皆様の応援のおかげで4位に上がっていました。
感想も暖かく、いつも励みになっております。
今回は文字数が多くなってしまったので、
飽きずにお付き合いいただければ幸いです。
あ、ストック切れました。
朗報
俺帰れるっぽい。
やったぜ。
姫様も原作通りの性格になったみたいだし
今回は完璧に仕事こなせたんじゃねぇか?
これなら神様からちくちく言われないだろ。
朝久さん助けたときは、しばらく夢に出てきて
ちくちく、ぐちぐちうるさかったからな。
問題ないなら、文句言うなよ。
姫様も陽キャになったし
地球に興味持つように
会話の中で地球のことも話しといたし
仕事の達成率で言えば、ほぼ完璧やな。
あとは姫様と先輩に言うくらいか?
なんて言うかなぁ。
やめまーすとか?
ばいばいとかでもいいか?
まぁ、いい人たちだし
ありのまま伝えたらいいか。
そのうち姫様とは地球で多分会うわけだし。
先輩とは、会うのか?
会えんのか?
まぁ、今生の別れってわけでもないだろ。
俺不老不死だし。
そんじゃまずは姫様に報告してくるかな。
報連相が大事だからな!
ここ数年の社畜で学んだ。
さていつ話しかけるか。
できれば一人ずつがいいんだよな。
言いふらす話でもないし。
姫様が休憩行ったタイミングで行くか。
◇
姫様、休憩中ですけど今大丈夫ですか?
実はお話が…って、それこの前言ってた
俺と先輩の帽子ですか?
おお!結構できてますね!
まぁ、確かに見分けつきませんもんね。
はは、重くてウケる。
俺のが白で、先輩のが黒いんすね。
なんでこの色なんですか?
安心する方と自由な方?
確かになぁ。
先輩ってああ見えて、自由ですよね。
え?俺が自由な方?
なんで?
姫様見る目無いわー。
あ、そうそう。
俺もうちょいでやめるかもっす。
いやー、約束したばかりで申し訳ないっすけど
そういう感じでおなしゃす。
よし、てことで仕事戻りますね。
ん?どうしました?
え?あの、肩痛いっす。
ちょ、ちからつよっ!?
ぶつぶつ言うのやめて!
怖い怖い!
う、嘘!嘘っす!
そうそう!
冗談に決まってるじゃないですか!
俺が姫様から離れる?
そんな馬鹿なことあるわけないって!
嘘に決まってますよ!
あれは、そう!
姫様がどんな反応するか気になっただけで
本気なわけないじゃないっすか!
ちなみに、ちなみにっすけど。
もし本当ならどうしてました?
手錠?
監禁?
ずっと一緒に仕事?
あはは、また姫様冗談上手いなぁ。
冗談じゃない?
またまたぁ。
…………。
えぇ、こわ。
目笑ってないわ。
ガチやん。
うわぁまじか。
姫様まだ社畜魂抜けてなかったか。
もう普通になれたと思ったんだけどなぁ。
こりゃ無理やな。
撤退ー!
あ、じゃあ姫様。
俺仕事終わったんで、今日は早上がりしますね!
いやぁ、今日は変なこと言ってすいませんでした!
姫様大好きー!
うっす。そんじゃまた。
えぇ、こっわ。
あれは社員を逃がさない
ブラック会社の性質じゃな。
あれは言えんわぁ。
こわぁ。
◇一日目
コンコンコン
ん?はーい。
どなたですかー。
お、姫様じゃないですか。
どうしたんすかー?
一緒に寝る?
はは、ご冗談を。
姫様の部屋はあっちっすよ。
……分かりましたから、涙目やめてください。
あー、じゃあ先輩呼んできますからちょっと待っててください。
ちょ、先輩今日はみんなで寝ません?
◇二日目
うっす、そんじゃお疲れさまでした。
姫様?
なんで一緒の方向に帰ってるんですか?
貴方の部屋は向こうですよ。
今日もっすか?
いや、それはちょっと…。
……はいはい、わかりましたよ。
せんぱーい!
今日も一緒に寝ましょ!
トランプとかします?
◇三日目
そんじゃ…。
あの、姫様。
手を離してください。
…………。
せんぱーい。
今日もトランプしましょ!
◇四日目
姫様重いっす。
背中に乗るのやめてください。
ちょ、痛い。
頭の飾り引っ張らないで!
先輩!助けて!
◇五日目
…はい。
もう分かったんで。
行くなら行きましょ。
先輩は今日は残業っすか?
おっけーっす。
また後で来てくださいね。
ほら、姫様行きますよ。
自分で歩いてください。
◇六日目
あの、今日はよくないですか?
休日で、ほとんど一緒にいましたし。
トランプして、散歩して、たくさん話したじゃないですか。
あ、はい。
先輩は……あ、後ろにいたんすね。
枕持った先輩が姫様の後ろから出てきた。
えぇ…。
◇七日目
あ、うっす。
おはようございます、姫様。
もう先輩起きてます?
って、あ。
帽子完成したんすね。
おぉ、ありがとうございます!
どうです?
似合います?
あざっす。
先輩も似合いますねぇ。
なんか可愛いって感じしますよ。
ずっと被っとけ?
えぇ、まぁいいですけど…。
それじゃ今日は何します?
部屋でだらだら?
いいっすねぇ。
……………。
ん?俺今日帰る日じゃね?
■
「ふっふーん、これをこうして、こう、かな?」
記憶を頼りに、手を動かす。
「思いのほか形になってきたなぁ」
先輩とバグ喜んでくれるかな。
「姫様ー、今大丈夫ですか?」
あ、バグだ。
「んー、なにー」
「実はお話が…って、それこの前言ってた俺と先輩の帽子っすか?」
「そう!」
「へー、もう結構できてますね。凄いっすね」
「まぁね!早く作らないと、君たちをすぐ見つけられないんだもん」
「確かに。俺たちリョウサン型って見分けはつかないっすからね」
ん?
「いや、わかるよ?ただ見つけやすくするためだよ?」
「はは、重くてウケる」
こっちは真面目なんだが?
まぁ、いいか。バグだし。
「ちなみに白いのがバグので、先輩のが黒ね」
「へー、ちなみに何でこの色なんですか?」
「うーん、安心する色と自由な色だからかな」
「確かに、先輩って自由な感じっすもんね」
何言ってるんだ?
バグって自分のこと
全然わかってないよねぇ。
「いや、先輩が安心で、バグが自由だよ」
「えー、姫様見る目ないねぇ」
「なんか言った?」
「なんも?」
生意気だなぁ。
私は姫様だぞ!
あんまりだと、帽子あげないからね!
「あ、そうそう。俺、もうちょいでやめるかもっす」
は?
「いやー、約束したばかりで申し訳ないっすけど。そういう感じでおなしゃす」
ん?な、に言ってるの…?
「てことで、仕事戻りますね」
頭が真っ白になる。
離れていくバグが離れていく。
私から、離れていく。
「あれ?姫様どうしました?」
だめだ。
「え?あの、肩痛いっす。」
だめ。
「ちょ、ちからつよっ!?」
いや。
「なんで?なんで辞めちゃうの?何か嫌なことあった?それとも別の人に何か言われた?じゃないとおかしいよね。だってバグは私のこと大好きだもん。ずっと一緒って約束したもん。魔法使いなんでしょ?破らないんでしょ?そうだよね?約束したもん。そんなわけないもん。そうでしょバグ。ねぇ、何か言ってよ。じゃないと私わかんないよ」
「ぶつぶつ言うのやめて!」
「怖い怖い!」
「う、嘘!嘘っす!」
「う、嘘?」
「そうそう!冗談っすよ!」
じょ、冗談…?
「俺が姫様から離れる?そんな馬鹿なことあるわけないって!」
そ、そっか…。そうだ、よね。
「な、なぁんだ嘘か…そっか、そうだよね…?」
「嘘に決まってますよ!もー、あんな冗談真に受けないでくださいよ!」
そんなこと、あるわけないもんね… ?
「あ、あはは、騙されちゃった…。」
「もー、なんであんな嘘ついたの?びっくりしたよー」
ほんと、びっくりしちゃった。
「あれは、そう!」
「姫様がどんな反応するか気になっただけで、本気なわけないじゃないっすか!」
なぁんだ、そうだったのか。
あー驚いた。
本当にバグが離れるかと思って
ちょっと取り乱しちゃったよ。
「あのー、ちなみに。ちなみにっすよ?もし本当ならどうしてました…?」
もし、本当なら…?
そうなったら
「んー、手錠とか?監禁とか?だって、バグはずっと一緒にいるって約束したじゃん。それって私と先輩とバグで、いつもみたいに一緒にお仕事して、また遊んでをするってことでしょ?それを破るのはダメだよ」
「あ、あはは、姫様冗談が上手だなぁ」
「ん?冗談?」
「冗談じゃない、感じ…?」
「私、冗談きらーい」
「またまたぁ」
「ね、私の目嘘ついてる?」
バグならわかるでしょ?
私、本気だよ?
………。
あ、バグが私の方見てる。
なんかうれしー。
しばらくバグはこっちを見たあと
すぐに立ち上がった。
「…よし!じゃあ今日はもう仕事終わってるんで、帰りますね!」
「あ、ちょっとバグどこいくの……?」
「やだなぁ、帰るんですよ!」
「本当に仕事終わったの…?」
「終わってますよ!いやぁ、今日は変なこと言ってすいませんでした!」
「え、うん。いいよ?でも、もう言わないでね…?」
「はい!すいませんでした!姫様大好きー!愛してるー!」
えー、もうバグったら急にそんな。
バグがあたしのこと好きなのは知ってるけど…。
恥ずかしいなぁ、もう!
「そんじゃ、また!」
「うん、また明日ね!」
バグが足早に帰っていく。
………。
バグ、あれどういうことだったんだろ。
本当に嘘だったのかな。
もし、本当だったらどうしよ。
いやだな、かなしいな。
さびしいな。
責任、とってもらお。
◇一日目
寝間着のまま、部屋の廊下を歩いて
バグの部屋をノックする。
コンコンコン
「はーい、どなたですかー」
バグが出てくる。
「あれ?姫様じゃないですか?」
「どしたんすかー?」
まだ、いる。
「今日、一緒に寝たい…」
落ち着いてバグからの言葉を待つ。
「はは、ご冗談を」
「さ、姫様の部屋はあっちすよ」
バグが私を退かそうと手で押してくる。
私も負けじと、力を返す。
…………うぅ。
「………わかりましたから、涙目やめてください」
「今日だけっすよ?」
「…うん、ありがと」
「あー、じゃあ先輩呼んでくるんで、ちょっと待っててください」
バグが部屋から出て、隣の先輩を呼びに行く。
私はその隙にバグの部屋に入って、どこで寝ようか考える。
「ちょ、先輩今日みんなで寝ません?」
バグの声が遠くからした。
落ち着く。
部屋を物色する。
私の部屋より、少し狭いかな?
でも部屋の小物や三味線、ベッド。
その置き方や散らかり具合が
なんだかとても落ち着いた。
眠るまでお話しした。
いた。
◇二日目
「うっす、お疲れさまでした」
「うん、お疲れ様」
バグが出ていく。
私も付いていく。
「姫様?なんで一緒の方向に帰ってるんですか?」
「ん?なにが?」
「あなたの部屋は向こうですよ」
「知ってるよ」
知ってるに決まってる。
バグは私をすぐにバカにするから困る。
「今日もっすか?」
「今日もっす」
バグはため息をついて、こちらを見てくる。
「いや、ちょっとそれは……」
「昨日だけって約束ですし…」
想定内。
でも昨日でバグの弱点は把握してる。
涙目+上目遣い。
「……だめ?」
「……はいはい、わかりましたよ」
よし。
「せんぱーい!今日も一緒に寝ましょ!」
「ィィヨ」
「やった」
「はぁ、なんなんすか……。あー、トランプとかします?」
「する!」
「スル」
めっちゃトランプした。
いる。
◇三日目
「そんじゃ…」
バグが逃げる前に手を掴む。
「あの、姫様……手、放してください」
いやだ。
まだ一緒がいい。
「………やだ」
バグが天井を見つめる。
「…せんぱーい。今日もトランプしましょ!」
今日もトランプした。
楽しかった。
まだいる。
◇四日目
退勤前のバグに飛び掛かる。
「姫様重いっす」
「背中は勘弁してください」
む。
「ちょ、痛い!頭の飾り引っ張らないで!」
乙女になんてこと言うんだ。
これだからバグは。
「先輩!助けて!」
先輩と一緒にバグに説教とお話をした。
今日も、いた。
◇五日目
バグの足を掴む。
「…はい、わかったんで」
「ほんと…?」
「行くなら行きましょ…」
分かってくれたか、よかったぁ。
それはそれとして足は離さない。
なんか、すべすべしてて気持ちいい。
「先輩、今日は残業っすか?」
「ウン」
「おっけーす。じゃあ部屋で待ってますね?」
なんか、今の会話いいな。
仲良しって感じがする。
「ほら姫様、行きますよ」
はーい。
「てか、自分で歩いてください」
「やだ」
「さいですか…」
これ楽しい。
大丈夫だった。
◇六日目
ノックをする。
コンコンコン
バグが出てくる。
「いやー、今日も楽しかったね!」
「あの、今日はよくないですか?」
「なんで?」
「いや、だってほとんど一緒にいましたし」
いたね。
「トランプして、散歩して、たくさん話したじゃないですか」
はぁ、わかってないなバグは。
「バグ、それはそれ、これはこれだよ」
「あ、はい」
まったく、これだからバグは。
「じゃ、入るね」
「あ、うす。先輩は…あ、後ろにいたんすね」
ちゃんと先輩も呼んでおきましたよ。
大事な友達だもん。
「枕可愛いね。自分でやったの?」
「ハイ!」
ちゃんといた。
◇七日目
早めに起きて作業を進める。
もう少し…。
「あ、おはようございます姫様」
「んー、おはよう」
んーーー。
「先輩ってもう起きてます?」
「んー」
もうちょい…。
「おーい、姫様ー」
「できた!」
やっと完成した。
「あ、帽子完成したんすね」
「うん、あげるー。二人ともかぶってみて」
バグと先輩にそれぞれ小さなシルクハットを渡す。
「おぉ、ありがとうございます!」
「ァリガトウゴザイマス」
二人が帽子を大きな頭の上にちょこんと乗せる。
「どうです?似合います?」
「ニァイマス?」
「めっちゃ似合う!」
どっちも最高にかわいい!
私天才!
「あざっす」
「ァザッス」
あぁ、帽子作ってよかったぁ。
二人が喜んでくれるのが嬉しいな。
「先輩も似合いますねぇ。可愛いって感じしますよ」
「ホント?」
「がちがち」
「ヤッタ」
あ、忘れてた。
「ちなみにそれずっとかぶっててよ?」
「えぇ…まぁいいっすけど」
「ワカリマシタ」
これで君たちをすぐ見つけられる。
やったぜ。
「それじゃ、今日は何します?姫様」
「んー、最近なんだか疲れてたから部屋でだらだら!」
「いいっすねぇ」
「ィィネ」
あー、こんな日がずっと続けばいいのにな。
そのあとはみんなでバグの部屋でだらだらした。
お話したり、たまにトランプをしたり
寝たり、歌ったりして、いつも通りを過ごした。
「ねぇ、姫様」
「なにー、そろそろ寝るんだけど…」
明日は仕事だ。
早く寝なくちゃ。
先輩ももう寝ちゃったし。
「どうしたんすか?最近」
「んーー、なにもないよー」
バグがこちらを覗き込んでくる。
「いやだって、今泣きそうに見えますよ?」
…こういうときだけ勘がいいなぁ、バグは。
仕事できないくせに。
「話ききまっせ姫様」
バグが隣に座る。
「…ん」
もたれかかる。
「んで?どしたんすか?」
「最近ね、寝る前に不安になるの」
「いなかったら、どうしようって」
「でも、バグはいた」
「昨日もいたし」
「一昨日もいた」
「でも、なんか、明日は本当に消えちゃいそうだから…だから…」
だめだ。
泣きたくなんてないのに…。
明日もバグはいるはずなのに。
涙はうれしい時に出るはずなのに…。
「えぇ、なんかごめん…」
「うぇ、こっちこそ、ごめん…」
バグはしばらく考えると、こっちに体を向けた。
「姫様?見てて?」
「な、なに…?」
バグは両腕を、ひょいひょいと上下に振った。
すると、白くてきれいな花が現れた。
「…きれい」
「うお、本当にできた。チートすげぇ」
「…バグ?」
「ん、あ、なんでもないっす」
「変なの…」
そう言うとバグは少し頭を揺らした。
頭の飾りが静かに音を鳴らした。
バグが笑ったような気がした。
「なに…?」
「いや、泣き止んでよかったなって」
「え?」
目元をぬぐうと
確かに涙はもう出ていなかった。
「やっぱ、幼子が泣いてるときは手品先輩だな」
「手品先輩?てか、幼子じゃないんですけど…」
私はバグが生まれる前より
あの部屋で仕事してた。
私の方がお姉さんだ。
「いや、幼子だよ。まだ幼子だ」
「あっそ……」
「だからほっとけないんだよねぇ」
「じゃあ、幼子でいいや」
「なにそれ」
バグがまた隣へ座りなおす。
また、もたれかかる。
「ねぇ、バグ。いる?」
「いまーす」
「そっか」
………あぁ。
「バグ」
「へい」
「明日からまた仕事だねぇ」
「そっすね」
………いやだなぁ。
「バグ」
「はい」
「私まだ幸せじゃないよ?」
「そのうちなれますよ」
………明日にならなきゃいいのに。
「バグ」
「はい」
「いなくならないでよ?」
「すません」
………あやまらないでよ。
「バグ」
「ほい」
「また会える?」
「…多分?」
「たぶんかぁ……」
……寂しいなぁ。
「バグ」
「うす」
「おやすみ」
「おやすみー」
またさっきの手品みたいな。
…次は先輩も一緒に。
……なんか、眠いや。
………あぁ、良かった。
となりにいる。
「またね、姫様」
◇八日目
「ん、んぁ…。あ、おはよ先輩」
目が覚めると先輩がいた。
「オハヨウゴザイマス」
「…うん、おはよー」
「…バグはー?」
「…ワカリマセン」
隣にいたはずのバグはいなかった。
「…そか、仕事いったのかな?」
「早起きなんて…珍しいねぇ」
「…ハイ」
「…私たちもいこっか!」
ゆっくりと体を起こして
先輩と一緒に仕事場に向かう。
「…おはよー!」
襖をあけてもバグはいなかった。
「…はは、またサボりかなー?だめだねー、バグは」
「…ハイ」
「…あとで説教だね。まぁ、今は仕事仕事!」
「ほら、先輩も座って座って!」
先輩を席に促し、自分も座る。
私が真ん中、先輩が左側、バグは右側だ。
「…ハイ」
「…さぁ、今日もお仕事がんばろー!」
「…ハイ」
仕事をやろうとすると
目の右端に白いものが映った。
そこはバグが座ってた机の座布団だった。
その上に白いシルクハットと白い花が置かれていた。
「…ふー、バグったらかぶるの忘れたのかなぁ」
「あーあ」
「ずっと被ってって約束したのに」
「…ハイ」
「約束やぶるなんて、さいてー。うそつきだね」
「…ハイ」
白いシルクハットを手に持つ。
「これじゃあ……すぐに見つけられないじゃん」
頭から深くかぶったら、何も見えなかった。
バグのうそつき。
いない。
■
今日も病院の廊下を歩いて、病室の扉を開ける。
ベッドで眠るお兄さんのそばに寄る。
「お兄さん、今日は時間ないし、立ったままな?」
そう言って、ベッドの横に立つ。
「今日も一日、頑張ってきたよ」
いつものように、今日あったことをお兄さんに話す。
「今日はなー、身体検査があったんやけど」
「身長が伸びてたし、着々と成長してるよ」
「あ、もちろん体型はキープしてるよ!」
そう言って、今日あったことを一通り話し終える。
時計を見る。
「よし、今日はここまでな」
「なんたって、今日はうちの誕生日やし!」
「家で、みんなと祝うんだー」
「もし起きたら、お兄さんも来てな?」
そう言って扉の方に体を向け
病室を出ようとする。
「あー、おっけ。行けたら行くね」
え……?
もう一度ベッドのほうにゆっくり体を向ける。
「そうかぁ、今日誕生日かぁ」
そんなはずないのに、あの声がする。
「じゃあ、ぎりぎり約束は守れたかなぁ」
あの適当な声が
「あ、そうだ。いろはちゃん、こっちおいで」
うちの名前を呼んでる。
あの声で、うちを呼んでる。
なんだか前が見えない。
顔はベッドに向いてるはずなのに、何も見えない。
顔が熱い。喉から言葉が出ない。
それでも足はベッドのほうに近づいていた。
ぼやけて距離感がつかめない。
「はい、そこで手を広げて」
言われるがままにしてしまう。
「もうちょい、こっち来て」
一歩だけ近づく。
「うん、そこでいいよ」
視界がお兄さんの服でいっぱいになって
真っ暗になった。
「約束破って、ごめん」
「あと、誕生日おめでとう。いろはちゃん」
顔を上げる。
「…お兄さんや」
「お兄さんだよー」
「…お兄さん、お兄さん!」
「…ごめんね、約束破って。ちょっと遅刻しちゃった」
「…ちょっとやないよぉ…」
ほんの少しの時間だったはずなのに、
ずっとこのままでいたような気がした。
お兄さんの服に顔をこすりつける。
それから、ゆっくり顔を上げた。
今度はよく見える。
「おかえり、お兄さん」
「ただいま、いろはちゃん」