艦これー兼任提督は楽じゃないーReBuild   作:ラリカ

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第二十三話

 軍の人と町の話をした翌日。

 

 朝。

 

 私は食堂で、昨日までの報告を聞いていた。

 

「食料は問題ないのです。昨日も町の人から魚と野菜をいただいたのです」

 

「ありがとう。五月雨は?」

 

「哨戒記録、昨日の分まで整理しました!」

 

「あとで見るね」

 

「はい!」

 

「資材は?」

 

「減ってはいるけど、すぐ困るほどじゃねえな」

 

 天龍が紙を見ながら答える。

 

「昨日の共同任務で弾薬使った分は?」

 

「それ込みだ」

 

「じゃあ、しばらくは大丈夫か」

 

「まあな。ただ、弾薬は補充しといた方がいい」

 

「じゃあ次の回収で――」

 

 言いかける。

 

 天龍がこっちを見た。

 

「何?」

 

「いや」

 

「何その顔」

 

「ちゃんと『次の回収で』って言ったなと思って」

 

「……一人で行くとは言ってないでしょ」

 

「成長したな」

 

「またそれ?」

 

 最近。

 

 天龍が完全に保護者みたいになってきている。

 

「誰と行こうかな」

 

「私、行きます!」

 

 五月雨がすぐ手を上げる。

 

「じゃあお願いしようかな」

 

「はい!」

 

「今日行くのです?」

 

 電が聞く。

 

「んー。急ぎじゃないし、明日でも――」

 

 その時。

 

 外から。

 

 今まで聞いたことのない音がした。

 

 低い。

 

 何か大きなものが近付いてくる音。

 

「何だ?」

 

 天龍が立ち上がる。

 

「車?」

 

「この辺まで?」

 

 全員で外へ出る。

 

 鎮守府の前。

 

 そこに。

 

 軍用らしい大きな車が止まっていた。

 

「……何あれ」

 

「見りゃ分かんだろ。トラックだ」

 

「そうじゃなくて」

 

 荷台。

 

 そこには。

 

 いくつもの箱と。

 

 見覚えのある容器。

 

「資材?」

 

 そして。

 

 運転席から降りてきたのは。

 

 もう見慣れてしまった軍人だった。

 

「おはようございます」

 

「ああ」

 

「今日は何です?」

 

「補給だ」

 

「……はい?」

 

「補給だ」

 

「聞こえなかったわけじゃなくて」

 

 後ろを見る。

 

 箱。

 

 ドラム缶。

 

 その他。

 

 かなりある。

 

「これ、うちに?」

 

「ああ」

 

「何で?」

 

「共同任務を行ったからだ」

 

「昨日の?」

 

「そうだ」

 

 軍人が書類を一枚出す。

 

「昨日使用した燃料、弾薬。それに今後の連絡に必要な物品だ」

 

「……もらっていいんです?」

 

「そのために持ってきた」

 

「返せって言われたり」

 

「言わない」

 

「後から請求書とか」

 

「出さない」

 

「本当に?」

 

「何をそこまで警戒している」

 

「だって軍ですよ?」

 

「理由になっていない」

 

「いや、何となく」

 

 天龍が横から覗き込む。

 

「何が入ってんだ?」

 

「燃料、弾薬、鋼材。それと簡単な予備部品だ」

 

「結構あるな」

 

「共同任務で使用した分より多くない?」

 

「今後、同様の協力を依頼する可能性がある」

 

「ああ」

 

 なるほど。

 

「前払いみたいな?」

 

「補給だ」

 

「そこは譲らないんですね」

 

「軍だからな」

 

 便利だな、その言葉。

 

「でも」

 

 私はもう一度荷台を見る。

 

「今まで、こういうのなかったですよね」

 

「なかったな」

 

「軍に所属してないから?」

 

「ああ。それに、この場所自体を正式な拠点として扱っていなかった」

 

「今は?」

 

「正式ではない」

 

「そこは変わってない」

 

「だが」

 

 軍人が鎮守府を見る。

 

「少なくとも、ここに戦力があり、周辺防衛を行っていることは軍も認識した」

 

「……」

 

「その戦力へ協力を求めておきながら、必要な物資を全てそちらで用意しろというのもおかしい」

 

「まともだ」

 

 天龍が言う。

 

「失礼だな」

 

「いや、軍ってもっと融通利かねえと思ってた」

 

「お前たちは軍を何だと思っている」

 

 全員。

 

 少し黙った。

 

「……」

 

「何故黙る」

 

「いろいろあったので」

 

「そうだったな」

 

 軍人も否定しなかった。

 

「じゃあ、とりあえず運ぼうか」

 

「そうだな」

 

 箱を持つ。

 

「重っ」

 

「無理すんな」

 

 天龍が横から持ち上げる。

 

「一人で持つつもりなかったよ」

 

「本当か?」

 

「最近それ多くない?」

 

「実績があるからな」

 

「嫌な実績だなぁ」

 

 電と五月雨も、小さな箱から運び始める。

 

「これはこっちでいいのです?」

 

「うん。資材置き場」

 

「分かりました!」

 

「五月雨、それ一人で大丈夫?」

 

「大丈夫です!」

 

「転ばないでね」

 

「転びません!」

 

 言い切った。

 

 不安だ。

 

 龍田も箱を一つ持ち上げる。

 

「天龍ちゃん、こっちは?」

 

「予備部品だろ。工廠の近くでいいんじゃねえか?」

 

「そうね~」

 

 軍人もいくつか荷物を下ろす。

 

 皆でやれば。

 

 思ったより早く終わった。

 

 最後に。

 

 軍人が小さな箱を一つ下ろした。

 

「これは?」

 

「通信機だ」

 

「通信機?」

 

「軍と直接連絡を取るためのものだ」

 

「……電話?」

 

「似たようなものだと思えばいい」

 

「今までの連絡先じゃ駄目なんです?」

 

「あれでも連絡は出来る。ただし、緊急時にはこちらの方が早い」

 

「へえ」

 

 箱を開ける。

 

 思っていたより簡素。

 

「これ、ここに置くんですか?」

 

「ああ」

 

「誰が使うの?」

 

「基本的にはあなたでいい」

 

「私?」

 

「提督なのだろう」

 

「一応」

 

「まだ言うのか」

 

「正式じゃないので」

 

「……」

 

 軍人が少し考える。

 

「その点についても、現在話は進んでいる」

 

「え?」

 

 全員。

 

 動きが止まった。

 

「話?」

 

「この鎮守府の扱いについてだ」

 

「正式にするって話?」

 

「まだ決まっていない」

 

「ああ」

 

 少しだけ。

 

 期待した。

 

「ただ」

 

「ただ?」

 

「以前よりは進んでいる」

 

「どれくらい?」

 

「それを私が言うことは出来ない」

 

「またそれ」

 

「決まっていないものを決まったように言う方が問題だ」

 

「それはそうですけど」

 

「共同任務の報告も上がっている」

 

「神通さんの?」

 

「ああ」

 

「何て書いてあったんです?」

 

「内容は教えられない」

 

「えー」

 

「ただし」

 

 軍人が私を見る。

 

「少なくとも、問題があったとは聞いていない」

 

「……ならよかった」

 

 睡眠時間も。

 

 多分。

 

 書かれてない。

 

 多分。

 

「この通信機」

 

 五月雨が覗き込む。

 

「こっちから連絡してもいいんですか?」

 

「ああ」

 

「深海棲艦を見つけた時とか?」

 

「それが主になる」

 

「他には?」

 

「大きな異常があれば」

 

「食料がなくなった時は?」

 

 天龍が言う。

 

「それは自分たちでどうにかしてくれ」

 

「駄目か」

 

「何故聞いた」

 

「試しに」

 

「試すな」

 

 龍田が笑っている。

 

「じゃあ天龍ちゃんがお腹空いた時も駄目ね~」

 

「そんなことで軍呼ばねえよ!」

 

「呼んだら面白そうだけど」

 

「多摩まで乗るな!」

 

 軍人が頭を押さえた。

 

「……本当にこれで大丈夫なのか」

 

「何がです?」

 

「いや」

 

「言ってくださいよ」

 

「やめておく」

 

「気になる」

 

 補給品を全部運び終える。

 

 資材置き場。

 

 いつもより。

 

 少しだけ。

 

 余裕が出来た。

 

「すごいですね」

 

 五月雨が弾薬を見る。

 

「しばらく回収行かなくても平気そう」

 

「行かないのか?」

 

 天龍が聞く。

 

「必要なら行くよ。でも急いで行かなくてもよくなった」

 

「じゃあ明日は?」

 

「普通に哨戒かな」

 

「お」

 

「何」

 

「いや」

 

「また成長したって言ったら怒るよ」

 

「言ってねえだろ」

 

「顔が言ってる」

 

「顔で会話出来んのか、お前」

 

「天龍とは出来るかも」

 

「嫌だ」

 

「即答!?」

 

「補給については」

 

 軍人が帰る前に言う。

 

「今後も共同任務を依頼した場合、必要に応じて行う」

 

「毎回?」

 

「状況による」

 

「普段の分まで?」

 

「現時点では、そこまでは出来ない」

 

「そっか」

 

 まだ。

 

 軍の鎮守府ではない。

 

 当然と言えば当然。

 

「ただ、緊急時は別だ」

 

「緊急時?」

 

「この地域で大規模な戦闘が発生し、お前たちが対応する必要がある場合だ」

 

「その時は?」

 

「出来る限り支援する」

 

「……分かりました」

 

「無理をして、自分たちだけで全て用意する必要はない」

 

 その言葉。

 

 少しだけ。

 

 どこかで聞いたことがある気がした。

 

 いや。

 

 内容は違う。

 

 でも。

 

「分かりました」

 

 今度は。

 

 ちゃんと答えた。

 

 軍人が帰って。

 

 トラックの音が聞こえなくなる。

 

 それを待っていたみたいに。

 

 工廠の方から。

 

 妖精さんたちが出てきた。

 

「……見てたの?」

 

 頷く。

 

 一人。

 

 二人。

 

 三人。

 

 次々に資材置き場へ向かう。

 

「待って待って」

 

 止まらない。

 

「何するの?」

 

 一人が箱を指差す。

 

「整理?」

 

 頷く。

 

「あ、そういうこと」

 

 なら。

 

「お願いしていい?」

 

 全員。

 

 一斉に頷いた。

 

「元気だなぁ」

 

「妖精さんたちも嬉しいのです?」

 

 電が聞く。

 

「資材増えたからじゃない?」

 

 さっそく。

 

 箱が開けられる。

 

 部品が分けられていく。

 

「早いね」

 

「いつものことだろ」

 

「まあね」

 

 こういうところは。

 

 やっぱり妖精さんの方が得意だった。

 

 食堂へ戻る途中。

 

 通信機の置かれた部屋を通る。

 

 今まで。

 

 軍へ何か伝えようとしても。

 

 どうすればいいのかすら分からなかった。

 

 今は。

 

 連絡するためのものが。

 

 ここにある。

 

 正式な鎮守府じゃない。

 

 軍の所属でもない。

 

 それでも。

 

 少しずつ。

 

 出来ることが増えていた。

 

「多摩ー!」

 

 天龍の声。

 

「何ー?」

 

「妖精が箱一個どっか持ってった!」

 

「え!?」

 

「資材じゃねえ! 通信機の説明書!」

 

「何で!?」

 

 急いで戻る。

 

「妖精さーん!」

 

 結局。

 

 説明書は。

 

 厨房の棚から見つかった。

 

 何でそこにあったのか。

 

 最後まで誰にも分からなかった。

 

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