給料が出るようになって。
今日は。
六人揃って町へ行くことになった。
「本当に全員で行くのです?」
「行くよ」
「やったのです!」
電が嬉しそうに笑う。
「私は食器見たいです!」
五月雨。
「昨日から変わってねえな」
「天龍さんは?」
「俺は特に」
「じゃあ天龍ちゃんの服でも見ましょうか~」
「何でそうなる!」
龍田もいつも通り。
「鳳翔さんは?」
「私は台所で使うものを少し見たいですね」
「やっぱりそこなんですね」
「必要ですから」
「じゃあ行こっか」
六人。
揃って。
鎮守府を出た。
町へ入ると。
やっぱり少し目立つ。
五人でも目立っていたのに。
今日は六人。
それに。
時々。
視線が鳳翔さんへ向かっている。
「……」
多分。
軍から来た艦娘だと。
もう話が広がっている。
最初に入った店でも。
「あら、今日は一人増えたのね」
店の人が鳳翔さんを見る。
「初めまして。鳳翔と申します」
「軍から来たっていう?」
「はい」
ほんの少し。
空気が変わった。
「そう」
嫌そうではない。
ただ。
少しだけ。
距離がある。
「こちらの鎮守府へ正式に転属して参りました」
「ずっといるの?」
「その予定です」
「……そう」
短い返事。
鳳翔さんは。
それ以上何も言わなかった。
店を出てから。
「気にしてます?」
小声で聞く。
「何をでしょう?」
「さっきの」
「ああ」
鳳翔さんは少し考える。
「仕方のないことだと思います」
「でも鳳翔さんが悪いわけじゃ」
「ありがとうございます」
笑う。
「ですが、すぐに信用していただく必要もありませんから」
「そうなんです?」
「これからここで暮らすのです」
鳳翔さんが町を見る。
「少しずつ知っていただければ、それで十分ですよ」
「……そっか」
急がなくても。
時間はある。
そういうことらしい。
「あ、たまちゃん!」
声がする。
「楓」
向こうから楓が走ってきた。
「みんなで買い物?」
「うん」
「その人は?」
「初めまして」
鳳翔さんが頭を下げる。
「鳳翔と申します」
「新しい艦娘さん?」
「うん。軍から来た」
「あ」
楓も。
一瞬だけ止まる。
でも。
「たまちゃんたちと一緒に住んでるんですよね?」
「はい」
「じゃあ」
楓が笑う。
「たまちゃんたちがお世話になってます」
「楓?」
「こちらこそ、お世話になっております」
「鳳翔さんまで!」
何でそんな挨拶になるの。
「お父さん、港にいるよ」
「じゃあ寄っていこうかな」
「うん!」
そのまま。
皆で港へ向かった。
「今日は随分多いな」
桂梧さんが。
私たちを見る。
「買い物です」
「そっちの人は?」
「鳳翔と申します」
頭を下げる。
「軍から、こちらの鎮守府へ転属して参りました」
「軍から?」
「はい」
少し。
桂梧さんの顔が硬くなる。
「この子たちと一緒にいるのか?」
「はい」
「軍に戻すためじゃないだろうな」
「違います」
鳳翔さんは。
すぐに答えた。
「私は、この鎮守府の一員として来ました」
「……そうか」
それだけ。
まだ。
完全に信用したわけではなさそうだった。
「これから荷物運ぶんです?」
「ああ」
「手伝います」
「買い物の途中だろ」
「もうほとんど終わったので」
「なら俺もやる」
天龍が箱を持つ。
「電もなのです!」
「私も!」
「じゃあ私も~」
「鳳翔さんは荷物見てて――」
「私もお手伝いします」
「え?」
「皆さんがするのでしょう?」
「まあ」
「でしたら私も」
鳳翔さんも箱を持ち上げた。
何度か。
港と荷物置き場を往復する。
途中。
近くにいた人が鳳翔さんを見る。
「軍から来た人だろ?」
「はい」
「こんなこともするんだな」
「お邪魔でしたか?」
「いや」
箱を受け取る。
「助かる」
「それならよかったです」
たったそれだけ。
でも。
さっきより。
少しだけ。
普通の会話だった。
「もういいぞ」
桂梧さんが言う。
「全部終わった」
「早かったですね」
「人数いるからな」
それから。
鳳翔さんを見る。
「ありがとな」
「いえ」
「また手が足りない時は頼むかもしれん」
「はい。その時は」
鳳翔さんが笑う。
「お手伝いします」
「そうか」
桂梧さんも。
少しだけ。
表情を緩めた。
帰り道。
「どうでした?」
電が鳳翔さんに聞く。
「町ですか?」
「はいなのです」
「良いところですね」
「ちょっと警戒されてましたけど」
私が言う。
「それも含めてです」
「含めるんだ」
「皆さんのことを大切に思ってくださっているからでしょう?」
「……まあ」
そうなのかもしれない。
「そのうち馴染めそう?」
聞く。
「どうでしょう」
鳳翔さんは少し考えて。
「ですが」
笑う。
「今日、顔を覚えていただけただけでも十分です」
「そっか」
「はい」
六人で。
町へ行って。
買い物をして。
少し手伝って。
帰る。
鳳翔さんと町の人たちが。
急に仲良くなったわけじゃない。
でも。
帰る時。
桂梧さんは。
「またな」
と鳳翔さんに言った。
「はい。また」
鳳翔さんも。
普通に答えた。
今日は。
それくらいでいいんだと思う。