艦これー兼任提督は楽じゃないーReBuild   作:ラリカ

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第二十六話

 給料が出るようになって。

 

 今日は。

 

 六人揃って町へ行くことになった。

 

「本当に全員で行くのです?」

 

「行くよ」

 

「やったのです!」

 

 電が嬉しそうに笑う。

 

「私は食器見たいです!」

 

 五月雨。

 

「昨日から変わってねえな」

 

「天龍さんは?」

 

「俺は特に」

 

「じゃあ天龍ちゃんの服でも見ましょうか~」

 

「何でそうなる!」

 

 龍田もいつも通り。

 

「鳳翔さんは?」

 

「私は台所で使うものを少し見たいですね」

 

「やっぱりそこなんですね」

 

「必要ですから」

 

「じゃあ行こっか」

 

 六人。

 

 揃って。

 

 鎮守府を出た。

 

 町へ入ると。

 

 やっぱり少し目立つ。

 

 五人でも目立っていたのに。

 

 今日は六人。

 

 それに。

 

 時々。

 

 視線が鳳翔さんへ向かっている。

 

「……」

 

 多分。

 

 軍から来た艦娘だと。

 

 もう話が広がっている。

 

 最初に入った店でも。

 

「あら、今日は一人増えたのね」

 

 店の人が鳳翔さんを見る。

 

「初めまして。鳳翔と申します」

 

「軍から来たっていう?」

 

「はい」

 

 ほんの少し。

 

 空気が変わった。

 

「そう」

 

 嫌そうではない。

 

 ただ。

 

 少しだけ。

 

 距離がある。

 

「こちらの鎮守府へ正式に転属して参りました」

 

「ずっといるの?」

 

「その予定です」

 

「……そう」

 

 短い返事。

 

 鳳翔さんは。

 

 それ以上何も言わなかった。

 

 店を出てから。

 

「気にしてます?」

 

 小声で聞く。

 

「何をでしょう?」

 

「さっきの」

 

「ああ」

 

 鳳翔さんは少し考える。

 

「仕方のないことだと思います」

 

「でも鳳翔さんが悪いわけじゃ」

 

「ありがとうございます」

 

 笑う。

 

「ですが、すぐに信用していただく必要もありませんから」

 

「そうなんです?」

 

「これからここで暮らすのです」

 

 鳳翔さんが町を見る。

 

「少しずつ知っていただければ、それで十分ですよ」

 

「……そっか」

 

 急がなくても。

 

 時間はある。

 

 そういうことらしい。

 

「あ、たまちゃん!」

 

 声がする。

 

「楓」

 

 向こうから楓が走ってきた。

 

「みんなで買い物?」

 

「うん」

 

「その人は?」

 

「初めまして」

 

 鳳翔さんが頭を下げる。

 

「鳳翔と申します」

 

「新しい艦娘さん?」

 

「うん。軍から来た」

 

「あ」

 

 楓も。

 

 一瞬だけ止まる。

 

 でも。

 

「たまちゃんたちと一緒に住んでるんですよね?」

 

「はい」

 

「じゃあ」

 

 楓が笑う。

 

「たまちゃんたちがお世話になってます」

 

「楓?」

 

「こちらこそ、お世話になっております」

 

「鳳翔さんまで!」

 

 何でそんな挨拶になるの。

 

「お父さん、港にいるよ」

 

「じゃあ寄っていこうかな」

 

「うん!」

 

 そのまま。

 

 皆で港へ向かった。

 

「今日は随分多いな」

 

 桂梧さんが。

 

 私たちを見る。

 

「買い物です」

 

「そっちの人は?」

 

「鳳翔と申します」

 

 頭を下げる。

 

「軍から、こちらの鎮守府へ転属して参りました」

 

「軍から?」

 

「はい」

 

 少し。

 

 桂梧さんの顔が硬くなる。

 

「この子たちと一緒にいるのか?」

 

「はい」

 

「軍に戻すためじゃないだろうな」

 

「違います」

 

 鳳翔さんは。

 

 すぐに答えた。

 

「私は、この鎮守府の一員として来ました」

 

「……そうか」

 

 それだけ。

 

 まだ。

 

 完全に信用したわけではなさそうだった。

 

「これから荷物運ぶんです?」

 

「ああ」

 

「手伝います」

 

「買い物の途中だろ」

 

「もうほとんど終わったので」

 

「なら俺もやる」

 

 天龍が箱を持つ。

 

「電もなのです!」

 

「私も!」

 

「じゃあ私も~」

 

「鳳翔さんは荷物見てて――」

 

「私もお手伝いします」

 

「え?」

 

「皆さんがするのでしょう?」

 

「まあ」

 

「でしたら私も」

 

 鳳翔さんも箱を持ち上げた。

 

 何度か。

 

 港と荷物置き場を往復する。

 

 途中。

 

 近くにいた人が鳳翔さんを見る。

 

「軍から来た人だろ?」

 

「はい」

 

「こんなこともするんだな」

 

「お邪魔でしたか?」

 

「いや」

 

 箱を受け取る。

 

「助かる」

 

「それならよかったです」

 

 たったそれだけ。

 

 でも。

 

 さっきより。

 

 少しだけ。

 

 普通の会話だった。

 

「もういいぞ」

 

 桂梧さんが言う。

 

「全部終わった」

 

「早かったですね」

 

「人数いるからな」

 

 それから。

 

 鳳翔さんを見る。

 

「ありがとな」

 

「いえ」

 

「また手が足りない時は頼むかもしれん」

 

「はい。その時は」

 

 鳳翔さんが笑う。

 

「お手伝いします」

 

「そうか」

 

 桂梧さんも。

 

 少しだけ。

 

 表情を緩めた。

 

 帰り道。

 

「どうでした?」

 

 電が鳳翔さんに聞く。

 

「町ですか?」

 

「はいなのです」

 

「良いところですね」

 

「ちょっと警戒されてましたけど」

 

 私が言う。

 

「それも含めてです」

 

「含めるんだ」

 

「皆さんのことを大切に思ってくださっているからでしょう?」

 

「……まあ」

 

 そうなのかもしれない。

 

「そのうち馴染めそう?」

 

 聞く。

 

「どうでしょう」

 

 鳳翔さんは少し考えて。

 

「ですが」

 

 笑う。

 

「今日、顔を覚えていただけただけでも十分です」

 

「そっか」

 

「はい」

 

 六人で。

 

 町へ行って。

 

 買い物をして。

 

 少し手伝って。

 

 帰る。

 

 鳳翔さんと町の人たちが。

 

 急に仲良くなったわけじゃない。

 

 でも。

 

 帰る時。

 

 桂梧さんは。

 

「またな」

 

 と鳳翔さんに言った。

 

「はい。また」

 

 鳳翔さんも。

 

 普通に答えた。

 

 今日は。

 

 それくらいでいいんだと思う。

 

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