カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
そして恋路にも一旦の決着です、もちろん、これから色々あるでしょうが!
長いようで短い一章でしたが、ここまで読んでくださってありがとうございました!
でも、ここからだいぶ続くんじゃ。
事件の翌日、私、ペニー・パーカーは憂鬱な気持ちで部屋の天井を眺めている。理由は……まぁリズのことだ。ネッドも、気にしてくれているのか私のことを気遣って、ちょくちょく連絡をしてくれている。
バルチャーの逮捕後、彼の会社はセルゲイ・クラヴィノフと呼ばれるロシアの財閥の社長直々に買い取られた……らしい。その手口は兎も角、技術力自体は凄いので政府と取引して、残った社員さんたちの生活も保証してくれたそうだ。
なんか、クレタスさんの友達らしくてリズや、リズのお母さんの生活の支援まで行ってくれるらしい。
裁判は……一応、怪我人が出てないこと、メインが窃盗であること。密売に手を出した経緯にダメージコントロール局の強引な手出しがあったということで多少は情状酌量の余地はあるけど、実刑は免れないそうだ。司法取引や、技術供与で、それなりに刑期は短くなりそうとは、弁護士の人が言っていたらしい。たしか……マット・マードックさんだったっけ。
……リズは、転校するつもりだったみたいだけど、私達で励まして、応援すると約束した。幸い、フラッシュが音頭をとっている間はいじめなどが起こることはないだろう。
あれはそういうところで頭が回るし、頼りになる。そう言ったら、なんか照れてたけど。
だから、そう、限りなく上手くいった、と思うんだけれど。
やっぱり、どうにもいい気分はしない。
それは私が甘いからなのだろうか、スタークさんならそう言う気がする。
……あと、それに加えて不安がもう一つ。
ホームカミングが、週末に迫っていることだ。
今更になって、私だけ楽しんでいいのだろうか、とか、先輩の調子は大丈夫なのかとか、頭がぐるぐるして回らない。
「もうドレス着る練習、3回もしちゃった」
何もやる気が起きなくて、手持ち無沙汰だからってバカみたいだ。
先輩はまた病院に蜻蛉返りして、栄養輸液を受けながらご飯を沢山食べている。
そもそも血の量が減ってたから、ダリアが代わりに酸素を運んでたとか意味不明なことを言っていた。どういう体の仕組みなんだろう……
「……大丈夫かなぁ」
「や、大丈夫、大丈夫」
「……それならよかっ……え?」
窓から、最近聞き慣れる様になった声が聞こえる。
「やあ、ちょっと忘れ物してて」
カーネイジの姿となった、先輩が窓から来ている。何故か、真っ赤な薔薇の花束を持って。
「……病院は!?」
「窓からちょっとね、すぐ戻るし、どうせ明日退院だから」
「えぇ……?」
本当にどういう仕組みなのだろう。というか、この花束は一体……? と首を傾げていたら、すいっと、変身を解いて窓から入ってくる。
「はい、誘うならマナーだろう?」
ばさり、と花束を渡される。
「コサージュは当日でいいよな?」
「え、ええと、はい」
薔薇の花束って、そんなキザなことをするような人だったっけ。あわあわと赤くなった顔で、なんとか花束を受け取って。
「……えっと、これって」
「好きだよ。じゃあ、また週末」
「へ」
それだけ言って、逃げるように窓の外へ飛んでいってしまう。
「…………???」
ダメだ、思考が停止している。寝よう、早いけど。
『弱虫、意気地なし、まぬけ』
「……年下の子に、あれ以上言ったらまずいだろ……」
『部屋まで乗り込んでいる時点で同じ』
……時間は当日。
普段着ないような高級品に身を包んで、パーティの為の食事は既に学校の裏方の人に預けて。コサージュを片手にそわそわとペニーの家の前で待つ男が一人。ちなみに、車もトニーに借りた真っ赤なオープンカーである。冷静に考えて、おんぶに抱っこすぎないかと自問するが、ここまで来て今更帰ることも出来ない。
「あら、あなたがペニーのお相手?」
「あ、はい、どうも。OBやらせて貰ってて……」
メイおばさん、だろう。ペニーに写真を見せてもらったことがある。先に出てきたということは、俺を見にきたのだろう。
「……ふぅん」
……バルチャーに爆破された時より緊張する。
『ふっ』
鼻で笑われた、寄生エイリアンにこの気持ちはわからんだろうに……!
「……あと3年待ちなさいよ」
ごすん、と、肘を車に思い切りぶつける。
「いっ……保護者としてそれはいいんですか!?」
「いいわよ、ダメだったらこうよ、こう」
ジェスチャーが怖い、確実に殺るモーションの拳だ。
「……大事に、されてるんですね」
「勿論よ! たった一人の家族なのよ」
ああ、少しだけ羨ましい。まだ、ドレスを着ているのであろう彼女を待ちながら、そんなふうに考えて。
「……あなたも、いたんでしょう? そういう人」
「いやぁ、どうでしょう」
「……わかるわよ、優しそうだもの。ありがとね、色々。最近あの子、ずっと楽しそうだわ」
なんというか、するり、と心に入り込んでくる人だ。なるほど、こんな人と一緒にいるなら、あんな優しくなるのもわかる。
「だと、いいんですけどね」
「……あら、来たわよ」
「すいませーん! 遅れちゃいました!」
とたとたと慣れないヒールを履いて、しかして上手く歩けているのは流石の運動神経というべきか。
思わず、目に入ったその姿に、見惚れる。
真っ赤なドレス、フリルを沢山あしらったそれは、一輪の花のようなシルエットで、金色の瞳が、その中でキラキラと輝いている。
「ね、綺麗でしょ」
「ええ、綺麗です」
「……えっ!? 急になんですか!」
「見た通りのことを言っただけだよ」
びっくりしているペニーへ、近寄って。コサージュをつける。赤と黒いの混じった、ダリアのプリザーブドフラワーで作られた花飾り。
「……えっと、ありがとうございます。じゃあ、これを!」
ブートニア、同じ花で作られた花飾りを胸へとつけられる。
「……えへへ、お揃いですね」
ニコニコと笑う姿に、思わず余計なことを口走りそうになるが、口をつぐむ。
「それでは、責任もってエスコートさせて頂きます」
「よろしくお願いします!」
あえて大仰に振る舞って、ニコリと笑う。パタパタとメイおばさんへとペニーは手を振って、車に乗り込む。
「────あの」
「ん」
車が走り出して、学校までの道を行く。なにかを聞きたそうに、俺の袖をペニーが引っ張る。一体、どうしたのだろう。
「この前の、どういう……」
「……」
黙ってしまう、いや、多分、花束を渡した時のことなのだろうけど。
「言った通りだよ」
「……好きなんですか?」
「……」
「大人だから、黙っているんですか?」
「着いたよ」
大人だから、ちょっとズルく話題を逸らして。手を引いてパーティ会場へと連れて行く。
「あ、ペニー!」
「あ、ネッド! MJ! リズも、楽しんでる?」
「勿論! 今年は向こうに並んでる食べ物も美味しいぜ」
「やった! もう食べた?」
「うん、あ、クレタスさんも食べるなら向こうだけど」
「あーいや、作ったの俺だから、いいや」
「なるほど!」
「と、いうわけで踊ってきます! みんなも楽しんで!」
ペニーはそう言って楽しそうに踊るみんなに混ざって、今度は向こうから俺の手を引いて行く。
軽快な音楽に合わせて、手を繋いで、二人でリズムに乗って、ただ二人で見つめ合う。
「返事、聞いてません」
「──3年後じゃダメ?」
「ダメです」
しまった、思ったより強い。それはそうか、スパイダーマンだもんなこの子、当然だ。
『ん、大魔王からは逃げられない』
茶々を入れている相棒にため息を吐いて。ダンスをしながら、物陰へと手を引いて。
ダリアが、何かを察したのか首元の装置をぽちぽちと押して、光学迷彩をONにしている、多分柱の影に入って視線を切って、不自然にならないように周りには見えないようにしてくれているのだろう。
声も外には聞こえない。トニーの作ったガジェットは、こういった用途にも使えるらしい。ダリアが、黙々と操作しているのは、新しいおもちゃをもらって遊んでいるような感覚らしい。
「……先輩、質問に……うむぅ」
深呼吸して、意を決して。抱きしめて、口を塞ぐ、唇で。
「……!?!?!?」
びっくりしているのがわかる、うん、俺もびっくりしている。
「……こういうことです」
「…………ばか、変態、すけべ」
「えっ」
ポカポカ殴られ始めた。いや、痛い、ポカポカとかいう擬音じゃないこれ、どかどか言ってるんだけど、筋力すご。
「……高校生だよ、私」
「うん」
「ダメなんだよ、こういうの」
「……まぁ、今更じゃない?」
無許可ヒーローに、捕まってないけど、元殺人犯だ。
「でも嬉しい、どうしよう。先輩が犯罪者になっちゃう」
「ああ、大昔なったことあるよ。7歳の頃」
「だから、これが」
最初で、最後だと言おうとして。
「……知ってます」
「──────」
それは、困る。いつだ? いつ、いや、自力で?
「……私、確かに信じやすいし、騙されやすいかもしれないけど。好きな人のことくらい、調べるよ」
いつのまにか、敬語も使わなくなって、べしべしと胸板を叩く強さが増している。まずい、本当に肋骨折れるかもしれない。
「でも、それでいうなら、私も同じ。私も、おじさんのこと助けられなかった」
「それは、違う。それは違う、ペニー・パーカー。君は、お前は、助けられなかっただけだろ」
違う、そんなことを言いたいわけじゃない。泣いているわけでもない、思わず、彼女の手と、肩を掴んでしまう。
「俺は、殺したんだぞ。殺したんだ、願われたから、笑ってくれるからって、首を切って、殺したんだ」
美しい、記憶だ。これを、美しいと思ってしまう自分が嫌だった。
俺の手にナイフを握らせて、そして、手を添えてくれた母の温かさ。春の日の、暖かい太陽の下で、俺に微笑んでくれた彼女の顔。
そして、切り裂かれた喉から、真っ赤な花が咲いて。それが、俺に触れた時の熱を。
そうして、約束の通りに、首を切り取って、抱いて眠った、あの日の記憶。
怖いんだ、あれが、恐ろしい記憶でないことが。あれが、美しい、思い出のように思えてしまうことが。だって、母が俺に願ってくれた数少ないことだったから。
そうして、助けられたはずの命を奪った罪を抱える俺に、お前を好きになる資格なんてないから、少し、離れようとしていたのに。
「うん、でも、助けられたのに、助けられなかったのは、おんなじでしょ」
ぽん、ぽんと、背中を叩かれて。今度は、ペニーからキスをしてくる。今度は、長いキスだった。二人の体温が、お互いに溶けるくらいに。
お互いに、暖かい気持ちが流れ込んでくる。これは、彼女の力なのか、いいや、多分、それだけではないのだろう。
「先輩、泣き虫だね、私もだけど」
「────」
「私も言うね、大好き。だから、うん、怖くないよ」
「────怖いよ」
「私、スパイダーマンだもん! いざとなったらパンチ!」
「……歳の差あるし、いや、俺が言うなって話だけど」
「バレない! けど、怖いから言わないようにしよう。あと……まぁ、そういうことは再来年まで隠そう」
「しないよ……」
「……しないの?」
「……しません」
怖い、思ったより怖いこの子。泣きながら、そんな風に笑って。
「ありがとう」
「こちらこそ、まだまだダメなヒーローで、女の子だけど。よろしくね」
にこりと、微笑んで、その笑みが今まで見た何よりも美しいと思えて。少しだけ、心が軽くなって、もう一度だけキスをした。
『ん、痴話喧嘩終わった? そろそろ戻らないと怪しまれる』
「んぷ、あ、そうだね。ありがとうダリア!」
『ん、計画通り』
「……ん?」
「いえい」
疑問に思った瞬間に、スマホを見せるペニー、そこには見知らぬアカウントとのチャット履歴。いや、思い切りダリアと書かれているアカウントだった。
『無知蒙昧、知らないのか、メールアドレスさえあればアカウントは作れるし、連絡はできる』
「………………お前なぁ……」
「えへへ、手伝って貰っちゃいました」
どうやら、最初から蜘蛛の巣に連れて行かれていたらしい。
その後、パーティは恙無く終わり。全てが終わった後。
「さっきのって冗談だったりする?」
「……人並みに興味はあるんだよ」
さっきから頑張ってやっているタメ口はちょっと新鮮で可愛らしい。
「…………トレーラーなら多分、バレないから」
「……ええっと、はい、じゃあ、いつか!」
あ、逃げた、いざとなると怖いらしい。安心して、この感じで三年逃げ切ろうと決意した。
……なお、2週間後に、力ずくで敗北した。
────アベンジャーズ、本部にて。
「と、いうわけで」
「彼女には断られたが、君はアベンジャーズに入れ」
「……いや、俺も、親愛なる隣人ってことで、いいですかね?」
「ダメだ、というか、入ってくれないと困る。立場がふわふわなんだ。別に来なくてもいい、いざという時はわからんがね、はい決定。給料も出るぞ」
「え、マジ?」
「マジだ、アベンジャーズ本部の部屋も使える」
「あ、それはいいです」
「なんでだ! 君のちょっと小綺麗なアパートよりずっと豪華だぞ! 隣がヴィジョンなのが嫌なのか?」
「いや、シンプルに仕入れ先と販売場所が遠くなるから……」
「……通勤にヘリはどうだ」
「いらないです」
「……じゃあわかった、私のインターンその2で」
「……いいですね、お揃いで」
「……よし、ではこれにサインを。ところで、彼女に手は出してないだろうな」
「……出してませんよ」
「……いいだろう、F.R.I.D.A.Y.アーマーとソニック・リパルサーを」
飛来するアーマー、両腕には、高周波を発する非殺傷武装、ソニック・リパルサー。何故知っているかって? 今照射されたから。
「殺す気だ!!!!」
大人気ない保護者から逃げ回ることになったが、まぁ、ご愛嬌だ。
というわけでホームカミング編と、恋路に決着がつきました!!!
そしてインフィニティウォーとエンドゲーム編もやります!!!
3日から1週間ほど書き溜めタイムを貰ってからまた更新を始めようかと思います。
実は親愛なる隣人杯に参加するということで、ホームカミング編で終わらせる予定だったんですけど、思ったよりずっと好評で喜んでもらえたので、ちょっとお休みいただいてから続きやらせていただこうも思います。
なので、書き溜め一切なくて毎日書いてたんですよね、ちょっと大変でした……!睡眠時間がね……!
少し休憩したら必ず続き書くんで、よろしくお願いします!!!