カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする 作:鴉の子
本格的に年の差恋愛をこの辺から進めていく(アクセル)
「…………さて、暇だ!」
クレタス・キャサディは悩んでいた。
色々あった翌日、ペニーは学力大会にネッドと出場、食材は持ち込んだ分と買い出した分も使い切ったので今日は完全にフリーである。
ワシントンにいる友人にでも会いに行こうかなとぽちぽちスマホを弄っていたところ、ふと思い出す。そういえば、記念塔見学とかあったな。
「……行くか、観光」
久しぶりに行ってみよう、多分変わってないし。
『……塔だけ?』
「まぁ、景色はいいぞ、周りに高い建物もないし」
そうと決まれば寝台から降りて身支度をするだけである。
……微妙に、嫌な予感がするが、まぁ、大したことは起こらないだろう。
「……正解! 優勝は……ミッドタウン高校ーッ!」
学力大会は、ペニーとMJの力で、問題なく優勝! フラッシュだけは途中参加で活躍したことをネチネチ言ってきたけど、結局ハイタッチはしてくれたし。
「……とはいえ、なぁ……」
「どうしたんだよ、ペニー! 優勝だよ、優勝!」
飛び回って喜んでいるネッドの横で、ため息を抑えられない。ちょっと遠くにいるリズやMJ、フラッシュたちもめちゃめちゃ喜んでるけど……
「それは嬉しいよ、うん……」
私は昨日の失敗が若干尾を引いているのか、いまいち喜びきれない。
「……昨日のことは、まぁリカバリしよう! とりあえず塔の観光行こう!」
「……そうだね、気分転換しなきゃ!」
169m、当時最高の建物として作られた記念塔、結構楽しみではある。景色はいいって先輩に教えてもらったし。
優勝賞品、トロフィーを掲げながらみんなでわいわいとバスに乗り込んで、記念塔まで移動する。
周囲には観光客もたくさんいて賑やかだ、NYの喧騒とはまた少し違った趣がある。
「うわー……高い」
塔を見上げる、空が広く、緑の多い公園になっているこの景色は、ビルに囲まれたセントラル・パークとはまた違った景色だ。
「当時最高峰……って言っても、石造りって考えると本当にすごいよなぁ」
「ですねぇ、こんなにおっきいの……ん?」
なんか、聞き覚えのある声がする、上の方から聞こえるくらい身長の高くて、優しそうな……
「はぇ」
「や、元気? 元気なさそうだねぇ」
ぱたぱたと手を振っているのは、相変わらず派手な柄の服を着ている先輩、クレタスさんだった。
「あっ、えっ」
「優勝おめでとう〜はいこれプレゼント」
小さな、赤い花を一輪。丸くて花びらの沢山ついているそれは、キラキラと陽光を浴びて、色彩を放っている。
「ありがとうございます……?」
困った、嬉しくてちょっと疑問系みたいになってしまった。失礼かも。
「うーん、胸ポケットかな、うん、よく似合っている。かわいい」
さっと、上着のポケットに花を差し込まれて。よく似合うと言われながら、頬に触れられる。
「…………あっ、ごめん!」
思わず、先輩は手を離す。女の子に勝手に触れるのは、よくないことだと思っているのだろう。……実際、悪い大人だと思うけど。
「嬉しいです」
「そっか、ありがと」
困ったように、笑う。少しだけ、悲しそうな笑み。いつも、この人は私に触れると、悲しそうな顔をする。
それが何故なのか、思わず気になって、手を伸ばして、今されたように、先輩の頬に触れてみる。
痛みが、伝わる。どこまでも、どこまでも深い傷から、とめどなく流れる血のようで。
「──────あの、えっと、怖くないですよ」
思わず、びっくりしたように後ずさる目の前の男の子の手を引いて。握った手のひらから、感情が流れ込んでくる。恐怖、恐怖、多分、これは……愛情? 私へのではないかも、でも、私への親愛と、あと……ちょっと口ではいえないこと。
「…………怖いよ、俺がね」
「それなら尚更怖くないですよ! 私の方が強いですもん!」
昨日、腕相撲で負けて悲しそうな顔をしていた人に負けないよ。何を怖がっているのかは、あんまりわかりませんけど。
そう言うと、ぽかんとした顔をした少し後に笑って。そうしたら、安心した気持ちと、温かな……多分、好意かな、そんな熱が流れ込んでくる。
「まぁ、スパイダーマンだもんな」
「はい!」
ぱっと、頬に触れていた手を離して。手は握ったままで、笑って。頼りになる人が、傷ついたただの人であることを改めて理解したから。
うん、やっぱりいい人だ。
この感情が好きかどうかはわからないし、伝えたら迷惑になるかもだから、言わないけれど。
「……ペニー?」
後ろから声、多分、フラッシュの声かな?
「あれ、フラッシュ? どうしたの?」
「…………その人は?」
愕然とした顔でこちらを見ている、一体どうしたのだろう?
「あ、クレタスさんって言って……ほら、昨日食べたでしょ、あそこの店主さん!」
ぱくぱくと口を開けている、魚みたいだなと思ったら、今度は耳を赤くして。
「ち……」
「ち?」
「畜生──────ーッ!」
ああっ! なんか急に叫んで走り出した!?
「ああ……少年……」
先輩は若干哀れみの目線を向けているし、訳がわからない。
「……どうしたんだろう?」
「聞いてやるな……」
何故か肩を叩く先輩からは、若干意地悪な色を含んでいるのも、よくわからなかった。
あ、見学の時間だ。
「すいません先輩! 見学だから急がなきゃ!」
「うん、行ってきな」
おそらく、一人の少年の初恋を予期せずして壊してしまったのを哀れに思いながら、走り去っていく姿を見る。
いや、まぁ誤解なので彼にもチャンスはあるけも。頑張って欲しい、まぁ、好きな子に意地悪するような段階では多分無理だと思うが……
『……ちょっと楽しそう』
「まさか」
『みっともない、それを人間は独占欲と言う』
「断じて違う」
……でも、そうだな、わかってくれた子というのは初めてみたかもしれない。
「……初めて、花をあげようと思ったんだ」
『……それは』
「わかってる、わかってるよ相棒」
俺に誰かは愛せないし、愛してはいけないから。だから、誰もかれもが離れて行ったし、それでいいんだ。
「可愛い後輩、それでいいんだよ、ま、アイアンマンに殺されたくもないしな」
世界で一番大切な人を、俺は自分で殺したのだから。
ただ、空を眺めて、そう思う。今更、もう痛くはないけれど。
やっぱり、
そして、気分転換に息をして、歩き出した瞬間、何かが弾ける音がした。
「……ネッド!? もしかして持ってきてたの!?」
「えっ、置いておく方が危ないじゃん!」
記念塔内部、エレベーター内にて、チタウリの爆発性コアが起爆、エレベーターの天井が吹き飛んだのである。
「……なんで急に爆……そうか、花崗岩の放射線に反応して……!」
「やばいやばいやばい! ペニーどうしよ!」
「…………っ」
自分がやれば、なんとかなる。全員をウェブで包んで、壊れた瞬間に飛び出すか、そもそもエレベーターをウェブで支えればいい。
でも、そうしたら、正体がバレる。バルチャーを追っている以上、みんなを危険に巻き込むかもしれない。
でも、迷っている暇はない、とにかく脱出させなければ危険に巻き込むリスク以前に死んでしまう。
「みんな、出来るだけ動かないで! すぐに救助が……!」
パニックにならないようにみんなを落ち着かせる、今使えるのは、ウェブシューターだけ……!
なんとかして、みんなを……
そう思った、瞬間、ガコン、とエレベーターの天井が剥がれて落ちる。だが、不幸中の幸いか、落下はすぐに止まり、壁面に引っかかったが……落ちるのは時間の問題だ。
「(どうしよう……! すぐに一人ずつ逃す時間は……! ウェブでエレベーターの籠をそのまま支えるしかない……!)」
手首のウェブシューターを起動して、剥がれた天井から支えられそうな場所を探して上を向いた瞬間、視界に、赫い腕が見えた。
右手を伸ばして、私へと伸びている、カーネイジの赫い腕が。
「早く! 崩落する可能性もある!」
エレベーター内の人間が、ひょいひょいと触腕によって持ち上げられて、降りれる階へと放り投げられる。
何故か、私は抱き抱えられて。
「……危なかった、バレてない?」
「えっと、なんで私だけお姫様抱っこ?」
「うーん、贔屓?」
ガガガ、と音を立てて、エレベーターは落下する。壁に張り付いたいるから私と先輩は、それをあちゃーという顔で眺めて。
「……怪我はなかった?」
「えっと、はい、なんとか……」
「そっか、よかった」
本当に嬉しそうに、安堵した声音で、彼は私の頭を撫でる。
「……あのっ、ありがとう……ございます」
こうなったのは、私のせいだ。もっと早く、あのコアの解析をしていればこんなことにはならなかったはずなのに。
「……うぅ」
ダメだ、泣くな! 泣かないペニー・パーカー!
スパイダーマンはこんなことでへこたれない。
「……みんな、彼女、ちょっと怪我したみたいだから、下まで俺が運ぶよ。あと、すいません、まだ怖いかもしれませんが、大人たちでみんなを階段で下まで案内してあげてください」
クレタスは、エレベーターシャフトの下を単身で下っていく。周りに、誰も見えなくなった高さで、触腕は彼女を覆う。小さなドーム状の中で、クレタスが顔だけ、その変身を解いている。
「泣きな、痛いのも、辛いのも耐えられるかもしれないけれど。自分のせいで誰かが傷ついたかもしれないのは、耐えられないくらい痛いのはわかるよ」
「……うっ……ぐす……」
腕の中で、泣いている私を、ずっと撫で続けて。
「泣き止むまでは、ここにいるから」
ぽんぽんと、私の背中を叩いて、抱きしめて。その暖かさに、気持ちが落ち着いていくのがわかる。
「……どうして、私に、そんなに良くしてくれるんですか」
「んー……」
「好きだからね」
「ふぇっ!?!」
「いつも頑張ってるヒーローなんて、応援したくなるだろう?」
「むぅ」
……今、ちょっと目を逸らした。これって、そういうことでいいのかな、うーん、でも、大人だから誤魔化しているのだろうか。わからない、本心かどうかを確かめて、迷惑をかけたくもない。
『…………………………』
何か、私たちのことをダリアがジト目で見ている。
『女の敵、なるほど、理解した』
「なんでだよ……あ、そうだ」
彼は、私のSP//drを手渡してくる。
「これ着て、一緒に救護と、建物の保護だ。エレベーター以外も、建物自体が危ない。一緒にやろう、スーパーヒーロー」
「……うん!」
即座に、スーツを纏って。二人で、エレベーターシャフトを駆け上がる、塔の中には怯えている人や、お年寄りもいる、そういった人たちを抱えて、二人ですぐに離脱。
石作りの塔にヒビの入った部分をウェブで補修したり、一時凌ぎだけど、そんなことをしていたら、何やらニュース報道のヘリに取られてしまった。
そしたら、先輩は肩を組んで一緒にピースしてきた。……嬉しいけど、ちょっとびっくりするのでやめて欲しい。
そして、無事、救出された……ということになっている私たちは、無事、ニューヨークへと帰ることができた。先輩も、あの後車で帰り、営業再開したそうだ。
……ニュースでは彼と私の話題で持ちきりだ。本人は、「人気があるって大変だよ」しか言わないけれど、でもやっぱりカーネイジという名前はちょっと酷評気味。
……学校でも人気が出て、グッズとか出てるのは、ちょっとモヤモヤする。あ、でも、スパイダーマンの手助けでやってるアピールしてくれたから、私のグッズもいっぱい出てるのは嬉しい。
……いや! やっぱりよろしくない! 私の功績で人気にならねば!
いや別に人気になりたくてやってる訳じゃないんだけど、それはそれとして人のおかげでグッズ作られてるのを見るのは、なんか、困る!
……とりあえず、尻尾を掴んだバルチャーを探しに行かなきゃ。ハッピーさんにも、伝えられる成果が欲しいし、そうすれば、アベンジャーズに入れるかもだし。
「というわけでネッド! 私授業サボるね!」
「おいおいおい! マズイって! 単位落とすぞ!」
「大丈夫! 今日の授業みんな緩いから!」
よし、今回は一人でやってみよう、匂いで追いかけられるっていってたけど、また頼るのもアレだし。
……そうだ、この前取引してた人を、探して、そこから見つけるのがいいかも!
意気揚々と、学校を飛び出して。
────それが、大失敗の始まりだった。
インモラル ああインモラル