あっという間に株式会社DSPはリサイクルで百万円の純利益を出した。
俺は今後どうするかを真面目に考え始めた。
北海道でスクラップを製錬し続け、鉄インゴットと銅インゴットを商社に卸す。並行して勇払平野の油田から石油も出てきた。水素と精製油のタンクは満タンに近づいている。
あっという間に、株式会社DSPはリサイクル事業だけで百万円の純利益を出した。
社員一人、資本金もろくに入れていない会社にしては上出来だ。だが同時に、俺はふと我に返った。
「……いや、これ、スケールがおかしいだろ」
スクラップの製錬なんて、DSPの生産チェーンからすれば最下層の作業だ。採鉱機とアーク溶鉱炉を並べて回しているだけで、まだ合成機もソーラーパネルも本格稼働させていない。イカロスのインベントリには、もっと上位の技術がごろごろ眠っている。
俺は自宅のパソコンの前に座り、真面目に今後の方針を考え始めた。
ゲームの技術を使って現実世界で儲けるにはどうするのか。
とりあえず思いつく方向性をノートアプリに箇条書きしていく。
一つ目、素材の量産だ。DSPには磁鉄鉱からの高純度鉄、グラフェンやカーボンナノチューブ、超電導物質といった、現実でも需要はあるが製造コストが高い素材のレシピがある。合成機を使えば、それを異常な効率と省コストで作れてしまう。ただし、いきなり「グラフェンを格安で大量に売ります」なんて言い出したら、間違いなく怪しまれる。出所を聞かれて答えられるはずがない。
二つ目、エネルギー事業だ。イカロスのコアエネルギーや無線送電技術は、既存のインフラを丸ごと過去のものにしかねない。だがこれは一番危険な選択肢でもある。電力会社や国のインフラに手を出せば、絶対に注目される。テスラタワーの存在がバレた時点で終わりだ。
三つ目、地味だが一番現実的なやり方。素材そのものではなく、「効率化されたプロセス」だけを切り出して、既存のビジネスの皮を被せて商売にする。今のリサイクル事業がまさにそれだ。傍から見れば「効率のいい町工場」でしかない。実際にやっているのは、鉱物処理レベルの技術を使った異常な製錬効率なわけだが、そこは絶対に見せない。
「……結局、地味に稼ぐのが一番安全なんだよな」
派手に儲けようとすればするほど、説明のつかない部分が増える。今のところ大事なのは、怪しまれない範囲で、この会社を大きくしていく事だ。
まずは製錬・リサイクル事業をきちんとした形に整えて、法人としての実績と信用を作る。そこから少しずつ、合成機で作れる高付加価値の素材――たとえばレアメタル代替品や高純度部材――を、既存のサプライチェーンに紛れ込ませる形で流していく。「新しい精錬技術を開発した町工場」くらいの体裁を保てば、多少の異常な品質は誤魔化せるはずだ。
原油もまだ枯れていない。水素と精製油を燃料や化学原料として売るルートも考えないといけない。
やることは山積みだが、幸い時間だけはある。
俺はノートの一番上に、こう書いた。
「方針:目立たず、着実に、生産チェーンを広げる」
さて、次は精製油をどう捌くか、そして合成機で作れる素材の中から、一番「怪しまれずに」売れる商品は何か――それを考える必要がありそうだ。
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