カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
嘘です、プロット考えてたらDr.ストレンジとソー・バトルロイヤルの話をちょろっとしたくなったためやっていきます。
目標、ロキ生存。
……好きな女の子がヒーローになり、俺はアベンジャーズの見習いみたいな扱いになり。
なんともまぁ、夢みたいなことばかりが起こっていたが、まぁ、そんな事件ばかりが毎日毎日起きるわけじゃない。いくらここがマーベルの世界であっても。
つまり、今日も今日とて労働である。別口で給料が出るからと言って、本業を疎かにするわけにはいかない。だって待ってくれる人がいるからね。
というわけで、今日は配達だ。最近は……恋人、うん、恋人が手伝ってくれるから楽になったけど。
スパイダーマンがたまに宅配してくれるので話題になって、最近売り上げいいです。バイト雇っちゃおうかな! ってはしゃぐくらいには。
この話をしたら。
『…………ダメ、ダメ! 先輩人気あるんだから女の子がいっぱい来るよ! しばらく手伝うからバイトは雇わない!』
と、怒られたのでしばらく無理だろうけど。
ちなみにうちは配達とキッチンカーを日替わりでやっている。睡眠時間は……最近マシになったからノーコメント。
さて、今日の深夜の配達先は……ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区グリニッジ・ヴィレッジ地区ブリーカー・ストリート177A。
「……ん?」
『疑問?』
「……どっかで見たことあるような……」
袋を片手に、スマホから顔を上げて建物を見れば、やけに豪華な建物が聳え立つ。
「ああ、お待ちしていました」
ドアを開けるのは、坊主頭の美人のお姉さん。……見たことのない服装だが、僧侶とかそういった印象を……印象を……
あれっ、ここ魔術師の聖域じゃない?
…………エンシェント・ワン???????
エンシェント・ワンってうちのシャワルマチキンと新メニューのチミチャンガ食べるの???
「……何を驚いているのですか、私とて食事もします。このあとお時間は?」
「……幸い今日最後の配達ですけど」
「ええ、そうでしょうね、では、お茶などいかがです?」
「……えぇと、はい……?」
『ひえ』
ダリアがちょっと怯えている。そんなに強いのか。
『ん、多分不意打ちなら勝てる。でもよーいどんなら絶対勝てない、実質不意打ちも無理。首に、タイムストーンつけてる。というかダークディメンジョンの匂いがすごい、私あれ嫌い、創造主思い出すから』
インフィニティストーンか、もうあんまり覚えていないがとにかくすごい石ということは知っている。
「────敵意はありませんよ、ただ、話がしたかっただけです」
「……ただの一般ケバブサンド屋に?」
「ええ、ただの一人の青年に」
微笑みが崩れることはなく、そして、それが本心からの表情であることもすぐに分かった。なすがままに応接間へと通されて、席に着く。
「お茶……よりはジュースの方が好きでしょう、どうぞ」
なみなみ注がれたコーラの入ったグラスが手元に現れる。なんでもありだな魔術って。
「ええと、ありがとうございます。それで、何か、聞きたいことでも」
「いいえ、ただ、様子を見ようかと」
「……?」
「随分、穏やかになっていますね。良いことです」
お茶を飲みながら、配達した俺の料理をもそもそと食べている。食べる姿も絵になるとは、なんとも浮世離れした人だ。
「……まぁ、色々ありましたし。色々、吹っ切れまして」
「まだ、血の匂いは晴れませんか」
「ええ、晴らすつもりもないですけれど」
「いいでしょう、背負うことを知っているなら、何も言うことはありません」
頷いて、少し間を置いて。
「あなた、これからそれなりに苦労をすることとなりますが……」
「待って、聞きたくない」
「聞いても聞かなくても同じですよ、そうですね。偏屈な医者と、老人に会ったら親切にするといいでしょう」
「ああ、もう嫌な予感しかしない話だ」
「……それと、お礼を、感謝します」
「……なんの?」
「一月ほど先で」
「ああ、じゃあ聞かない。どういたしまして、コーラ美味しかったよ、でも、スプライトの方が好きかな」
「……おや、それは知りませんでした」
「うん、だから話を聞いたんだ」
多分、本当に必要なこと以外は見ていない誠実さを信じて。
「一つだけ、頼みごとがあります。ヌルの落とし子よ」
『………………何』
物凄く嫌そうな声で、ダリアが表に出てくる。
「いつか、剣を拾いに行きなさい」
『えー……』
「アレをあなたが捨てたことで、歪みが生じています。……そうですね、いつか、機会はあるでしょう。星の海の果てまでは、私は見据えることはできませんが、少なくともそうなるという流れには逆らわないほうがいい」
『……いらない、重い。あと、パ……創造主思い出すから嫌』
「……まぁ、なんだか知らんが、お前の忘れ物なら俺も取りに行くよ。そんなに嫌がるなよ」
『……仕方ない。まぁ便利なのには違いない』
何やら、以前記憶で見た剣らしいが、どうやらいつか拾いに行かないといけないらしい。……見た感じ、相当強そうだったけど、あれ使わないといけないくらい強い敵とか出てくるのだろうか。
「……まぁ、いろいろご馳走様でした。あ、お支払いは……」
「おや、カードで支払い済みですよ」
「……至高の魔術師もクレジットカード使うんですね……」
それが、ひと月前のこと。
そして現在。
「なぁ、ペニー」
「どしたの先輩」
「これって異常事態だと思う?」
「バッチリ異常事態だね!」
ここNYに、ミラーディメンジョンに飲み込まれた哀れなカップルがいた。まぁ俺たちのことなんだが、デート中だったというのに。
遠目に見えるのは、マントを纏ったインテリで、天才っぽくて、目がキラキラしたお兄さん。なるほど、Dr.ストレンジだ。
なるほど? この前言われた意味深なセリフってこういうことか。
「おー、鏡……いや、幾何学的に次元を対称に……?」
空間が折り畳まれている様子を見ながら、何が起こっているのかを脳内で計算しているらしい、相変わらずの超絶天才である。
「その辺俺は全然わからないのでパス」
「先輩も私とおんなじくらいできるでしょ!?」
「俺の専攻、生物学っ!」
「えっ意外」
「食品科学も生物学なんだぜ、ペニー」
「なるほど!」
軽口を叩きながら、ペニーはリュックに入れたアーマーを纏い、俺はダリアを表に出してカーネイジへと変貌する。
そして、奇怪に変貌していく時空の隙間を、糸と触腕で二人で駆け抜ける。
「ねぇ! どっち助けたほうがいいと思う!?」
「あっちのマントの方! お得意様!」
「OK! 未来の旦那さんの売り上げ減ったら困るもんね!」
「ぶふっ」
思わず咳き込んだ、まだ2年くらい早い!
「ハロー! 悪そうな魔法使いの皆さん! お元気!?」
ペニーと共に、触腕を束ね、スイングして、鏡に映る世界へと飛び込んで、四方八方から襲いかかる魔術師たちを叩きのめす。
「……なんだ、お前は」
「おっと、乾燥肌? いい化粧水とクリーム教えようか?」
『ん、ダークディメンジョンの影響。顔の皮を剥いだ方が早い』
目元が物騒な会話をしている相棒と可愛いパートナーを横目に、偏屈そうなお医者様に声をかける。
「……あー、ニュースとか見る? 助け必要?」
「……今は助かる!」
流石、ニュースは見ていたらしい、これでも二人ともニューヨークではそこそこ有名人だ。市内で大人気ってほどじゃないけど。
「それじゃ、手伝おうか」
カエシリウス、とストレンジが呼んでいたのは聞こえたから、それがこの顔にヒビが入った魔術師のことだろう。
不可視の刃を両手に、こちらに迫る。おそらくは、今展開されているミラーディメンジョンと同質の、結界のようなものを刃にしているのだろう、直感的にそう理解した。
『ん、多分そう、次元の揺らぎがある。宇宙空間を遊泳する生物には必須の技能』
「宇宙怖」
軽口と共に、右腕を変化させたブレードでカエシリウスの魔術を砕く。
「なっ……!?」
『暗黒は私の生まれ場所』
「だそうで」
理屈はわからないが、ギャリギャリと組織が刃筋に沿って流動する刃が、無数の飛び交う魔術を切り裂いていく。
「……古代の邪神の落とし仔か、間の悪い……!」
「何? そんな大層な二つ名を……うおっ!?」
即座に、眼前の男は魔術を切り替える。翳された掌から放たれるのは不可視の衝撃、同時に、炎の如きエネルギーが魔法陣の形を持って放たれる。
「先輩!」
ペニーのSP//drから放たれたウェブが、俺の身体を引き上げて、なんとか回避する。だが、衝撃のダメージは抜けず、まだ視界が揺れる。
「────大丈夫!?」
「大丈夫、とりあえず、あの偏屈そうな人のカバーに……!」
少し目を離した隙に、次々に景色が組み替えられていく。ビルの壁面が折り紙のように複雑に畳まれ、広がり、奇怪な景色を生み出していく。
当然魔術師たちはそれに対応しきれず、追い詰められている。おそらく、三次元的な戦闘に慣れている人間がいない。マントがあるドクターはともかく。
「まっずいな……あ?」
即座に、違和感を覚える。構築される風景が、志田に平らに、そして空中に舞台のように組み上がっている。
降り立つのは、額に紋章の浮かんだ、エンシェント・ワン。即座に次元を組み替えて、巨大な一枚の円形舞台を作り出す。
「……わお、流石は至高の魔術師」
「……なにそれ?」
「チキンサンドと、緑茶が好きなお客様!」
二つに裂けたビルの壁面を駆け上がっえ、舞台へと、二人で降り立つ。どうやら、ダークディメンジョンの力がどうだので揉めているらしい。
「……取り込み中?」
「……色々とな」
『なんだ、知らなかったの。ドルマムゥから力吸うなんてそんなに変なこと?』
「……知り合い?」
『ん……んー……? 父親の知り合いの変な触手に追い出されたおじさん……?』
なんだそのやらかした噂の親戚みたいな距離感は。
「部外者が我々の話に……」
「どうでもいいけど、取り敢えずそこの顔面ひび割れを止めてからにしようか」
無数の透明な刃、数度受けて、先ほどより理解が増した。アレは空間というより時間のズレを利用したものだ、平面上に数秒のズレを発生させて、切断する。
時間の壁だ、硬いわけだ。
『だから、こうする』
全身の表面が滑らかに流動する。高速で、一見すると表面が液体に濡れたように見えるかもしれない程。
「────待て、落とし仔よ!」
『ん?』
「永遠だ、闇が世界を覆えば、全ては永遠になる! お前の生まれた暗黒と同様な世界に戻るのだぞ!」
ああ、どうやらそういう思想らしい。ドルマムゥとやらは、不老不死だったりなんか、そういうのをお題目に掲げて尖兵を差し向けているといったところか。
『ん、訂正。ダークディメンジョンの本質は時間が存在しないだけ、だから縛られない。そして、私の生まれた暗黒にあんなうるさいのいない』
『あと、あそこには、美味しいご飯がない』
「だってさ」
躍りかかり、流体を循環させた右腕の爪を振るう。金属が削れるような甲高い音と共に、弾かれる。だが、刃は砕けている。
「お、いけた」
『むふー』
ドヤ顔が思考いっぱいに広がる、ドヤ顔というか裂けた笑顔だが。
「……!?」
「超限定的に時空連続体を裂くなら、常に微小単位で高速に振動と流動すれば、反発するだろう? 思考と言葉で魔術を制御するなら、なおさら“斬る”のは難しいんじゃない? ……だそうです」
「あ! 私がさっきから通信してるアドバイスそのまま言った!」
後ろで指差しているペニーにサムズアップして。
「────撤収する」
いつのまにか懐から出していたリングを回して、ポータルを開いて撤収する。背後では、エンシェント・ワンがすでに手勢の半数を叩きのめしていた。
「……助かりました」
「本当に? 一人でもなんとかできそうだったけど」
「ええ、ですが、無事ではすまなかったでしょうね」
「……そうなの?」
よくわからないけど、どうやらそういうことだったらしい。
「それで、内輪揉めは終わりそう?」
怪訝そうな目でエンシェント・ワンを見つめる二人の魔術師に首を傾げながら、問いかける。
「────助力、感謝する。アベンジャーの一員だな?」
「いや、見習いインターンだから違うけど」
「……まぁ、それはいい。エンシェント・ワン、あなたがカリオストロの書の禁術を使ったことについてだ」
「……全てを守るために、道理を踏み越えました。大義のために」
「だが、我々には禁じている! 私はあなたを信じて……」
何やら責め立てているのは、どうやら弟子の一人らしい、まぁ理由はわかるっちゃわかるけど。
「すごいプロなら危険だけど使えるもの、出来ない人に渡すわけないでしょ。教授とかスタークさんが私になかなか実験器具触らせてくれなかったのと同じじゃない?」
あっペニー。なんてこというの、多分その通りだけど。
「……我々は、研鑽を積んだマスターだ! 十分に魔術の危険性も、使い方も理解している!」
ああ怒った、それはそう。
「わぁーごめんなさい! そんなつもりじゃなくて……!」
わたわたとしているペニーと、何やら怒っている魔術師の間に入る。別に悪人ではなさそうだから、止めはしないけど、一応。
「……でも、その……黙って説明しなかったのは良くないと思いますよ……?」
俺の背中からひょっこりとアーマー姿で顔を出して、エンシェントワンにそう発言する。うん、それはそう思う。
「…………」
なんかバツの悪そうな顔になっちゃったよ、三人とも。とりあえずDr.ストレンジには声をかけておこう。
「とりあえず、これ畳めます?」
「……ああ、やろう」
急速に世界が戻っていく。NYの見慣れた街並みだ。
「……ああ、そうだ、俺たちは帰りますけど。あ、その前に」
しゅぽん、という効果音と共に、目の前の未来の至高の魔術師のポケットに通知音。
「連絡先、置いとくんでよかったら電話してください。魔術師もスマホ使うんですね」
さて、これが魔術師たちとの出会いなわけなんだが。
「あのー!? まさか翌日、しかも香港に連れて来られるとは思わなかったんですけど!?」
「……先輩!? これって密入国だよね!? どーしよ……おばさんとスタークさんに怒られる……!」
まさか、すぐに動乱の香港デートになるとは。
エンシェント・ワン、いい人だけど言葉が足りなさ過ぎる人。