朝の洗濯
朝。
いつものように早起きしたシルフィは、家族みんなの朝食を用意するため、朝からキッチンに立っていた。
食材を調理していると、リーリャも起きてきて、シルフィと一緒に朝食の準備を始める。
二人で手際よく料理を進め、家族全員が食卓につく頃には、豪勢な朝食が並んでいた。
こんがりと焼けたパンに、たっぷりと溶けたチーズを乗せる。
シルフィはそれを口いっぱいに頬張りながら、向かいに座るルーデウスへ尋ねた。
「ルディ、今日は休みだっけ?」
「ああ、そうだけど。どうかした?」
「ごめんね。ここ最近ずっと雨だったから、洗濯物が溜まっちゃってさ。手伝ってくれないかな?」
「もちろん!」
ルーデウスは即答した。
そして、少し得意げな顔を浮かべる。
「かわいい奥様が困ってるなら、助けない旦那はいないさ!」
「ふふっ、ありがとう」
シルフィが嬉しそうに笑った。
朝食を終えると、子供たちとロキシーたちも、それぞれ学校へ向かう準備を始める。
家族を見送った後、ルーデウスとシルフィは庭へ出た。
ここ数日の雨で、洗濯物はかなりの量になっている。
二人は水の張られた桶に衣服を入れ、一枚ずつ手に取って洗い始めた。
「こうしてみると、かなり多いな。うちの洗濯物は」
ルーデウスは額に汗を滲ませながら、目の前の洗濯物の山を見て言った。
「そうだね。かなり多いけど、もう日課になったからなぁ」
シルフィは慣れた手つきで衣服を洗いながら、涼しい顔で答える。
「日課、か……」
ルーデウスはそう呟くと、少し考え込んだ。
そして――ふと、あるものが頭に浮かんだ。
前世で使われていた、洗濯機。
衣服を入れて、機械を動かせば、自動で洗濯してくれる便利な道具だ。
もし、あれをこの世界で再現できれば。
シルフィやアイシャたちの負担を減らせるかもしれない。
「……洗濯機」
「ん? どうしたの、ルディ?」
「いや、ちょっと思いついたことがあるんだ」
そう言って、ルーデウスは目の前の洗濯物を見つめた。
この世界には魔法があり、魔道具も存在する。
それなら、前世の洗濯機をそのまま再現できなくても、魔法を利用して似たようなものを作ることはできるかもしれない。
そう考えたルーデウスは、いつも以上に手早く洗濯を終わらせた。
二人で洗濯物を干し終えると、ルーデウスはすぐに家を出た。
向かった先は、ザノバの商会だった。
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ザノバの商会に到着したルーデウスは、さっそくザノバに相談を持ちかけた。
「ザノバ、ちょっと作ってほしいものがあるんだ」
「ほう。師匠が私に相談とは、これは興味深いですな!」
ザノバは目を輝かせる。
ルーデウスは前世の洗濯機の仕組みを思い出しながら、できるだけ簡単に説明していった。
衣服を入れるための容器。
水を循環させる仕組み。
衣服を回転させて汚れを落とす仕組み。
そして最後に、水を切るための脱水機能。
それらを魔道具として再現できれば、洗濯を大幅に楽にできるはずだった。
説明を聞き終えたザノバは、しばらく黙り込んでいた。
そして――
「素晴らしい……!」
目を輝かせながら、ルーデウスの肩を掴む。
「これほど画期的な魔道具が存在するとは! ぜひとも開発しましょう、師匠!」
「お、おう……」
こうしてルーデウスとザノバは、魔道式洗濯機の開発に取りかかった。
試作品を作っては問題点を修正し、何度も改良を重ねる。
魔道具として成立させるために、二人は試行錯誤を繰り返した。
そして――
開発を始めてから一ヶ月が経った頃。
ついに、魔道式洗濯機が完成した。
それから、ある休日の朝。
商会から完成した魔道式洗濯機が、グレイラット家へ届けられた。
「みんな、ちょっと見てくれ!」
ルーデウスが家族を集め、完成した洗濯機を披露する。
大きな魔道具を前に、家族たちは興味深そうに眺めていた。
「これが、前に話してた洗濯機?」
シルフィが洗濯機を見ながら尋ねる。
「ああ。これがあれば、洗濯がかなり楽になるぞ」
「本当に?」
シルフィの顔が明るくなる。
そして、特に感動していたのはシルフィと、メイドとして働いているアイシャだった。
「これで洗濯が楽になるの?」
アイシャも興味津々といった様子で洗濯機を眺めている。
「ああ。さっそく使ってみよう」
ルーデウスがそう言うと、二人はすぐに洗濯物を用意した。
衣服を洗濯機の中へ入れ、水を入れる。
そして魔道具を起動させる。
ゴウン、ゴウン……。
洗濯機が音を立てて動き始めた。
中の水が回り、それと一緒に衣服もぐるぐると回転していく。
「おお……!」
シルフィとアイシャは、洗濯機の動きをじっと見つめていた。
やがて洗濯が終わり、二人は中から衣服を取り出す。
「ちゃんと洗えてる……!」
シルフィが嬉しそうな声を上げる。
「すごい! これなら洗濯、ずっと楽になるね!」
アイシャも嬉しそうに笑った。
二人は顔を見合わせる。
「ありがとう、ルディ!」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
二人から感謝され、ルーデウスも満足そうに笑った。
「これで、毎日の洗濯も少しは楽になるだろ?」
「うん!」
「うん、助かるよ!」
こうして、グレイラット家に新たな魔道具が加わった。
それは前世の知識をもとにルーデウスとザノバが作り上げた、魔道式洗濯機。
そして何より、毎日の洗濯を担っていたシルフィやアイシャにとって、それはとても嬉しい贈り物となった