第二話 夢の中のむらみさん
目の前に広がる空、見慣れた町並み、振り返ると赤紫色の建物が天までそびえ立っている
今私はその建物のベランダで立ちすくんでいた。
窓「死んでもやっぱり夢はここなんだね~」
わたしはいつからか同じ夢しか見ないようになった、私の部屋のベランダからその夢は始まり、私の部屋の扉から出ることで、さらに12の扉に続く部屋へと進む。その12の扉は様々な世界につながりいつもそこを探検するのだ。今まで客間で寝ていたはずの私は、いつもの私の部屋に来ていた、安心感を覚えるほど見慣れた光景、私はここにきた意味も考えず、楽天的に「いつもみたいにお茶会をして、みんなに死後の話をしてあげよう」と考えていた。
ここは私の夢の世界、だから私の心をとても反映する、いつまでも心が停滞していればこの世界はいつまでも停滞している。いつだろうか、私がこの夢に会話を求めたのは?今まで夢にみられるだけでもありがたかった世界ではあったのだけど、そこに交流を求めた私はもしかしたらすごい罪人なのかもしれない。そのことはこの際置いといこう、償いきれるかわからないけど閻魔さまに合えばきっと道をしめしてくれるだろう。この夢の世界には住人がいる、交流を求めた瞬間から今までまともな言語を持たなかった彼らと話すことが可能となった。その中でも親密になった人たちと話すことが最近の日課となっている。
窓「あれ?何か忘れているような?まぁいっか、ら~ら~ら、ら~ら~ら、ららららら~」
適当な歌を歌いながら進んでいく。いつものなれた道、青と白の扉、黒い大きな門を通るとそこは白黒な世界だった。背後に蠢く門に手を振りながら道なき道を進んでいき、いつもどおり同じ手順を繰り返ししていくと目的地である真っ黒い世界についた。
窓「こんにちは~」
???「いらっしゃい、窓付き、またいつもみたいにお茶会?」
私が挨拶をすると黒髪の長い髪、白いブラウス、黒いスカートの女性が返事をする。周りの風景と同じ真っ白い肌を餅、整った顔立ちと合わさり、どこか儚げだ。
窓「うん、今日は先生の所でやろうと思って。今回は面白いネタをもってきたよ~」
???「ふふふ、それは楽しみね。わかったわ、準備するから待っていてね」
私は昔、夢の世界の住人に様々な名前をつけて回ったことがある、ただ、しゃべれる様になる前のことなので一方的につけただけだが。この白黒世界には親密な住人が二人いるがその二人も同様で、今目の前にいるのがモノ江さんと名づけた女性だ、もうひとりはモノ子ちゃんというのだが、二人共モノクロカラーの女の子なのでモノクロ姉妹と呼んでいる、本人たちも結構気に入っているみたいで、お互いに姉妹の役を楽しんでいるみたいだ(私が作り出した世界なのである意味ここの住人全員兄弟、姉妹なのだが)。今目の前にいるモノ江さんはお姉さんの方で、綺麗でしっかりした性格をしている、少し厳しい時もあるがとても優しくてモノ子ちゃんのお姉ちゃんであるとともに私のお姉ちゃんみたいでとても好きだ。
モノ江「お待たせ、モノ子も先に拾っていきましょうか?」
考え事をしているうちに準備を終えたモノ江さんが戻ってきたみたいだ。
窓「うん、いつも通りお願いします!」
モノ江「わかったわ、ちゃんとつかまっていてね」
モノ江さんはいわゆる瞬間移動が可能で、よくお茶会の時人を集めるお手伝いをしてもらっている。昔はよくこの能力を使ってからかわれたのだけど、今はこうして手伝ってもらえているので水に流そう。
そんなことを考えていると目の前が急激に変わり、モノ江さんと似た格好をしているツインテールの女の子が現れる。
窓「こんにちは、モノ子ちゃん!」
モノ子「あっお姉ちゃんと窓付きちゃん!お茶会のおさそい?」
窓「そうだよ、モノ子ちゃんもくる?」
モノ子「うん、もちろん!さっきケーキ作ったから一緒に食べようか」
モノ子ちゃんはちょっと天然だけど料理とお菓子作りが得意な女の子で、よくお茶会のお菓子を作ってくれる。今日は日時を決めていなかったのでお菓子は諦めていたがタイミングがよかった。
窓「いつもありがと!モノ子ちゃんのお菓子おいしいんだよね」
モノ子「ふふ、喜んでもらえると作りがいがあるよ~」
モノ江「そういえば窓付き、今回のお茶会は誰を呼ぶの?」
窓「ちょっと今日は大変なことがあったから、あとはポニ子ちゃんを誘っておしまいにしよっかなって」
モノ江「さっき言っていたネタのことね。わかったわ、先に先生のところに送るから準備していてもらっていいかしら?」
窓「はーい、そっちはまかせて」
また、目の前が歪み、今度は机とピアノが置いてある白い部屋へと飛んでくる。ピアノの前には上下黒い服装の青年がすわっており独特な音楽を奏でている。演奏中だったらしいいが、私たちに気がつくとこっちに振り返る。
???「やあ窓付き、モノ江、モノ子いらっしゃい、お茶会かい?」
ピアノの青年、もとい先生が挨拶をしてくれる。彼も例に漏れず私が命名したひとりであるが正式名称は先生ではない。最初は今のように先生と呼んでいたが現実で彼に似ているモノを見つけるたびに名前を追加するゲームの被害者となり、とても長い名前となったが、あまりにも長いため先生と呼んでいる(本人は長い方はあまり気に入っておらず、そっち
で呼ぶと不機嫌になるという理由もある)。彼はちょっと偏屈で少し堅苦しいが、頭が良くて根がお人好しなのでみんなのお父さん的な役割になっている。
モノ子「こんにちは、先生!お姉ちゃんはポニ子ちゃんを迎えに行くから先に準備しててって」
モノ江「ふふ、そう言うわけだから先生、少し外すわね」
先生「了解したよ、モノ江、ポニ子のことよろしくね、気をつけていってらっしゃい」
窓「先生~、ティーカップっていつもの所?」
先生「…窓付き、持ち主の前にティーカップに会いに行くのは不躾ではないのかい?」
窓「あっこんにちは、先生。あっ!この知らないお茶の葉使ってもいい?」
先生「まど…いや、もう何も言うまい、お茶の用意は僕がするから君は食器とお茶請けの準備をお願いするよ」
窓「ありがと、先生、モノ子ちゃんケーキ用意するよ~」
モノ子「あいあいさー!」
こんな調子でお茶会の準備を進めて行き、ちょうど終わった所でモノ江さんが帰ってきた。
窓「あれ?ポニ子ちゃんは?」
???「まああああああどおおおおおつううううきいいいいい」
窓「ぐえっ!」
今乙女にあるまじき声をあげさせた緑の衝撃はポニ子ちゃん、金髪ポニーテールでみどりの服、茶色いスカートの女の子で性格は明るく一直線、楽しいこと大好きでなぜか私を見つけるとタックルをかましてくる、不意打ちだったのでダメージが大きい…後でケーキを強奪してやろう。
窓「ちょっとポニ…」
ポニ子「おお!今日はケーキなのね、またモノ子が作ったの?」
モノ子「うん、そうだよー今日は桜のジャムをつかったケーキだよ」
先生「へぇ~桜かぁ、そんなもの咲いている場所なんてあったかな?」
モノ子「いままでなかったんだけど、ちょっと前に白黒の世界に、いっぱい生えてきたみたい」
先生「なるほど、窓付きが楽しそうなことと関係があるみたいだね」
ポニ子「よくやったモノ子ぉぉぉおおおお!」
…必殺ポニ子タックルの第二の被害者はモノ子になったみたい
モノ江「あんまりモノ子をいじめないでね…;」
窓「…とにかく始めようか、お茶会」
ポニ子「はーい、ポニ子さんはもう着席済みです」
ポニ子がいつの間にか席に着く。
先生「やれやれ、カップは割らないでくれよ」
先生が呆れながら席に着く。
モノ江「ふふふ、あなたたちはいつでもたのしいわね」
モノ江さんが一瞬で席に着く。
モノ子「あたたたた、首が取れるかと思ったよ…」
モノ子が頭をさすりながら席に着く。
窓「さて、始めようか」
私が席に着き、お茶会が始まった。
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人の夢というのはよくファンタジーで描かれるような生易しいものではない、人の意識と無意識の嵐を進んでいくのだから生半可な精神力ではこちらが侵食されていき、最後には自分が何者かすら思い出せなくなる者もいる。夢の世界は内容の意味でも、世界の広がりの意味でも、その主人を中心に展開されており、本人以外が理解することは難しく、また本人から離れるほど世界は曖昧になり、足場さえなくなる。要するに何も知らない者にとってはこれ以上もない理不尽空間ということだ。しかしわかっているものにとっては、これ以上ないほど便利なものであるが…
幾千、幾万の夢に入ってきた私にとってこの窓付きという少女の夢は異端そのものだった
(なんでこんなに安定しているのかしら?まるで別世界として存在しているように)
この世界の住人はそれぞれ意思を有しているらしい、人の脳にそれほど処理能力はないはずはないのに、普通の夢は所詮、自分か過去の記憶との会話をなぞる程度、それぞれ意思を持たせるのは不可能なはず。
(やはりただの人間ではないのかしらね…)
変わった生物やオブジェクトのあいだをすり抜け、隙間をすり抜け、窓付きの元へと近づいていく。どうやら目の前の宇宙船?の中にいるようだ
隙間を開いて観察をする
(紅茶とケーキ…お茶会かしら?現実と姿が変わってないのなら、手前にいるのが本人かしらね、人数は…本人をいれて5人いるみたい、とりあえず挨拶してみようかしら)
部屋の中に大きく隙間を開きするりと現れる。
紫「ごきげんよう、楽しんでいる所失礼するわね」
窓「あれ?新しい住人?ひさしぶりかな?はじめまして」
紫「…あんまり驚かないのね?一応はじめまして、でいいのかしら」
窓「ここで突然出てくるくらいで驚いたら心臓持たないよ~、そんなことよりいつものあれしなきゃね」
モノ江「先生の二の舞にならなきゃいいけど…」
紫「あれ?」
あれとは何かしらね?新しい住人とかいっていたし、何か洗礼のようなものでも行うのかしら?特殊な夢の中とはいえ能力はなんの制限も受けてはいないみたいだし何があっても、大丈夫よね?
ん…住人?
紫「ちょっとわたしは…」
窓「えっと全体的に紫色で綺麗なお姉さんだから~むら美さんかな」
紫「えっ…むら…いえ、さっきなんていったのかしら?」
窓「むら美さんって言ったんだけど?ほかの名前がいいのかな?」
紫「い、いえその前っ!」
窓「紫色で綺麗なお姉さん?」
紫「……!!!」
この子は大切にしよう、何者にも代えても…そう私は誓った。
モノ子「ねえ、おねえちゃん、あの人なんでふるえているの?」
モノ江「ふふ、あなたもきっと大きくなったらわかるわ」
モノ子「私って大人になれるのかなぁ?」
モノ江「窓付き次第ね」
紫「…ゴホン、いえ、私は外から来たのよ」
窓「そと?別の扉の世界?」
紫「よく分からないけど、多分違うわ。現実世界、あなたが起きている時に見ている世界よ」
窓「え…またまた~そんなわけないよね」
顔に余裕がなくなって来ている、わかりやすいわね。
紫「幽々子には聞かなかったのかしら?ここはもうあなたの常識が通じる世界ではないのよ?」
窓「幽々子さんのことを知っている?え、まさか本当に?」
紫「私は彼女の友達で、あなたの夢にはいりこんでいるの」
窓「えええええ???!!!そ、そんな!そんなことできるんですか!?」
紫「私の能力なのだけどね、ふふ、やっと驚いてくれたわ」
窓「…うう、幽々子さんの友達ならと、すんなり信じられる私が恨めしい」
よかった、思ったより話が通じる子みたいね。
紫「いきなり入ってきてごめんなさいね」
窓「いえ、私の方こそいきなり失礼なことを…」
先生「そう言う言葉遣いもできるんですね」
ポニ子「こっちの窓ちゃんも素敵…」
窓「…先生、ポニ子ちゃん、うるさい」
紫「ふふ、仲がいいのね。私がここにきたのはあなたに聞きたいことがあったの…とりあえず本題に入りましょう」
窓「本題ですか?」
紫「そう、本題。といってもひとつ聞きたいことがあるだけなのだけどね」
紫「あなたは幻想郷にとっていかなる存在になるつもりかしら?」
窓「幻想郷…?」
紫「幽々子の奴…本当になんにも話してないのね…」
全く幽々子ったら最近マンネリな日々が続いているからって外来人に何も告げずに…
そんな中悠々と寝ていたこの子もこの子なのだけどね…
紫「あなたが知っていることを話してもらっていいかしら」
窓「はい…分かりました」
そこから彼女の話を聞いた。色白というには白すぎる、長髪の女の子が私の分のケーキと紅茶を持ってきて、様相はお茶会の続きになっていた。
紫「…なるほど、気づいたらもう冥界にいたのね」
窓「はい、死んだこと以外はよくわかってなくて」
紫「私にも引っかかるところはあるけど、あなたはいろいろと勘違いをしているみたいね」
窓「えっと?どういうことですか?」
紫「あなたは死んでないわ、おそらく死ぬ直前にあなたからすれば異世界、幻想郷という別世界に飛ばされてきて、何かしらがあり冥界にきたの」
窓「えっ、嘘?そんな…」
紫「あなたは私が『神隠し』で連れてきた人間じゃないわ、正真正銘現実にはじかれてきた本物の幻想。あなたが自殺をした理由は聞かないわ、でもこの幻想郷はどんなものでも受け入れる世界。あなたは第二の人生と受け入れて…」
窓「ちょっと!ちょっと待ってください…何を言っているかさっぱり…」
ひどく混乱している様子ね、まぁいきなり夢の中に入ってきた女性にあなたは異世界に飛ばされましたなんて言われて、混乱しないほうがおかしいわね。というより普通はおかしな夢を見ているなくらいに思うものなのだけど、この夢の世界は彼女にとって結構な重みがあるみたい。
紫「だいぶ混乱しているみたいね、…まずは幻想郷についておしえるわね」
窓「いや!そんなことはどうでもいいんです!幽々子さんは無事なんですか!いや彼女は死んでいるとして…あなたは!いやそんなことよりまずは起きなきゃ…」
紫「ちょっと落ち着きなさい、何をいっているの?」
窓付きはガタガタと震えながら頬に手を伸ばそうとしていた、私はその手をとり、瞳をのぞきこみ強くそう言った。何をしようとしていたかはわからないが、明らかに様子がおかしい。彼女の激昂に対しその夢の世界がなんの影響を受けていなのもひどく不気味に思える。
窓「いや、すぐにはなして!早く起きないと、あなたも無事ではすまないんです!」
紫「もしかして寝てる時に起こる干渉のこと?なら大丈夫よ」
窓「へ?」
紫「そのへんも含めてゆっくり教えてあげるわ」
窓「は、はい…」
表情をころころ変える彼女の表情は一番呆けた顔のまま固まってしまっていた。