障子越しにまばゆい光が差し込み、目が覚めて体を起こす、一瞬、今いる状況に驚くが、昨日の出来事を思い出し、今いるのはあのアパートではないことを認識する。昨晩はなにかひどい目にあった気がするがあれは記憶の奥底にしまっておこう、夢の中に出ないことを祈るばかりである。
窓「ん~よく寝た」
さっきまで夢を見ていたので、私的には常に動いている錯覚に陥るが、すっきりしているのでしっかり休息は取れているのだろう。我ながら便利な体である。これを利用すれば睡眠学習?ができるので、本に夢中になった時とかに利用していたことがある。不思議なことに全て内容を把握してなくても、自室に置いた本は夢の中にもそのまま出てくるらしく、そのまま読める。更に、先生のところには持っていない本まで置かれていたので重宝していた。私の夢はただの記憶の編纂作業ではないということだろう、現代医学が通じると良かったのだがそうもいかないらしい。
さっきまでいた夢ではお茶会の続きをやっていて、これまでの事、これからの事をみんなと話していた。先生とモノ江さんは少々驚いた顔をしていたが、話を進めていくうちに納得したようだった。なにか考えがあるようで、二人で話し合いをすると目覚める時に言っていたので、少々不安ではあるが概ね反応は良好であった。モノ子は妖怪のことや、幽霊のことのような、おとぎ話みたいな出来事に目を輝かせていた。夢の中も非日常のオンパレードのようなものなのに、そこは別枠なのだろうか?ポニ子ちゃんは話を聞き終わったあとに、考え事をしながらブツブツとつぶやいていた。耳をすませると、ライバルが…、いやでも…まとめて頂いちゃえば…などと口走っていた。なんのことかよくわからなかったが、禍々しい笑みを浮かべていたのでどうせろくでもないことだろう。
妖夢「窓付きさん、起きてらっしゃいますか?」
寝ぼけた頭でそんなことを考えていると、妖夢さんが障子越しに声をかけてくる。人に声をかけてもらえるの自体、長い間無かったものなので、いまだに少々違和感がある。昨日から思っていたことだが、私のコミュニケーション能力は予想以上に衰えているらしく、顔を見て話すだけでも非常に緊張してしまう。運動しないと筋肉が落ちるように、人と合わないと喋れなくなるのだろうか…。まぁ元々得意な方じゃないことはさておくとする
窓「はい、今さっき起きました!」
妖夢「朝餉の用意が整いました、準備が出来ましたら昨夜の部屋へとお越し下さい」
窓「分かりました」
そういえば、妖夢さんがあんなに若い女性とは思わなかった。私より少し上に思えるけど、それでも少女とも言える年齢っぽいのに、あんなに凛とした雰囲気を持てる彼女に少し憧れを覚える。でも話してみるととても話しやすい方で、結構表情がコロコロ変わる所を見ると、案外可愛い人なのかもしれない。
昨晩のことなのだが、当然の如く今の私は着替えなど持ってないため、同じ服をきてお風呂から出たのだが、それを見た妖夢さんが替えの服を持ってきてくれた。一瞬ここでは浴衣を左前に着る方が正しいのではないか?と思ったがやめておいた。私は寝巻きの浴衣から枕元においてある(昨晩妖夢さんが持って来てくれていたのだろ)桃色の浴衣を着る、赤色の帯を巻くのに四苦八苦していると、なかなか来ない私の様子を見に来た妖夢さんが、手伝ってくれる。ここまで真っ赤になったのは久しぶりだった。
やわらかい朝日が差し込む廊下は、見た目に反して冷たかっく、つま先に立ちになりながらしばらく進むと、昨晩夕食を頂いた部屋へと付く。そこでは紫さんと幽々子さんが先にご飯を食べていた。二人は昨日あんなに飲んでいたのに二日酔いになっている様子もなく、美味しそうにごはんを食べている。飲んだことはないので分からないけど、以前読んだ本に書いてあったアルコールの致死量はこの二人にはほろ酔い程度の量なのかもしれない。まぁ人基準だからなぁ
窓「おはようございます幽々子さん、紫さん」
幽「おはよう、窓ちゃん。遅いからもうたべちゃってるわよ~」
紫「窓付きおはよう、可愛いじゃない、その浴衣似合っているわよ」
紫さんのセリフで顔が赤くなる。が朝ごはんの量を見ると逆に青くなる。苦労してラスボスを倒したら第二形態があったみたいな気分だ。
幽「ふふ、早く食べないと冷めちゃうわよ~」
窓「は、はい!」
その後幽々子さんに助けてもらいながら、量がおかしい朝ごはんと格闘し、辛勝するというドラマがあったが、おおむね平和な朝だった。冥界のご飯は量がおかしい、これはメモしておこう。
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紫「そろそろあの子も暇な時間帯だし、行きましょうか」
正午を少し回ったところで紫さんがそういう。縁側で幽々子さんと妖夢さんに、庭について説明してもらっていた私は二人にお礼をいい、紫さんのもとへと向かう。
窓「昨日言っていた場所ですか?」
紫「ええそうよ、ちょうどいい頃合だからね」
窓「分かりました、ここからどれくらいかかるのでしょうか?」
紫「私の能力があれば10秒もかからないわ、でも歩いて行ける距離じゃないし、ここにはしばらく来られないと思った方がいいわね」
窓「えっそうなんですか?ということは幽々子さんと妖夢さんとはお別れですか?」
ある場所とは聞いていたものの、幽々子さんたちと会えなくなるほどとは思ってなかったため急に寂しくなる。
幽「あらあら、せっかくの美人さんなのにそんな顔しちゃだめよ、今生の別れじゃないのだから、またあえるわよ~、まぁ死んでからも会えるかもしれないけどね」
そう言って幽々子さんは頭を撫でてくれる、子供扱いされているのだろうけど…すごく安心する。ただ言っていることは物騒だが
窓「はい…色々とありがとうございました!このお礼はいつの日かさせていただきます」
幽「そんなに気負わなくてだいじょうぶよ。でも、お土産ならおいしいものがいいわ~」
窓「…分かりました」
一人で持てる量だろうか…
紫「お別れもすんだことだし行きましょうか」
紫さんはそう言うと扇子で空中を軽くないだ。そうすると中空にリボンで両端を留められた大きな裂け目ができ、紫色の空間が現れる。空間の中には多数の目がこちらを覗いており、じっとこちらを覗き込んでいる。
…かわいい
紫「このデザインの良さがわかるとは見所あるわね」
窓「あっ…!」
いつの間にか声に出ていたようだ、妖夢さんがなにかを言いたそうにこちらを見ている。やはり思ったことをすぐに声を出すのはいけないようだ。彼女のように自制心を持ちたいと思った。
紫さんに手をひかれながら不思議空間を進んで行くと、神社の境内のような場所へ出た。ほんとに一瞬のことなのでびっくりする。周りを見渡すと鳥居がたっておりよく見ると博麗神社と書いてある、ここで生活するのだろうか?とても歴史がありそうな社がこちらを見下ろしている。
紫「霊夢ー、いるー?」
???「縁側にいるわ」
紫「あら、せっかく玄関に来たのにお出迎えしてくれないのね」
???「賽銭箱の腹の虫で聞こえないわね、止めてくれたら聞こえるかも」
紫「さぁ窓付き、縁側は向こうよ、行きましょうか」
窓「は、はい…」
妖夢さんに色々聞いたときに教えてもらったのだが、紫さんは相当な大物らしい。私的には優しいお姉さんで大恩人とういう認識なのだが、一般的ではないらしい。そもそも幻想郷の管理者という時点でもう少し意識しておくべきだった。異世界の神的な存在なのだろう。その人にあんな態度をとっているってことは今縁側にいる人は只者じゃないのかもしれない。今までが冥界の管理者、幻想郷の管理者、だったから次は神社界の管理者とか…うん、神社界ってなんだろう、うーん、「世界中の神社は我が神社の分社に過ぎない!!」とか?
???「ねえ、紫、神社界ってなに?」
紫「さぁ?今度作ってみましょうか、面白そうだし」
???「あんたがいうと洒落になんないから、やめて」
窓「はうわ!あ、あのすいません」
また声にでていたようだ、反省しなくては…今日は顔が赤くなってばっかりだ。縁側にいた人は女性で、脇の大きく空いた巫女服?のような格好だった。綺麗な黒髪が大きなリボンに止められており、可愛い印象の服装だが、本人の雰囲気のせいもあってか、全体的には健康的で格好良いという印象だった。幻想郷には美人な人が多いのだろうか。
???「なんか面白い子ね」
紫「ふふ、幽々子が拾ってきた外来人の子よ。」
???「へぇ~、幽々子がねぇ、でなんで連れてきたの?あんたなら自分で返せるでしょ?神隠しって雰囲気でもないし」
紫「特殊な事情があってねぇ、しばらくこの子のこと預かって欲しいのよ」
???「え!?なによそれ、神社は宿屋じゃなんだけど、そういうのなら慧音が妥当なんじゃないの?」
紫「そうも言ってられないのよ」
紫さんが事情を説明する、私も完全に把握できていないので一緒になって聞いていると不意に紫さんと目が合ってドキっとする。やっぱり自分のことなのにもうちょっとしっかりしなきゃなのかな。
???「事情はわかったわ、でもうちの神社にそんな余裕はないわよ、第一私も暇じゃないのに」
紫「この子の生活費、食費もろもろはこっちで持つわ、報酬として貴方の分の食費も出します、さらに結果いかんでは追加報酬も…」
???「丁重にもてなさせていただきます!!」
紫「あなたも現金よね…」
???「にしても随分肩入れしているわね、あんたにしては。またどーせなんか企んでいるんでしょ?」
紫「あらあら、親切が売りの妖怪ですもの、これくらい当たり前ですわ」
???「いつから親切の意味が変わったのかしら」
紫「食費」
???「さすがー妖怪の賢者様はお優しくていらっしゃるー」
紫「…まぁいいわ、細かいところと費用もろもろは後で藍に届けさせるから、大体三日後くらいかしら」
???「わかったわ」
紫「それじゃーね、窓付きまた会いましょ」
窓「え、置いていくんですか!?」
紫「だから言ったじゃない私には用事があるって」
窓「うぅ…いままでありがとうございました」
紫「まぁ霊夢に任せればなんとでもなるわ、頑張ってね」
そう言うと、紫さんは例の空間に消えていった。いきなり二人きりになる、気まずい。
窓「あの、本当にいいんですか?」
霊夢「大丈夫よ、一旦受けたことをほっぽり出すようなことはしないわ、それに貰う物
はしっかり貰うつもりだし」
窓「…すいません」
博麗霊夢(以下霊夢)「わたしは、博麗霊夢、呼び方は好きにして頂戴、ともかくよろしくね」
窓「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
霊夢「そんな、構えなくてもとって食ったりしないわよ。いつまでも突っ立てるのもなんだし、縁側にすわって待ってなさい、お茶持ってくるわ」
窓「は、はい」
苦笑いしている霊夢さんにうなずき、縁側へと座る。落ち着かなく、博麗さんと霊夢さんどっちで呼ぼうかなーとか、紫さんの用事ってなんだろうなーなんて考え事してると、存外早く彼女が戻ってくる。急な来客には慣れているのだろうか。
霊夢「緑茶でいいわよね、他に選択肢もないけど」
窓「ありがとうございます」
霊夢「落着いたら神社を案内するわ、しばらく住んでもらうわけだしね。あとは神社の雑務なんかも一緒に説明するから」
窓「分かりました、あんまり要領はいいほうじゃないんですけど…できることはさせていただきます」
霊夢「気にしないの、働くだけましよ」
窓「分かりました…頑張ります、霊夢さん」
霊夢「よろしい、外来人にとっちゃ不便かもしれないけど気楽にね」
窓「はい…お世話になります…」
お茶を飲み終えたあと、神社の案内をしてもらった。驚いたことにこの幻想郷には現代生活に必須の水道、電気、ガスなどが通ってないらしい、タイムスリップした気分だ。モノ江さんちモノ子ちゃんにに習って、軽い自炊ならできるのだが流石にかまどは扱えない。お風呂の炊き方も分から無い、買い物も道もわからないし、霊夢さん曰く、妖怪に襲われるらしい。そんな調子で扱えないものを除いていくと、できることは掃除くらいになってくる。申し訳なさそうにしていると霊夢さんが、修行の合間に教えてあげるわよ、どうせここから出たら必要になるでしょうし、と言ってくれた、本当に頭があがらない。修行開始はここに慣れる、藍という人が来る、というのを踏まえて3日後からということになった。
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紫様の冬眠、それは式神である私、八雲藍にとっては一種の戦争である。紫様が起きていらっしゃる間はおもに結界の監視や、日常的な雑務、我が式である橙の教育など、おもに補佐的な業務をこなしていくが、紫様が冬眠されている間はそうもいかない。幻想郷で起こる表立った抗争から、秘密裏に行われる会合、些細なトラブルまで監視し、時には排除といった内政的行為や外界からの食料調達、工作などの渉外的なことも、こなさなくてはいけない。紫様が冬眠なさることは知られているので、それに合わせて面倒事を起こす輩が増えることも頭痛のタネだ。もちろんなんの準備もせずに冬を迎えると悲惨な目に会うのは目に見えているので、様々なシカケを行う。それによりこの時期は冬眠前とは言え、猫の手も借りたい状況なのだ、実際に借りているのだけど…。それはさておき、そんな状況にありながら紫様は一人の外来人のことを調査している。普段ならありえないことなので相当な曲者かと思いきやそうではないらしい。冬眠前は眠気で不機嫌になりがちな紫様が上機嫌なのだ。不審に思い、紫様にお聞きすると、彼女は将来博麗大結界の維持に関わる第三の立場になるかもしれない子よ、とおっしゃっていた。そんな人間が現れるとは私には到底信じられないことだが、紫様がそうおっしゃるのだからそうなるのだろう。だが、どういう意味だろうか?私が思案にくれていると、博麗に手紙と小包を渡すよう命令された。そうね、ついでに彼女の情報を式で送るから、なぜ彼女なのかそれを踏まえてあなたなりの答えを見つけなさい、期限は特に決めないわ、とおっしゃられた。やはり、紫様に隠し事はできないらしい。いい機会なので実際にこの目で見極めようか。
橙に留守を頼み、自分はスキマを使い博麗神社に来た。境内に箒を持って掃除をする巫女服の姿を見つけたので、霊夢かと思い近づくがその背が小さいことに気がつく。先ほど送ってもらった情報から判断するに、どうやらあれが窓付きという外来人らしかった。おそらく霊夢のお古を着せてもらっているのだろう。まだこちらに気づいてはいない様子である、いきなり近づいては驚かせてしまうので、まずはここから声をかけてみようか。そんなことを考えていると彼女の手が止まり、鳥居の方をじっと見ている、なにかあるのだろうか?いや、そんなことを考えている暇はないか。
八雲藍(以下藍)「おーい、約束通り来たのだが、霊夢はいるか?」
窓「きゃっ、え?どこ、どこにいるんですか?」
藍「こっちだこっち、顔をあげてみてくれ」
窓「空飛ぶ?きつねさん?幻想郷は巫女さんだけじゃなく、なんでも空をとぶのですね」
結局、驚かせてしまった。次は階段の下に出て、ゆっくり登ろうかと思ったが、そこまで気を使う必要はないだろう。
藍「驚かせて済まない、私は八雲藍、紫様の使いだ。霊夢はいるだろうか?」
窓「は、はい、あなたが藍さんなんですね、話は聞いてます。霊夢さんは、今日はいいお天気なので洗濯ものをしてます。今呼んできますね」
藍「ちょっとまってくれ」
窓「どうしましました?」
藍「いや、なんでもない」
窓「…?分かりました」
三つ編みの髪を翻して、神社へとかけていく、やっぱりただの女の子ではないか。これからどういう道筋をたどるのだろうか、想像はできないが、少なくとも今の姿からは、あれが博麗、八雲と並ぶとはどうしても思えない。うむ、発想を逆転させてみよう、あの子がどうやって第三の器になるのかを考えるのではない、人間をどうしたら第三の器にするのかを考えよう。まずは…
霊夢「どうしたの?そんな顔して」
いつの間にか霊夢が来ていたようだ。不覚にも気づかないほどに考え込んでいたらしい。
藍「ん?いや、なんでもないんだ、すまない。今日なのだが紫様様から手紙と小包を預かっている、手紙の方は読んだら燃やしてくれ、だそうだ」
霊夢「…ふーんわかったわ、小包の方は?」
藍「ああそっちには窓付きの生活費、報酬、通信符が入っている。」
霊夢「なるほどね、まぁ手紙の方を読めばわかるでしょ」
藍「ああ、細かい判断は任せる」
窓「?」
藍「私はこれで失礼する、これでも忙しいのでね」
首をかしげる彼女はさておいて、早く戻らなくてはいけないまだ冬眠の準備は終わっていないのだ。紫様から課題の提出はもう少し延期させていただこう。