お久しぶりです。最近忙しかったのもあって投稿が遅れました。
割と長くなったので、よければゆっくり楽しんでください。
それでは、どうぞ!
何なんだろうな。この、時折オレの胸を突き動かす衝動は。
オレに残ったものは、オレにとって大したものじゃなくて。大切な人も、大切だったものも、何も思い出せやしないのに………それでも、何かをしなければならないという衝動が、時折全身を駆け巡っている。
オレは怠惰で、それでいてイタズラ好きな……ただのスケルトンだ。それにしてはらしくないなと思ってしまう。性格は経験によって多少変わるというのは当然の事実ではあるが、それはそれとして、大元の部分は変わらない筈。
なら何故、こんな
幾ら時間をかけて考えようとも、何も思い出せないくせに。
◯
「…………ふぅ、疲れたー」
電車から降り、駅のホームで体を伸ばす。そうするとパキパキと心地の良い音が身体の内から鳴ったような気がした。
遠路はるばるやって来て、もうちょっとしたら着く目的地は、俺のおばあちゃんが住んでる『ケマモト村』って村。さくらニュータウンとは打って変わって田舎なんだけど………空気を吸い込むと、心なしかさくらニュータウンのそれよりおいしく感じるし、緑豊かな所で俺は好きだ。
「何だかんだ結構電車乗りましたからねー、私は浮いてるだけなので大して疲れてませんが、ケータくんは疲れて当然でうぃす」
「だな。オイラも心なしか、身体中痛むぜ………」
「わたしはー……そうでもないかな?」
「オレっちもそんな疲れてないニャン。ケータ達が貧弱なだけニャン」
「………オマエらが元気過ぎるだけな気はするがな」
サンズの発言に首が千切れるくらい振って同意した。確実にジバニャン達が元気すぎるだけだよねー……ってか待って?そう考えるとウィスパーって基本的に浮いてるから移動でそこまで疲れないのずるいよね。
そんな思いを込め、ジーッとウィスパーを見つめる。
「む?何ですかケータ君?」
「いや、なんかウィスパーってズルいなーって思ってさ」
「いきなり過ぎませんか!?して、どの様なところがずるいと」
「浮いてるところ」
「食い気味でうぃすね………しかしケータ君、そればっかりは私に変えようのないものですし、文句を言われても変えようが………いえ、変えられますね」
「だよねー、そんな簡単に変えられる訳……え?それってどういう──────」
そう言葉を言おうとした次の瞬間─────ウィスパーに、足と手、それから胴体が生えた。
「は?」
「ふふん。どうですかこのフォルム。我ながら見事なスタイルでしょう?」
「…………は?」
もう、普通に絶句しかできなかった。え?何コレ?確かに俺は『浮いてるのってズルイよね』とは言った。けど────いきなり人っぽくなられるのは流石に想定外すぎて何も反応できなかった。
ウィスパーの等身は俗に言う『八頭身』というものになっており、そのスタイルはアイドルかと見紛う程だろう。…………けど、ウィスパーの場合ただキモいだけなんだ。新発見。
「いや、普通にキモいニャン。どうなってるニャンそれ?」
「どうなってるも何も、こうなってるんですよ」
「いや説明になってないニャン!?」
「………成程。妖怪って、思ったよりなんでもありなんだな。勉強になった」
「サンズ。多分それは
「流石に言い過ぎじゃないですか!?………仕方ありません。この八頭身フォルムは解除するとしましょう」
今度はしっかり服を用意しておきましょうかね……?と、まるで次があるかのような恐ろしい発言を聞きながらも、俺達は駅の改札を抜け、間も無く駅の外へ出た。
駅の外には小さなバス停があったり、村の人々が楽しそうに何か話していたりしていたり、少し奥を見てみると森のようなものまであった。けど、その光景が前と比べて変わったかとか変えると─────変わっていないというのが正解だ。
勿論、それが悪いとは思わない。寧ろ変わりすぎてたらそれはそれでちょっと引くしね。
「……にしても、久しぶりに来たなー」
すーっと、肺を大きくして、沢山の空気を吸い込み、吐き出す。………うん!やっぱり普段いる場所より空気美味しい………よね?
別に俺は評論家でもなんでもないフツーの男子小学生なので、そこまではっきりした事は言えないけど………多分美味しいよこれ!
「空気が澄んでますねー」
「のどかだニャン」
「うん。自然豊かでいいねー……」
みんな俺と似たような感想を抱いたのか、口々にそう発言した。
「でしょ?結構前に来たからそこまで覚えてはないけど、俺は何となくここが好きなんだー」
「確かに、ここには都会とは違う魅力があるでうぃす」
「まーとは言え、ずーっと住んでたらめんどくさそーな事もありそうニャン」
「…………まあ、それはそうかも」
夢がないなぁと少しジーッとジバニャンを見るが、それも事実だと思う。多分ずーっとここにいたら漫画とかコンビニとか、そういった普段あるものがない事に飽き飽きしてくるような気がする。
「そうか?オイラはいても全然良いかもな。寧ろ、こっちの方がニンゲンが少なくてオイラは好きだ。………ゆきおんなはどうなんだ?」
「えー?……私も、ここにずっといてもいい、かも……?」
「成程、2人はそうなんだ」
結構意外かも。
「確かに、ゆきおんなさんは私達とは違って自然に関係する妖怪な訳ですから、こちらの方が何かと住み心地が良いのかもしれませんね。サンズさんも私達が住んでいる世界とは異なる世界から来たとの事ですし、何もない方がかえって落ち着くのかもしれません」
「あー……」
確かにそうかも。ゆきおんなは文字通り『雪』にまつわる妖怪な訳だし、自然豊かなこっちの方が住み心地はいいと思う。
サンズは、記憶が無くなっても違う世界から来たっていう確信自体はあるみたいだし、前とは違うから何となく嫌ってなるのはそうなのかも。……そんな事になったことないから詳しくは分かんないけど。
ウィスパーの言葉になんとなく納得しながら、俺達は近くにあったバス停のそばまで移動し、バスに乗った。………こういう時妖怪って便利だよね。お金払わなくてもバス乗れるんだし。
とは言え、それはそれで人感センサーとか人に簡単には認識されることは当然ない訳だから、その性質を利用するのも大変、とはジバニャンの意見だ。
そんなこんなで、バスの運転手さんに変な子だと思われないようにみんなと小声で話していると、あっという間にケマモト村に着いた。
「………思ったより人いるニャン」
「でしょ?」
「まぁ『村』ですから。ある程度人が住んでいなければそんな単位がつくこともありません」
強い日差しに照らされながら、俺達はおばあちゃんの家へと足を進める。にしても、アイスを片手に持ってたらすぐ溶けそうなレベルの暑さだなぁ……
「あっついニャー……」
「オイラもそこまで暑いのは好きじゃねえからな……暑くて溶けちまいそうだぜ」
「って言っても、溶ける身はない様に見えるけどね?」
ゆきおんながサンズに向かってそう言う。………確かに。骨だけだし溶けるところないよねー。
なんて思っていると、サンズから意外な発言が出てきた。
「おっと、こりゃ一本取られた………って言いたいところだが、骨だって溶けるんだぜ?融点は肉のそれより遥かに高えけどな」
「え?そうなの?………っていうか、融点って何?」
なんか難しそうな単語だなぁ……なんて思っていると、サンズが歩きながら軽い説明を始めた。
「融点ってのは『ある固体が液体になり始める時』の温度だな。オイラでいうと、骨が骨だった液体に変わる瞬間の温度だ」
………成程?何となくわかる様な、分からない様な………
「イメージしやすいのは氷だな。氷が水に変わる時の温度、それが融点って奴だ。因みに、水が水蒸気に変わる……つまり、液体が気体になる時の温度は『沸点』って言うんだ」
あー成程!何となく理解できた!
「成程……にしても、そんな単語俺聞いたことないし、俺が知らないことを説明するのも上手いし……サンズって頭良いんだね!」
「そんな事ねえよ。オイラのこれはまあ……たまたま知ってたってだけ。豆知識みてえなもんだ……が、せっかく褒められたんだ。素直に受け取っとくぜ」
「……なんか、
ふと思いついたかの様にゆきおんながそう呟くと、少し前を歩いていたサンズの動きが止まった。
………どうしたんだろう?
俺と同じくそれを不思議がったのか、ウィスパーが質問した。
「………サンズさん?どうかしましたか?」
「……あーいや、もうちょっとで目的地につけると思うとホッとしちまってな。ちょっと足が止まっちまっただけだぜ?」
「にしては、不自然な止まり方じゃニャかったかニャ?」
「ソイツはちと邪推しすぎだな。………それにほら、向こう側で誰か手を振ってるぜ?あのニンゲンが『おばあちゃん』って奴じゃねえのか?」
「え?………あ!ホントだ!おーい、おばあちゃーん!」
道の少し先で手を振るおばあちゃんの姿が見えたので、俺達は少し足を早め、おばあちゃんの家へと足を進めた。
◯
「にしても、本当に久しぶりだねぇー……ここまで遠かっただろうけど、1人でちゃんと来れて良かったよ」
ザ・和風みたいな感じのおばあちゃんの家。そのリビングに当たる場所にある座布団に座りながら、俺はちゃぶ台におばあちゃんが用意してくれた冷たい麦茶を飲んでいた。
因みにジバニャン達は邪魔にならない場所で休憩していたり、辺りを散策しているらしい。俺は一旦休憩したかったのと、おばあちゃんと少しだけ話がしたかったのもあって今ここにいる。
「まあ、もう小五だしね。それに、お母さんからここまで行く為のメモ書きみたいな奴もらってたし」
そう言い、俺はおばあちゃんにお母さんがくれたメモを見せた。
「……ふむふむ、成程ねぇ」
「そーそー。………そういえばさ」
そう言って、俺はこの家に置いてある仏壇を見た。
「おじいちゃんって、どんな人だったの?俺、あんまり知らないんだよね」
おじいちゃん……つまり、天野ケイゾウ。名前しか知らないけど、何故か今の俺は無性におじいちゃんのことが気になっていた。
「うーん、そうだねぇ………おじいちゃんは、カッコよくて、頭が良くてねぇ……でも、とーっても──────」
そうやって何かを言いかけると、おばあちゃんが目を見開き、いきなり口を押さえた。
「ん?どうかしたの?」
「……ううん。何でもないよ。それじゃあ、おばあちゃんは麦茶に合いそうなもの持ってくるから。ゆっくりしててねぇー」
そう言うとそそくさと足早に、おばあちゃんはこの場を後にした。
「………なんだったんだろ。まあいっか」
氷がたくさん入ってキンキンに冷えた麦茶を飲む。………うん!美味しい!
なんて呑気な感想を心の中で呟いていると。
「…………ん?なんか慌ただしくない?」
外にある庭でジバニャンとウィスパーが小さな声で少し騒いでいた。珍しいこともあるんだなと眺めていると、何やらどこかへ行こうとしている様子だったので、俺は声をかけた。
「ウィスパーにジバニャン、どうしたのー?」
「…………べ、別に何もないニャン」
「えーほんとにー?」
「本当ですよ。………実は先程、突然ジバニャンがニャーKBの布教をしてきましてね。中々の熱意だと感じていたのでうぃす」
「………!!そーニャン!だから、歩きながら話でもしようと思ったんだニャン!!」
…………………一見すると自然に見える。けど…………
「………まず、ジバニャンが布教するなんて流れになる事がそうそうないと思うんだけど、いきなり何でそんな流れになったの?」
「………えーっと、それはニャンねー……」
俺から少し視線を逸らし、落ち着かない様子で話すジバニャン。……明らかに怪しい………
「答えられないの?」
「………………な、何となくそんな気分になっただけニャン!」
「嘘でしょ」
「ニャ!?…………そ、そんな事─────」
「そのくらいにしておきましょう。………すみません、私の話題の振り方が少々雑でした。それに、ケータくんに気付かれてしまうような反応をしてしまったのも駄目でした。執事として、反省です」
「…………ウィスパー、何があったの?」
「………あまりケータくんを危険に晒したくはないのですが、仕方がありません。万が一の事があれば、全力で我々が守りましょう」
そうして、話された内容は衝撃のものだった。
「サンズが!?」
「そう、いきなりどこかへ消えてしまったのです」
「どういう事なの!?」
「それがですね………突然走り出してしまったと言いますか……」
「とてつもない形相だったニャン」
草むらを掻き分け、俺達はサンズが走っていったらしき場所へと走っていた。
「走りながらで申し訳ありませんが、状況を軽く説明しましょう。まず、この場にいないゆきおんなさんについてですが………彼女はサンズさんが走っていた方向を辛うじて視認できたそうなので、そちらへと向かってもらっています」
「……何でゆきおんなが居ないのかなって思ったけど……そんな理由だったんだ」
「はい。ですが『瞬間移動』をサンズさんが移動で使わない理由がない為、恐らく………ゆきおんなさんも私達と同じくどこかを探していることでしょう」
「オレっち達は……そもそもサンズが何処かへ向かったことすら気付けなかったニャン」
凡その状況をウィスパー、そしてジバニャンがが説明してくれた。
「でも、何でいきなりそんな事に……………」
「…………心当たりらしき奴はあるニャン」
「ホント!?」
俺がジバニャンに話しかけると、神妙な表情をしながらジバニャンが語り始めた。
「………さっきから、というか、
「変な、感じ?」
「そうニャン。最初は気のせいかと思ってたニャン。………でも、ここに来る頃にはオレっち達がストーカーされてる事にようやく気づけたニャン。各自行動しようってなったのも、そのストーカーを見つける為だったんだニャン」
「得体の知れない誰かをケータくんに近付ける訳にもいきませんからね」
成程………そんな理由があったんだ。
「…………でも、それなら俺ってついてきたらダメなんじゃ………」
「良いのです。敵の狙いがわからない以上、ケータくんを一人にする訳にもいきませんから。こうして近くにいてもらった方が守れます」
「安心するニャン!いざとなったらオレっちが『ひゃくれつ肉球』でブッ飛ばすニャン!」
「………うん。俺もできることあるなら頑張るから、何でも言ってね」
俺の言葉に頷いた二人を見て、俺は再び状況の整理に移った。
「………話を戻すんだけどさ。ジバニャンの話が本当なんだったら……サンズはそのストーカー?を追いかけたって事で良いのかな?」
「はい。それはそうだと思うのですが………それにしては不可解な点もあります。何故独断専行なさったのでしょうか?ケータくんの身を案じるにしても、本来なら我々のうちの誰かと共にそのストーカーを追い詰めれば良かったはずです。そうすれば接敵する際のリスクも減ります。にも関わらず、一人で………」
ウィスパーの考察を聞き、確かによく分からない所もあるなと、頭を悩ませながら足を草むら、そして小さな森へと進めていくと────
「見えたニャン!」
「………どうやら、アレで間違いなさそうでうぃす」
「…………何してるんだろう?会話?」
遠目から見てみると、サンズがいるのは分かる。普通ならそれだけなはずだけど、向かい側に…………フードを被った誰かがいる。
お互いに警戒しているのか、静止しながら会話を続けてる様な雰囲気だ。
『……………だ。お前は…………だ?』
『……………………』
木に隠れながら会話を聞こうとするが、遠すぎて中々聞き取れない。……でも、何でこんなふうに隠れてるんだろう?向こうに行けばいいだけ、なの、に………
そう考えていた次の瞬間──────
フードを被った誰かが、コチラを指差した様な気がした。
「え?」
それに気がついた時には、
「………ケータ危ないニャン!!」
「……っ!?いった………!!」
そう言われてジバニャンに突き飛ばされ、地面に転がった俺が見上げると、俺が立っていた場所、その後ろあった木に一本のナイフが刺さっていた。
「大丈夫かケータ!?怪我はないか!?」
いつもの数倍真面目な顔をしたサンズの声を聞き、ようやく意識が戻ってきた。多分瞬間移動でここまできてくれたんだと思う。そんな思考を巡らせる事が出来る程度には調子が戻ってきた。
「……う、うん!大丈夫!!」
「そうか。………にしても、やってくれたな」
サンズの視線を追いながら立ち上がると、先程俺に攻撃を仕掛けてきたであろう奴が、俺達から少し離れた所に立っていた。
「………貴方は誰なのですか?ケータくんを襲撃して、あまつさえ危険に晒すとは………!」
「………………」
少し怒っているのだろうか、普段のウィスパーとは全くと言って良いほど違う声色で質問をするが………返答はなかった。
「………出来れば、コイツに会ってほしくはなかったんだがな……だから、走ってどこかへ向かうフリをして別の方向へ行ったってのに」
「……ああ、だからわざわざ走ってたんですね。その方向に進むんだと私達を錯覚させる為に」
そう、サンズが走って向かったのはストーカーがいると推測できる場所………ではなく、別の場所だった。そして、ある程度移動した所でストーカーがいると推測できる場所へとテレポートした、という事だ。
だが、ゆきおんなはそんな事を知っている筈がなく、そこへ向かってしまったのだ。
「そーゆー事だ。……尤も、意味のねえものになっちまったが。そこは仕方がね──────おっと」
話を続けていると、フードを被った誰かは俺達にナイフで切り掛かってきたが、それを察知したサンズはすぐさま手に骨を生成し、上段からの斬りかかりを防いだ。
「会話くらい楽しもうぜ?それとも………話したくない理由でもあるのか?」
「……………」
ギリギリ、と骨が軋む音が静かな空間に嫌に響く。返事は、返って来なかった。
「ダンマリか。まあ、それはそれで良い。
その言葉と共にサンズは敵を弾き飛ばし、距離を取らせる事に成功した。
そして、距離が開いたという事は…………
「さあ─────裁きの時だ」
「………………!!」
予め森によって視界が遮られる様に、サンズは木から少し離れた上空、そこにブラスターを召喚していた。
そして、敵が弾き飛ばされた先は比較的草木が少なく、仮にブラスターを打ったとしてもそこから火災が発生しない場所………つまり、ブラスターを放っても問題がない場所へとサンズは誘導し、放たれる直前までその存在を悟らせないようにしていたのだ。
が、相手もなかなかの強者。勘で察知したのか、敵はすぐさまその脚力を駆使して真横へ移動し、光線を回避した。
「読めてるぜ」
まるで
「………すごい」
……足手纏いだな、俺。普段なら妖怪を召喚して戦ってるのかもしれないけど、今はジバニャンも俺の側にいてくれている。俺の事を守ってくれてるんだろうな。
…………このままでいいのかな、俺。
そんなケータの思考を置き去りにしながらも、戦闘は続く。
「お次は、コレだ」
指をクイっと上に上げる仕草をサンズが取ると、地面から大量の骨が二人を囲う様に出現した。
「…………………」
「オマエが誰かは知りたくも無いが………オマエがケータに危害を加えるってんなら、ここで止めるしかねえ。来いよ。全力で叩き潰す」
そうサンズが言うと─────フードに隠れた表情、それが太陽に照らされ、口元のみが見えた。
口は、三日月を描いていた。
それを見た瞬間、サンズは凄まじい程の悪寒に襲われた。絶対にコイツには
「──────マズ」
サンズの体が恐怖で硬直し、辛うじて出来た行動は、足を後ろに引くことのみだった。それにより、足の後ろにあった石に躓き、体勢を完全に崩した。
それを好機と見たか、間も無く、敵は迅雷の如き速度でナイフを突き立てようとしていた。
「…………っああ!!」
サンズは体を襲う恐怖心に抗い、辛うじて反射的に骨で囲われた空間を『瞬間移動』で抜け出し、危機を脱することに成功した。
そう、成功したかに思えた。
「は?」
何故か敵はサンズの目の前まで既に迫ってきていた。あと3、4mといった所だろう。
サンズは理解に苦しんだ。まず、あの空間を容易に抜け出せたという点が理解できなかった。が、どの様に抜け出したのかは、少し先の景色を見れば分かった。
一部分、人1人通ることができる程度に骨が跡形も無く切り刻まれていた。つまり、ナイフのみであれを突破したということだ。
あの体躯でそれが可能なはずがない。下手をすればケータと同年代レベル、或いはそれ以下の年齢なのにも関わらず………あり得ないほどの身体能力を保有している。
そして、何よりもサンズが理解できないのはただ一つ。
瞬間移動先が明確に
サンズの瞬間移動唯一の弱点は、瞬間移動した際の視界が本人の視力で理解できない事だ。故に、ほんの僅かに現状把握が遅れる。
ここまで接近されているのもそれが原因だ。が、ここまで近づくためには確実に瞬間移動先がある程度読まれていないとおかしい。
そのあまりに奇妙な状況が、再び瞬間移動するという最適解をサンズに思考させなかった。
どうすればいい?オレはどうすれば………武器を構えた所でこの棒立ちの状態じゃあな。…………くそっ。
悪態を心でサンズがついている間にも、敵は迫ってきている。
サンズの思考は高速化し、敵の動作はスローになっている。ただ、体がついてこない。故に、サンズにはこの攻撃を防ぐ手段は────ない。
ただ、サンズはここで一つ、自分もおかしい事をしていた事に気が付いた。
………何故、オレは─────敵の光線の回避先が
一体全体、誰なんだよ、オマエは─────!!
サンズが思考を重ねている間に距離が確実に縮まっていく。サンズにとっての死神が、すぐそこまでやって来ている。
3m、2m、1m───────
瞬間、地面が凍った。
「………!!今だジバニャン!!」
決めるならここしかない!!
「合点ニャン!!」
少し遠くから戦闘の行方を見守りつつ、好機を伺っていたケータがここで動く。
万が一の事態に備え、ケータの側に待機させていたジバニャンがネコのすばやさで瞬く間に敵の横へと到達した。
敵は凍った足元を砕き、その場を離脱しようとするが、もう間に合わない。
「ひゃくれつ、肉球!!」
まともに身動きが取れない状態から、ジバニャン渾身の一撃が炸裂し、敵は再び遠くまで飛ばされた。
その隙を縫って、俺たちはサンズの元へと駆けた。
「サンズ、大丈夫かニャン!?」
「……ああ、ジバニャンも戦いたかったろ?よく耐えたな」
「当然ニャン!ケータに何があるか分からんからニャ!」
「…………でも、多分戦力を分散させたら……負ける、よね?」
俺も危ないとか言ってる場合じゃない。……ただお荷物になるのも、やっぱ嫌だしね。
「そうですね………そういえば、先程の氷は?」
ウィスパーがここで一つの疑問を抱いた。
でも、こんな事出来る妖怪なんて、1人しかいないでしょ!!
「────サンズ!!」
「………やっぱ、ゆきおんなか。よくここが分かったな」
遠くからゆきおんなが駆け寄って俺たちの側まで来た。
「みんながどこにいるか分からなかったけど、サンズのブラスターが見えたから、そこに向かって走ったの。そしたら、サンズが刺されそうになってたから………間に合って、良かったぁ……」
ほっとため息を吐くゆきおんな。
「成程………敵の動きが早過ぎるのなら止めればいい、ですか。正直、ジバニャンも私も、敵の動きがまともに見えませんでした」
「あんな動き、人間に出来る訳無いニャン。どうなってるニャン?……それに、こうやって見るとなんか気配も
遠くで体をパッ、パッと手で払っている敵を見据えながらジバニャンが呟く。
「妙、なの?」
「………なんか、気配でいうなら
「……やっぱ、オレの関係者、って事か」
足元の氷をゆきおんなが溶かした事で動ける様になったサンズが真面目そうな表情で言う。
「関係者、か…………ねえ!君は誰なの!?何でこんな事したの!?」
流石にムカついて来たので、答え合わせとストレス発散の為に俺は叫んだ。
どうせ反応なんてしてくれないのかもだけど、流石にこんなやられっぱなしは嫌だ!そんな気持ちを込めて叫ぶ。
………相変わらず返事はない。
かに、思えたのだが。
「…………………ふふっ」
「……え?今笑っ────」
「また会おうね?─────サンズ」
小さく目の前の誰かはそう呟くと、凄まじい速度で森の中へと消えた。
「…………どういう事ニャン?」
結局、アイツが誰で、何でこんな事をしたのか、ジバニャンも、誰1人として何一つわからないまま、事態は一先ず収まったのだった。
如何だったでしょうか。多分ですが、今回出て来た奴の正体を予想できる人はいないと思います。
Undertaleを、そして妖怪ウォッチを知っている人なら予想できそうな感じなんですが、正確に当てることは多分できないんじゃないかと言った感じです。独自設定もありますし……
とまあ設定のことは置いといて、また忙しくなって投稿が遅れるやも知れませんが、ゆっくりお待ちしていただけたら幸いです。
それでは、また次回お会いしましょう!