戦国爆乳秀吉〜主人公は秀吉を天下人に育てたい〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
俺が信長様と秘密を共有している時に、別の場所では反信長の動きが活発に動いていた。
その中心地は末森城である。
「姉上はあの男に誑かされている。このままではいつか……織田家は木下とか言う農民に下剋上されかねない……」
城主であり、信長様の妹でもある織田信行は危機感を露わにし、水面下で反信長勢力を集めていたのである。
「しかし、信行様。信長様は三河を奪い、斎藤家との同盟関係を再度締結したりと文武両面で実績を残しております。私人としてはうつけの行為が目立ちますが、今排除に動くと、今川につけ入れられる可能性が大きいかと」
姉とは違い、黒髪で蝶のように美しい少女の信行に対して、教育係をしていた柴田勝家は忠言を試みる。
柴田勝家……金髪の髪色にサイドテールでいかにもキャリアウーマンでできる人風のオーラを漂わせている。
普段の所作はメイドのそれであるが、戦場に出ると織田家最強の武将としての才覚を遺憾無く発揮する。
足軽から若くして織田家重臣まで成り上がったできる人である。
「しかし、柴田殿。早く決起しなければ信長の増長と奸臣である木下の勢いは更に強まってしまうのではないでしょうか」
「しかり、しかり」
この場には平手の3人の娘達や林秀貞の妹などの重臣に連なる人物が城に集まり、密会をしていたのである。
ただ思いの外人数は集まらず、一部の重臣は三河に所領が与えられた影響で、物理的に距離を取らざる得ない人物もいたのである。
「勝家、姉上には勝てるか?」
「今の信行様の兵数ですと……集められて1500が良いところかと」
「姉上は?」
「3000はすぐにでも集められるでしょう……」
「……よし、犬山の従姉妹の織田信清を頼ろう。それに岩倉織田家も引っ張り出す」
「岩倉織田家ですか?」
岩倉城にいる一応守護代の役職を持っている人物である。
「しかし……今の役職ですと、幕府が信長様に守護の役職を与えてしまっているので……家督争いではなく、明確に反逆になってしまうのでは」
「いや、我々が立ち上がれば三河の重臣達もこちらに付くだろう。挟撃の形を取れば信長といえども……」
平手の娘達と林の妹が話し合うが、柴田勝家は主である信行様に家督を継いで欲しいと言う思いがありながらも、現状の戦力に他家も巻き込めば、もし勝ったとしても織田家の権威は地に落ちるのでは無いかと冷静に考えていた。
「どうしたものか……」
柴田勝家は考えるのであったが、後日、柴田勝家の屋敷に訪ねてくる人が現れるのだった。
「の、信長様!」
「久しいね権六(柴田勝家のあだ名)」
俺が小森城に出入りしている商人経由で織田信行様が怪しい動きをしていると通報を受けて、信長様に相談したところ、信長様も怪しい動きは掴んでいたらしく、じゃあ行こうかって信長様は言ってきた。
「行くってどこへ?」
「孫子の兵法にもあったけど、戦に勝つのが上ではなく、戦になる前に勝ってしまうのが最上だよね。その方法の1つとして事前準備の大切さと敵を寝返らせてしまえば良い。権六なら寝返るかもしれないからね」
というわけで、信長様と俺は柴田勝家の住む屋敷に赴いたのである。
「粗茶ですが」
「そんなに気を使わなくていいのに……」
「いえ、主君なことには変わりないので……」
何とも微妙な空気が流れる。
「柴田殿、ちょっと台所を借りてもよろしいでしょうか?」
「ん、ああ、木下英聖……殿か。台所か? そこにある食材も使っていいぞ」
「ありがとうございます」
俺は台所で料理をしながら、信長様と柴田勝家殿は話を続ける。
「権六、主が誤った道に進みそうになっているときに忠言を行うのも家臣の役目だと僕は思うけど」
「……信長様はなんと言うか……普段と様子が違いませんか?」
「ああ、うつけの姿? あれをするより今の方が真面目な権六は聞いてくれるでしょ?」
「……ええ、何故信長様は普段からその姿で居ないのですか?」
「不穏分子を炙り出すため」
信長様ははっきりと断言的する。
「……平手殿は信長様に忠言するために腹を切ったと見ていますが」
「でも権六よーく考えてみてよ。平手は私が独自に銭を作り出したことに怒って、腹を切ったけど、幕府や朝廷は逆に献金を行ったら、時期がよかったのもあるけど守護の役職を与えてくれたよ。それに銭に関しても特に何か言われてない。つまり認められているんだよ……僕は」
「もし……もし、今反乱が起こった場合どうするのですか」
「そうならないように信行の周りから重臣の一部を三河に引き剥がし、兵が集まらないようにした。そうなれば一部の過激派を除いて先が見えれている者は信行に未来がないことがわかるでしょ」
信長様はお茶を飲みながら更に続ける。
「権六ならわかるんじゃない? 信行単独で謀反を起こしたとしても集まって1500名。僕に反感を持っているのだと犬山の信清と岩倉の織田とも組むかもしれないけど、大義名分無いよね。それで兵がついてくるかな?」
「……何をこの権六に求めるのですか」
「信行を清洲城に連れてきてよ。英聖を使って仕置きを行う」
「腹を切らせるつもりですか?」
「いや、僕は妹の信行を生かせたいからね。そんなことはしないけど、武将としては死んでもらう」
「信行様は生かせるのですね」
「ああ、約束する。僕の体調が悪いから見舞いに来るように伝えてよ」
「こうなる前に止められなかった私にも罰を与えください」
「それはできない。権六には織田家で働いてもらうのが罰だ。仲間に引き込もうとした信清と岩倉織田家を滅ぼす。その時に君の武芸を見せてよ」
「……は!」
信長様と柴田勝家殿の話が終わったところで、俺は料理を出した。
「ふろふき大根に、大根の皮のきんぴら、葉は味噌汁か。大根尽くしだね」
「この大根が織田家とお思いください」
「なるほど」
信長様は理解したらしい。
意味のわかってない柴田勝家殿に解説する。
「英聖が言いたいのは、織田家の力を余すことなく使えってことでしょ? 大根を使い切れば料理がこれだけできるってことでしょ?」
俺はニコリと笑う。
「対立している暇は無いと言うことか……うん、美味しい」
「英聖は何でもできるからね。僕が女の子以外と交わるのはこれくらい有能で気遣いできる人じゃないと」
「やはり奇妙様の父親は英聖殿なのですか」
「信行が僕に敵対心を持ったのは、英聖が低い身分出身にも関わらず織田家中枢に居ることが気に食わないからだからね。信行は高貴な血の魅力に取り憑かれている。それを思うと権六もわかるんじゃない?」
「……平手の娘や林の妹が信行様の周りに来るようになり、私は端に追いやられました」
「……僕なら足軽から成り上がった権六をもっと大切にするんだけどな……ねぇ権六」
「は!」
「一通り片付けたら三河で信光叔母さんの手伝いをしてみない? それこそ信光叔母さんに話をつけて5万石の所領は用意するけど」
「私をそこまで評価していただき感謝します。しかし、どうなろうと、私の主は信行様なのです」
「……わかったこれ以上は言わないよ。決行は1週間後。僕が寝込んだって噂を流すから、信行を見舞いに連れてきてね」
「わかりました。織田家が分連するよりはマシでしょう。信長様、権六からの忠言です。もう少しうつけ行為は控えてください」
「うん、これが終わればもうする必要も無いからね。今年中に尾張を完全統一するよ」
「は!」
柴田勝家殿の目には確かにやる気が漲っていた。
人を焚き付けるのが信長様は上手いな……だからついて行きたく魅力が溢れているのだろう。
こうして柴田勝家殿を信長様は味方に引き込むことができたのだった。