盈月の儀:江戸で行われる聖杯戦争
宮本伊織:主人公。大剣豪・宮本武蔵の養子にして弟子。セイバーのマスター。
浅草で浪人をしている。
セイバー:古風な装いの剣士。波打つ剣を持つ。
新井助之進:同心(治安維持等を担当する下級武士)。
伊織と仲が良く、伊織に仕事を回す。
小笠原カヤ:伊織の義妹。伊織の長屋によく顔を出す。
ドロテア・コイエット:横須賀を拠点とする時計塔の魔術師。アサシンのマスター。
まさかのFGOサムレムコラボ復刻
まさかの新規ピックアップ召喚
非禮勿視、非禮勿聴、非禮勿言
幼い頃から聴いて育った言葉。
悪いことを視てはいけない、聞いてはいけない、言ってはいけない。
悪いこと──それは父の望まないこと。
父の望むままに生きる私はまるで人形のようだった。
いっそ、心持たぬ人形になれたらと願うこともあった。
父に与えられた文庫箱を見る。
描かれていたのは、三猿。
視ざる、聴かざる、言わざる。
自分への戒めのような箱。
娘の口から願い事が零れ出る。
ぱきり
箱の中で何かが折れる音がした。
「……?」
中を確かめようと、娘は箱に近づく。
後ろから、ごとり、と重い物が落ちる音がして、娘は振り向いた。
そこには、娘によく似た人形が転がっていた──。
*
よォ、伊織さん。待ってたぜ。
浅草の川沿いにある三河屋っていう酒問屋があるんだけどよ、
あ、いや、その下手人捜しじゃなくってよ。
今回頼みてェのは、その大旦那が持ってた人形の事でね。
話すと長くなるんだが、ちょいと付き合っておくれよ。
三河屋の大旦那には、溺愛していた愛娘が居たんだが、それがもう、眼に入れても痛くねェっていう位の可愛がりようでよゥ。
それが、
それが大旦那にバレちまって、そりゃもう大変。周りにも知れ渡るくれぇの怒りっぷりで、男を追出しちまったんだが・・・・・。なんと、どさくさに紛れて、娘と一緒に駆落ちしたのよ。
そりゃあ、大旦那はえらく落ち込んださ。随分と気を落としたもんだが、暫くして、何処から出てきたのか、女の形をした人形が出てきてね。人形を娘のように可愛がり始めたんだ。
しかも、この人形ってのが、その居なくなった娘と瓜二つなんだってっよ。
そんな都合良く、娘そっくりの人形が手に入るなんて不気味だろ?
だが、不気味がる家の
やれ人形の着物を毎日替えろ、やれ人形に食事を出せ、と娘の代わりの様に扱い始めて、しまいには、また出奔されたら困るなんて言って、人形の手足を切り落としちまったっんだよ。
人形が逃げ出す訳ねェって。仏さんを悪くは言いたかないが、すっかり気が触れちまったとしか、ねェ・・・。
そんな中、大旦那は殺された。
頭をガツンとやられて死んでたんだが・・・この大旦那、結構ガタイの良い方でね。襲い掛かるだけでも一苦労だろうに、手足まで折られていてよ。争った、というよりは、一方的に大旦那がやられたっつぅ有様だ。
ならば、下手人は大旦那に負けねぇくれぇ、ガタイの良い奴だって思うだろ?
だがな、周囲の者はそう思わねぇ。人形の祟りだって言う。
何でかって?
それはよ、旦那の傍らには、手足のねぇ人形が転がってたんだよ───。
*
「で、これが
「助之進はこの人形がやったと思っているのか」
「だがイオリ、手足がなくては殴ることも蹴ることもできないぞ、あ、頭突きか?」
「まさか。冗談よしてくれよ、伊織さん、セイバーさん」
人形が人間を殺せるわけが無い。もうその手の話は聞き飽きたと言わんばかりに、首を振る助之進。
浅草にて同心を務める助之進に案内され、伊織とセイバーがやってきたのは、浅草の外れにある寺であった。
三河屋の者達は人形を不気味がり、ここには置いておけぬと、供養のために寺に持ち込まれたのであった。
寺の奥の間には、人形が寝かせられていた。
上質な絹で織られたであろう桜の立ち木模様が入った朱色の着物に、錦糸の入った帯を締めており、大旦那の耽溺ぶりが窺える。
故に、本来手足が通されるはずの膨らみの無い着物が痛ましく映る。
しかし、目立つのは白い髪。以前は艶やかな黒髪であったと言うが、主人が死した後、疎らに黒髪を残した、白髪になってしまったという。
これがまた、人形が祟りを起こしたと、周囲が信じる決定的な原因となった。
あらかじめ聴いた謂われのせいか、はたまた、呪いを連想させる出で立ちのせいなのか、時刻は昼四つ(十時頃)だというのに、部屋の中は、人形を中心に嫌に薄暗く感じる。
「まぁ、手足を落とされて人形が怒って祟っちまった、なんて騒ぎ立てるもんだからよ」
「人形が呪っているなら、人形ごと呪いを斬り伏せてしまえばよいではないか」
「ははっ。そいつは勇ましいぜ、セイバーさん。でもまぁ、人形も可愛がられたと思ったら、次は手足を奪われちまったんだ。同情する声も出てな。ならば、供養してやろうとね。で、それなら、供養する前にちゃんとした手足を付けてやろうって話でよ。そこで、白羽の矢が立ったのが」
「イオリ、と言う訳だな」
「待て待て。人形の手足など、造ったことはないぞ」
何故か、したり顔のセイバー。
思いがけない提案をされ、困惑を隠せない伊織。
「それが、伊織さんが彫った仏様があったろう。それを目にした人がいたみたいで、この彫り師に是非、と言う話なのよ」
確かに、伊織は拾い集めた木材から仏像を彫り、日々の生活の糧としていた。
しかしながら、その出来は真っ当な評価を得られる程のものではないと、伊織は思っていた。
果たしてこの腕で、人形の怒りを鎮める事など出来ようものか──。
「あら、貴方たちもいたのね」
声をかけられ振り返ると、そこには西洋の布製の笠と外衣を纏った異国の少女が立っていた。
「失礼。この人形を買い取りに来たのだけれど、先を超されたかしら?」
言葉とは裏腹に、余裕の笑みを浮かべる少女──ドロテア・コイエットは、貿易商と名乗ってはいるが、実際は異国の魔術師である。
この江戸の地にて行われている『盈月の儀』の参加者の一人であった。
「ドロテア殿。いや、俺たちは買い取りに来たわけではない。この人形、貴殿の目から見ても価値のある物か」
魔術師にとっての価値。即ち、この人形が呪物であると裏付けるようなものであった。
「えぇ、間違いなく、ね。それに、主人から狂気的に愛された人形が、主人を呪い殺してしまうだなんて、とっても、魅力的だとは思わない?」
わからない、と言わんばかりに伊織は顔を顰めた。
「入手が目的では無いとしたら、調伏、かしら。貴方、サムライから陰陽師にでも鞍替えでもしたの?」
「いや、供養の為、手足の作製を頼まれた」
へぇ・・・貴方がね、とドロテアは呟く。驚きの表情を浮かべるも、直ぐさま何か考え込む。
「良い考えじゃない。いいわ。
「と、言うと」
「その手足の材料、私が用意するわ。とびきり良い物をね。それは保証する。その代わり、私はその人形を貰い受ける、っていうのはどう?扱いに困っているのでしょう?」
急に現れた異国の少女に、困惑していた助之進が口を挟む。
「いやいや、お嬢さん。こいつァ、危ねぇ呪いの人形だぜ?遊び半分で手を出すと、大やけどしちまうぜ」
「信じていないんじゃ、無かったのか?」
「それとこれとは別でい」
伊織の言に、決まりが悪そうに言葉を濁す助之進。
信じてはいない。しかし、よくない物と分かっていながら、はいどうぞ、と押しつけるのも気が引けるのである。
「あら、心配してくれるのね。優しい人。でも大丈夫。そういった物には心得があるの」
とんでもねぇ、と照れ笑いをする助之進をよそに、ドロテアは人形に近づいた。
「この人形、主人が手足を取ってしまう前は、球体関節の手足が付いていたそうよ。設計書が必要となるわね。後で、翻訳した物を家の者に届けさせるわ」
「まだ引き受けた、とは言っていないんだが」
「それじゃあ・・・人形の運搬、よろしくね。優しくて、頼もしい男前の同心さん」
「お、おう!この男、助之進!しかと承ったぜ!」
ドロテアが颯爽と去ると、助之進の張切り顔が崩れた。
「い、伊織さん・・・。一緒に運んでくれる・・・よな?」
「まだ、引き受けたとは、言っていないんだが」
覆せぬ約束に、苦笑いを浮かべる伊織であった。
やや強引に押し進められた取引の間、セイバーは、じぃっと人形を見つめていた。
*
「さて、取りかかるとするか」
浅草の一角にある伊織の住まい──幽霊長屋に人形を運び入れるやいなや、助之進は、まだ聞き取りがある等と言い、足早に去って行った。
助之進と入れ替わるように、ドロテアの配下の者達が長屋を訪れ、大量の上質な木材と設計書を運び入れた。
これでは唯の物置小屋だな、と住まいを木材によって侵食され、不満を漏らすセイバー。伊織はそれを適当にいなし、設計図を読み終えたのは、すでに暮れ六つ(夕方六時頃)を過ぎた頃であり、行燈に火を灯す必要がある程、日が落ちていた。
「待て待て、イオリ!まずは夕餉が先だろう!」
伊織の食事への無頓着ぶりは、今に始まったことでは無い。
しかし、飯抜きでこれから作業するとなると、あまりにも無理がある。
「今から用意をしては、飯も作業も遅くなるだろう」
「なっ」
呆れて言葉を失うセイバー。
人形運びのせいで、屋台に寄る、もとい道草を食うこともままならなかったのに、夕餉までも人形に邪魔をされるとは、たまったものではない。
「あー……俺はいい。セイバーは、屋台でも行って食ってくるといい。」
違う、そういうことでは無い、と言いたげなセイバーをよそに、準備に取り掛かる伊織。
「ぶぅ・・・。一人で行ってしまうからな」
「あぁ」
「・・・・・・たらふく、食ってしまうからな」
「あぁ」
セイバーの本気の食欲であれば、伊織の寂しい懐事情はただでは済まない。
にもかかわらず、相手にしない伊織の態度に、むぐぐ・・・と唸りを上げるセイバー。
「本当に!ひ・と・り・で、たらふく!食べてしまうかーらーなー!」
セイバーは、ぴしゃりと音を立て、戸を閉めて出て行った。
*
さて、騒がしいセイバーもいなくなったことだ。まずは、人形を繋ぐ関節部分に取りかかるとしよう──。
そう決めた伊織は、参考までに、と設計書と共に渡された球体の水晶を手にする。
大きさは手のひらに収まる程であるため、球体関節として模すにはちょうど良い。
一目見ても、浪人の身である伊織には手の届かぬ代物だと分かるそれを、たやすく渡してしまうとは、この人形に対するドロテアの期待が窺えた。
セイバーが夕餉を終え、長屋に戻る頃には、三つの球が転がっていた。
油がもったいないから月明かりで造る──。そう言って火を消す頃には球が八つ。
鶏が鳴き、朝日が差し込む頃に、三十もの球が転がり、そこで漸く、満足のいく球が出来たのであった。
*
「もう、兄ちゃん!ごはんはちゃんと食べないと、ダメでしょっ!」
セイバーさん、困ってるよ。と、義妹であるカヤをセイバーが呼び出したのは、伊織が必要数の球体と腕を作り終え、手の作製に取り掛かっている頃であった。
人形を預かり、既に三日が経っていた。
「助之進さんも心配してたよ。兄ちゃんの人形造りに勤しむ姿は、鬼気迫る様子だったって」
助之進が来ていたのか。いつ来たのか、全く気づかなかった。
「仕事熱心なのは良いことだけれど、身体を壊しちゃ、元も子もないんだよ。兄ちゃんが造り終えるまで、私がごはん作りに来るからね。必ず、食べること!」
カヤにこうまで言われては、さすがの伊織も食事をせざるを得なかった。
漸く長屋で腰を落ち着けて米が食えるぞ。セイバーはそうぼやいて、伊織を恨めしそうに見つめた。
カヤが食事を作りに来て四日が経ったが、カヤが来たことにより長屋には変化が訪れた。
伊織が朝夕と食事を取るようになっただけでは無く、夜通し作業をすることは無くなった。
勿論、カヤに見咎められたからである。
もう一つは、人形の着物である。
関節や腕を合わせる為、着物を脱がす必要があった。
いちいち、脱がしては着せ、脱がしては着せを繰り返しては手間である。
だがしかし、脱がせたままでは流石に見聞が悪い。帯までは結ばずとも、最低限、着物だけでも羽織らせておこう───。
「兄上、最低です」
人形の有様を見た、カヤの一言目がこれだ。
斯くして、着付けはカヤに頼むことにした。
それに伴い、カヤは着物をいくつか見繕い、日替わりで人形に着付けるようになった。
カヤの選ぶ着物は、彩り豊かな物であった。こだわりは色だけでなく、格子柄など連続文様が入った物から、桜などが散りばめられた華やかな物まで多種多様であった。
こうして、生活に余裕が出来たことにより、一度造り終えた物を組合わせ、違うと感じた物は、再び造り直す──この工程を繰り返すこと三日。
漸く、伊織は手脚を造り終える事が出来たのであった。
しかし、いざ人形に合わせてみると、木目調の手足が浮いて見える。
そうだ──。色だ。色が足りない。手足を造ることに気を取られ、盲点であった──。
人形をよくよく観察すると、肌は、木材本来の色では無く、人間が持つ血色を感じさせる塗料が仄かに塗られている。
伊織は塗料を取り扱う店という店に行き、果ては小石川の山奥まで赴き、材料になる物を捜し、塗料を揃えた。
長屋に戻ると、一刻も惜しいと言わんばかりに、早速作業に取り掛かる。
手足の制作とは違い、日が暮れては作業が難しくなる。行燈の灯りでは、見えてくる色合いが変わるからである。
色を調合しては試し塗りを行い、人形の色合いに近づけていく。
人形の色合いを再現した頃には、人形を預かった時には細かった月も満月に変わっていた。
「お人形さんも、元の姿に戻ってよかったね」
伊織が手足を繋ぎ合わせ、カヤが着物を着付る。幾度となく繰り返したやり取りであったが、カヤは人形に愛着が湧き始めていた。
これが最後だと思うと名残惜しいのか、まだ着てもらいたい物があったのにな、とカヤが呟いた。
「ドロテアさんには何時渡すの?」
「あぁ、そうだな・・・」
手足は付けた。本来であれば、これで依頼は達成となる。
それに加えて、色まで付けたのだ。十分ともいえる仕事ぶりである。
だが、当の伊織は腑に落ちない顔をしている。
伊織は、袖から覗く手を見やる。色は間違いなく人形と同じ色に近づけた。
しかし、何かが足りない。何が足りないのか───。
「悪い、カヤ。もう一度造り直す」
「ほ、本気か!イオリ!?」
そう驚いたのは、セイバーであった。
早速作業に取り掛かろうと、伊織は人形を抱える。見る場所が異なれば、違う気づきが生まれるやもしれない。
「これで供養と言うには、まだ足りない」
「もう十分だろう!?よく見よ!」
セイバーの批難に、伊織は取り付く島もなく、再び作業場に腰を下ろす。
「きみ、ちょっと我が儘が過ぎないか」
もちろん、人形は何も答えない。セイバーは胡乱な目つきで人形を見やる。
セイバーさんったら、兄ちゃんに構って貰えなくて、拗ねているのね。カヤはそのやり取りを微笑ましく見ていた。
ふと、カヤと人形の眼が合った。
人形の左目に嵌められた、赤い眼が光った──様な気がした。
*
さて──。
造っては手足を繋ぎ合わせ、外し、また繋ぐ。
今までは手足を単独でしか見てこなかった。人形本体に繋げてみるのとでは、様子が変わって見えるように感じる。
改めて見ると、これだ、と選んで繋いだ腕も違うように思えてくる。
手足が付くことで人形らしくなった。が、人形らしいままでは何かが足りない。
着物の色でも、雰囲気が変わる。着物の色を戻すべきか。
だが、今の着物の方が、この人形には相応しい気がする。
始めに着ていた桜が入った朱色の着物とは違い、今では蜘蛛の巣の刺繍があしらわれた奇抜模様の
朱色も確かに捨てがたいが──そう思案する中に閃くものがあった。
赤だ。何物にも引けを取らない程の、真っ赤な色が必要だ。
赤い顔料は血色を出すのにも用いたが、わずかに使用しただけで、白を基調とした色合いにした。伊織はおもむろに赤を取り出し、様々な赤を調合していく。
持ちうる色を赤に足した。それだけで無く、自分で一から赤を造った。材料が足りなければ、再び店に赴き、他の店でも買い足した。途中、目に付いた草木も採取し混ぜた。
迷った末に、塗った赤が乾き、腕を取り付けた。
だが、違う。何かが、何かが違うのだ。
試行錯誤を重ねるうちに、伊織は行き詰まりを感じていた。
何が足りないのか───。
ふと、夕餉を作るカヤの後ろ姿が目に入る。
そうだ、あるじゃないか。ここに。赤が───。
おもむろに伊織は立ち上がり、刀掛けに置いていた刀を手に取る。
この赤さえあれば───。
「そこまでだ、貴様」
左腕に痛みが走る。
伊織が我に返ると、セイバーに腕を捕まれていた。もう一方の手には剣が抜かれていた。セイバーは険しい表情で人形を睨み付けている。
「せ、セイバーさん!?兄ちゃん!?」
ただならぬ様子に気がついたカヤは、状況を飲み込めずにいる。
「冗談が過ぎたようだな。ここで斬り伏せる」
セイバーが剣を構えた、その時。
「オや。これは申し訳ありまセん」
聞き覚えの無い、少女の声。その声は、間違いなく、人形から発せられたものであった。
すかさず伊織も刀を抜き、人形に向かって構えた。
人形は行儀よく座り直し、三つ指をついて、頭を下げた。
「このよウな手足を造って頂き感謝していマす」
「手足を喪い、とても困っていマした。ですが、出来上がった手足が期待以上の出来映えでしタので、もう少シ、良い物をと思イ・・・」
「そうやって、イオリを操って、憑かれたように手足を造らせていたのだな」
「つイ、欲を掻いてしまいマした」
申し訳ありまセん。と再び頭を下げる人形。
「油断するなよ、イオリ。貴様、イオリだけでなく、カヤまでも操り己の身支度をさせていたな」
着物が華やかな物から、カヤが選ばぬような蜘蛛があしらわれた変わり文様に、暗い色の物に変わっていったのが何よりの証拠である。
「はイ」
「ここ数日、紅玉の翁までも封じていたな。翁をも凌駕するその手腕、貴様、何物だ!」
「こレは、重ねて失礼をいたしマした。私の名は果心居士」
名前を聞くも、首を傾げるセイバー。片や伊織は警戒を強める。
「果心居士か。まだ、織田信長が隆盛を極めた頃、幻術を披露し絶賛された稀代の妖術師。それだけで無く、絡繰りをも操るとか。よもや、自身が絡繰りだったとはな」
「ご安心くだサい。皆様にこれ以上、外術をかけるつもりはありまセん。もちロん、危害を加えるつもりも、でス」
「フンっ。それもどうだかな。きみ、主人を呪い殺したのだろう」
「それは、誤解でス」
今の今まで表情を変えなかった果心居士であったが、表情を困り顔へと変化させた。
「折り入ってお願いがありまス。どウか、呪いを止めて欲しいのデす」