【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「そうだよね。アイトはさ誰かを理由にしないと生きていけないもんね。だから頼られると必死になっちゃう」
アイにそう言われて心臓がドクンと大きく鳴った気がした。
その動揺が顔に出てしまったのか彼女はやさしく微笑んだ。
「自覚、あるんだ?」
「・・・まぁな」
自覚していないわけがない。
原因は親に捨てられたことかさりなの為かは定かではないが、俺は誰かのためじゃないと何もできない。
「だからこそ俺はここにいる」
「B小町の為?」
「・・・少し違うな」
今の大きな理由としては違いないが大本は違う。
「斎藤壱護、彼の夢を聞いたときに俺は少しばかり心を焦がされた」
「社長の?なんか意外だなぁ」
彼女はそう言ってさも当然のように俺が飲んでいたすでに冷めたコーヒーを一口飲んだ。
苦いのが苦手なので当然のごとく彼女はしかめっ面をしている。
「だから多少は渋ることがあっても俺は社長に協力している。B小町はその一環だ」
「うへぇ・・・聞かなきゃよかった」
苦いものを飲んだせいか、感情のせいかわからないが彼女はかなり渋い表情をしている。
まぁ、自分たちの為だと思っていたら上司の為にやっていると聞かされたらあまり面白くないだろう。
それも会社的な理由ではなく心情的なものならなおさらだ。
「だが、まぁ、今はちょっと変わってきたがな」
「変わったって?なに?もしかして社長に恋でもしたの?」
すこしやさぐれてアイは聞いてきた。
よっぽどさっきの話がお気に召さなかったらしい。
「恋、か。似たようなものだが社長じゃない。B小町にだ」
「きゅ、急に告白は困るなぁ!?」
アイはパニクっているのか百面相をしている。
握手会とかで『好きです』だの『愛してる』だのさんざん言われてるのに気を抜くとすぐにアイドルから少女に変わる。
「気が付けば君たちの姿、瞳に目をやかれた。俺もキミたちのファンだってことだな」
最初はただの社長のフォローだった。
伝手もコネもほとんどない社長の代わりにいろいろと手を回していた。
次はさりながファンになったからB小町が続くようにしていただけだった。
気が付けばB小町のメンバーの星の輝きに瞳が焼かれていた。
「ふ~ん、じゃあそんなファンなのになんでライブで応援してくれないの?」
「さすがにそこは線引きとして表向きはしてないだけだ」
全員の面倒を見ている立場の人間が特定の人物のカラーのサイリウムを持っていたら平等に接しているとは言えない。
下手をするとそれが原因でぎくしゃくしてしまう。
「ニノの件だっておそらく一番ましだ」
「へ?」
チケットを手に入れるための交換条件。
ニノはライブの最前列で緑のサイリウムを持てだった。
だが、他のメンバーは過激だった。
「なんでもいいと言ったせいか、高峰の要求はライブに出ろだったし、渡辺の要求はデートだったしメイ」
「す、ストップ!もういいよ!」
それぞれの要求を一つ一つ述べているとアイがそれ以上聞きたくなかったのかストップをかけてきた。
いくらなんでもメンバーがそんな要求をするとは思っていなかったのだろう。
「そんなレベルのもOKだったの?!」
「まぁ、かなり無茶を頼んだつもりだったからな」
一番よいチケットを関係者内のみで回してる、なんていう風に漏れたら問題になりかねない。
「そ、そっか。まぁそのレベルだったらサイリウムぐらいなら仕方ないって思うしかないなぁ。うん」
アイは少し汗を垂らしながら目を閉じうなずいている。
どう見ても無理やり自分を納得させている。
「そう思ってもらえるなら助かる。それとちゃんと言っておくが俺は全員をしっかり応援している」
それだけは間違いない。
俗にいう箱推し、とも少し違う。
一人ひとりを俺は応援したいと思っている。
「そっか。じゃあ今日のライブはたっぷりとファンサしてもっと大ファンにしてあげる」
満足したのか、アイはウィンクをした。
先ほどまでその瞳には星かどうかもわからない小さな光しか見えなかったのに、今はまばゆいまでの星が見えた。
「ならさっさと戻って少しでも寝ろ」
「は~い」
間延びした返事をしてアイはエレベーターに乗り部屋に戻っていった。
「すでに俺は大ファンだ」
彼女たちによってもたらされた光はすでに俺の瞳をこれ以上ないほど焼いていたのだから。
あとは閑話を挟んで宮崎ライブ編(ライブはしない)は終わりですね。
書き始めた時の予定では6話ぐらいで原作1巻に入る予定だったのに書き始めたら書きたいことが増えちゃって・・・