俺には前世のようなものがある。
正確には前世の記憶があるというわけではないが、前世で培った記録というのが正しい気がする。
俗にいう一般常識・勉学などの知識がなんとなくわかった。
それにより生まれた時から幼児とは思えないほどの知識と精神性ができた。
無駄に賢いその記憶のおかげでやたらむやみにひけらかすこともなく周りに合わせた子供だったと思う。
だが、そんなことは関係なく両親は俺が3歳ごろに離婚してしまった。
俺は父に引き取られたがすぐに捨てられ施設へと入れられた。
表向きは最低限それらしい表現をしたつもりだが両親の離婚も施設に入れられたことも特に俺の感情を揺らさなかった。
施設に入れられてから俺は今後の信頼や立場をよくするために勉強やほかの子供の面倒を見るようにした。
それが功を奏したのか俺が4歳になったときに俺は引き取られた。
そのころは知らなかったが俺の新たな両親はなかなか子宝に恵まれないということで俺を引き取ったらしい。
俺を引き取ってくれた恩返しのつもりで俺は家のことや勉強を頑張るようにした。
その後、2年ほどして妹が生まれた。
そのころから両親はどこか俺を疎ましく思い始めたようで露骨に俺との接触を避けるようになってきた。
血のつながった子、そうでない子ならどちらをとるか?など考えるまでもなく前者であると思った俺としてはそれ
をどこか当然のように受け入れていた。
仕事で忙しいことが多い両親の代わりに俺は家のことや妹をの面倒を積極的にすることにしていた。
妹はよく泣く子だったが俺が抱き上げるとこちらをジッと見つめて嬉しそうにきゃっきゃと笑って泣き止んでくれた。
その瞳の中に俺には輝く星があるように見えた。
妹がこちらじっと見つめてくるときに見えるその瞳が俺は好きだった。
自分でもよくわからないが、それを見ると頑張ろうという気持ちにさせてもらえた。
1年、2年とたち俺は小学校が終わればすぐに家に帰り妹の面倒を見るという日々を送っていた。
歩けるようになった妹は俺を見つけるとこちらによってきて両手を俺の顔に添えるとジーっと見つめてくるようになった。
何かで遊んであげるよりもそのままでいるほうが楽しいのか目をそらそうとすると『やー』と嫌がるので俺の妹の
世話は基本的ににらめっこのように見つめあうことだけだ。
こんな日々が続くと思ったがその2年後それは起きた。
いつものように俺が帰ってきたのに気が付いた彼女はこちらへ向かって歩いてきた。
そのときに躓いたわけではないのに変に彼女の体がぐらついて転びそうになった。
幸い床に体をぶつける前に支えることができたが、彼女の瞳はどこか視線が定まっていなかった。
俺の中の記録がアラートを鳴らしたのが分かった。
そこから俺は彼女の体を揺らさないように救急車を呼んだ。
救急車が来る前での間俺は彼女の名を何回も呼んだが明確な反応が返ってこなかった。
間もなくして到着した救急隊員に子供の早とちりであると思われないように可能な限り冷静に伝えるとすぐに病院
へと連れて行ってくれた。
病院についた妹はすぐに検査に入った。
両親への連絡は病院側でやってくれるとのことで俺は廊下のベンチに座って両手を合わせた。
そして、到着した両親とともに検査と処置が終わるのを待った。
どれぐらい時間がたったかわからなかったが俺にはそれが何時間にも感じられた。
しばらくして担当した先生が両親を呼んだので俺もそれについていった。
そこから先生から伝えられたのは彼女が退形成性星細胞腫を発症しているというものだった。
両親のそれは治るのかという質問に先生からは数年後の生存率という形で返された。
そこからは早かった。
よりよい治療を受けさせるために地元で有名な病院をへと妹は移された。
そこからの俺の行動指針はすでに決まっていた。
俺の中の記録を利用して勉強・資金集めである。
妹を治すための知識を今から集め、また間に合わない場合はその治療を受けられる場所を世界中から見つける。
家のほうは裕福だが相応の治療を受ける場合にいくら必要になるかわからない以上可能な限り集める必要がある。
いや、この表現は正確ではない。
この数年で両親の性格的に死がちらつく妹にある程度はお金を使うだろうが財産を使い果たすほどの献身が可能か
と言われれば俺はそれにうなずくことができない。
なら、その分の献身は俺がしなければらない。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
心配するように妹がベッドの上で上体を起こして俺の顔を両手でつかみジッと見つめてくる。
「なんでもないよ。さりな」
そう、何でもない。
これが君につく唯一の嘘だ。