カーネイジ転生、なお、スパイディはペニー・パーカーとする   作:鴉の子

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ちょっと今回は短いですが、決戦前ということで。
みなさんいつも評価や感想、お気に入りありがとうございます……!

トニーのセリフがめちゃくちゃ褒められていてすごい嬉しかったです、スパイダーマンに並ぶくらい一番好きなヒーローがアイアンマンなので……



9話:前々々夜

 

「…………」

 

 気もそぞろに、ドレスを選ぶ。いろんな色を見ながら。

 

 ……何を選べばいいのだろう、リズは赤か水色かでうんうん悩んでいるけど。

 

「……赤、赤かな」

 

 思い浮かべる、髪の色に、変身した時の色。合わせて行こうかな、なんて思いながら見比べる。

 

「……ふふふ」

 

 リズの笑い声が背後から聞こえる、そして、急に肩を叩かれる。

 

「ひゃう!?」

 

「ペニー、誰かの顔を思い浮かべているわね?」

 

「な、なんで……」

 

「顔見ればわかるわよ! ふふふ、赤がいいのね?」

 

「え、あ、うん……」

 

「ならこっちの方が似合うかしら、もっと脚出して……肩も見せちゃいましょう!」

 

「えー……」

 

 ちょっと、いやかなり恥ずかしいんだけど。まぁでも、オシャレなのは間違いない、フリルで構成されていて可愛らしいシルエットだし。

 

「肩を出すなら下着も用意しないとね」

 

「え」

 

「肩紐見えちゃうじゃない。……なんか変なこと考えた?」

 

「いやいやいやいや違うよ!!」

 

「……おすすめもあるわよ、ただし、通販の方がいいわね。角が立たないから、サイズ測ってもらったらメモしときなさい」

 

「………………なるほど」

 

 目の前でにっこり笑っている友人に何とも言えない気持ちになりながら、ドレスを買って…………今後のために、仕立て直せるように丈夫なやつにしてもらった。

 

 メイおばさんは、今後使うかもしれないから買いなさいとお小遣いまでくれた。……ちょっとばかり心苦しい、あんまり家計に余裕がある家でもないから。

 

「……下着は、後で買おう、うん」

 

 ちょっと凄いのを買おうとしているのをバレないように。

 

 よし、というか、それはともかく。買い物を終わらせたら、こっそり物陰でスマートフォンを開く。盗聴機能と、発信機の機能をオンにする。

 

 襲撃に関するワードを検出するようにして、通知が出るようにすれば……今は当然何も話していない。コーヒーを飲んでいるような音が聞こえるだけだ。

 

「……よし、これで何かあればすぐわかるはず」

 

 そんなこんなしていると、ぽん、と通知がくる。

 

「……ん?」

 

『元気だから、気にしないでね!』

 

 そう書かれたメッセージと共に、送られてきたのは自撮り写真。……半裸の、多分、傷口を見せる目的なんだろうけど、実際、かなり治っている。

 

 ……まずい、ちょっと耳が熱い。細身の体に、意外とちゃんと筋肉がついていて、結構色っぽい。

 

「ひー……」

 

 思わず声を出してしまうが、とりあえずこれはこっそり保存して誰にも見せないようにしよう。返信として、『そういうのは人に送らない方がいいですよ!』とだけ書いて。

 

「お、彼氏とお話し中?」

 

「わーっ!? 違うからね!」

 

 とりあえず誤魔化す、いや、誤魔化してない、本当のことを言っただけだし。

 

 ……とりあえず、ホームカミングまでには解決しなければ。……一人で、捕まえてもいいのだけれど、少なくともバルチャーのスーツを着ている時でないと証拠がない。それか、拠点を見つけるか。

 

 ……一人で乗り込んで、全部解決出来るかなんてわからないけど、やるしかない。

 

「……ペニー? コーヒーいらないの?」

 

「……あっ、いる! いるよ!」

 

 とりあえず今は、バレないことを最優先に。コーヒー飲んだら、早めに帰……いや、付き合ってくれたリズに悪いし、出来る限り一緒に遊んでから帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆ、油断した……恋バナで盛り上がってしまったのが良くない! ホームカミングの相手が先輩だってこともバレちゃった……恥ずかしいやらなんやらで顔が赤い。

 

 帰りの車内でフードを被って窓の外を見て気分を誤魔化している私を、リズはケラケラ笑いながら父親と話している。

 

「聞いてよパパ、ペニーったら、うちの卒業生のクレタスさん捕まえたのよ! 奥手な顔してるくせに、やるでしょ!」

 

 実に楽しそうというか、本当に心の底から自慢げなのがわかるのが困る。うちの子は可愛いんだから! と言わんばかりだ。

 

「……クレタスぅ? あのケバブ屋の?」

 

「知ってるの?」

 

「うちの会社の昼飯をよく頼んでるよ、週一か二回な。たまに遅い時は特別に夜でも届けてくれる、いい男だ」

 

 知り合い、というか配達もやってたんだ。

 

「え、いいな〜! 私食べたことない!」

 

「普通のケバブだよ、ま、そこらのよりは美味いがな」

 

 ぴぴ、と電話が鳴る。相手は……先輩!? 

 

「クレタスさん、どうしたんですか……!?」

 

 思わず電話をとる、何か、危険な事態でも起こったのだろうか? 

 

『え? いや何もないけど、元気なさそうだったから。……ちょっと色々考えることがあってね、今、電話できる?』

 

「あ、えっと、出来ますけど……」

 

 二人を見る、リズは野次馬そのものみたいな笑顔でサムズアップ、なんだそれ。

 

 バルチャー……リズのお父さんは、お、と笑う。

 

「ん、クレタスか? お嬢ちゃ……あー、ペニー、スピーカーに出来るか?」

 

「……えっ、出来ますけど……」

 

「ちょっと頼むよ、内緒話はその後でな」

 

 とりあえず、スピーカーに切り替えて、二人へ向ける。

 

「よう、クレタス。今、病院だってな! 何したんだ? うちのみんなも心配してるぞ?」

 

 あ、お見舞いの言葉を伝えたかったらしい。なんだか、そういうところを見ていると、複雑だ。だって、そうしたのはあなただというのに、こんなに優しく振る舞えるなんて。

 

『────エイドリアン? 今一緒にいるんです?』

 

 息を呑む声が、かすかに聞こえた。二人は気づいていなかったけど、それは驚いた時の声じゃない。もっと、何か危険が迫ったことを知った時の反応に近い。

 

「ああ、うちの娘の友達がお前と一緒にパーティに出るって聞いてな。あんまり若い子を誑かすもんじゃないぞ、ははは」

 

 冗談混じりに、そう話して。

 

『人聞きの悪いこと言わないでくださいよ、最近景気はどうですか?』

 

「あんまり良くはねぇな、ま、なんとかなるけどな。これくらいなら幾らでも頑張ってやるさ」

 

『……そうですか、まぁ、あんまり無茶しないでくださいね』

 

「……ああ、お前もな。ああ、それと」

 

「あまり、ち(・)ょ(・)ろ(・)ち(・)ょ(・)ろ(・)す(・)る(・)な(・)よ(・)。お前が怪我すると、俺たちも美味い昼飯が食えなくなる」

 

 ────背筋が冷える。ミラー越しに、目線が合う。子供に向けるようなそれではない、冷たい、バルチャーとしての瞳。

 

 どうして? 今の今まで気づいていなかっ……違う、最初から私には気づいていた……!? 

 

 それで、先輩の声を聞いて、確信したんだ……! 失敗した……! 

 

『ええ、怪我には気をつけます。色々と最近は物騒ですからね』

 

「ああ、そうしろ。ペニー、もう切ってもいいぞ」

 

「……はい」

 

 静かに通話を切る。今の会話で、少しだけわかったこと、先輩は多分バルチャーのことを知っていた。でも、言わなかったのは……多分、友達だったから。

 

 それでも、私の手伝いをしてくれたのは、あの人なりの義理の果たし方なのだろう。私が、辿り着いたら仕方ないと。

 

「……ここが家かい?」

 

「はい」

 

「……気(・)を(・)つ(・)け(・)て(・)な(・)」

 

 笑顔で、友達のお父さんみたいな優しいそれで、目線は私の家の窓へと向いている。

 

 警告だ、何かすれば、危険なのはお前の家族だという。

 

「……はい、ありがとうございました」

 

「バイバイ〜!」

 

 手を振って、家へ帰る。

 

 メイおばさんにただいまとだけ叫んでから、部屋へ戻る。もう一度、先輩に電話をかけて。

 

 クレタスさん、じゃなくて。心から、言いたい呼び方で。

 

「先輩」

 

『うん、わかってる』

 

「私、行きます」

 

『そっか』

 

「先輩は、嫌ですか?」

 

『嫌かな、どっちも俺の好きな人だから』

 

「わかりました、でも、行きます」

 

 優しい人だ、本当に、優しいから辛そうなのがわかる。

 

『うん、わかった』

 

 笑っている、苦笑いだと思うけど。

 

『でも、そうだな……明後日まで待ってくれる?』

 

「……どうしてですか?」

 

『頑張って治すから』

 

「……一人でやります」

 

 私一人で、責任を取らなきゃいけないから。あなたを傷つけた、責任を。

 

『……うーん、そうだな、理由は、会った時に伝えたいから、言わないけど。一緒に行こう』

 

「……えー……?」

 

 なんだろう、よくわからないけど、多分言っても聞いてくれない予感がする。なにか、覚悟を決めたような声音だったから。

 

「わかりました、でも、治ってなかったら一人で行きますからね!」

 

『うん、よろしく』

 

 

 

 

 

 

 病室、一人だけしかいない静かな空間で、彼女の声を聞いて、少しだけ嬉しくなる。

 

「というわけで、ダリア」

 

 そして、通話を切って、相棒へと声をかける。

 

『……阿呆、馬鹿、あんぽんたん』

 

「どうにか出来る?」

 

『…………出来る、でも、本当に痛い』

 

「OK、頼んだ」

 

『インフォームドコンセント、説明。まず、切断されて焼けこげた組織を少しずつ治癒してるけど、これを、切り落として丸々私で置き換える』

 

 わぁ、痛そう。というか多分死ぬほど痛いだろうな。

 

「普通の再生との違いは?」

 

『急速にやるから、私とお前のバランスが一時的に崩れる可能性が高い。結果として、多分、ハイブマインドか、私の精神に一時的に接続される』

 

「……つまり?」

 

『激痛で頭がおかしくなって、私の記憶を体験する。具体的には宇宙空間で泳いでるだけの気が狂いそうになる時間とか、創造主をタコ殴りにしてる』

 

「え、こわ……」

 

『大丈夫、ちょっと宇宙的恐怖なだけ。元々お前はおかしいから平気』

 

「そうかなぁ……まぁ、いいよ、やろう」

 

『ん、言うと思った。大丈夫、元から一心同体』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーマン! フィニアス! 準備を早める」

 

「やっぱりですか、ボス、週末の予定だったのが、どんどん積み上げが早まっています」

 

「スパイダーマンとカーネイジの邪魔が入る可能性が出てきた、それに……おそらくだが引っ越しが早まる」

 

 実際に、カーネイジが大怪我を負ったせいか、バルチャーを警戒したトニーの手によりアベンジャーズタワーの引越しの予定は繰り上げられた。

 

 長年の犯罪の勘と、エンジニアのフィニアスの集めたデータが、それを証明している。

 

「気密パッケージは完成しています、高高度用エンジンの調整が残っていますが……明日には終わるでしょう」

 

「……それなら間に合う、おそらく、この積み込みペースなら三日後だろう」

 

「わかりました、進めます」

 

「ハーマン、お前は三日後、スパイダーマンとカーネイジの足止めだ」

 

「わかりました、どこで待機しましょう」

 

「……カーネイジはおそらくまだ入院中だろう、前回の取引先に一番近い病院で……金持ち向けのところは?」

 

「……一件、スターク社がスポンサーについているところが」

 

「……そこで張れ」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 ──────三日後、決着。

 




没セリフ
ダリア「どっちが命かわかんなくなっちゃったんだ!?しちゃうということ」
クレタス「あながち間違いでもないセリフだ」


ホームカミングは……決着後!
恋路的には最後にちゃんとドレスで決着したいよね。ホームカミングはもう一つの戦いなのだ。
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