新メンバーである1年生が加入してからというもの、広島女子学園戦車道チームは本格的な新体制の元練習に励んでいた。
とはいえ主に1年生のアシスタント兼指導がメインであり、1日でも早く戦力として加われるようにメンバー総出でサポートにあたっていき、
そのおかげもあって1年生が新たに加わってから数週間ほどが経つが各車共に役割が定まりつつあった。
尚内訳はこんな感じ
ヘッツァー(六号車)
車長兼砲手 宇佐美梨里
装填手兼通信手 鈴谷音見
操縦手 霧野ユキ
九七式中戦車 旧砲塔チハ(七号車)
車長兼通信手 小豆沢こはね
砲手 花里みのり
装填手 白石杏
操縦手 天馬咲希
シャーマンファイアフライ(八号車)
車長兼装填手 高松漣
砲手 長崎星野
通信手 小日向椎名
操縦手 長崎星野
もちろん定まってからが本番というものでここから戦力として加われるように一ヶ月ほどで射撃訓練や隊列を組んでの移動など、先輩達は各々の担当を活かし、日々訓練や指導をしていくことに。
当然隊長であるりほは全体の様子を見ながら1年生に指示を出していかないといけないため、高台に停車しているIV号戦車の車長ハッチから双眼鏡片手にインカムで細かな指示を出していく。
『七号車、落ち着いて狙ってください。まだ的から大きく逸れてます』
『はっはい!』
『六号車、平地では射撃せず稜線などの遮蔽を利用してください。ヘッツァーならそのポジションが有利です』
『わっわかりました…!』
『八号車は同じ位置で射撃しないでください、シャーマンファイアフライは一発撃ったあとの隙が大きいです。ですから撃ったあとはすぐに移動を』
『了解…』
その様子を砲手用ハッチから顔を覗かせていた洋梨は、隊長らしいくどんどんカタチになってきてるねーと告げながら、徐々に練度が上がってきている1年生達に称賛の言葉を送っていく。
「いいよーりほちゃん、隊長らしくてかっこいい♪」
「そっそうかな…、全体まだそんなことは…」
「あるよーあるある♪ってかさ話変わるけど、1年生段々練度上がってきてるんじゃない?」
確かに練習を始めた当初に比べたら目に見えるほど練度は向上してきており、移動や射撃など基本的なことはそれなりに出来るようになってきていた。
とはいえまだ練習試合に組み込めるほどではないもののここまで出来るようになっていれば、上出来ではあるだろう。
「うん、基本的なことは出来てるから上出来だと思う。流石に練習試合とかはまだまだだけど」
そんなやり取りを交わしていると生徒会チーム(二号車)のT-34Eが近づいてくると、車長ハッチから顔をのぞかせた穂香がどんな感じかと尋ねる
キキッ
「あっ生徒会チーム、どうしたんだろ…」
「よっと…、涼宮隊長。そっちから見て1年生どんな感じー?」
もちろん聞かれたりほは先ほど話していた通りのことを、練習試合に組み込むにはまだまだではあるものの、基本的なことは出来てきてることを説明。
するとそれを聞いた穂香が模擬戦をやってみないかと提案していく。
「結構いい感じです、練習試合とかは流石にまだ早いですけど…基本的なことは出来て来てるので」
「なるほどー…あっならそうそう、それなら1つ提案なんだけど…そろそろ模擬戦…行ってみない?」
「模擬戦…ですか?」
夏の戦車道全国高校生大会の開催日も着々とではあるものの近づいてきているため、それに向けた練習試合などをする前に実戦的な練習も取り込みたいというのがあるのだろう。
「そう、公式大会も近づいてきてるし、それに向けた練習試合の前に実戦的な練習もそろそろ取り込みたくて」
もちろんそろそろそれも考えていたりほは、穂香の提案に賛成していき、インカムで演習場に展開している各車へ指示を飛ばしていくのであった。
「なるほど、わかりました。やってみましょう、(ピッ)隊長車より各車へ、話したいことがあるので集合してください」
その後全員が集まったことを確認したりほは、先ほど穂香から伝えられた模擬戦をこれから行う旨を伝えていき、それを聞いたメンバーからは今からですか?という声が上がる。
「皆さん集まりましたね、ではこれより模擬戦を行おうと思います」
「模擬戦?今からですかー」
もちろんその訳をりほは説明していき、話を聞いていた野々は模擬戦の形式はどうするのかと尋ねていく。
「はいっ、公式大会も少しずつ近づいてきてますし。練習試合に向けた実戦的な練習も入れていきたいので」
「ちなみに模擬戦の形式はどうするんですか?」
尚模擬戦の形式は、2つのチームに分かれた殲滅戦。チーム分けはくじ引きで行いつつ偏りがないように最終的には調整していくらしい。
「模擬戦の形式は殲滅戦、チーム分けはくじ引きで行いつつ偏りがないように調整していきます」
その後くじ引きを行いチーム分けを行った結果、こういった内訳となった。
Aチーム
IV号戦車H型
六号重戦車
シャーマンファイアフライ
九七式中戦車 旧砲塔チハ
Bチーム
T-34E
M18駆逐戦車
ヘッツァー
T26E4
「ではこのチーム分けで行こうと思います、尚模擬戦の前には十分ほどの作戦会議時間を設けます。では一旦解散…!!」
こうして作戦会議のために分かれた両者チーム、Aチームは戦車道倉庫の休憩室を利用して作戦会議を行っていた。
尚こちらは1年生が多い構成とはなっているものの野々の指摘通り隊長車に加え広島女子ではエースとされる砲手、ペンローズの乗車する六号重戦車が加わっている。
「さてと…こっちは1年生が多い構成になったけど…、まっ隊長に加えてうちのエースがいるからなんとかなるでしょ」
それはプレッシャーなんだけどなぁ…と苦笑いで話を聞いていたりほだったが、こはね達一年生チームがどうするのかと尋ねてきたことで、気持ちを切り替えて説明を始めていく。
ープレッシャー…なんだけどなぁ…(汗)ー
「隊長!今回の作戦は…」
「コホン…それでは説明します」
現状先ほども言った通り練度面もこちらが不利、火力装甲面では旧砲塔チハがいる分を含めると若干劣ってはいるものの、こちらにはエースともいえるペンローズがいる。
恐らく戦力差はそれで相殺されるものの、もちろんそれは相手も分かっているため、最優先目標として排除してくるのは間違いない。
「現状戦力面では若干不利ですが、こちらにはうちのエースがいます。ですが相手はそれを知っているため必ず最優先で排除してきます」
そのため作戦としてIV号を先行させ、偵察任務に出しながら残る3両は固まって移動。ヘッツァーやヘルキャットなどの待ち伏せに注意しつつ、高台が見渡せる森林地帯で待ち伏せを行うとのこと。
「なので作戦はIV号を先行させて高台を偵察、待ち伏せに注意しつつ高台近くの森林地帯で待ち伏せを行います」
有利な高台を捨てるんですか?と尋ねるこはねの質問に対して、相手チームにはスパパを覗いて速度がこちらよりも早いヘルキャットやT-34Eがいるため、恐らく先に高台を取られる可能性が高いと説明していく。
「あっあの…有利な高台捨てるんですか?」
「はい、相手にはこちらより速度の早いヘルキャットにT-34Eがいます。相手が狙うとなると先に取られる可能性が…」
仮に取れたとしても有利な地形を取ることは相手だって知っているだろうし、高台を利用した包囲戦や待ち伏せを行うパターンも充分に考えられる。
そのためリスクのある場所を避けて最初は様子見という戦術を取るらしい。
「それに仮に取れたとしても相手はこちらが高台を狙うことは充分に予想できるはず、取ったところを包囲戦を仕掛けることも充分にあり得ます。なので最初は様子で行こうと思います」
とまあそんなことを話しているうちに作戦会議の時間はあっという間に終了、両者チームはそれぞれの車両に乗車すると事前に決められたスタート地点に移動。
その後無事に移動完了したことを確認しつつ、時間を確認した穂香のオープン無線での合図の元、スタート地点から移動を開始した。
『よしっ、それじゃ試合開始っ!』
『『パンツァー・フォー!』』
もちろん事前に取り決めた通りIV号が先行、その後に続く形で六号重戦車、シャーマンファイアフライ、旧砲塔チハが続く形で走行。
先行するIV号戦車の車長ハッチからは身を乗り出したりほが周辺の索敵を行っており、後続でも野々が中心に、1年生も双眼鏡での周辺警戒を行っていく。
「……こちら隊長車、進路上現時点で異常なしです。そちらはどうですか?」
『こっちも現状敵影なし。2人はどう?』
『みっ右側敵影なし…です!』
『左側も同じく…』
その報告を聞いていたIV号の車内では通信手の真希がボートに情報を纏めており、一旦それが終わるとりほに見せる形で共有する。
「こんなとこかな、はいっ」
「ありがとう真希さん」
すると遥が生徒会長達はどう動くんですかね?と砲弾を両手に尋ねていき、聞かれたりほはまだ相手の動きが分からない以上何とも言えないと答えていく。
ただすんなり高台を明け渡すとは思えないため、上手いこと利用した誘い込みをしてくるんじゃないかと予想を立てるように呟いた。
「にしても生徒会長、どう動いてくるんだろうね?」
「どうだろう…、まだ動きが把握出来ないから何とも言えないけど…高台はすんなり明け渡すことはないと思う。恐らくそれを利用した戦術を…」
高地までは後少し、そんなことを思っていたのだが…。
その直後何処からともなく飛んできた複数の砲弾がIV号の周りに着弾。もちろんそれに気づいたりほは慌てるメンバーを横目に車長用ハッチから顔を出すと周囲を見渡す。
「とりあえず高地までは後少し…それ次第で…(ドォォォンン)!?」
「敵襲!?」
「っ!」
着弾音からして撃ってきたのは恐らく2両、それを頭に叩き込みながら当たりを見渡したりほの予想通り、茂みに潜む形でT-34Eとヘッツァーの姿が確認出来た。
ー発砲音からして相手は恐らく2両…、ッ!いた!T-34Eとヘッツァー!ー
すぐにこの情報を味方に共有、同時に牽制の意味を込めた反撃を指示。IV号ではホワイトボードに真希が情報を追加で書き留め、蛍が射撃のために停車。
洋梨が砲塔を旋回させて狙いを定めると、即座に発砲していく。
『左側の森林地帯にヘッツァー及びT-34E発見!牽制で構いません、反撃を!』
「停車するよっ!」
「オッケーっ…っと!」ドォォォンン
もちろん後続の3両も指示通り牽制の意味を込めた反撃をしようと停車しながら射撃態勢を試みる。…がIV号に撃たれたタイミングで森林地帯の奥に2両は引っ込んでしまい、あっという間に姿を眩ませた。
『わかりました!こちらも応戦します…!全車左砲撃戦用意!』
「…ちっ、駄目逃げられた。IV号に撃たれたタイミングで引っ込んだわね」
いきなり大胆に動いてきたわね…内心そんなことを思いながら野々は次の指示をと仰ぐと、りほは深追いはせずこのまま高地が見渡せる場所に向かうと伝えていく。
当然尾行にも注意しながらだが…
「隊長、次は」
「深追いはしないでください、恐らく相手はこちらの出方を伺っている可能性があります。ひとまずこのまま高地を見渡せる場所へ」
そんなことで再び移動を再会したものの間髪入れずに再び砲撃音が響き渡ると共に、今度は漣の報告と共に反対側からヘルキャットが勢いよく飛び出すと、速度を落とさずに突っ込んできた。
「…右側より敵接近…!」
「っ…!ヘルキャット…!」
当然各車共に近寄らせまいと砲塔を旋回させていくがヘルキャットは装甲を犠牲に速度を向上させた快速戦車、あっという間に距離を詰めてくる。
とは言えなんとか射撃態勢を整えた旧砲塔チハ、即座に発砲、遅れる形でIV号も発砲していく。
「こちら七号車!発砲します!」
「了解!隊長車も応戦します!」
ダァァン
しかし先ほども言った通り快速に全振りしたヘルキャットに命中弾を簡単に与えられるはずもなく、放たれた砲弾はあらぬ方向やかすめる程度にとどまってしまう。
もちろんそれを変わっている楓は発砲を指示、苗は未だモタモタしているシャーマンファイアフライに狙いを定めるとトリガーを勢いよく引いた。
ガギィン
「ふふーん、そんな砲撃当たるもんかー。広島女子戦車道チームイチの快速舐めないでよー、撃てっ!」
「発射!」ダァァン
放たれた砲弾は迷うことなくシャーマンファイアフライ目掛けて飛来、しかしファイアフライでは相変わらずモタモタしているせいで避ける余裕すらない。
このまま命中するかと思われた矢先、割って入るように六号重戦車が飛び込んできた。
「やば…撃ってきた…!回避…!」
「無理だよー!動くので精一杯…!」
「ちっ…!やっぱきついか…っ!?先輩!?」
ヘルキャットの放った砲弾は六号重戦車の側面装甲に命中、…が車体を斜めにして進入したおかげで撃破判定にはならず無情にも鈍い音と共に砲弾は明後日の方法にぶっ飛んで行く。
ガギィン!!
その様子をみていた楓はその手があったかーと関心した表情を浮かべながらも、即座に敵車両のド真ん中を横切って離脱するように指示。
…がその直後シャーマンファイアフライのカバーに入った六号重戦車では、ペンローズがヘルキャットの逃走ルートを予想。
その場所、何もない場所に目掛けて発砲。砲弾をたたき込んだ。
「流石野々さん…、その手があったか…寧々さん!離脱するよっ!」
「うん…!」
ーって思ってるんでしょうけど…、見え見え…なのよっ!ー
カチッ
ダァァン
放たれた砲弾は何もない場所目掛けて飛来、…が直後まるでそこに飛び込むようにヘルキャットが姿を現し、そのまま被弾。
悲鳴とともに派手に吹き飛ばされたヘルキャットはそのまま明後日の方向に飛んでいき、黒煙を吹き上げながら白旗を上げていくのであった。
ガギィン
「きゃぁぁぁ!!?」