女体化を免れてしまった新規実装キャラの苦悩   作:POTROT

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復活の話

 遠い昔。神々の代。

 そこには常に、闘争があった。

 猛々しき神々が自らの持ちうる全てを以て敵を屠り、自らの世を築くための戦争に明け暮れた時代があった。

 

 戦と勇猛の神マウルも、その時代に生まれ、そして散った、一柱の神だった。

 後に残った神話では特に荒々しく、雄々しかったとされる彼も、しかし名だたる神々の王たちには敵わない。

 ただ強く、それ故に策に嵌り、負けた。

 

 一本一本、丁寧に手足を捥がれるように追い詰められ、真綿で首を絞めるかの如く、ゆっくりと殺された。

 マウルは最期の最期まで戦い抜いた。

 神々を相手に一歩たりとも退かず、立ってその命の終わりを向かえた。

 

「貴様は調子に乗りすぎたのだ」

 

 強すぎたマウルに辛酸を嘗めさせられた神々は、誰もがその最期を嗤った。

 眷属だった人間を全て失い、雷に焼かれ、幾本もの矢に貫かれ、ただ一柱、孤独に死んだ神を、神々は嘲った。

 

 人々はその姿を、戦争に憑りつかれた者の末路と知り、平和を心掛けるようになった。

 

 嗚呼、愚かなり神マウル。

 誰よりも荒々しく、誰よりも雄々しく、誰もその背に追いつけなかった強きマウル。

 弱きを置き去り、強きを殺した、孤独なマウル。

 マウルの悪名よ、世から戦乱を遠ざけ、平穏を齎し給え───

 

 

 ■

 

 

 そうして時が流れ、数千年。

 神マウルは、再び地上に二本の脚で降り立っていた。

 人ならざる神とは言え命は命。死してその魂は冥府に運ばれ、二度とは戻れぬはず。

 しかし、それでも彼が再び肉体を取り戻し、現世に舞い戻ったのには、理由があった。

 

「……宇宙からの侵略者。それに伴う世界の危機、か。全く、いつの世も外敵には事欠かんな」

「いや本当に、勘弁して欲しいものです」

「違いあるまい」

 

 宇宙からの脅威。

 突如として現れたそいつらは、瞬く間に人類を半滅亡状態に追いやった。

 被害は人類と決別し半ば隠居していた神々にまで及び、緊急事態として人類と神々の共同戦線が結ばれるまでに至ったが、しかし戦況は好転しない。

 

 そこで。冥府を管理する神々が、例外的にかつて死した人類の英雄や神々の魂の解放を決断。

 戦力の増強が目当てとなるその魂の解放に、マウルが選ばれないわけも無かった。

 しかし一度終わった命が再び生を得ることを良しとしなかったマウルを引っ張り出すためにひと悶着あったが、紆余曲折あって、こうしてマウルは現世に降り立つのだった。

 

「しかしそれにしても、今の世は随分と大きく変わったものよな。あのような天突く建造物の類を、よくもまぁ神々が赦したものよ」

「いやぁ、それが、赦して無いというか、人類が勝手にやったというか……神々と人類は何千年も前に決別していまして、長い事独自に発展していったんですよ」

「そうだったか……いかんな、長らく死んでいたからか、外の事を知らなすぎる」

「あはは……」

 

 マウルは冥府において、争いを完全に忘れ、極めて穏やかな生活を営んでいた。

 正確には生きてはいないので、『生活』と呼んでいいか、甚だ疑問であるが、生前からの付き合いである部下たちと共に、冥府の一角で慎ましやかに暮らしていたのだ。

 また、外界と二度と関わる気も無かったので、外の情報を特に知るわけでもなく、冥府神が彼の居城を尋ねてから、漸く色々なことを知り始めたのである。

 

「ところで、他の連中はどうした。何もここに居る神が俺だけというわけでもあるまい。他の神々は何処へ行ったのだ?」

「ああ、居ますよ。ほら、例えば───」

 

 と、マウルを冥府より連れ出した、対異星人戦線を任された将の一人であるという彼女が口を開こうとした直後の事であった。

 

「おぉ! 帰っていたか!」

 

 彼女を挟んでマウルの反対方向から、何者かが走って来る。

 特に敵意や殺意を感じるわけでもないので、何を言うでもなく黙っていると、何者かは彼女に飛びついたらしい。

 彼女は受け止めるが衝撃に耐えかね、幾らか後退し、マウルに支えられた。

 

「それで。どうじゃった、此度の冥府は?」

「割と穏やかな所でしたよ。ちょっと広すぎましたけど」

 

 視界の下方、彼女の腕の中で、マウルに気付かない様子のまま弾んだ声で話すのは、マウルの腰ほどの身長の少女……或いは幼女であった。

 白銀の髪に金色の瞳は神々しく、そして純白の布で拵えた服は妙に露出度が高かったが、しかし不思議と似合って見える。

 そして、その肉体に秘めた実力は相当なものだ。見るからに柔らかそうな肉で全身を覆ったその姿は弱弱しくも見えるが、その内側に蓄えた力は怪物のそれ。

 さぞ名のある神なのだろう、と。マウルは内心で敬意を払った。

 

「して、どうじゃ。マウルの奴は連れ帰ったか?」

「あぁ、はい。丁度今そこに居ますよ」

「おぉ!」

 

 彼女が自らの背後を示し、そこで漸く少女はマウルの存在に気が付いたらしい。

 少女は屈託のない笑顔を浮かべ、親し気に片手を持ち上げると───

 

「久いのう、マウルよ!」

「…………いや、失礼だが……誰だ?」

「ぬぁ!?」

 

 少女はひどく驚いた声を出すが、マウルからしてみればむしろ自分が驚きたかった。

 初対面のはずの、しかも余程力のあるはずの神にあたかも見知った関係のように接されれば戸惑いもするというものだった。

 

「貴様、儂を忘れたと申すか!? 儂じゃよ儂、神々の王が一人、ゼーラスじゃ!」

「………………………………………………ファッ!!?」

 

 ゼーラス。確かに、マウルも知る神の一柱だ。

 天の島々を統べる雷霆の王。

 その権能たる雷に撃たれた、体中を駆け巡るような激痛は、マウルの記憶に焼き付いている。

 

 ……が。

 

「…………き、きさ、貴様……ッ」

「どうじゃ、思い出したか? ん? 実の父親じゃぞ、儂?」

「性別は…………性別はどうしたァーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」

 

 雷霆の王ゼーラス。

 マウルの記憶の中にある彼女の……否、彼の姿は。

 立派な髭をたくわえた、筋骨隆々の老神であるはずであった───。

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