フェイトちゃんは毒親の血を脱せない   作:すかすかのタキ

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フェイトちゃんは叱責モードでご立腹

 国連災害対策本部EXCEEDZ。

 

 彼らは今より三十年前、突如地球全域に現れて侵攻を開始した、異形にして呵責なき溢れる無数の怪物達──通称『侵略的外来種』。それらの生態を解き明かし、地球上から一体残さず殲滅する事を目的に国連へ新設された極めて実戦的な組織である。

 

 さて、今より半年ほど前の事だ。

 

 EXCEEDZ本部より、EXCEEDZ極東支部へと配属された、国連所属のS級魔導士『夜天』こと八神はやて。

 

 彼女は極東の侵略種を殲滅すべく、彼女と同じく国連きっての優秀な魔導士──高町なのは調査員と、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官。この二名のS級を共にして彼の地にまで降り立った。

 

 国連本部の人事としては、これだけの戦力を揃えておけば一年以内に極東方面の原種は殲滅可能と踏んでいたのであるけれど、八神総督の見解はいささか違った。

 

 ──確かに本部の言う通り、ただ原種を駆除して回るだけでいいのなら、なのはちゃんとフェイトちゃんの力があれば一年前後で目標達成は可能やろう。

 

 けれど極東方面では、沿岸部とそれに沿ったスラム区域に、大量の中・大型の侵略種が巣食ってるという情報もある。いざ現地に入ってみたら、本部が思ってるよりずっと、S級の出動要請は多くあるんやなかろうか。原種との戦いだけに集中が出来るとは、わたしにはとてもじゃないけど思えへん。

 

 フェイトちゃんは執務官なんやから、内務や現場での指揮、部隊の編成もこなさなあかん。なのはちゃんと違っていつでも前線に立てる訳やない。

 

 必然、なのはちゃんの負担はかなり大きゅうなってくる。

 

 なのはちゃんは、真面目で頑張り屋さんなとってもええ子なんやけど、わたしと同じ全然普通の十三歳でもあるんや。体力には限度があるし、ぽやってしていて天然で、変なところで変な遊び心を出しがちやし、あんまゆーてはいかん事を顔とか仕草とか会話の間からぽろぽろぽろーって漏らしがちやし、何より人の役に立ちたいとするあまり自己犠牲に陥りがちで色んな意味で一人にしちゃうととっても心配になる子なんや! かわいくていい子なんやけど危ないの! 総督としても友達としても、とてもじゃないけど放っちゃおけない子なんよー!

 

 ──という訳で。

 

 八神はやて総督は、高町なのは調査員とフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官に続く第三の──出来れば現地出身の強力な戦力を必要としていた。

 

 何せ彼女らも、ずっと極東支部に留まっていられる訳ではない。EXCEEDZという国連組織の一員として、いずれ別の地域へ派遣されるのは当然の事。

 

 だが、原種を下したからといって侵略種との戦いがすぐに終わる事などあり得ない。

 

 卵の一つ、幼体の一匹に至るまで余さず駆除し尽くさんとするならばまだまだ果てしない時間がかかるだろうし──何よりここ数年の裏社会では、侵略種の細胞を基にして創り出され、接種した人間の心身を狂化させてしまう『魔人化薬』なる物が、静かだが確実に販路を広めているという。

 

 八神はやて。彼女の代で終わらせられるかも定かでない、社会の安寧の為の戦い。

 

 それを乗り切るにはもう一手。自分達が極東から去ろうとも変わらず現場を支えてくれる、強大な戦闘力を持つ現地の人間が必要だった。

 

 しかしそのように都合のいい人材が、そうそう簡単に見つかってくれるものなのか。

 

 疑問を振り切り、八神はやてと高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、国連の持つ情報収集能力をとことんフルに活用し──ついに探し求めていた、理想の人材を発見した。

 

 それこそが『紅蓮の魔人』久瀬シイナ。

 

 侵略種由来の、強大な炎の力を宿しながら、心身の健康を全く損なっていない女の子。

 

 十七歳と年若い身ではあるが、猟友会の一員故に実践経験もかなり豊富。

 

 少々──と言うには控え目になるかもしれないが──、良く言うならば男前で正義感が大変強い。悪く言うなら、普通と比べてちょっとばっかり気性が荒く、不正や不義を前にしてかる〜い雷が落ちたが如きゆる〜い暴言が飛び出す面もあるけれど──まあ、概ね組織人としての適性も高い、理想的な人材だと言いきってもいい女の子。

 

 そんな彼女をスカウトし、無事EXCEEDZ極東支部まで迎えた事で原種の駆除は想定以上に軌道に乗った。

 

 高町なのは調査員との高度な連携も身も付けて、献身的な労働意欲と溢れんばかりの体力により、あれよあれよと十体もの原種を撃破。

 

 つい先日も、特に難敵とされていたつがいの原種三号と四号までをも倒しきり、EXCEEDZは久瀬シイナの着任より二ヶ月で目覚ましすぎる戦火を上げた──のであるが。

 

 

「──じゃあなのは、そこに正座。わたしの言いたい事はきちんと分かっているわよね?」

 

「うん、分かっていますフェイトちゃん…」

 

 

 久瀬シイナと共に、三号・四号の駆除任務へと当たり、特に傷を負う事もなく、無事帰還を果たした高町なのは調査員とフェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官。

 

 しかしなのはは、支部に到着するやいなや、フェイトの自室にまで呼び出されると、小さな体を更にちょこんと縮こまらせる形での正座を強制させられていた。

 

 そう。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官お説教モードの顕現なのである。

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