とある3期生のオルタナティブ~ウサギとエルフと騎士と船長~ 作:ジョウジ
魔法都市での騒動から一夜明け、四人は魔法学校で得た「ネクロマンサー(るしあ)はさらに奥地の黒い森にいる」という情報を頼りに、街道を進んでいた。 空は晴れ渡り、絶好の旅日和だ。
「それにしても、昨日のあくあ先輩とシオン先輩のリアクション、最高だったぺこね〜! いい気分で旅立てるぺこ!」
「あんたのおかげで、この街出禁ギリギリだったんだけどね……。まあ、みんな無事で揃ってるんだし、いっか」
上機嫌なぺこらにフレアが呆れつつも、その口元は微かに緩んでいる。四人で歩くこの騒がしい時間が、今は何よりも心地よかった。その時だった。
――ピピッ、ピピピピピピピッ!!
ファンタジー世界には絶対に存在しない、無機質で甲高い「電子の警告音」が上空から鳴り響いた。
「え……?」
マリンが空を見上げた瞬間。 雲の隙間から、極太の『赤いレーザー光線』が四人の中心を目掛けて一直線に照射された。
「危ないっ!!」
いち早く反応したノエルが、巨大なメイスを盾のように頭上に構える。
ドゴォォォォォンッ!!
すさまじい爆発音と共に、強烈な熱線がメイスの鋼鉄を焼き焦がし、周囲の地面をクレーター状に吹き飛ばした。
「きゃあああっ!?」
「な、なんだ!? 魔法陣もなしに、いきなり上から……!」
フレアが吹き飛ばされた土煙を腕で払いながら、上空を睨みつける。
土煙が晴れた上空には、パーカー姿に丸メガネをかけた少女――ロボ子さんが浮かんでいた。背中や脚部からは青白いブースターの光が噴き出し、両腕にはファンタジーの魔法とは明らかに異なる、無骨でハイテクな重火器が展開されている。
「ロボ子先輩……!?」
ぺこらが目を丸くして叫んだ。しかし、上空から四人を見下ろすロボ子さんの瞳には、いつもの高性能でぽんこつな優しい光はない。冷たく赤いターゲットマーカーが点滅し、そして……その目からは、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちていた。
『……エラーコード、確認。世界に致命的なヒビを入れた、悪性ウイルスの発生源を捕捉したよ』
拡声器を通したようなノイズ交じりの声が響く。
「悪性ウイルス? バグ? なに言ってるぺこか! ぺこらたちぺこよ!」
『ごめんね……。本当に、ごめんなさい……!』
ロボ子さんは悲痛な声で泣き叫びながら、両腕の重火器の銃口を、一直線に「宝鐘マリン」へと向けた。
『でも、ボクが君たちを排除しなきゃ……この世界(ホロアース)が壊れちゃう! そらちゃんが、死んじゃうから……っ!!』
「そら先輩……!?」
フレアが息を呑む。しかし、ロボ子さんの言葉の真意を問いただす猶予は与えられなかった。
カシャシャシャシャッ!!
ロボ子さんの背部装甲が展開し、数十発の小型ミサイルが一斉に空へ放たれた。ミサイル群は白い軌跡を描きながら、意志を持っているかのようにマリンへ向かって殺到してくる。
「ひぃぃぃぃっ!? なんで船長!? 船長なんか悪いことした!?」
「もしかして、あのバグのせいか!? マリンが十七歳の誕生日で『二周目』とかバカなこと言ったから、私たちがウイルス扱いされてるんじゃないの!?」
「そんな理不尽な推測あるワ!? ただのいつものギャグじゃんかぁぁぁ!」
(……いや、確証はない。でも、あの空が割れたタイミングといい、こいつの言う『悪性ウイルス』といい、あれ以外に原因が思い当たらない……!)
フレアは戦慄しながらも、即座に弓を引き絞り、炎の矢を上空に連射してミサイル群を空中で次々と迎撃していく。
「だったら……話せばわかるはずぺこ! ぺこらの土木作業で止めてやるぺこ!」
ぺこらがインベントリから大量の丸石と水バケツを取り出し、手際よく巨大な防壁と水流の盾を構築していく。その水流の盾の前に、ノエルがメイスを構えて立ちはだかった。
「マリンは団長が守る! 先輩だろうと、ガチでやり合うしかないなら……全力でいくよ!」
『うあああああっ! ごめんなさい、ごめんなさい……!』
ロボ子さんは泣きじゃくりながらも、その殺意(火力)は一切緩まない。さらに強力なプラズマ砲のチャージが開始され、周囲の空気がビリビリと震え始めた。
ファンタジーの魔法と、SFの重火器。そして「ギャグみたいなバグの理由」と「泣きながら殺しにくる悲痛なロボット」。あまりにもカオスで理不尽な、致命的エラーを巡る防衛戦が幕を開けた。