戦国爆乳秀吉〜主人公は秀吉を天下人に育てたい〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「いやはや! まさか末端の兵と同じことをやらされるとはねぇ! というか鉄砲を織田家ではこれだけ訓練で放てるのかい!」
信長様は斎藤利治様を何故か俺の部隊に投げつけてきた。
それに、
「一兵卒から叩き上げって」
って言われていたので、大名の娘かつ人質なのに、一緒に訓練……いや、山本勘助殿の軍略についての勉強や林殿から礼儀作法についての勉強を同時並行でやらされているので、何で人質のはずの私がこんな目にと、偶に愚痴っていた。
「いや、わかるよ! 最高の教育を受けられているっていうの! しかも末端の兵の鍛錬をすることで下のことも意識して指揮ができるっていうのも……でも休ませてよ……」
「利治様、似たようなことをやっている秀長とかもいますし、俺、あなたの倍は働いてますが……」
「うんん、それを言われると何も言えないねぇ〜」
実際、俺が今している仕事は信長様の直轄地や親衛隊の皆さんの農地指導、職業訓練学校の運営、三河で紡績工場の建設及び職人の育成、鉄砲の仕入れ、競売の最終管理、黄銅銭の製造監督……これに踏まえて広がった領地の経営とかも入ってくる。
正直立場に対して責任と仕事が多すぎる。
萌衣や美虎、秀長、優里とかの一門に手伝ってもらって何とかしている。
秀吉が土木工事で取られたのは正直痛かったが……。
「よく潰れないねぇ……」
「効率よくやれば何とかなりますから。あと指示を出せば動ける人材は育てていますし……利治様は成長して是非ともこの業務のどれかを担ってくだされば」
「うん、普通にきついからね!」
12歳の少女にやらせるのは無理だけど、いつかは担ってほしいし、将来美濃を任せられるくらい成長してほしいものである。
「さて、射撃訓練が終われば自重を使った鍛錬をしましょうか! 腕立て伏せ200回。50回を4回に分けて……俺もやるので頑張りましょう!」
「鬼! 悪魔! 英聖!」
まぁ周りも斎藤家の人質って感じではなく、織田家の一員として扱ったので仲良くなるのは早かったし、元服し、他国に出向いてまで頑張っている斎藤利治様に対して他の面子も負けてられないと頑張ったので、織田家内の競争も活発になるのだった。
「さてと、ようやく纏った時間ができたから、領地の改革に着手しましょうかねぇ……」
俺は世話になっている中村の村長だけでなく、周囲の村の村長も招集した。
今まで中村って呼んできたが、正式な村の名前は中中村であり、同じ中村でも上中村と下中村の3つに分裂していたのである。
言いにくいので以後は上村と下村と呼ぶことにする。
それに隣の古井村という那古野城に近い村も与えられて、4つの村を俺は領有している。
去年は前の領主からの引き継ぎとか色々あったので、年貢に関しては全領主に渡し、今年から本格的に領地経営をすることができる。
「各村の代表集まりました」
「よく集まってくれた」
まず互いに挨拶を行い、自己紹介をしていく。
基本的に名字がないので、各村の名前である中村とか上村、下村、古井で呼んでいく。
この面子で古井さんだけは男で、他の村長達は全員女性である。
中村の村長は40代半ばで、かれこれ10年近く村長をやっているベテラン。
ちょっと豊麗線と白髪が気になるけど、若い頃は美人だったんだろうなって容姿をしている。
上村さんも40代半ばで中村さんと同じくらいの年代で、子沢山のオカンって感じが強い。
下村さんは30代後半で先代が亡くなって村役の人達で新しく選出されたばっかりの新米村長。
元々足軽組頭で織田家に仕えていた経験もあるが、足軽業務は娘達に譲ったらしい。
唯一の男である古井さんは筋骨隆々のマッチョな男性。
日焼けにより小麦色の肌をしていて50代に見えないくらい若い。
なんと言うか種付けおじさんって単語が思い浮かぶ。
「木下様には娘や息子達がお世話になっています」
「ああ、下村さんのお子さんでしたか。確かに足軽で頑張っている子に似た顔立ちの子がいましたね」
「顔を覚えられて光栄です」
「いやいや、息子さんは火縄銃の扱いが上手で、こっちも頼りになってますよ。将来足軽大将を目指せる逸材ですよ」
「それはそれは……気にかけてくださるとありがたいです」
下村さんのお子さんは俺の部下として鍛えていたので知り合いだった。
知り合いのお母さんだったら話しやすいな。
「さてと……まず年貢の話をしましょうか」
「「「「……」」」」
場の空気が一段と引き締まる。
年貢によって生活が変わるので気が気でないだろう。
「4公6民……でいきたいが、条件を飲んでくれるのであれば3公7民でも良い」
織田家の基本年貢率は5公5民なので、それに比べると、最初に出した条件でもだいぶ緩い。
「条件は2つ、1つは中村で行なっている木下式農法の徹底。2つ目は区画整備及び検地の実施」
「区画整備と検地だと! おいおい領主様、それは村の反発を生みますぜ」
古井さんが、その両方は危険だと言うが、中村では既に実行していることである。
「中村は既に行っているぞ。まぁ区画整備と検地は村の利権に大きく関わることは俺でもわかる。その代わりに銭を稼げる手段を俺は提供するつもりだ」
「銭だ?」
「銭を稼げれば豊かな暮らしを送ることもできるからな。まぁ話を聞いてほしい」
まず中村で成功したサツマイモの栽培を各村に広める。
個人単位では広まっていたが、村ぐるみで行うことで収穫量を引き上げる。
そのサツマイモは個人で消費する分以外を領主である俺が年貢ではなく、買い取り、酒造りの材料とする。
那古野城下の酒蔵ではサツマイモを使った芋焼酎の製造が始まり、商人達からも高評であること、ウォッカやウィスキーよりも芋焼酎のた方が材料が手に入りやすく、量産しやすいとのことで、度数を高めたものが織田軍の消毒液としても採用されることが決まっていた。
なので今後芋焼酎の需要が拡大するので、サツマイモを大量に作れば金になる。
こちらとしても中間マージン(中抜き)で利益が出るし、原料の安定供給ができれば生産量の調整がしやすいので助かる。
他には尾張全体で食用の需要が高まりつつある鶏の飼育の推奨とやり方の共有。
前よりは値段が下がりつつあるが、1羽700文近くの値段で売れるし、卵も1個10文の値段が付いている。
サツマイモの葉っぱや芋の粉末、野菜くずや米糠などを鶏には与えれば良いので飼育もしやすいし、数年鶏を育ててきて、この時代にあった育て方がわかってきたので、広めることができれば、村の貴重な資金源になるし、鶏の出す糞は加工すれば鶏糞として肥料にすることができる。
これだけでも資金は安定するが、養蜂技術の普及と椎茸栽培のやり方も共有するつもりである。
「それだと中村の利益が……」
「中村は今十分に稼げているし、蜂蜜酒の製造をやっているんだから利益は侵害しないでしょ。なんなら他の村の蜂蜜を買って蜂蜜酒作れば良いんだし」
蜂蜜酒だけじゃない、蜜蝋で蝋燭や稲藁で和紙、黒板の製造もしているんだから、原料くらいは周りに作ってもらわないと。
「今まで良い思いしてきたんだから、私達周りの村にも良い思いをさせてもらいましょうか。中村さん」
「しゃーないな上村さん。ちゃんと教えるんで覚えてくださいよ」
「わかっとる!」
まぁ俺が広めた技術だし、俺が他所にも広めるって言えば、中村も文句は言えないだろう。
古井の村は桑の木が多くあるということで、養蚕の職人を呼び寄せるので、養蚕もやってもらう。
上村は醤油の作り方を教えて、大豆を多く作って、味噌や醤油の加工業でも稼いでもらう。
下村は質のよい粘土が出るのと、焼き物職人が何家か居るので、焼き物に力を入れてもらうことにする。
「区画整備と検地は今後のために絶対やってもらう。協力してくれれば年貢の引き下げと、富となる技術を教えるから、村人を説き伏せてくれ。そうでなければ武力介入をしなければならなくなるから」
「従わないのは武力も使うと」
「ああ、個々人だけじゃなく村全体の利益を優先させてもらう。村長だから分かるだろ」
「そりゃまぁ……わかりました。十分な飴もありますし、説得を試みます」
「古井頼む。冬の間に終わらせてしまって、田植え前に区画整備は終わらせないと収量に関わる。必ずやらせてくれ」
「了解です」
「木下様、中村の面々も各村の説得にお使いください」
「割り振りは任せる」
「は!」
こうして領地の統治を俺は行い始めるのだった。