カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする   作:鴉の子

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お気に入り、評価、感想いつもありがとうございます……!
クレタス・キャサディの造形が結構好評で嬉しいです。おいおい過去話も絡めていきます。


7話:痛みと共に

 

 鼻歌混じりに今日もいつも通りの営業中、最近はカーネイジ宣伝として激辛ホットソースケバブを売り始めて結構売れてて嬉しいクレタス・キャサディだ。

 

「……自分の宣伝商品売るのって恥ずかしいな……」

 

『ん、愚行、売り上げには代えられないと言ったのはお前』

 

「それはそうなんだけどよ」

 

 晴天の公園、まぁ外で食事を取る人間もたくさんいるので飛ぶように売れるのである。それはそれとして、ぽちぽちと後ろでラップトップを弄っているダリアを見て首を傾げる。

 

「なにしてんだ?」

 

『ん、スパイダーマンの目撃情報を調べている。あとデイトレード』

 

「人の金で何を……」

 

『成功、利確。ラップトップ20台分』

 

「……お前用の口座作るから、そっちでやれよ……」

 

『愚問、リスクを測れない地球人はカモ』

 

 楽しそうだなこいつ、勝手にゲームまで入れて遊んでるし。まぁ、楽しいなら何よりだ、別に俺は貯金の使い道なんてないし。

 

『ん』

 

 疑問、そういった感情が流れ込む。共有しているのだから当然だ、というより、まさか。

 

『スパイダーマンがスタテン島行きのフェリーにいる』

 

「ああ、匂いでもわかる」

 

『…………一人で追っている?』

 

「……だな、多分、大丈夫だとは思うが……」

 

 不安だ、というか、なんか嫌な予感する。まさか本丸の取引とかに突っ込んでないだろうな。

 

「……臨時閉店!」

 

 ガラガラとシャッターを閉めて、夕方まで閉店と投稿。

 

 近くの路地裏に飛び込んで、変身、全身を赫く染めて……ふと、そばの窓ガラスを見る。

 

 硬質な、だが、剥き出しの筋肉のようにもように見える怪物のような姿。ギョロリと、以前増やした眼はそのままだ、便利だからと残しているけれど、やはり恐ろしい。

 

 ……恐ろしい牙を持った怪物が、お前なのだと言われているようだ。

 

『肯定、どちらかといえば化け物』

 

「簡単に肯定してくれるなぁ」

 

 その言葉が、どこか安心する。嬉しい、とも思うのだろう、まぁ、それでもいいか。

 

「さて、人助けと行くか」

 

『報酬、特製チョコアイス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おいおいおい、バルチャーと一人でやるつもりか」

 

『……なりふり構わないなら勝てる、だが』

 

「FBI守りながらは無理だな」

 

 少なくとも、相手はもうなりふり構わないだろう。船への攻撃を躊躇していないあたり、本気で殺す気だ。

 

「ところで、あそこまで辿り着ける気がしないんだけど、泳ぐか?」

 

『馬鹿、飛べる』

 

「……言ってたな、そんなこと! 早く言えよ!」

 

『いつまでもあの子とお揃いだからと飛ばなかったのが悪い』

 

「…………」

 

『言い返せてない、馬鹿』

 

 馬鹿じゃないもん。

 

 ダリアの罵倒を努めてスルーすると、背中からバキバキと音を立てて蝙蝠のような羽が生える。

 

「……悪そう度合いが上がったな」

 

『むふ、ドラゴンの羽を参考にした、カッコいい』

 

 こいつどんどんガキっぽくなってないか? 

 

 とにかく、飛べるなら、なんでもいい。全力で羽ばたけば、飛べる。空力とかを無視した筋力による無理やりの飛行だ、かなり疲れる。

 

「……追いつくまで保たせてギリだな」

 

『肯定、キリキリ行こう』

 

 全速力、大きく羽ばたけば、景色は瞬時に後方へと置き去りになる。なるほど、思ったより速い、というか速すぎる。

 

 簡単に言えば、制御できないスピードで眼前のバルチャーへと突っ込み。

 

「ぐぉ────っ!?」

 

「グワ────ッ!?!?」

 

 大事故が発生した。

 

 

 

 

 

 

「────えっ!?」

 

 目の前で見慣れた赤色がバルチャーに追突したのを見て、ペニー・パーカーは困惑する。

 

 えっ、何事。というか私居場所伝えてなかったはずなのに!? 

 

「どっ……せい!」

 

 眼前で、赤い触腕を無数に絡めて、バルチャーを拘束する。

 

「なっ、クソっ! 離せ、この触手野郎!」

 

「誰が触手野郎だ! ぺ……スパイダーマン! こっちは任せろ! 逃げてる奴らを捕まえ……ぐぅ……!」

 

 バルチャーの射撃が、カーネイジの身体を削り取る。焼け焦げた触腕が、ポトリと海面へと落下した。

 

「……いってえ……!」

 

「怪我したくなかったら、退け!」

 

「ヤダね!」

 

 空中で、揉み合いながらぐるぐると動き回る二人を見て、迷う。確かに、逃げる取引相手を追わなければいけないけれど、目の前で身体の一部を削られているのを、黙って見ているわけにもいかない。

 

「……人命、優先!」

 

 ウェブを飛ばして、バルチャーの武器を奪い取るしかない! 

 

「えーい! やめなさい!」

 

 奪い取った武器はチタウリのコアを使用しているのだろう、同じような紫色の光を放っている。

 

「スパイディ! 俺はいいって言ったろ!」

 

「腕を焼かれて痛がってる人を放っておくわけないでしょ!」

 

「痴話喧嘩もいいがな、危ないぞ」

 

「「え?」」

 

 空中で起爆するのは……空中に放り投げられたグレネード。強烈な爆音と、炎が上がる! 

 

「っ……ぐぁ……!」

 

「先輩!?」

 

 炎と、轟音に苦しみながら、カーネイジが落下する。ウェブを伸ばして釣り上げるように引っ張り上げるが……

 

「……ぐぅぅ……あ゛……!」

 

「大丈夫!?」

 

 苦しんでいる、一体、スタークさんのリパルサー・レイに耐えられたのに、なんで……? 

 

 いいや、それより、許さない。

 

「……」

 

「ちっ、おい! 全員甲板に撤収……なっ!」

 

 武器にウェブをさらに発射して、テーザー・ウェブモードを切り替える。電気ショックは、バルチャーの装備した機器を破壊するに足りる出力のはずだ。

 

「落ちろっ……!」

 

「……っ!」

 

 だが、武器を手放される、もんどり打って転がった拍子に、武器が発射状態で転がる。あたりに連射されるそれを、ウェブで封じる。

 

「────それは、失敗だったな」

 

「……何を……っ」

 

 瞬間、背後で光が弾ける。それは、記念塔で起こったそれと同じで。

 

「しまっ……」

 

 まずい、このままじゃ船が危ない! と思ったその時、横から、赫(・)い(・)右(・)腕(・)が(・)伸(・)び(・)る(・)。

 

「……先輩っ!?」

 

「大丈夫だ、大丈夫……! ダリア!」

 

『………………無問題、でも、私は痛いのは嫌だ。痛覚フィードバックは任せる、我慢しろ』

 

「安いもんだ……!」

 

 今にも弾けそうなそれに、カーネイジ、クレタス・キャサディは覆い被さる。光を、赤い彼の肉が覆い尽くして。焼け焦げる匂いが、周囲へと漂う。

 

「あ゛っ……ぐぅ……!」

 

「先輩! やめてください! 離して!」

 

「だめ……だ……!」

 

 ぶちぶちと組織が千切れる音、焼け焦げる音、匂い、くぐもった悲鳴。腕の中で、苦しむ男に、私は何もできない。

 

「なんで……!」

 

 もう、バルチャーは逃げ出した。もう、そんなことより、目の前の彼が、苦しんでいることしか、考えることができない。

 

「大丈夫だ、大丈夫。こ(・)れ(・)で(・)誰(・)も(・)傷(・)つ(・)か(・)な(・)い(・)……!」

 

「……えっ……」

 

 誰かが傷付いたら、きっと私が悲しむから、そう考えて、こんなことを。

 

「やめ、やめて……やめてよ……!」

 

 とめどなく、涙が流れて、スーツの中で流れている。痛みが、彼から流れ込んでいるからではない、彼から流れてくるのは、慈しみと安堵感ばかりで。

 

 それが、尚更に私の胸を締め付ける。

 

「やだ、やだやだやだ……!」

 

 光が、最後弾けて。

 

 カーネイジの体が、光と共に裂ける。

 

「……ギぃ……っ!」

 

 焼け焦げた身体が、斜めに裂ける。それを、ダリアが繋ぎ止めているのだろう、纏っているその中に生身の身体が見えた。それは、無数の爆発によって焼けて、内臓が見えるほど切り裂かれている。

 

「……っ……!」

 

 思わず、悲鳴が出そうになる。どうしよう、どうしよう。

 

 変身を維持できないのか、人の姿に戻って。スタークさんの光学迷彩で、顔は隠されているけど。

 

 胴体が、完全に斜めに切断されている。それを、ダリアが無理やりに繋ぎ止めている。

 

「ダリア! ダリア、大丈夫なの!?」

 

『否定、大丈夫ではない。生命維持に専念』

 

「SP//dr! 診断!」

 

 ────血液量低下、心停止。現在寄生生命体シンビオートが心臓を動かし、血流を維持。出血性ショック、および爆発の衝撃による内臓破裂。

 

 伝えられる症状に血の気が引いて、青褪める。

 

「輸血……いや、この場で……!?」

 

『不要、どうにか維持できる。時間だけ必要』

 

「でも……!」

 

『不要!』

 

 ばちり、と触腕が飛び出して手を弾かれる。強い怒り、私へと向けられる視線はそういった感情に満ちていた。

 

「────その通りだ」

 

 頭上から聞こえるスラスター音。

 

「……スタークさん……」

 

 アイアンマン、かしゃり、とマスクが開く。渋い表情で、私を見ている。

 

「Ms.ダリア。本当に、そのままでいいんだな?」

 

『肯定、我々はすでに細胞レベルで融合している。私が生存していれば、彼も生存できる、人間としての肉体は再構築中』

 

「精神面に問題は?」

 

『一般的な話ならば元(・)か(・)ら(・)問(・)題(・)し(・)か(・)な(・)い(・)の(・)で(・)問(・)題(・)な(・)い(・)』

 

「……そうか、だが、安静にできる場所は必要だ、運ぼう」

 

『助かる、研究したら殴る』

 

「おお、怖い」

 

「あの、スタークさん、待って……」

 

「ダメだ、この場を離れて、少し待っていろ」

 

 そう言って、船に、置いていかれる。暗闇の中にいるような、そんな感覚で、その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

「随分と、やらかしたな」

 

「スタークさん、あの、先輩、クレタスさんは……!」

 

「こちらからは判断できない。外部診断では、明らかに死にかけているが、本人が無事だと言っている、輸液を続けながら経過観察するしかない」

 

 ため息をつきながら、スタークさんはスーツを脱いで降りてくる。

 

「君の判断ミスだ」

 

「……私のせいって言うんですか!」

 

「そうだ、既に私の指示でFBIは彼らを包囲していた。あのままならばバルチャーはスーツを着る前に摘発されていただろう」

 

 話を、聞いてくれなかったじゃないかと言うセリフが、喉元で止まる。

 

「…………」

 

「いいか、彼のおかげで被害は出なかったが、いなかったらあの爆発で船は裂けて、怪我人が出ていたかもしれない。あるいは、死人が」

 

「もしそうなったら君の責任だ、そして今、それを防いだ彼は死にかけてる」

 

「それに、君が、それで死んだら……僕の責任だ……そうしたら、一生悔やむ。君のおばさんも」

 

 真剣な目で、私を指さして。

 

「……ごめんなさい、私、スタークさんみたいに、なりたくて」

 

「……私に謝って済むか、スーツを返せ」

 

「えっ、い、いつまで……?」

 

「永遠にだ、それと、後で彼に会ってこい。ここが搬送先だ」

 

「そんな! スタークさん、私、スーツがないと……」

 

「スーツが無ければ何もできないなら、君にスーツを着る資格はない…………ええい、父親みたいなことを」

 

 がしがしと自分の頭をかいて、スタークさんがため息をつく。

 

「……その、さっきこっちにくる時に海に落ちちゃって、着替えが……」

 

「…………ちょっと待て、なんとかする、ペッパーに電話するから待て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やらかした〜〜〜〜! 

 

 痛い、本当に痛い。身体が半分になったのは流石に初めてだ。全くもう、危なっかしいんだから。

 

『愚者、愚か、馬鹿、まぬけ』

 

 怒るなよ。自然と会話しているけど、多分俺は今昏睡状態なのだろう、視界真っ暗だし。

 

『現在、身体を補強している。片っ端からスタークの金で肉と牛乳を私が補給してるんだぞ』

 

 ……ごめんな、一心同体なのに、馬鹿みたいなことしてさ。

 

『無問題、この程度では死なない。この結果は、我々が別個体と認識しているから発生している。細胞レベルで融合してはいるから、死にはしないけれど』

 

 ……つまり? 

 

『総体として、大した怪我じゃない、お前が痛いだけ』

 

 それを聞いて安心したよ、ありがとな。

 

『ん、感謝は不要。でもお礼としてチョコケーキとチョコアイス、チョコプティングとチョコシェイク、フェネチルアミンマシマシ』

 

 帰ったらな……っと、視界が明るくなってきた。もしかして目覚める? 

 

『ん、早い、もう3時間かかる予定だったのに。でも激痛だから頑張れ』

 

 はいよ、頑張るよ。

 

 

 

 

 

「…………んあ」

 

「…………ぁ」

 

 がしゃん、という音と共に、皿と共に、うさぎに切られたりんごが落ちる。すんででキャッチすると、斜めに切断された箇所が激痛に苛まれるが、顔に出さない。

 

 どうやら、病院……らしい、薄緑色の壁紙に、白いシーツのベッド。消毒液の匂い。

 

 呆然とした顔をした、ペニー、うん、ちょっと目が赤いけど、怪我もなく変わらず可愛い。

 

「……や、おはよう?」

 

「……ぅ……う゛ぅ……!」

 

 えっ泣いてる、なんで。

 

「ちょちょちょ泣かないでよ!」

 

「な゛ぎま゛ずよぉ……!」

 

「心配した? 全然大丈夫……ではなかったけど、まぁ生きてたしいいじゃない」

 

「よくないです!!!」

 

 うえーんと泣きながら抱きつかれる、死ぬほど痛いのと嬉しいで揺れ動いている。本当に痛い、今すぐのたうち回りたいくらい痛い。

 

「怪我してない? みんな無事?」

 

「無事ですけど……!」

 

「そう、じゃあよかった」

 

 泣いているペニーを、抱き返す。ぽん、と頭を撫でる、普段は子供扱いしてるみたいだからやらないけれど、今くらいはいいだろう。

 

「…………」

 

 雑念、いい匂いする。シャワー浴びたのかな。

 

『変態、人間の一般呼称』

 

 ちがうわい。

 

「……生きてて、よかったぁ……」

 

「死ぬ気でやるわけないじゃない、説明足りなかったのは仕方ないけど」

 

 胸の中にいる熱が、痛みを癒してくれる気がした。ぎゅっと、力を入れて抱きしめる。

 

「ごめ、ごめんなさい……わたし、わたし、何にもできなくて……」

 

「立派にヒーローやってたじゃん、まぁ、ちょっと……色々迂闊だったけど」

 

「もう、ヒーロー出来ない……スーツ、返さなくちゃいけなくて……」

 

「……そっか、まぁ、それはそれでいいじゃない。休暇だよ休暇」

 

 ぽんぽんと背中を叩く。

 

「別に、ヒーローじゃなくたっていいじゃない、色々やりなよ」

 

「でも、私、アベンジャーズに入りたかったのに」

 

 ……俺の知ってるアベンジャーズっていっつも喧嘩してるイメージしかないし、あんまり入らなくてもいいんじゃないかな。なんて、冗談言ったらまた泣かれるかもだから言わないけれど。

 

「大丈夫だよ、ペニー・パーカー。スパイダーマン、頑張り屋のかわいい女の子」

 

「ヒーローじゃなくても、君は綺麗だし……それに」

 

「きっと、何もなくても、アベンジャーズじゃなくても、君はヒーローになれるよ」

 

 今度は、静かに泣いている声が聞こえる。何も、言わずに、病室の窓から、風の音だけが聞こえる。

 

 NYの秋の風は、少し冷たくて、涙の熱が、血の熱のように感じられて。

 

 母を、抱きしめていた時を思い出した。

 





この辺でSP//drのスペックもまとめておきます。

高機動型多目的支援アーマー『SP//dr(スパイダー)』
アイアンマンアーマーを参考に作られたアーマーだが、身長150cmほどしかないペニーの体格差の不利を覆すため、アーマーの大きさはおよそ170cmほどにもなる。

普段はリュックの中に収まる鞄状のコンパクトな形態になっているため、展開すると細く長い手足のシルエットが特徴となる。
腕部からのウェブ発射機能以外にも、各種パワーアシスト、索敵用ドローン、ナビゲーション、トニーの意向からか瞬殺モードなどの剣呑な機能も多数含まれている。

実は、たびたび搭乗者であるペニーの怪力に耐えられず破損し、トニーの調整を加えられ、今は2代目である。
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