カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
ランキングがすごいことになってる!?
みなさん読んでくださってありがとうございます本当に……!
さて、さて、カーネイジになって翌日の朝。
妙な夢を見た気もするが、とりあえずは朝飯と翌日の仕込みを早めに終わらせる。いつもならかなり時間がかかるはずの作業も、
……いや本当に便利、火の面倒見ながら色々やれるの。野菜を触手を変化させた刃で刻んでくれるのが本当にありがたい。一生終わらない千切りから解放された。
「……終わった……いつもの半分で……」
『当然、我々は地球の生物より高度だ。創造主もボコボコにしたし』
「ボコボコて」
可愛い言い回しをするなこいつ。
さて、仕事が終わったということで、さらに色々やることがある。
「よし、まず俺たちの姿を決めるぞ」
『姿とは?』
「姿だよ、顔隠して、かっこいい見た目があった方がいいだろ」
『……ヒーローっぽく、なるほど、では』
全身を、ダリアの組織で包み込む。赤と黒で構成された肉体は巨大に、しかし、外皮は硬く。
……なるほど、筋肉だるまというよりは、だいぶスマートな見た目になった。全身アーマーっぽい姿は、先ほどあった少女を参考にしているのか。
しかし、元の俺の体型も合わせてか、かなり大柄に見える。元の身長もわかりづらいし、正体を隠すのにはちょうど良いだろう。
しかしこの、牙はちょっとなんとかならんのか、悪すぎるぞ。
『かっこいいはず』
「いや、まぁ、かっこいいけどよ」
だいぶファンキーだろ。
それはともかくとして、さて、じゃあやらなきゃいけないことを考えよう。
まず一つ、バルチャーは捕まえた方がいい、が、長年やっているだけあってそこそこ色々部下もいるし、多分一人では手こずるだろう。
これはこっちが手伝う、まぁ、超人初心者だからあんまり上手くいかないかもしれないが。
二つ、あいつらが捕まった後の面倒を見てくれる人は見つけたので問題なし。
三つ、そもそも居場所を探す方法がないので、それを考える。
「というわけでなんかある?」
『丸投げ、文句を言いたい。ある』
「あるんかい」
『スパイダーマンは、おそらく彼らを追う、だから、私たちはスパイダーマンを追う』
「どうやって?」
『匂い、感覚機能は優れている。この街の中にいるなら、追える』
「……なるほど」
後手には回るが、いい案だ。若干ストーキングっぽいが、やる価値はある。
「……多分学生だよな? あの子?」
『肯定』
「……午後だな……」
今日一日休みとしても、暇になってしまったぞ。
そうだ、そもそもの問題を忘れていた。
「身体の動かし方、練習するぞ」
「ぐえっ」
「へぶっ」
「いっ……たくはない! 逆に怖い!」
路地裏、誰もいない場所でスパイダーマンの真似をすること数十回。
触腕を腕から発射し、壁につけ、スイング。これだけのことだが何度やっても上手くいかない、流石に昨日今日で出来るようになるとは思っていなかったが、意外と難しい。
『……私たちで共有しよう、感覚を』
「そのほうがいいな」
どうやら、肉体感覚を共有できるらしいが、それをする前に自分でやってみたかった。だってやりたいだろ。
「……おお」
今度はスムーズにスイングが出来る。路地裏を飛び出して、NYの街並みを飛び回る。感覚としては、急に身体の動かし方を理解したのに近い。
「ひゅう! 楽しいなこれは!」
『疑問、飛行もできるのに』
「気分の問題だ!」
空中で無意味にくるくると回転して風を切る。“肌”に風が当たる感覚が心地よい。
「……本当に、一心同体か」
『肯定、私たちは一つ』
「いいね、悪くない」
友達はたくさんいるし、シスターとか家族もいるが、それでも。
何か、欠けたようなところが埋まるから、嫌いじゃない。
「さて、このままぴょんぴょん飛び回っててもいいが……」
見知った匂いがする。なるほど、これがシンビオートの感覚かと視線を向ければ、学友と歩いている少女が一人。
あいも変わらず、金色の瞳を輝かせて、楽しそうに友人と話しているペニー・パーカー。
……二百メートルは離れている相手を視認できる感覚に、少し驚きながら、ビルの屋上に着地する。
「おお、青春青春……うん?」
なんか、見覚えのある教科書と学校の紋章。……そうか、そういえばミッドタウン高校か、後輩だった。
……えってかそろそろホームカミングの季節じゃない? 俺あそこに今年もキッチンカー出すんだけど。
そんなことを考えていると、やけに、身近な実感が湧いてしまう。まだ、あんなに傷ついていいような人間じゃないだろう。
恋をして、笑って、遊んで、学んで。
「……あんな子が、ヒーローか」
『……憤怒? どうして?』
「怒ってないさ、ちょっとばかし、悲しくなっただけだ」
……ヒーローなんかやる気はないが、やっぱりあんな娘が頑張ってやってることは手伝ってやるかと、思い直す。
え? ルーク・ケイジは友達なのにいいのかって? まぁ……大人だし、いいんじゃない?
「……今日くらい休ませてやるってことで」
取り敢えず、視界に入った強盗は捕まえてもいいだろう。本当に治安悪いな、この街。
「……ん?」
「どしたの、ペニー?」
「ああ、いや! なんでもない!」
なんか、クレタスさんの視線とか気配を感じたけど、気のせいかもしれない。
「それにしても、最近物騒だよねー」
「そうだね……」
リズの言葉に心から頷く。せめて少し暇になるくらい平和になってくれないかなとため息をついて。
……ああ、でも、いつもならこういうときに事件が起きてしまうのだけれど。今日はないみたい、それはちょっと珍しい。
「ね、今日こそはコンテストの練習付き合ってよね!」
「勿論! 色々ごめんね、最近忙しくて……」
「いいのいいの、今まで楽させてもらっちゃったしね!」
はぁ、本当に助かるな、今日はこっちのやること終わらせちゃおっと!
……それと、ホームカミングの準備も、誰誘おう……
銀行強盗、このNYでも、時々しか起こらない事件。ライフルと防具で重武装した強盗たちが、銀行員を脅している。幸いにして、客はまばらだったが、それでも、危険な状況だ。
そんな、この町では悲しいことにありふれた光景。だが、自動ドアが開き、かつり、かつりと硬質な音が響いて入ってくるのは、異形の怪物。
異変に気づいた強盗が即座に振り返る。
「──────なんだ……バケモノ……!?」
放たれたライフルの弾が、外皮に弾かれる。硬化したシンビオートは、鋼鉄よりも硬く、衝撃を意に介さない。
「『俺たちか?』」
「昨日からだが、カーネイジだ」
背中から伸びる触腕の先が、鋭く変化する。無数の刃がついた槍のように、そして、喋るカーネイジの右腕も、鋭い日本刀のように。
「……出来れば抵抗しないでくれるか? 初めてだからな、手加減とかわからん」
「……撃て! 撃て!」
強盗の数は5人、全員がフルオートによる一斉射撃を開始する。だか、それを無視する、踏み込んで、右腕を振るって、まず手前にいる一人のライフルを切断。
即座に左腕による顔面の殴打、かろうじて死なない程度だったが、顔面の骨を粉砕する。
吹き飛んだ男を無視して、背中から生える無数の触腕のが、他の強盗へ襲いかかる。
「ひっ、う……ぐぉ……!?」
触腕の刃は全員のライフルを半ばから切断する。勢い余って、指まで切断された奴もいるが、仕方ない、初めてなんだから腕を切断されていないだけ許してくれ。心の中で謝罪する。
そして、拘束のため、それらを絡ませて胴体を締め上げるが……バキバキと音が鳴る。多分、死んではいないだろうがやりすぎてしまった。
「あ、やべ。あの、銀行員さん!」
「ひっ、はっ、えっ!?」
「救急車と警察呼んで!」
「えっ、あっはいっ!」
その辺に銀行強盗たちを放り投げて、スパイダーマンの糸を真似て細い糸のようなものを射出拘束。これ自体は組織でしかなく、1秒もすれば粘性の高分子ポリマー状物質に変わる。主成分は地球上に存在するタンパク質と変わらない。
……ってダリアが言っている。
同時に、指が切断されたやつの指をこれで貼り付ける。急場凌ぎだから、病院に行くまではなんとかなるだろう。
怯える銀行員さんに救急車を呼ばせ、冷蔵庫から持ってきてもらった氷を指に当てる。同時に、周囲を見て、怪我人がいないかを確かめる。
「怪我してる人は?」
全員無言、そんなに怖いかなこの姿。まぁでも、いないらしいので安心した。
「あっ、あのっ、ありがとうございます……!」
「いいのいいの、通りすがりのカーネイジと覚えていてくれよ」
なんて物騒な名前なんだとおそらくその場にいた全員が思ったが、おそらくは命の恩人なので何も言わない。
「それじゃ、警察が来たら通りすがりのスパイダーマンの友達が助けてくれたって言っておいてね! スパイダーマンのおかげだからこれ!」
宣伝だけしてさっさとその場を離れる、あの娘と違って明らかにちょっと怖いもんな俺、さっさと離れる。
「いやーいいことした」
『…………怪我させているのだから、ネガキャンでは?』
「……一応犯罪阻止!」
その後、救急車で運ばれた強盗は生きていたらしい、心配になって後をつけたが、安心した。
「殺さずにってのは、難しいな」
誰に言った言葉なのか、それは、ペニーという少女に向かってだったような気がするし。
それよりもっと、昔の、自分の傷に向かって言ったような気もした。
「……母さん」
『……疑問、私は違う』
「お前に言ってない、独り言!」
『……そう』
所変わって。アベンジャーズタワー、最上階。
「F.R.I.D.A.Y、シンビオートについて、今まで地球上で記録は?」
「ありません」
「……なるほど」
アイアンマンこと、トニー・スタークが、先日送られてきた映像を見返しながらコーヒーを啜る。
「厄介ごとだな、神の一人や二人いる世界だから、今更ではあるが」
スパイダーマンのスーツから送られてくる情報から、おそらくは寄生生命体であり、宿主になんらかの影響を及ぼす可能性は高いと思われるがことは理解できる。
「……寄生された方の経歴も洗ってくれ、僕ほどじゃないが、それなりに有名人だろ?」
「はい、クレタス・キャサディ、レイブンクロフトという治療院で生まれ、そこから殆どを孤児院で過ごし……成績優秀のため、ミッドタウン高校は早期卒業、その後、奨学金を取って調理師の専門学校へ入校、卒業後は世界中を旅していたようです」
「典型的な美談になるような生い立ちだな、他に特筆するべき点は?」
「現在はキッチンカーを経営しながら料理系のインフルエンサーをやっています、収入はそれなりのようです、また、その繋がりか様々な分野の有名人との繋がりもいくつか」
「…………あのなぁ、娘の友人を調べてるみたいな情報を出してどうする」
ため息を吐きながら、こっそりそれらの情報をマークしておく。過保護な男であった。
「……ちなみに女性関係は?」
「SNSのチャットから、複数人と関係を持っていた記録があります。その後、それを叱責されて以来誰ともそう言った関係はありません」
「僕も人のことを言えないが、なかなかやるじゃないか」
「────会話の中で、他者評価、および性格特性を分析、特異的なものが見られます」
「何?」
「『献身性』『高い理解力』『低い自己評価』『執着心の欠如』」
「……なるほど、いい顔してたらいつの間にか囲まれたタイプか、苦労するぞ、そういうプレイボーイは」
「……とりあえず、保留だ」
「なにがでしょうか」
「私は若者の交流関係に口を出すような老人にはなりたくない」
「僭越ですがボス、既になっています」
「なっていない」
「なっています」
「なってない!」
言いながら、手元のホログラムでペニーのための新型の兵装を作っているトニー・スタークである。
高評価とか感想とか来ると踊り狂って喜びます。
ところでホームカミングって卒業生も来るらしいね!