艦これー兼任提督は楽じゃないーReBuild   作:ラリカ

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第二十七話

 鳳翔さんと一緒に町へ行った翌日。

 

 朝食を食べて。

 

 今日の予定を決めて。

 

 電と五月雨が近場の哨戒。

 

 天龍と龍田が資材の確認。

 

 鳳翔さんは妖精さんと一緒に食料と備品を見ることになった。

 

 私は。

 

「じゃあ報告待ち」

 

「おう」

 

 天龍が満足そうに頷く。

 

「何その顔」

 

「いや?」

 

「また成長したとか思ってる?」

 

「言ってねえだろ」

 

「顔に出てる」

 

「お前、最近それ好きだな」

 

 言われた。

 

 確かに。

 

「多摩さん」

 

 鳳翔さんが声をかける。

 

「はい?」

 

「でしたら、こちらをお願いしてもよろしいですか?」

 

 紙を渡される。

 

「何これ?」

 

「昨日購入したものの確認です」

 

「ああ」

 

「鎮守府の予算から出したものと、個人で購入したものを分けておいた方がよろしいかと」

 

「……」

 

「多摩さん?」

 

「正式な鎮守府っぽい」

 

「正式な鎮守府ですよ?」

 

「あ」

 

 そうだった。

 

「まだ慣れてないんだよね」

 

「そのうち慣れますよ」

 

「かなぁ」

 

「きっと」

 

 鳳翔さんが笑う。

 

 その時だった。

 

 部屋の向こうから。

 

 音が鳴った。

 

「……」

 

 全員。

 

 止まる。

 

 もう一度。

 

 鳴る。

 

「通信機!」

 

 立ち上がる。

 

「多摩、走んな!」

 

「分かってる!」

 

 走っているけど。

 

 通信機の置かれた部屋へ入る。

 

「はい!」

 

『多摩か』

 

 聞き覚えのある声。

 

「はい。どうしました?」

 

『周辺海域で、深海棲艦の大きな移動を確認した』

 

「……大きな?」

 

 後ろから。

 

 皆も入ってくる。

 

『現時点で正確な数は分かっていない。ただ、これまでこの周辺で確認されていた規模より明らかに多い』

 

「こっちに来てるんですか?」

 

『可能性がある』

 

「可能性?」

 

『進路がまだ確定していない』

 

「分かりました」

 

 少し考える。

 

「町には?」

 

『それを頼みたい』

 

「私たちから?」

 

『ああ。漁船を出さないよう伝えてほしい』

 

 前だったら。

 

 軍が何かを確認していても。

 

 町には届かなかった。

 

 今は。

 

 違う。

 

「分かりました」

 

『こちらからも部隊を出す。詳細が分かり次第、改めて連絡する』

 

「はい」

 

『それと』

 

「何です?」

 

『今の段階で、お前たちだけで確認に出る必要はない』

 

「……」

 

 後ろ。

 

 天龍を見る。

 

 目が合う。

 

『聞いているか?』

 

「聞いてます」

 

『確認のために単独で出るな』

 

「分かってますって」

 

『本当に?』

 

「何で軍にまで信用されてないの?」

 

『以前の話を聞いた』

 

「誰から!?」

 

 通信が切れた。

 

「ちょっと!」

 

 誰だ。

 

 神通さんか。

 

 いや。

 

 他にも候補が多い。

 

「司令官さん」

 

 電が少し真面目な顔になる。

 

「大きな群れなのです?」

 

「みたい」

 

「数は?」

 

「まだ分からない」

 

「じゃあ俺たちは?」

 

 天龍。

 

「待つ」

 

 答える。

 

「まず町に知らせる」

 

「おう」

 

 天龍が。

 

 少しだけ笑った。

 

「何」

 

「何でもねえ」

 

「絶対何か思ったでしょ」

 

「思ってねえよ」

 

「嘘」

 

「今それやってる場合か?」

 

「それはそう」

 

 町へ。

 

 先に知らせないと。

 

「多摩さん」

 

 鳳翔さんが言う。

 

「私も参ります」

 

「鳳翔さんも?」

 

「軍からの情報について、私から説明出来ることもあると思います」

 

「ああ」

 

 確かに。

 

「じゃあお願いします」

 

「はい」

 

「電たちは?」

 

「鎮守府に残るのです」

 

「連絡来るかもしれないもんね」

 

「はいなのです」

 

「五月雨、通信機お願い出来る?」

 

「はい!」

 

「内容を記録して、何かあったらすぐ呼んで」

 

「分かりました!」

 

「天龍と龍田は」

 

「装備見とく」

 

 先に言われた。

 

「もし出ることになっても、すぐ動けるようにな」

 

「お願い」

 

「任せろ」

 

 それぞれ。

 

 動き始める。

 

 私が。

 

 一つずつ全部やる必要はない。

 

 私と鳳翔さんは。

 

 町へ向かった。

 

「今日はどうした?」

 

 港へ着くと。

 

 桂梧さんがいた。

 

「今日は船、出さないでください」

 

「何?」

 

 すぐ。

 

 表情が変わる。

 

「深海棲艦?」

 

「軍から連絡が来ました。この辺りに大きめの群れが来る可能性があるって」

 

「数は?」

 

「まだ分かってません」

 

「そうか」

 

 桂梧さんが海を見る。

 

「分かった」

 

「早い」

 

「何がだ」

 

「もっと聞かれるかと思った」

 

「危ないって言ってるんだろ?」

 

「はい」

 

「なら出さん」

 

 簡単だった。

 

「他の人にも伝える」

 

「お願いします」

 

「いつまでだ?」

 

「軍から次の連絡が来るまで」

 

「分かった」

 

 そこで。

 

 桂梧さんが鳳翔さんを見る。

 

「軍の情報なのか?」

 

「はい」

 

 鳳翔さんが答える。

 

「現在、軍側でも確認を続けています」

 

「間違いじゃないんだな」

 

「可能性の段階です」

 

「可能性?」

 

「はい。敵の進路がまだ定まっていません」

 

「なら、来ないかもしれない?」

 

「その可能性もあります」

 

「それでも船を止めろと」

 

「何もなければ、それが一番ですから」

 

「……そうだな」

 

 桂梧さんが頷く。

 

「分かった」

 

 前だったら。

 

 こういう情報自体。

 

 町には来なかった。

 

「軍にも」

 

 桂梧さんが言う。

 

「早めに知らせてくれて助かったって伝えといてくれ」

 

「承知しました」

 

 鳳翔さんが頭を下げる。

 

 それから。

 

 港にいた人たちへ話が回っていった。

 

「今日は出ない方がいいらしい」

 

「軍から?」

 

「ああ」

 

「鎮守府にも連絡が来たって」

 

「なら待つか」

 

 思っていたより。

 

 ずっと早い。

 

 誰かが。

 

 無理に海へ出ようとすることもなかった。

 

「前なら」

 

 私が言う。

 

「何か起きてからだったのかな」

 

「かもしれませんね」

 

 鳳翔さんが答える。

 

「軍は軍で海を見ていて」

 

「町は町で生活して」

 

「私たちは私たちで戦って」

 

「はい」

 

「全部別だった」

 

「今は違います」

 

 軍が見つけて。

 

 私たちへ伝えて。

 

 私たちから町へ伝える。

 

「……ちゃんと繋がってる」

 

「そうですね」

 

 それだけなのに。

 

 少し。

 

 嬉しかった。

 

 鎮守府へ戻る。

 

「多摩さん!」

 

 五月雨が走ってきた。

 

「連絡?」

 

「はい!」

 

 紙を渡される。

 

「敵艦隊、進路変更。こちらの海域へ接近中」

 

「数は?」

 

「確認出来た範囲で、二十以上です」

 

「二十……」

 

 これまで。

 

 六体くらいなら。

 

 普通に相手をしていた。

 

 でも。

 

 二十以上。

 

 しかも。

 

「以上、か」

 

「まだ増える可能性があるのです?」

 

 電が聞く。

 

「あると思う」

 

 通信機が鳴る。

 

 今度は。

 

 落ち着いて取った。

 

「はい」

 

『情報は届いたか』

 

「二十以上」

 

『ああ』

 

「軍は?」

 

『神通の部隊を含め、複数部隊を向かわせる』

 

「私たちは?」

 

『協力してほしい』

 

 今度は。

 

 依頼という言葉を聞いても。

 

 驚かなかった。

 

「分かりました」

 

『ただし、そちらだけで先行するな。合流地点を伝える』

 

「はい」

 

『町の方は?』

 

「船は全部止めてもらいました」

 

 一瞬。

 

 向こうが黙った。

 

『……そうか』

 

「桂梧さんが、早めに知らせてくれて助かったって」

 

『分かった』

 

「伝えといてください」

 

『伝えておく』

 

 通信が終わる。

 

「出る?」

 

 天龍が聞く。

 

「うん」

 

「全員?」

 

 少し考える。

 

 六人。

 

 そして。

 

 鎮守府。

 

「鳳翔さん」

 

「はい」

 

「出撃出来ます?」

 

「もちろんです」

 

「じゃあ六人で行く」

 

 全員を見る。

 

「でも」

 

 続ける。

 

「軍と合流してから」

 

「了解なのです」

 

「はい!」

 

「おう」

 

「分かったわ~」

 

「承知しました」

 

 誰も。

 

 先に飛び出さない。

 

 私も。

 

「装備は?」

 

「確認済みだ」

 

 天龍。

 

「資材も問題ないわよ~」

 

 龍田。

 

「記録はここまで終わってます!」

 

 五月雨。

 

「食料も大丈夫なのです」

 

 電。

 

「出撃後の補給についても、妖精さんたちにお願いしてあります」

 

 鳳翔さん。

 

「……」

 

 私が。

 

 やること。

 

 ほとんど残ってない。

 

「多摩?」

 

「いや」

 

 少し笑う。

 

「頼もしいなと思って」

 

「今更なのです」

 

 電に言われた。

 

「電までそんなこと言うようになったね」

 

「本当のことなのです」

 

「はいはい」

 

 机の上。

 

 海図を見る。

 

 合流地点。

 

 敵の進路。

 

 町。

 

 鎮守府。

 

 確認する。

 

「じゃあ」

 

 顔を上げる。

 

「行こうか」

 

「おう!」

 

「はいなのです!」

 

「はい!」

 

「行きましょう~」

 

「はい」

 

 玄関を出る。

 

 六人。

 

 最初に海へ出た時は。

 

 一人だった。

 

 次は電と二人。

 

 今は。

 

 六人いる。

 

 それに。

 

 向こうには。

 

 軍もいる。

 

「多摩」

 

 天龍が呼ぶ。

 

「何?」

 

「置いてくぞ」

 

「あ、待って!」

 

「旗艦が遅れてどうすんだよ!」

 

「今行く!」

 

 走る。

 

 今度は。

 

 一人で行く海じゃなかった。

 

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