀裂を入れながら、いよいよクライマックスへと突き進んでいった。