ハズレ職【長老】、最弱なのでまともには戦いません ~年金とゲートボールで格上をハメる俺と、残念な最強勇者~   作:冷凍シャケ

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第4話 初心者向けの森にいる奴じゃねぇだろ!!

黒咲と白神は深い森の中を歩いていた。

 

「白神ぃ~」

 

「なんだい?」

 

「意外とモンスターって出てこないもんなんだな」

 

「そうだね」

 

 白神は周囲を観察する。

 

「初級レベルのモンスターが多い場所なら、エンカウント頻度も低いのかもしれない」

 

「平和だなぁ」

 

「良いことだね」

 

「ちなみにお前、武器あるの?」

 

「何を言っているんだい?」

 

 白神が胸を張った。

 

「僕にはこんなにも素晴らしい鋼の肉体がある」

 

「え?」

 

 黒咲が真顔になる。

 

「お前、裸一貫なの?」

 

「服は着ているよ」

 

「そういう意味じゃねぇよ」

 

「いざとなればバックパックに入っている便器を投げつけよう」

 

「そんな勇者見たくねぇよ……」

 

「陶器だから意外と威力はあると思う」

 

「勇者の初期武器が便器になるじゃん」

 

 その時。

 

 ガサッ。

 

 茂みが揺れた。

 

「お?」

 

 黒咲が止まる。

 

「なんかいるぞ」

 

「ほう?」

 

 白神の顔が輝く。

 

「僕のラジエルトお披露目の時かな?」

 

「いやいや」

 

 黒咲は少し笑う。

 

「最初のモンスターだろ?」

 

「そうだろうね」

 

「ちっこいローションみたいなやつじゃない?」

 

「スライムと言いたまえ黒咲君」

 

「似たようなもんだろ」

 

「かなり違うと思うよ」

 

 茂みが大きく揺れる。

 

 ズシン。

 

「…………」

 

 黒咲の笑顔が消えた。

 

 ズシン。

 

 木々の隙間から巨大な影が現れる。

 

 二メートルを軽く超える巨体。

 

 豚のような頭部。

 

 隆起した筋肉。

 

 右手には、人間一人くらいなら簡単に潰せそうな巨大な棍棒。

 

 黒咲はゆっくり白神を見る。

 

「お……おぉ……」

 

「うん?」

 

「白神教授」

 

「なんだい、黒咲君」

 

「なかなか大きな豚さんが登場しましたよ」

 

 白神も真顔で観察する。

 

「これは、かの有名なオークですな」

 

「白神教授」

 

「何かな」

 

「手にでっかいの持ってますけど」

 

「棍棒ですなぁ」

 

「棍棒ですかぁ」

 

「倒木を削って作ったのでしょう。意外にも繊細な作業が出来るのですなぁ」

 

「感心してる場合ですかねぇ」

 

「知的好奇心は大切ですからなぁ」

 

「白神教授」

 

「はい」

 

「背中になんか生えてるんですけど」

 

「…………」

 

 二人が見る。

 

 オークの背中。

 

 そこから。

 

 巨大な黒い翼が生えていた。

 

「翼ですな」

 

「翼ですねぇ」

 

「王様が言っていた異常進化個体でしょうな」

 

「…………」

 

 黒咲が辺りを見る。

 

 静かすぎる。

 

 初心者向けの森。

 

 なのに。

 

 スライム一匹いない。

 

 ホーンラビットもいない。

 

 鳥の声すらない。

 

「白神教授」

 

「なんでしょう」

 

「もしかして雑魚モンスターがいないのって……」

 

「おそらくですが」

 

 白神がオークを見る。

 

「ここは彼の巣ですなぁ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 オークがこちらを見る。

 

 目が合った。

 

「ブゴォォォォォォォォォ!!」

 

 森全体が揺れるほどの咆哮。

 

 黒咲と白神の髪が風圧で靡いた。

 

「白神教授」

 

「はい」

 

「どうします?」

 

 白神は一秒だけ考えた。

 

「逃げます」

 

「ですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 二人は同時に反転した。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 勇者と長老。

 

 異世界初戦闘。

 

 ――開幕、全力逃走である。

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