【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「ちょっと眠れそうもないなぁ」
夢(未来)を見て、アイトとのことを思いだしたせいで眠気も吹き飛んでしまった。
時計を見ると深夜2時でまだライブに向けて起きる時間には早すぎる時間だ。
少し散歩しようと思い私は部屋を出た。
「げ・・・」
エレベーターで下におり、ロビーに着くとそこのテーブルで作業をしている人物が目についた。
さっきのやりとりのせいでできれば会いたくない人だった。
逃げようかと思ったが、エレベーターの到着したチンという音のせいかバッチリとこちらを見ている。
その人物は作業を中断して手で私を呼んでいた。
逃げても無駄だと思い、私はあきらめてそのテーブルの対面へと腰かけた。
「眠れないのか?」
「ん~、そんな感じかな」
その人物は一応聞いてみたというぐらいの軽い口調で聞いてきた。
私としてもそれを確認するためにわざわざ呼んだわけじゃないのはわかっているから適当に流した。
「そうか」
「うん・・・」
少しの間、互いに何も言わない時間が続いた。
その間、アイトがパソコンのキーをたたく音や資料の紙をめくる音がロビーに響いていた。
「部屋でやらないんだ?」
「ここなら階段もエレベーターも見えるからな」
さも当然のように見張りのようなことをしているのに私は驚かされた。
「さっきは部屋に戻るって言ってたのに?」
「関係者のチェックインが終わるまでの間に軽い仮眠をとるつもりだったんだ。それ以降は関係者かどうかのチェックをするためにここにいる」
とんでもないことを言っている。
つまり関係者の顔はすべて把握しているらしい。
人の顔をあまり覚えられない私からすると意味がわからない。
「それに、なんとなくだがアイが来る気がした」
そこまで言ってアイトはパソコンから手を放して私を見つめてきた。
真っ暗な瞳の中にはいつもだったら光り輝く眩い星が見えたはずなのに、星かどうかもわからないぐらいすごい小さな光しか見えなかった。
「すまなかった」
唐突に謝られて頭を下げられた。
「これまで毎回赤いサイリウムを振るよう言われて断っていたのに、ニノのはやるということになったことだ」
先ほどのニノとのやりとり。
約束とはいえ、アイトは何回お願いしてもサイリウムを振ってくれることはなかった。
それなのにニノのはやる。
それが私には面白くなかった。
「わかってたんだ」
そう、これはただの醜い嫉妬心で独占欲だ。
私を愛してくれてる人の思いがよそへ向かうのが面白くなかった。
推し変でテンション下がるというのは聞いたことあったけど実際こんな気持ちになるんだろうな、というのは初めてわかった。
「アイトってさ、ひどいよね?私たちの気持ちもてあそんで」
「ひどいいいようだな」
困ったように言っているが、実際にそうだ。
私だって、B小町のメンバーだってみんなアイトのことと憎からず思っている。
それも当然だ。
聞いた話だけど私が『加入する前』のB小町にレッスンをつけてあげたり先生を用意してあげたり、それぞれの長所を活かす仕事を探したりとしっかりとメンタルケアや学業のフォローとそんな親身に対応されて嫌いになるはずがない。
私や新メンバーが増えたけど同様に育成されたおかげで加入時期による差は多少あっても全員がそれぞれファンを抱えている。
一応他のメンバーの推薦で今は私がセンターにはなっているけど、アイドルグループとしては珍しく(珍しいらしい)メンバー同士仲が良いのだ。
だからみんなアイトには感謝しているし、ライブの時には自分のイメージカラーのサイリウムを振ってほしいと思っている。
だけど、これまでは平等にやらないということで納得していた。
その前提が崩れたのだ。
「私たちだってさアイドルだけど、女の子なんだから身近であんなに親身に世話をやいてくれる人がいたらそりゃあ意識しちゃうよ?」
「・・・壱護さんには距離感がへたくそだ、とはよく言われるな」
どうやら社長からもお小言をもらっていたらしい。
でも、その理由はなんとなく私はわかっていた。
「そうだよね。アイトはさ誰かを理由にしないと生きていけないもんね。だから頼られると必死になっちゃう」