幼馴染ご主人様に飼われているケモミミ少女   作:“同同同”ンブラコ

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01.夢

 

 

 

 

 

「ねえ、エリ」

 

「…なに、ユイ」

 

「私達、このままずっとこんな生活続けなきゃいけないのかな?」

 

「…」

 

「働いて、働いて、それでもお金が足りなくって…ご飯も、お腹いっぱいに食べれない」

 

「そうだね。今日だって、まだ何も食べてない。昨日も」

 

「お金はぜんぶ、大人たちが持っていっちゃう。『孤児院の維持費だー』って言って…」

 

「…逆らうと、また殴られる」

 

「うん。知ってる。分かってる。…エリ、私はここから逃げ出したい」

「もっと優しい大人の人に出会って、もっと楽しくて幸せな暮らしを送りたいの」

「この世界に来てよかった、生まれてよかったって思えるような…」

 

「勝手にすれば。ユイだったら良い貰い手は来る」

 

「駄目」

 

「なんで」

 

「エリもそこにいなきゃ駄目」

 

「…」

 

「いつ、どんなときでも、私の隣はエリがいい」

 

「…ダメだよ、それは。」

「わたしは獣人。あなたは、人間。傍にいてもユイは幸せになれない」

 

「なれるよ」

 

「ならない」

 

「なれる!」

 

「………そもそも、わたしを引き取ってくれるような人、いない。獣の尻尾と耳が生えた、汚いわたしなんて」

 

「それは……探す! 調べる! 頑張る!」

「…あと、エリは汚くない! エリの色、私は好き」

 

「…もう、好きにすれば」

 

「じゃあ、好きにさせてもらうね」

 

「なにその指」

 

「約束」

 

「約束?」

 

「そ。この施設を出る時は、二人一緒に。片方だけ出る時はもう片方も連れてくこと」

「…そして、必ず幸せになること」

 

「ふ~ん…」

 

「それと、エリを引き取って貰えなかったら、私は出ない。里親には断って戻るから。逆は……エリの意思に任せる」

 

「はあ?……ユイは、本当にバカだね」

 

「馬鹿だもん」

 

「…」

 

「…」

 

「…わかった。約束ね」

 

「うん! 約束!」

 

 

──────────────────────

 

 

 

公爵家の朝は早い。

 

私はベッドから起き上がる。起きたらカーテンを開けて朝の日差しを部屋に取り込ませる。

 

洗面台まで向かい、顔を洗う。そのあと、櫛を手に取り髪と耳を解かしていく。また別の櫛を使って尻尾を整える。

 

それらの作業を終えると、私は寝間着を脱いで正装に着替えた。そして、姿見を見ながら自分の服装を整える。

 

焦げ茶色の髪と耳。青色の瞳。腰からしなやかに垂れている尻尾。いつもの私が再構築される。

 

準備を終えたので部屋を出た。『お嬢様』を起こすためだ。

 

廊下で掃除を行っている、恐らくは私よりも早起きなメイド達に挨拶を済ませていく。

 

今日は比較的に仕事が多い。

 

・民衆の議会を開いた後に内容をまとめ、今後の施策の方針を建てる。

 

・隣の領主の邸宅で交流も兼ねた茶会。

 

・国に奉納する税をまとめた書類を書く。そして、国からの給付金の手続きを行う。

 

その後は…と考えていると、目的地に到着した。

 

お嬢様の部屋の扉を優しくノックする。反応がない。

 

今度は強めに。…反応がない。

 

反応がないので扉を開けた。まっすぐ歩き、ベッドの傍まで来た。

 

ベッドの主はいまだにすやすやと寝息を立てていた。彼女に掛けられた純白の布は彼女の呼吸に合わせて上下する。

 

私は彼女の肩を掴み、揺らした。

 

「お嬢様、起きてください。朝ですよ」

 

「ん~…あと五分~…」

 

「お嬢様…」

 

私は彼女から離れて窓際まで向かった。部屋のカーテンを開ける。朝の光が彼女に当たった。

 

「うわあぁぁぁ…きちくぅぅ……まぶしいぃ………」

 

「はい、鬼畜です。さ、起きてください」

 

彼女は渋々と起き上がり、洗面台へとゆらゆらと向かった。

 

私は彼女が顔を洗っている間にベッドシーツを取り替えておいた。

 

戻ってきた彼女を化粧台に座らせる。私は化粧品を手に取り、彼女を引き立てていく。

 

化粧と併せて彼女の腰まで伸びた長い髪を解いていった。彼女の汚れのない金髪は私が手を添えていいのかと思うほど、艶やかで美しかった。

 

そんな中、彼女が口を開いた。

 

「ねえ、エリ」

 

「どうしましたか?」

 

「昔の夢、見た」

 

お嬢様は鏡越しにこちらを見つめた。

 

お嬢様はことあるごとに昔の話をする。昔は、昔は…と。

 

まるで昔の方が良かったとでも言うように。

 

「昔の、約束した時の夢。…ねえ、エリ」

 

彼女が振り向く。髪を解いている途中ではあったが、終わりそうな頃だったので向き直らせるようなことはしない。

 

「昔の口調に、戻して?私のこと、ユイって呼んで?」

 

「できません」

 

私の口からははっきりとした拒否の言葉が発せられた。その言葉を受けてお嬢様は、ユイは、目に見えて落ち込んでいる。

 

「なんで」と疑問が投げかけられる。

 

「お義父様は、死んだよ。メイドさん達も優しい人だし、シャルもロイもルノアも獣人差別なんかしない」

 

確かに、私に礼儀作法を叩き込んだ元公爵様は死んだ。二年前に。原因は不明だったが。彼にされてきたことは思い出したくない。だが、彼の教えはしっかりと私の血肉となっているのは確かだ。

 

メイド達も優しい人達ばかりだ。何度もお世話になっている。

 

シャル、ロイ、ルノア─ユイの義弟妹だ─は、まだ十分な年齢ではないものの、傲慢な気配がしない良い子達だ。

 

──けれども、

 

「この家の中では世間体とか、気にしなくても良いんだよ?」

 

「……」

 

──それでも、

 

「家にいる時だけでも…幼馴染同士に戻ろうよ……」

 

「できません」

 

ユイの願いを、私は叶えなかった。

 

「お嬢様はお嬢様で、私は側仕え」

 

万人受けするように仕上げられた笑みを彼女に返す。

 

「この関係は、変えられませんから」

 

 

 

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