とある3期生のオルタナティブ~ウサギとエルフと騎士と船長~   作:ジョウジ

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第7話:希望の噂と魔法都市の決闘

 空に巨大な亀裂が走り、謎のブロックが降り注ぐという前代未聞のバグから数日。崩壊の危機をなんとか脱した四人は、魔法技術が発達した巨大な城塞都市へとたどり着き、賑わう城下町を歩いていた。

 

「あー、マジで焦ったワ。船長、あやうくブロックに押し潰されてペチャンコになるところだったんだからね!」

 

「あんたがアホなこと(十七歳二周目)を神様に宣言するからぺこでしょ! 世界がキレたぺこよ!」

 

 言い合いをしながら歩くぺこらとマリン。その後ろで、ノエルが両手いっぱいに抱えた串焼きを頬張りながら「まあまあ、無事だったんだし美味しいもの食べて落ち着こうよ〜」と平和に笑っている。その騒がしくも心地よい日常の風景に、フレアは思わず目を細めた。

 

(……よかった。本当に、みんな一緒だ)

 

「ねえ、聞いてよフレア! さっきそこの酒場で、すんごい噂を聞いたんだワ!」

 

 マリンが目を輝かせてフレアの腕にすがりついてくる。

 

「ん? なになに?」

 

「この街のもっと奥にある魔法学校の近くに、『死霊使い(ネクロマンサー)』がいるらしいんだワ! しかも、すごい緑色の綺麗な蝶を連れてるって!」

 

 その言葉に、フレアの足がピタリと止まった。ぺこらとノエルも、弾かれたようにマリンを振り返る。

 

「……死霊使いで、緑の蝶?」

 

「間違いないぺこ。るしあぺこ!」

 

「ふーたん! るしあちゃんもこの世界のどこかで覚醒してたんだね!」

 

 ノエルが串焼きを放り出しそうになるほど興奮してぴょんぴょん跳ねる。3期生の同期であり、大切な仲間。 (これで、全員揃う……!) フレアの胸が高鳴った。四人の足取りは自然と早くなり、噂のあった魔法学校のエリアへと急いだ。

 

 街の奥へ進むにつれ、周囲の景色は中世の城下町から、淡く発光する魔力灯や巨大な図書館が立ち並ぶ、アカデミックで幻想的な風景へと変わっていく。 その立派な城の回廊のような場所を抜ける際、見覚えのある二人の少女がドタバタとこちらに向かって走ってくるのとすれ違った。

 

「ちょこせーん! 待って待って、なんで逃げるの!? まつり、一緒に保健室でお昼寝したいだけなのにぃ!」

 

「もー、まつり様は少し離れてくださいな! ちょこは今から授業があるんですから!」

 

 金髪でチアリーダーのような服を着た少女(夏色まつり)が、悪魔の角を生やした保健医(癒月ちょこ)を追いかけ回しながら風のように去っていく。

 

 

(……うん。なんか世界観(設定)がちょっとよくわかんないけど、相変わらず通常運転の先輩たちもいるみたいだな)

 

 フレアは一瞬だけ足を止め、呆れたような、しかしどこか安心したような笑みを浮かべた。

 

 その後、四人は広大な魔法学校の敷地をあちこち歩き回ったが、お目当ての死霊使いの姿はなかなか見つからなかった。 気がつけば日は完全に落ち、空に美しい三日月が浮かんでいる。

 

「あーあ、足パンパンなんだワ。今日はもう諦めて宿屋に行かない?」

 

 マリンが泣き言を漏らしながら、学校の巨大な中庭に差し掛かった時だった。 突如として、強烈な魔力の波動が夜空を震わせた。

 

「な、なんだ!?」

 

 ノエルが慌ててメイスを構える。見上げた夜空には、息を呑むような光景が広がっていた。 巨大な錨(いかり)に乗って宙を舞う、メイド服の少女――湊あくあ。 そして、魔法の箒にまたがり、不敵な笑みを浮かべる魔女――紫咲シオン。 二人の天才魔法使いが、夜空に無数の魔法陣を展開し、一歩も引かない超絶シリアスな空中戦を繰り広げていたのだ。

 

ドゴォォォォォンッ!!

 

 あくあが放った巨大な魔力の弾を、シオンが障壁で弾き返す。衝撃波が中庭の木々を激しく揺らし、まるで一本の美しい映画(アニメーションPV)を見ているかのような圧倒的なスケールだ。

 

「す、すっげぇ……! なにあの魔法の撃ち合い! めっちゃカッコいいんだワ!」

 

 マリンが口をぽかんと開けて夜空を見上げる。

 

「あくあ先輩もシオン先輩も、この世界だとあんなガチの魔法使いぺこか……」

 

 ノエルも目をキラキラさせて空を見上げていたが、隣でゴソゴソと不審な動きをしているウサギに気づいた。

 

「……あれ? ぺこらっちょ、何出してるの?」

 

 見れば、ぺこらはインベントリから大量の『赤い火薬(TNT)』と『トロッコ』を取り出し、手際よくレールを敷き詰めていた。その顔には、邪悪極まりない笑みが張り付いている。

 

「ふ、フハハハ……! あいつら、上空でカッコつけてて足元がお留守ぺこ! ここから超加速させたTNTトロッコを特攻させたら、めっちゃいいリアクションとるはずぺこ!」

 

「ちょっ、ぺこら!? あんたバカじゃないの!? 今めっちゃシリアスな空気――」

 

 フレアが止める間もなく、ぺこらがレッドストーントーチを突き立てた。

 

シュボボボボボボッ!!

 

 着火された大量のTNTを積んだトロッコが、ありえない速度でレールを駆け上がり、美しい魔法陣を展開していたあくあとシオンの真下へと射出された。

 

 上空でバチバチと火花を散らしながら睨み合っていた二人は、下から猛スピードで飛んできた赤いブロックの塊を見て、同時に目を丸くした。

 

「……え?」

「……は?」

 

――ドッッッッゴォォォォォォォン!!!!

 

 夜空の美しい三日月を背景に、ファンタジー世界には絶対にあってはならない「不恰好な四角いキノコ雲」が大爆発と共に燃え上がった。

 

『あてぃしぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

『ちょっと何すんのよぉぉぉぉっ!!』

 

 先ほどまでの超絶シリアスな強者の威厳は一瞬で吹き飛び、黒焦げになったメイドと魔女が、情けない悲鳴を上げながら夜空の彼方へと飛んでいく。

 

「あーっはっはっは! ざまあみろぺこー!」

 

腹を抱えて高笑いするぺこらの頭を、フレアが容赦なくメチャクチャに叩いた。

 

「なにしてんだバカウサギ! せっかくのカッコいい見せ場(PV)が台無しじゃないか!!」

 

(……まあ、でも)

 

 フレアは、夜空の星になった先輩たちに心の中で手を合わせながら、ふと口角を上げた。設定も、シリアスも関係ない。 やっぱりこのアホなノリこそが、自分たちの「現実」なのだ。 気を取り直した四人は、まだ見ぬ五人目の仲間を探して、さらに足を踏み出していく。

 

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