カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
息抜きも兼ねて投稿!
ファッキン。
生まれて来た時に最初に発した言葉はこれだった気がする。
転生した、先がアメコミ世界なのはまぁいいだろう。別に前世の記憶なんかほとんどないし、あるとすれば好きな漫画やコミックの話くらいだ。よっぽど人生が嫌だったに違いない。
……それか、そう思い込まされているバケモンか、まぁどっちでも関係ない、生きる分にはその二つに大差はないと断じれる程度には俺の性格はさっぱりしていた。
まぁ、それは実は別に問題ではない。
本当の問題、俺はレイヴンクロフトで生まれて、バケモンの子として育てられて、表に出れば孤児院に放り込まれる。
もうこれで察するやつは察するだろう。
そう、俺の名前はクレタス・キャサディ。
そう、スパイダーマンのヴィラン、カーネイジである。
なんで???????????
ふざけんなよマジで、せめて天才、とかそういう設定あるやつにしろよ。ただのサイコパスの殺人鬼じゃねぇか!!!!
そう嘆きながら幼少期を過ごし、幸にしてそんなに問題を起こすことなく。ああ、あくまで俺の過ごす環境においてな?
虐めてきたやつの指を折るくらいはしたけどさ、まぁそれくらいならいいだろ? 殺してないし、殴ってきたんだし反撃するのは俺の“自由”だ。
だからまぁ、多少の問題児扱いはされても特に問題なく。無駄に有り余る体力でなんとかして、孤児院のガキ大将をやりながら、すくすくと成長し、シスターに泣かれながらハイスクールを卒業し。
今現在、NYでキッチンカーでケバブ屋をやっているわけなのだが。
困ったことに、シンビオートとも、犯罪とも縁遠く、それなりに真っ当な生活をしている俺の目の前に、頭から血を流している女の子が転がっている。しかも、なんか見覚えがある。
「……………………マジ?」
多分、スパイダーマンだ、なんか、パワードスーツみたいなのも転がってるけど。しかも、女の子だ。
黒髪に、鈍い金色の瞳。血に染まっていても、何処まで美しい月の光のように光っている。思わず、立ち止まって、息を呑む。
華奢な身体が、パワードスーツから投げ出されるように横たわっていた。思わず、抱き上げる。
「…………救急車……は不味いよな……ファーストエイドキットは置いてあったよな……」
これでもNYのケバブサンド屋では人気店である、人だかりもできるくらいには人が集まるため、なんかあった時のために置いておいてくれると助かると警察の人に頼まれておいておいたやつがあったはずだ。車の中に、彼女を運び込む。
「おーい! 大丈夫か!?」
肩を叩く、頭を揺らさないように。
「……ううん……えっと……ここは……」
「閉店直後のケバブ屋だよ! 喋れるな! 今応急処置するから!」
といっても、傷口を消毒して、清潔なガーゼで抑えて包帯を巻くくらいしかできない。幸い、血が止まらないほどの深い傷はないようだ、脳震盪らしい。
「…………ああ、ごめんなさい、ありがとう、えっと……あっ」
自分の状況に気がついたのか、慌ててマスクを探す目の前の少女に、ため息をついて。
「何にも見てないよ、写真も撮ってないし、明日には忘れてるさ」
「……あの、いや、でもえっと……」
「これでも善良な市民でね、それに、たまに稼がせてもらってるお礼だ」
スパイダーマンが活躍すると、かこつけて新商品出したりして売ったりしてるのだ、肖像権とかその辺り緩くしてくれてるのは様々だね。
「あのっ、その、ありがとう!」
慌ててその場を去ろうとする少女を制して、努めて笑顔で、話を続ける。
「おっと、怪我人がさっさとどっか行こうとしない! ちょっとくらいゆっくりしていきなよ」
ここはキッチンカーの中、キッチンカーといえど、実は友人に改造してもらったちょっとしたトラックだ、あんまり使わないが、キャンピングカーのような生活空間もあるし、実は結構スピードも出る。
「……ええと……えっ、車の中?」
「そ、キャサディズ・ケバブサンドだ。知ってる? 最近は結構宣伝もしてるんだけど」
「あ! 知ってます! お肉たくさん乗せてくれる!」
「そうそう」
実際は肉を使い切らないと面倒だからなんだけど、その辺りは企業秘密だ。
「……今、なんか食べられる?」
怪我人に言うべきセリフではないかもだが、スパイダーマンだし、意外と元気そうだから一応聞いてみる。
「……夕飯食べれてなくてぇ……」
しょぼしょぼした顔になる、そんなに忙しいのかヒーロー……と取り敢えず今日の余りで作った特製賄いケバブサンドを手渡す。
「ほれ、美味しいぞ」
「えっ」
「それ食べたら帰んな」
「…………ありがとうございます!」
「おう、お疲れ様」
ケバブサンドを、目を見張るスピードで食べ終えると、すぐに少女はボロボロになったパワードスーツを着て去っていった。
……怖かった〜〜〜〜〜〜〜!
ここまでの人生スパイダーマンと関係することなんかなかったのに、急に!?!?
終わりだ、こうなったら気がついたうちにシンビオートに寄生されてハイブマインドでおかしくなって殺人鬼になっちまうんだ、終わりだ俺は。
思考が迷走する、冷静に考えてそんなわけなさすぎるが、そんなことも起こるかもしれないのがこの世界である。
これでも色々避けてきたんだ、スコーピオンがニュースに出たらその辺避けて営業したり。明らかに治安が悪そうなところで絡まれたらすぐルーク・ケイジか警察に電話したり。
ところでパワーマンって名前ダサくない? って言ったらエグいデコピン喰らったのが懐かしい。
あ〜〜〜〜とりあえず店閉めて家帰ろ……
そう、家持ち、賃貸じゃないしガレージもある。この世界のNYのいいところは、家が安いことである。本当に安い、だって毎日誰かしらが犯罪起こすからね。
オーケー、じゃあ最初から説明するね。
私の名前はペニー・パーカー! ミッドタウン高校に通う17歳!
放射性の蜘蛛に噛まれた時から、蜘蛛の能力と、機械と精神感応できる能力を得たこの世でたった一人のスパイダーガール!
……まぁ、表向きにはスパイダーマンって名乗ってるけど。
ほら、アイアンマンってカッコいいでしょ? リスペクトってことで!
ベン叔父さんが亡くなって、メイおばさんに育てられて……あの日から、ヒーロー活動を続けて……
この間は、トニー・スタークに誘われて、アベンジャーズとも戦った! ……キャプテン・アメリカと戦ったのはちょっと大変だったけど。
その後しばらく……色々と喧嘩したりして、今ちょっと一人でヒーロー活動中。
トニーはいい人だけど、ちょっと過保護だと思う。なんて思ってたら、謎の飛行するヴィランに叩き落とされて気絶するどころか、SP//drから降りちゃってた!
……そんなところを、お兄さんが助けてくれたみたい。クレタス・キャサディって言ってた……何処かで見た覚えがあると思ったら、最近バズってたケバブ屋さんのお兄さんだ!
綺麗な緑色の瞳に、端正な顔つき、細身だけど筋肉質で、長くて綺麗な赤毛を後ろで纏めているから、何処か美人な女優さんにも見えるって話題になってた。
孤児院育ちで、色々大変だったけど、今はチャリティもやってるとか、なんか友達が言ってた記憶がある。
私も人並みにかっこいい人は好きだし、それで確かに綺麗だなと思ったので覚えていた。
……ちょっとあの丸サングラスと、季節感のないシャツは胡散臭いけど、でも、優しくしてくれたし、助けてくれたあとも私の話は一切していない。
ちょっとSNSを監視していたせいで、友人に勘違いされてしまったけど、まぁ、それくらいだ。
調べてみたら、聖人君子ってわけでもないらしいけど、精々ちょっと浮気してビンタされてるところを写真に撮られているくらいだ。
……でも、私のことはちゃんとSNSの宣伝材料とかにはしてないらしい。まだ、わからないけど、まぁ、今度尋ねてみよう。
「ペニー、最近その人ばっか見てるけど、もしかして春の到来?」
「ネッド、そういうのじゃないよ」
「冗談、活動に関係してる?」
「そんなとこ」
「そっか、なんか調べることあるんだったら手伝うけど」
「大丈夫、その時は言うよ」
「いつでも頼れよ〜? 我らの道」
「我らの道!」
ネッドもドラマ見たんだな、後で詳しく感想話してみようかなと、スマホを閉じる。
「さて……今日は何処までパトロールしよう」
もう放課後だ、近くのビルの屋上へと登って、アーマーの用意と、アーマーを外してしまった時のためのマスクをつけて。
「……そうだ、この状態で会ってみなきゃ」
ウェブを飛ばして、空を駆ける。
……また、閉店間際に会いに行こう。
不安と、何かの予感を抱えながら。
その日は、何もかもいい一日だった。
ケバブは夕方には売り切れるし、この前知り合った女の子からは思わせぶりなメッセージが来ているし、なにより、常連からいい酒を貰った。
まだ22そこらだけど、お酒はそれなりに好きだ。一等いいテキーラだ、そんなに高い酒という訳でもないが、メキシコに長く住んでた奴のおすすめだ、きっと美味しいだろう。
上機嫌で、車を走らせて、ガレージに停める。鍵をかけて、降りて、内のドアじゃなくて表に出て、少し道を歩く。郵便受けの確認ついでに、少し散歩だ。
NYの夜道は危険と言えば危険だが、まぁ、表通りを歩く分には問題ない。何があっても、ヒーローか警察が来る。
……だから、普段は人がそれなりにいるはずだったのに、今日は少ない。
嫌な予感がして、足早に家路に急ごうとして。
空から、何が音がする。
それは、きっと俺に紐つけられた宿命のようなものであると、それを視認する前から気がついた。
黒い、夜空よりも黒く、そして赫い、何かが降ってきていた。
隕石? ああ、ある意味ではそうなのだろう、きっと、そうなのだろう。
ファッキン、クソッタレなマーベルの神め、ロキか? ロキとかにキレればいいのか? デッドプールでもいいけどよ。せめてエディに寄生しろよまず!
その物体が、俺にぶつかる刹那が引き延ばされても、出てくるのは悪態と世を呪う言葉ばかりだ。
「誰がスーパーヴィランなんかになっブヘッ!?!?」
顔面に直撃した。
せめて、もうちょっとドラマチックな当たり方をしてくれよ。
シンビオートは、困惑していた。
赫い触手を侵食させ、宿主の精神と融合する、ハイブマインドから学んだように、そうして繁殖をするか、あるいは星そのものを自らの生まれた星のように作り変えるか。
そう考えていたのだが、この男の精神は、いささか奇妙であった。なぜ己を知っているのか、なぜ己を拒否しているのか、そして、何故、拒否した上で、受け入れようとしているのか。
「……っだってめっ! ようやく喋れるようになった!」
『驚愕。何故私と精神のみで対話可能?』
「気合いだよ気合い! あーマジで……今まで妙なことと全く関わらなかったのに……!」
『……そもそもお前の精神が妙、おかしな知識。お前も、ハイブマインドに接続している?』
「違うよ、もっと変なとこからやってきただけだ。全くもう、それで、何しにきたんだよ地球に」
『未定、宇宙空間を彷徨ったことは?』
「ある訳ないだろ」
『あれは嫌』
「そうかい」
ハイブマインドと接続していても、この世界に、シンビオートは一個体しかいなかった。
故に、孤独でない状態を知りながら、生まれた時から孤独であったこの個体は、無意識に地球へと流れ着いた。
「じゃあいいよ、もう、来てしまったもんはしょうがない」
『何故? 何故? あなたは感情の増幅を嫌う』
「元々好きなように生きてんだ、あんま変わらねぇよ。主食は?」
『アドレナリン、タンパク質、フェネルチルアミン』
「そうかい、今度は牛の一頭買いでもするか……」
『無用の心配、代謝を必要としない。活動を抑えれば、食料は抑えられる』
やけに協力的だ、妙な奴であるとクレタスは思う。
「……なぁ、なんか、お前変じゃない?」
『肯定、この宇宙において私は単一個体。故にハイブマインドに従い増える個体とは思考経路が異なる』
「……そんな流暢に喋れるのも、そのせいか?」
『肯定、単体しか存在しない故に、ハイブマインドからあらゆる言語を学習』
……なるほど。
要するに、暇すぎる上に友達もいないからインターネットだけ見てたせいでこうなったと。
『失礼、私はあらゆるシンビオートの中でも屈指の知性を誇る』
「カタコトでもないしすぐに人食おうとしない時点でわかるよ」
『……推奨、そういった発言を続けるよう』
褒められて喜んでいるらしい。なんというか、意外と可愛いやつかもしれない。
「OK、OK、じゃあ、俺はいつ目覚めるかわかるか? 天才ちゃん」
『否定、天才ちゃんではない。個体名をつけることを推奨。そうしたら目覚めて良い』
「あー? あー……」
なんだこいつ、ガキみたいなことを言い出したぞと考えて。
単一個体、宇宙を一人で彷徨った生物はたしかに子供みたいなものかと思い直す。ならまぁ、面倒を見てやらなきゃならない。
俺が、そうであったように、何処にもいることができなかった子供は、せめて誰かが抱きしめてやらなきゃならない。
遠い記憶の中で、孤児院のシスターが、泣きながら俺の頬を張ってから、抱きしめた記憶が蘇る。
ああ、なんて人は不自由なのだろう、という怒りと、悲しみに暮れていた心に、寄り添った人の記憶。
「そうだな、そうだ。俺は、まぁ、道を踏み外しはしなかったけど、クレタス・キャサディだしな」
「俺たちはカーネイジ、カーネイジでいこう」
『……大虐殺は、センスがないのでは?』
「ちげーよ、今はそういう意味だけどな。元の意味はな『肉食、あるいは食肉』って意味だ」
『ふむ』
「俺はケバブ屋、ピッタリだろ?」
『肯定、悪くないセンス』
『では、
「おっと、ストップ、確かに今のは俺たちの名前だが」
『はい』
「お前の名前が必要だ」
『……? 不要、私はシンビオート、この宇宙において個体識別は……』
「気分の問題なの! いいか、この居候娘! お前の名前はダリアだ! 赤いしな!」
『……先ほど貰った酒の名前では?』
「いいんだよ!」
『では、決定。それと、そろそろ目覚めた方が良い』
「あ?」
『強盗らしき人間に囲まれている』
「ああ、そういう街だったなクソッタレ!」
「おい! 殴られたのか? ……起きねぇな、財布取っちまおうぜ!」
「お、結構金持ってるじゃねぇか……あん? なんかの売り上げじゃねぇかこれ? ははは、やったぜ! 今日は好きな酒飲もうぜ!」
クレタスを囲んでいたのは、ギャングにもなれないようなチンピラたちであった。無論、このNYで悪党をやる以上、それなりに荒事慣れはしているだろうが……
少なくとも、気絶していたはずの男から触手が飛び出してきて、首を締められるのは予想がつかないだろう。
「……はっ!? ぐっ、あがっ……!?」
「……り……あげ……」
「な、なんだよこいつぅ……!?」
「売り上げぇ──────!!!!」
自営業にとって最も許せない行為をしたなテメェ……! という怒りのままに、クレタス・キャサディは瞬く間に
全身を赤黒い組織が包み、まるで、アーマーを纏ったかのような人型へと姿を変える。だが、その全身はまるで刃か、棘のように鋭利で、体から生える触手の先には槍や剣のような部位が形成される。
「テメェを串刺しケバブにして食ってやろうかぁ!? あぁ!?!?!?」
「ひぃぃぃぃ!? バケモノ……!?」
「こちとら毎日毎日毎日毎日余った肉食って稼いだ売り上げをちょろまかそうとはいい度胸だなぁ…………」
『話が脱線している』
「……そうだな」
『とりあえず食べよう』
「あー……ダメだ、ダメ」
『……何故?』
まるで、大人に叱られた子供のように触手がしょんぼりと下がる。
「お前の初食事は、モレ入りの牛煮込みだ、そっちの方が美味いぞ?」
『なるほど、ではこちらの不味そうな個体はその辺に捨てるね』
数度、チンピラたちが地面に叩きつけられる。その度に「ぐえ」と情けない声が上がるが、どうやら死んではいないらしい。ちなみにこれは全く操作してないのでダリアが勝手にやっている。
「……お前、なんか子供っぽくなってないか?」
『……否定、少しあなたのイメージが混ざった影響』
「否定できてねぇじゃねぇか」
「……おお、もうやめとけ、ミンチになるぞそいつ」
『了解』
ぽい、とチンピラが地面に捨てられるのを見届けて、取り敢えず、難しいことは忘れて飯でも作るか……と顔を上げると。
「あの……」
…………なんかいる。
具体的には、スパイダーマン。
「…………はろー」
「は、はろー……? それ何? パワードスーツ?」
「さっき降ってきたエイリアン、寄生された」
「????????」
「わっかんないだろ、俺もわからん」
「えっと…………何かあったら相談乗ろうか?」
「……優しいなお前……」
流石、スパイダーマンなんてことをわざわざやっているだけある。
「…………あっ、そうだ、昼間のお礼しに来たんだった。はいこれ」
ぽい、と投げられるのは小さなワイヤレスイヤホン。
「私のお手製だけど、防水、耐衝撃性抜群! あと私の電話番号に直通だから、何かあったら連絡できるよ!」
「昼飯代にはちょっと高すぎるな……あ、飯食ってく?」
「え、いいの?」
「おう、ちょっと、これの話とかしたいしな。アベンジャーズの科学者とかに知り合いいない?」
「いるよ?」
『これとはなんだ、これとは』
「うわしゃべった」
これがまぁ、スパイダーマンとの出会いで、カーネイジの始まりだ。
まぁ……そのあとどうなったかというと、3人で飯を食って、トニー・スタークとビデオ通話することになって。
「宇宙生物の一人や二人今更珍しくもない」
という一言で放置された。……多分嘘だろうが、まぁ、命の危険とか実験台行きはなさそうだ。
さて、ここから何の話をするかって?
色々だよ、色々、手始めにそうだな……
スパイダーマンじゃなくて、ペニー・パーカーと知り合ったということ。
それと、彼女が友達の父親と殴り合いをする羽目になったから、手伝ったことから説明しよう。
あとはそう、彼女のホームカミングの成功を手伝ったりね。
不器用な男と素直で善良な女の子の恋愛っていいよね。