カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
さて、昨日まではただのケバブ屋店主やってたカーネイジだ。
クレタス・キャサディでもいいけど、まぁ、平和は遥か遠くに消え、俺の目の前には、もちゃもちゃと俺の特製煮込み料理とトルティーヤを食っている少女と、同じくそれを食べている寄生生命体。
「…………それで、ダリアちゃんはシンビオートっていう宇宙人なんだ」
『肯定、人かどうかはともかく』
「まぁ、意思疎通できるし。いるんだねぇ宇宙人、あ、ねぇねえやっぱり銀河帝国みたいなのってあるの?」
『否定、フォースの使い手は見たことがない』
「スターウォーズわかるの!?!?」
『我々は記憶を同期している、その結果だがエピソード3が好き』
「人の記憶で違法視聴するなよ、スターウォーズを」
ガールズトークにしては若干マニアックだが、共通話題ができるのはいいことだ。
「アソーカ見た?」
「見た見た、CWの時も思ったけどナイトシスター強くね?」
『暗黒面は素晴らしい』
「お前がいうとなんか嫌だな……」
話が脱線しすぎている。
「……まぁともかくとして、俺のこれはまぁ……経過観察だ。なんか俺が悪いやつになったらボコボコにしていいぞ」
「ぱっと見全然大丈夫そうだけど」
『肯定、特に人を害する気はない』
「さっき人食おうとしてたんだぞ」
「えっ」
呆れて、ため息をつきながら二人にコーラを注いでやる。
「……ま、人よりチキンブリトーの方が好きそうだな」
冷蔵庫から勝手に俺の朝飯を取り出して食べているのを眺めて笑う。
「……それで、昼間はなんで倒れてたんだ?」
「あー……なんか、空飛んでる……バルチャーって呼んでるんだけど」
…………バルチャー、なるほど、最近見た覚えがある。
「ふーん、なんでそれ追ってるんだ?」
「…………んーと、色々と、認められたい人がいるから。それで、頑張って捕まえられたらなって」
「……」
なーんか、焦ってるような気もするが、別にそこまで踏み込むこともない。事情も知らない男に同情されることほど嫌なことはないだろう、とりあえず、アイスクリームをおまけで出しておく。
「よくわからんけど、まぁ焦らずにな」
「……むぅ」
体重……などと呟きながら悩ましげな表情でアイスクリームを眺めている。あれだけ動いたら別に太りそうもない気がするが、レディとは繊細なものだと笑う。
『鍋が無くなった』
「おい! お前それ明日の夕飯の分もあったんだぞ!?」
こっちは食い過ぎである。
さて、そんなこんなで食事は終わり、少しばかりお節介を焼きすぎたし、時間ももう遅いとペニーの保護者に連絡をして、家に帰らせる。
……明日の仕込みは料理の横で終わらせるつもりだったが、流石に色々ありすぎたので臨時休業だ。
SNSにその旨を投げて、ベッドに寝転がる。天井を眺めていれば、視界の隅に、これから同居することになる奇妙な隣人がこちらを覗き込んでいた。
「……なんだ?」
『バルチャーの正体、知っている?』
「まさか、いっつも昼飯を買いに来てくれる気のいいお得意様の社長さんなわけないだろ」
『それは、知っているのでは?』
「知らないということにしとくのさ、義理も付き合いもあるしな」
俺がまだ店を作った頃からうちの飯を買ってくれる人だしな、まぁ……後ろ暗いやつなんていくらでも居るのがこの街だ、いちいち指摘する気もない。
「……ま、死にそうになったら、引きずって逃げるくらい手助けするかね」
今や俺はカーネイジだ、でも、悪党になるつもりはないが、別にヒーローをやる気もない。ただ、隣人が大変そうだったら助けてやるくらいの人情はある。
『…………提案、多分私は彼女より強い』
「……ん?」
『彼女か、バルチャーを食べる。解決』
「ダメに決まってるだろ」
『冗談。私たちの倫理観に合わせるならば、スパイダーマンを助ける?』
「……なんでだ」
『映画の趣味がいい』
「いいこと言うな、お前」
どっちにもいい感じになるように、出来るだけ手伝ってやろう。なに、悪い奴らの知り合いというものは意外と居るものだ。
『……普通のケバブ屋では?』
「そうだよ、でもな、どんな悪人でも飯は食うんだぜ」
仕事用のスマホではなく、私用のスマホを出して、コールする。
「ああ、もしもし? ヴァルチャーってわかる? うん、うん、そう、もしかしたら、あの人んとこ無くなるかもだから、そうなったら色々面倒見てあげてくれない?」
『……誰に電話を?』
「俺の知り合いの一番のお金持ち」
会話をしながら、脳内でダリアと会話をする。電話先はとあるロシア貴族の末裔の……闇社会も色々知ってる財閥社長。
ちょっとばかし、アフリカ旅行中に仲良くなって、今ではたまにこっちに来る時にも食べに来てくれるいい人だ。弟さんとも仲良い、最近喧嘩したらしいけど、色々と仲裁に駆けずり回ったらなんか家族ぐるみの付き合いになっちゃった。
『ああ、わかった。しかし、なぜお前がそんなことを?』
電話越しに聞こえる太い声、相変わらずムッキムキらしい。弟さんが「いいよね、兄さんはムキムキで!」と喧嘩したのもわかる。あいつはあいつでモノマネ上手すぎて俺からしたら羨ましいけど。
たまに配信に来ると歌が異様に上手いので嬉しい、再生数が増えるから。
それはともかく。
「友達が、巻き込まれそうでね」
『……そうか、わかった。話を聞く限り、俺に損はなさそうだ。他になにか頼んでもいいぞ?』
「や、いいよ、返せない借りは作らないタイプなんだ。今度新メニューの実験台になるだけでいいよ」
『…………』
ものすごく嫌そうなため息が聞こえてきた。激辛ブリトーチャレンジはもう二度としないのに。
「もう激辛やらないって! ……ま、今度ディマとよろしくな」
『ふっ、ああ、あいつも会いたがってるよ。最近忙しいからな』
今同接凄いもんなあいつ、やっぱり歌とモノマネが上手いのは強い。
「いつでも、二人ならいつでも7割引だ」
『タダじゃないのかよ』
「材料費くらいは貰わないとな?」
二人して笑って、そうして通話を切る。
『…………マフィアのボスと、仲が良いのか?』
「失礼な、一応普通のグループって言ってたよ」
まぁ、多分嘘だけど。そういう深いところは聞かないのも友達付き合いの秘訣。
『もしかして、大犯罪者か?』
「失敬な、生きててやった一番悪いことは、いじめっ子の指を折っちゃったことだけだよ」
ああ、シスターのシチューにタバスコを入れて友達とバカみたいに怒られたのも並ぶかもな。
「さて」
『……疑問、次はどうする?』
「寝る!」
もう深夜だぞ、シャワーも明日の朝に浴びてしまおうと目を瞑って。
『む、肯定。初めての睡眠、楽しみだ』
……そうかい、結構気持ちいいぞ。
眠気に任せて、意識を失う。
妙な夢を見た。
血を流して、立っている自身の夢を。
あれは、きっと母だったのだろう。
愛など教えてくれない人だったが、美しい人だった。人の愛を知らない女だったが、それでも、慈しむことを知っている女だった。
それは、多分、怪物の愛だった。
病院の一室で、会いにきた俺に、笑顔で、花をくれたことを覚えている。
病院の中だというのに、真っ赤なドレスを着ていて。
「これは、血で染めたドレスなの」
と、冗談を言っていたのを覚えている。もしかしたら、冗談ではなかったかもしれないけど、綺麗だったからいいかと思ったことも。
「クレタス、クレタス、貴方、私の見てきた中で一番可愛いわ」
そう言って、俺のことを撫でてくれたことも、キスをしてくれたことも。
俺に、プレゼントといって、こっそりと誰かの指をくれたことも、覚えている。
俺は、それに怯えなかったから、彼女は、楽しそうに笑っていたことも。
「クレタス、クレタス、たった一人の、私の分身」
「貴方、きっと綺麗に咲くわ、真っ赤に咲くの。私みたいに」
俺よりも、ずっと綺麗な真っ赤な髪が、風に流れて。
「ママ、俺は、花じゃないよ」
「ええ、いい子だもの、でも、それでもね」
「私たち、一緒なのよ」
血に濡れた指で、俺の頬を撫でてくれたことを、覚えている。俺は、それに、泣きたくなるくらい悲しくなったことも。
怖くはなかった、だって、彼女は俺を愛していたから。だから、彼女は誰かを誰にも気づかれずに殺したのだろう。
会うたびに、指や、目や、髪や、皮と血で作った造花を渡すようになった。
その度に、笑う彼女は綺麗だったから、悲しくて、悲しくて、泣いてしまったことを覚えている。
ああ、俺は、この人に何を返せるだろう。
貴方のようだったら、貴方に愛を返せたのだろう。みんなのようにまともだったら、俺は貴方に憎しみを返せていたのだろうか。
でも、俺はまともじゃなかった、まともじゃないから、貴女になにも報いることができない。
ただ、貴女が好きだといった笑顔で、貴女が笑ってくれるのを望むばかりで。
そんな様子を見て、貴女は。
「お花ちゃんみたいね、クレタス。いっつも綺麗に、私に笑ってくれるのはお花と貴方だけよ」
多分、世界で誰よりも綺麗な人よ、幼い俺では、哀れな貴方を、どうすることもできなかった。
そうして、最後に、真っ赤な髪が乱れて、血が出て、真っ赤な花が咲いて。
「さようなら! さようなら! 私の愛した愛しい
「私、きっと幸せだったわ!」
俺は、彼女に、愛を返せていたのだろうか。
それだけが酷く心残りだったことを、憶えている。
ペニー・パーカーは、ふわふわとした気持ちで家路に着く。
顔を見られたけど、黙って助けてくれた男の人が、宇宙人に寄生されているらしい。
……まぁ、そういうこともあるかもしれないけど、ちょっとばかし受け止めきれない。
……あと、それよりも正直、おんなじ話題で会話できたことの方が嬉しいかもしれない。
耳も熱いし、顔も熱い、メカスーツの中が蒸れたせいに違いない、スタークさんに文句言わないと。
窓から家に戻って着替えてから、玄関に戻ってチャイムを押す。
「あら、ペニー、遅かったわね」
メイおばさんが出迎えてくれる、遅くなるとは連絡したけど、心配かけたかな。
「あっ、う、うん、その、コンテストの練習あって……」
「…………耳まで真っ赤だけど」
「えっ!? いや、その、そう! 走って帰ってきたから!」
「……ふーん? 危ないから、今度は連絡しなさい、迎えに行くから」
「あ、はい、ごめん!」
「それと」
「え」
「男の子と遊ぶのはいいけど、羽目を外さないこと」
「えっ!?! いやっ、なんのこと!?」
「あら、当たった」
「おばさん!!!!」
「ふふふ、青春ねぇ……ついにか……」
「違います──ー!!!」
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次は戦闘シーンかな〜
ちなみにペニーは別に惚れているわけではないです、ちょっといい感じの年上と楽しく同じ趣味の話ができて舞い上がってるティーンあるあるの奴。
ここからですよここから。