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いやぁ、彩葉ちゃん
今日は暇だねぇ。
ね、まったく
お客さん来ないね。
…そういえば最近どうなの?
かぐやちゃんと、いろPだっけ?
ライバーとしての活動は。
順調なんだ。
登録者も増えてるし
結構いい感じなんだ。
今も頑張ってるしね。
二階から事件性のある悲鳴が
聞こえてくる。
…営業中なんだけどなぁ。
あぁ、いいよいいよ。
頑張ってるだけだしね。
それにどうせお客さんいないし。
彩葉ちゃんも手伝ってるんでしょ?
聞いてるよ、曲。
いやいや、贔屓目無しに
めちゃくちゃよかったよ。
伴奏もかっこよかった。
照れるな照れるな。
可愛い可愛い。
…はい、調子乗って
すいません。
だから、バイトはやめないで。
でも、楽しそうでよかったよ。
はは、そうね。
確かに、わがままだし
思いつきで行動するし
つきあわされると疲れるけどさ
なんだかんだ好きでしょ?
かぐやちゃんのこと。
……はいはい、そうね。
うーん、確かにいろかぐてぇてぇな。
俺も推すかもしれん。
俺?
俺も好きだよ。
かぐやちゃんのことは。
彩葉ちゃんや朝日くん
芦花ちゃん達とおんなじくらい好きだよ。
…えぇ、距離感同じだよ。
かぐやちゃんだけ近い気がする?
そうかなぁ。
…みんなに幸せになってほしいんだけどなぁ。
大丈夫だよ。
彩葉ちゃんをハッピーエンドにする仕事は
まだやってるから。
魔法使いのお仕事だからね。
だから、何か頼りたいことがあったら教えて?
基本的には、叶えてあげれるから。
ヤチヨカップ優勝できるといいね。
俺も心から応援してるよ。
どしたのかぐやちゃん
配信終わったの?
ツクヨミで作戦会議?
だってさ。
じゃあ、今日はもう閉めちゃおうか。
いいよ、お客さんいなかったし。
今日も二人泊まっていくでしょ?
ご飯は何がいい?
オムライス?
好きだねぇ。
すぐ作るから待ってて。
みんなで一緒に食べたあと
2人はツクヨミにログインした。
■
隣でオムライスを頬張るかぐや
それを嬉しそうに見つめるお兄さん
「店長、これバカウマ!」
「でしょ?これが店長の腕よ」
「んー!おかわり!」
「はいはい。あと、口にケチャップついてるよ」
…やっぱりおかしい気がする。
距離感というか、お兄さんの目が
かぐやに向けるそれだけ違う気がする。
…会ってまだそんなに経ってないのに
私のほうが付き合い長いのに。
「はい、どうぞ。彩葉ちゃんもいる?」
「…大丈夫」
「そっか、じゃあお水いる?」
「…いる」
「はいよ」
お兄さんがお水をついでくれる。
「…ありがと」
「いえいえ」
不意に目が合う。
「おいしい?」
「…おいしい」
「よかった」
くそう。
こんなことで喜んでる自分が悔しい。
「店長のご飯、美味しいよねぇ」
「ありがとありがと」
「かぐやのより美味しいかも」
「彩葉!?そんな馬鹿なっ!」
「まぁ、これが長年の差よ。精進するんだな」
「ぐぬぬ、店長のくせに…」
そんな二人のやり取りを聞きながら
私もオムライスを口に運ぶ。
お兄さんは全員同じなんだと思ってた。
人のことが好きで、誰かと関わるのが楽しくて
だから優劣をつけるのが苦手で
でも、その中でも
私は少しは特別になれてると思ってたのに。
だから芦花とも、ちゃんと納得して
向き合えて、親友になれたのに。
かぐやを見る。
「え、なに彩葉」
…うぅむ、可愛い。
こういうのが好みなんだろうか。
そういえば、お兄さんの
好みって聞いたことなかったな。
「そんなに見つめられたら、照れちゃうよ…?」
…そして普通に私もかぐやのこと
嫌いじゃないんだよな。
普通、こういうのって
ギスギスすると思ってたんだけど。
「…キスとかする?」
「しない、私も特別になりたいと思っただけー」
「…?彩葉は特別だよ?」
…この、天然宇宙人め。
まぁ、いいか。
先のことを考えると
鬼が笑うってね。
そんな感じで晩ご飯は進んだ。
「ごちそうさま」
「ごちそうさま!」
「お粗末様」
「そんじゃ、彩葉。先行ってるね」
かぐやが急いで二階に戻る。
「あ、こら。片付けしなさい」
「いいよ、いいよ。作戦会議あるんでしょ?」
「いや、さすがに…」
「はい、お皿没収」
お兄さんにお皿を
奪われる。
「頑張ってね」
「…ありがと」
お兄さんに背中を押されて
階段のほうへ向かう。
「あ、そうだ。これ」
後ろから声を掛けられ
青いフィルムに包まれた
お菓子を渡される。
「かぐやちゃんの分はないから、特別ね」
ずるい。
「…うす」
「うす?」
…こっちの気も知らないで。
■
目の前で私のリクエスト通りの
オムライスが作られ配膳されていく
「お兄さん、これ運んどくね」
「ありがとー」
店長が作り、彩葉が運ぶ。
自分だけ何もしないのが
少しいたたまれない。
「わ、私も何か手伝う!」
「じゃあ、ピッチャーお願い」
「任された!」
椅子から飛び出し
ピッチャーを運ぶ。
運びながら
横目で二人を見る。
はたから見れば完全に
お似合いというやつなのだろう。
子供の頃から一緒に過ごして
父親を助けてもらい
一緒に暮らす。
材料はラブコメのそれだ。
流石の私もこれだけ一緒に過ごせば
彩葉や芦花がどういう感情を持ってるかは
見ていればわかる。
配膳が終わり
各々の席にオムライスが鎮座する。
とりあえず、ご飯を食べなければ。
「はい、じゃあいただきます」
「いただきます」
「…いっただきまーす!」
むっ!
「店長、これバカウマ!」
「でしょ?これが店長の腕よ」
「んー!おかわり!」
「はいはい。あと、口にケチャップついてるよ」
店長が口元を綺麗にしてくれる。
…こういうのはあまりしないほうがいいと思う。
死ぬぞ、店長。
◇
「ごちそうさま」
「ごちそうさま!」
「お粗末様」
「そんじゃ、彩葉。先行ってるね!」
途中、彩葉に見つめられるという
嬉しいハプニングはあったが
晩御飯は美味しかった。
…一応気を使って
先に部屋に戻る。
かぐやちゃんは天才なので
こういうこともできちゃうのです。
ベッドに横になりながら
ツクヨミにログインする。
目を閉じると
さっきまでとは違う世界になる。
真実や芦花との集合場所に
歩きながら向かう。
一瞬で移動もできるが
今は少し歩きながら考えたい気分だった。
私は彩葉のことが好きだ。
正直、一目惚れだった。
だからハッピーエンドに一緒に連れて行くし
私が彩葉を幸せにしたい。
私を見てほしい。
だが、店長のことは正直分からない。
嫌いでもないが、何か壁を作られてる感じがする。
それに彩葉と私の対応が違う気がするし。
私にも優しくしろ。
ただ、懐かしいとは、よく感じる。
あとは、話してたら楽しい、かな。
月から地球を見てた時に
店長のことを見てたんだろうか。
…考えてみたが、わからないな。
大体なんだ。
恋敵が超人気ライバーと
昔馴染のお兄さんって。
私のハッピーエンド難しすぎるだろ。
…まぁ、これ以上は
考えても無理そうだし。
まずは彩葉に
喜んでもらうために
ヤチヨカップ頑張るか。
歩くのをやめて、テレポートで
集合場所に向かった。